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逆転劇は始まらない

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『すみません、電車の扉の前で足が動かなくなりました。 今日現場にいけそうにないです』


---朝日が照らす駅のホームで、一人の男が携帯に向かってそう告げた。---

今日は、人生の逆転劇の始まりの日だ。
本来、自分が乗るべき電車とはまったく関係のない電車に乗車し、
本当の自分が目覚めたような快感にひたりながら、外を眺めたその日を、忘れることはないだろう。

ほんの一瞬の夢物語。
だが、一瞬という言葉の残酷なことで、
私の逆転劇は、その日のうちに終わりを告げた。



---2018年 6月---

黒いスーツに黒い革靴、
黒い鞄に黒いネクタイ。 何もかもを黒に包んだ男が、
築20年ほどの汚れたビルを訪れていた。

その目には、色に似合わず夢があった。
夢のために、こんな場所に来てやったのだと、生意気な心持ちだった。

スローテンポで扉を3回ノックした。

男:『失礼します』
面接官:『どうぞどうぞ、お入りください』

扉を開けて、頭を下げた。
完璧だ。

面接官と対面に向き合う形でソファに腰を掛ける。

それから、ハローワークで身に着けた作法を、
マニュアル通りに1ミリの狂いも無くこなしていく。

さながら"役者"になったような気持ちだ。


面接官:『それでは、ウチに入ってもらった場合、あなたが最初に担当する仕事を説明しますね』
男:『お願いします』

長々と仕事内容が説明された。
仕事内容は割愛する。 この物語には、”影響の無い"ものだから。


面接官:『それで、この仕事、できそうですか?』

頭痛がした。
この質問には、少々引っかかってしまった。

”できそうですか?"という部分に着目して答えを言わせるのは、卑怯だろうと。


男:『無理そうですね』


気づいたら、そう口走っていた。 無意識だった。
これが人間の本能なのかもしれない。

感づいた。
終わったな。 この会社は"落ちた"、そう思ったのだが。


<ガチャ!>※扉の開く音


?:『まあ、待ちなさいよ』
男:『え?』


突然、白髪の青シャツ男が乱入し、面接官の横に腰かけた。

白髪:『即答しないでさ。そんなものはやってみないと分らないでしょ?』
男:『ええ・・・?あーはい。』

一息の沈黙が流れる。

白髪『君さ、3日後・・・暇?』
男:『午前中は、他社の面接がありますね』
白髪:『じゃあ、午後は空いてんのね。 3日後の昼頃電話するから。』
男:『めっさ突然じゃないですか』
白髪:『じゃ、今日はSPI受けたら帰っていいよ~ じゃねー』
男:『ハア!?』


白髪の青シャツ男は上機嫌に部屋の扉を開けて出て行った。
なぜだか、その背中は大きく見えてしまった。

この青シャツ男のせいで、物語が動き出すのだが、
その話はまたの機会に。


⇒To be continued・・・・
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