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閨の練習相手6
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どうせゲームだ。現実ではない。
(でも王子……)
いや、まずは誰が攻略対象なのか見極めないと。ルイ一人に絞る必要はない。
(うん、まずは様子見――)
レオンがしゃがむように動いた。
どうしたんだろうと思った瞬間、膝裏に太い腕の感触。ふわりと体が宙に浮く。
「わっ」
「思ったより軽いな」
どこか意地悪な笑み。それで、散々食べ続けたことをからかわれたのだと気付く。
しかしアリスをベッドに下ろすしぐさは優しく、衝撃もなかった。覆い被さられ、体だけでなく心までとらわれた気分になる。
(本当に……レオンとするの……?)
しかも、王子が見ている前で。
「アリス」
名前を呼んでからのキス。自然と瞼が落ちてしまう。
今度は吸い付くようなキスだった。そちらに気を取られている間に太ももを撫でられる。その手はゆっくりとロングキャミソールの中に入ってきた。
(あ……)
ついにしてしまう。始まってしまう。
体にぐっと力が入る。
おもむろにレオンの唇の感触が消えた。
「怖くない」低いささやき声。「大丈夫」
「レオン……?」
聞き慣れた話し方だった。通常シナリオで何度も聞いた、レオンの優しい声。この声がとても好きだった。
戦いに身を置く彼に、本当なら生きるか死ぬかでギリギリのところにいたはずの彼にこちらが何度も何度も励まされ、過酷な残業にも耐えることができた。
「かわいい」
いつの間にか、肌に触れていた手はどこかへ行っていた。
さっきまでとは違う、子どもにするような額へのキス。
「かわいいよ」
ちゅ、ちゅ……と繰り返し顔中にキスの雨を受ける。
「レオ、ン……」
まるでレオンルート通常シナリオクリア後の世界を見ているよう。
「それでいい。力を抜いていろ」
「あっ」
上体だけを起こされ、バスローブを脱がされた。再びベッドに押し倒され、レオンの顔がアリスの首筋に埋まる。ゴツゴツした大きな右手が左胸を覆った。揉まれると、ブラジャーがわずかに動く。
ふと、レオンが顔を上げた。
「……下着をつけているのか」
「あ……」
カァッと頬が熱をもった。
つけないべきだったのか。でも今更もう遅い。自分の失敗と無知に気付いて全身の血が沸騰しそうになる。
胸に置かれていたレオンの手が腰骨に移った。その指の力加減で、下着を履いているかを確認されたことがわかった。
「あ、の……」
よくわからなくて。しかしそれは掠れて声にならなかった。
目が合った瞬間、フッと微笑まれる。
「脱がす楽しみが二倍になった」
かばってくれた。このシナリオでは全然そんな性格じゃないはずなのに。
レオンが、アリスのむき出しの肩に吸い付く。時折鎖骨を食まれ、舐められると、陰部が湿るのを感じる。
「ん……」
おそるおそるまぶたを上げると、真剣な瞳と視線がぶつかった。自分が、性の対象として見られている。
(……本当に?)
自分に自信なんてない。たらふく食べて、お腹だってぽっこりしている。せめて、せめてもっと覚悟が決まってちゃんとしているときがいい。
だめだ。
やっぱりだめ。
(仕事しろ貞操観念!)
でも――。
(でも王子……)
いや、まずは誰が攻略対象なのか見極めないと。ルイ一人に絞る必要はない。
(うん、まずは様子見――)
レオンがしゃがむように動いた。
どうしたんだろうと思った瞬間、膝裏に太い腕の感触。ふわりと体が宙に浮く。
「わっ」
「思ったより軽いな」
どこか意地悪な笑み。それで、散々食べ続けたことをからかわれたのだと気付く。
しかしアリスをベッドに下ろすしぐさは優しく、衝撃もなかった。覆い被さられ、体だけでなく心までとらわれた気分になる。
(本当に……レオンとするの……?)
しかも、王子が見ている前で。
「アリス」
名前を呼んでからのキス。自然と瞼が落ちてしまう。
今度は吸い付くようなキスだった。そちらに気を取られている間に太ももを撫でられる。その手はゆっくりとロングキャミソールの中に入ってきた。
(あ……)
ついにしてしまう。始まってしまう。
体にぐっと力が入る。
おもむろにレオンの唇の感触が消えた。
「怖くない」低いささやき声。「大丈夫」
「レオン……?」
聞き慣れた話し方だった。通常シナリオで何度も聞いた、レオンの優しい声。この声がとても好きだった。
戦いに身を置く彼に、本当なら生きるか死ぬかでギリギリのところにいたはずの彼にこちらが何度も何度も励まされ、過酷な残業にも耐えることができた。
「かわいい」
いつの間にか、肌に触れていた手はどこかへ行っていた。
さっきまでとは違う、子どもにするような額へのキス。
「かわいいよ」
ちゅ、ちゅ……と繰り返し顔中にキスの雨を受ける。
「レオ、ン……」
まるでレオンルート通常シナリオクリア後の世界を見ているよう。
「それでいい。力を抜いていろ」
「あっ」
上体だけを起こされ、バスローブを脱がされた。再びベッドに押し倒され、レオンの顔がアリスの首筋に埋まる。ゴツゴツした大きな右手が左胸を覆った。揉まれると、ブラジャーがわずかに動く。
ふと、レオンが顔を上げた。
「……下着をつけているのか」
「あ……」
カァッと頬が熱をもった。
つけないべきだったのか。でも今更もう遅い。自分の失敗と無知に気付いて全身の血が沸騰しそうになる。
胸に置かれていたレオンの手が腰骨に移った。その指の力加減で、下着を履いているかを確認されたことがわかった。
「あ、の……」
よくわからなくて。しかしそれは掠れて声にならなかった。
目が合った瞬間、フッと微笑まれる。
「脱がす楽しみが二倍になった」
かばってくれた。このシナリオでは全然そんな性格じゃないはずなのに。
レオンが、アリスのむき出しの肩に吸い付く。時折鎖骨を食まれ、舐められると、陰部が湿るのを感じる。
「ん……」
おそるおそるまぶたを上げると、真剣な瞳と視線がぶつかった。自分が、性の対象として見られている。
(……本当に?)
自分に自信なんてない。たらふく食べて、お腹だってぽっこりしている。せめて、せめてもっと覚悟が決まってちゃんとしているときがいい。
だめだ。
やっぱりだめ。
(仕事しろ貞操観念!)
でも――。
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