負けず嫌いはあだになる?!

gooneone(ごーわんわん)

文字の大きさ
上 下
1 / 16

独身彼氏なし趣味はゲーム

しおりを挟む


「もう二十五だよ? いい加減現実見なって」
「でも収入か性格に振り切るなんていやじゃん。収入も性格もルックスもよくないと」

 耳に飛び込んできた背後の会話。アリスは飲んでいたビールジョッキをカウンターテーブルに置くと、素早く背後を振り返った。
 テーブル席に座る、アリスと同世代の女子二人。飲み物はおしゃれにカクテル。

 身体を前に戻し、ジョッキの取っ手を握ったまま耳をすませる。

「だから彼氏ができないんだって。相手も人間。少女漫画じゃないんだからさ。ゲップもするしおならもするのよ」
「でも一生一緒にいる相手を妥協したくないし」
「一生一緒にいられるって考えが処女」
「離婚前提に結婚はしないでしょ」
「結婚して3か月後には目の前に浮かんでる」

 シビアな会話。どうやら一人は既婚、一人は未婚らしい。彼女たちは酒を飲む間もなく話し続け、話題は営業部の山本くんとやらの話になった。そうなるともう、興味はない。
 皿からネギマを取り、串を握ってかぶりつく。

(別にいいじゃない)

 夢を見たって。
 イケメンに囲まれるハーレムだって、獣人とツガイになってかわいい犬を孕むのだって、頭のなかで妄想する分には全部タダだ。誰に迷惑をかけることもない。それに一生独身でいたって――まあ、少子化にはなるけれど、その分せっせと働いて戻ってくることのない税金を納めている。

(私だって超高給取りで超優しくてちょっといじわるで超イケメンが溺愛してくれるなら結婚したい……)

 が、現実にはいない。いたとしても、しがないOLには出会えない。
 アリスは串を皿に置くとジョッキを空にして店を出た。
 もう二十三時を回っている。退勤したのが二十二時。十三時間も働いた身体は、帰宅後に食事を作る体力なんて残していない。駅から歩いて帰るだけで報奨ものだ。

(家でイケメンがご飯作って待っててくれるなら仕事だって頑張れるのに……)

 いや、それならもっと楽な職場に転職する。理想どおりのハイスペックイケメンだったら家政婦を雇って名ばかりの専業主婦を許し、夜の営みにだけ頑張りを求めるはずだ。
 しかしそれを許してくれるのは小説やゲームの世界のなかだけだ。


 二階建ての古びたアパート。アリスは心のなかで「ただいま」を言うとパンプスを脱いで部屋に入った。
 パソコンの起動ボタンを押してからシャワーを浴びる。歯磨きまで終えると、昨日ついに全キャラを攻略した女性向け恋愛ゲームを起動した。
 タイトルとともに表示されるキャラクターたち。

(はあ……イケメン……)

 西洋系ファンタジー恋愛シミュレーション。
 一番攻略が難しかったのはセンターポジションの腹黒の王子ルイで、選択肢をひとつ間違えただけで非情なバッドエンドが表示された。けれどすべての選択肢をメモを取りながら手探りで進んだ結果、溺愛束縛系旦那様になった。

(まあ……束縛が激しすぎて疑似監禁エンドだったけど……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

処理中です...