負けず嫌いはあだになる?!

gooneone(ごーわんわん)

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独身彼氏なし趣味はゲーム

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「もう二十五だよ? いい加減現実見なって」
「でも収入か性格に振り切るなんていやじゃん。収入も性格もルックスもよくないと」

 耳に飛び込んできた背後の会話。アリスは飲んでいたビールジョッキをカウンターテーブルに置くと、素早く背後を振り返った。
 テーブル席に座る、アリスと同世代の女子二人。飲み物はおしゃれにカクテル。

 身体を前に戻し、ジョッキの取っ手を握ったまま耳をすませる。

「だから彼氏ができないんだって。相手も人間。少女漫画じゃないんだからさ。ゲップもするしおならもするのよ」
「でも一生一緒にいる相手を妥協したくないし」
「一生一緒にいられるって考えが処女」
「離婚前提に結婚はしないでしょ」
「結婚して3か月後には目の前に浮かんでる」

 シビアな会話。どうやら一人は既婚、一人は未婚らしい。彼女たちは酒を飲む間もなく話し続け、話題は営業部の山本くんとやらの話になった。そうなるともう、興味はない。
 皿からネギマを取り、串を握ってかぶりつく。

(別にいいじゃない)

 夢を見たって。
 イケメンに囲まれるハーレムだって、獣人とツガイになってかわいい犬を孕むのだって、頭のなかで妄想する分には全部タダだ。誰に迷惑をかけることもない。それに一生独身でいたって――まあ、少子化にはなるけれど、その分せっせと働いて戻ってくることのない税金を納めている。

(私だって超高給取りで超優しくてちょっといじわるで超イケメンが溺愛してくれるなら結婚したい……)

 が、現実にはいない。いたとしても、しがないOLには出会えない。
 アリスは串を皿に置くとジョッキを空にして店を出た。
 もう二十三時を回っている。退勤したのが二十二時。十三時間も働いた身体は、帰宅後に食事を作る体力なんて残していない。駅から歩いて帰るだけで報奨ものだ。

(家でイケメンがご飯作って待っててくれるなら仕事だって頑張れるのに……)

 いや、それならもっと楽な職場に転職する。理想どおりのハイスペックイケメンだったら家政婦を雇って名ばかりの専業主婦を許し、夜の営みにだけ頑張りを求めるはずだ。
 しかしそれを許してくれるのは小説やゲームの世界のなかだけだ。


 二階建ての古びたアパート。アリスは心のなかで「ただいま」を言うとパンプスを脱いで部屋に入った。
 パソコンの起動ボタンを押してからシャワーを浴びる。歯磨きまで終えると、昨日ついに全キャラを攻略した女性向け恋愛ゲームを起動した。
 タイトルとともに表示されるキャラクターたち。

(はあ……イケメン……)

 西洋系ファンタジー恋愛シミュレーション。
 一番攻略が難しかったのはセンターポジションの腹黒の王子ルイで、選択肢をひとつ間違えただけで非情なバッドエンドが表示された。けれどすべての選択肢をメモを取りながら手探りで進んだ結果、溺愛束縛系旦那様になった。

(まあ……束縛が激しすぎて疑似監禁エンドだったけど……)
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