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「いいこだ。さあ、仰向けになろうか」
「はい」
 背中に唇の感触を受けてからくるりと身体を回転させて仰向けになる。恥ずかしい。さっきみたいにお尻を突き出しているのも恥ずかしいけれど、仰向けになると顔も乳首もおちんちんも見られてしまう。
「可愛い。すごく可愛い顔をしているよ」
「やっ……やだ……」
 可愛い顔って一体どんな顔なのだろう。いつもと何が違うのだろう。
「可愛い。早く入りたい」
「んっ、早く……」
 勇気を出して少しだけ足を開いてみると、篠崎の身体がそこに入り込んだ。これでもう足を閉じることはできない。それにまたアナルを見られてしまっている。
「今、二本なら入るようになった。あと一本、増やせるように頑張ろうな」
「はい」
 さっきまで抱えていた篠崎の枕を再度抱え直し、匂いを嗅ぎながら必死に深呼吸を意識する。篠崎は何度も「上手」「いいこ」と言葉を掛けてくれていた。

「……諒」
「はい……」
「そろそろいいか」
「はい、早く……」
 体感では三時間くらい経った気がした。けれど室内はまだ陽の光が差し込んでいるし、篠崎に疲れた様子もない。でも時計は見たくなかった。だって残された時間を意識してしまうから。
 明日は仕事だ。初めての経験の翌日に仕事。そうなると多分篠崎はかなり早い時間から寝かせようとしてくれるだろう。そうすると触れ合っていられる時間は当然短くなる。あと何分、なんて考えながら繋がるのは嫌だった。
「ゆっくりするよ。けれどやはりどうしても痛いと思う」
「いいんです。痛くてもなんでも……」
 勃起できなくても抱いてほしいと思っていたくらいなのだ。気持ち良くなれなくても、痛くても、とにかく篠崎と一つになれればそれでいい。
 ペリ、と音がした。見ていないから分からないけれど、きっとコンドームを着けてくれているのだろう。
 そしてそっと枕が外された。
 篠崎の顔は今まで見た中で一番優しい顔をしていた。さっきまではギラついていたように見えたのに。
「諒、愛してる……」
「僕も……僕も愛してます……」
 その後のキスも優しいキスだった。まるで不安を吸い取るかのようなキス。呼吸を荒げないためなのか深いキスはなくて、啄むようなキスを何度も何度もくれた。
 そして――。
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