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 篠崎は満足げに笑うとローションを手に取り手のひらに出した。そこまで見届けて、もう一度枕を抱える。
「っぁ」
「痛いか?」
「いえ……」
「あぁ、気持ち良かったのか」
 淡々とした口調なのはきっとわざとだ。一晩で人が変わってしまったかのように篠崎が意地悪になった。
「いじわるばっかり……」
 枕に向かって呟けば、篠崎が枕を取り上げた。体温の移った枕がなくなり少し肌寒い。そして何より身体を隠してくれる枕がなくなってしまって心細い。
「すまない」
 あまりすまないと思ってそうにないけれど、抱きしめてくれたので許すことにした。
「……ソフトクリーム買ってくれますか」
「出られるのか」
「だって、嵐山に美味しいソフトクリームがあるって書いてあったんです」
 色気より食い気かと笑われるかと思ったけれど、篠崎は穏やかな笑顔で頬にキスをしてくれた。




「美味しい!」
「そうか、よかった」
 篠崎はソフトクリームよりも人力車が気になったらしい。乗りたいとは言わないけれど、じーっと見つめていた。
「少し待ってください。食べ終わったら乗りましょう」
「いいのか」
「だって、乗りたいんでしょう」
 篠崎は次々走り去って行く人力車を目で追った。
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