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「まずは手で触れ合ってみようか。いきなり口はハードルが高い」
「そうなんですか?」
 そんなこと考えたこともなかった。篠崎と触れ合いたい、できれば気持ち良くなってほしい、それだけだった。
「……ああ。俺も諒くんに触れたい」
 篠崎が覆い被さってのキス。
 キスしながら布団がかけられた。重くない薄手のやつ。篠崎が隣に寝転び暖かい中で二人で抱き合う。
「っは、すき、しのざき」
「諒……」
 お腹が撫でられる。
「ぁ……恥ずかしい……」
「もっと恥ずかしいことも前にしただろう」
「けど……」
 慣れない。恥ずかしい。でも触れ合う肌が気持ちいい。
「ぁ……」
 自分からも、と篠崎の腹に触れてみる。安西にはないものがあった。
「諒?どうした」
「……筋肉好き」
「そうか」
 篠崎はそれほど感情を表に出すタイプではない。けれど今のは嬉しそうだった。
「あの、どうしたらいいですか」
「諒がしたいと思ったことをすればいい」
「僕がしたいと思ったこと……」
 キスしたい、触れたい、触れて欲しい。
 身体を伸ばすようにして、初めて自分から唇にキスをした。
「諒……」
「僕からしたかったから……」
「嬉しいよ……嬉しい。怖くないか」
「はい。もう大丈夫です。本当に全部大丈夫。篠崎が全部大丈夫にしてくれました」
 過去を忘れた訳じゃない。けれどそれを過去だと思えるようにしてくれたから。今安西の身体に触れるのは篠崎の手だ。同級生の手じゃない。そんなこともあったな、程度で済んでしまう。
「諒……」
「あの、触ってもいいですか?」
「もちろん」
 腰を押し付けるようにして身体をぴたりと触れ合わせる。太ももに触れたのは篠崎の固くなったペニスだった。
「ぁ……」
 篠崎は何も言わなかった。きっと前までなら「怖いか」「大丈夫か」「すまない」と言われていたと思う。けれどもう大丈夫と言ったから、篠崎はそれを信じる姿勢を見せてくれているのだ。
 顔を上げるとその顔は心配そうで、やはり言葉を発しなかっただけだと分かる。優しさが嬉しくなって笑ってしまった。
「ふふ」
「諒」
「嬉しくて……好き」
 腰をぐっと突き出すとさらにその固さを感じられた。少し身体の位置をずらして、お互いのそれが触れ合うようにする。やはりまだ自分のは柔らかいままだけれど、それでもよかった。性器が触れ合っている、それだけで。
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