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「これを」
篠崎が携帯を取り出し、何やら操作してこちらに向けた。画面には日本大手の銀行画面。
「……これ」
「日本に来てから作った金だ。言っておくが他国の銀行にもマイナスはない」
言葉が出なかった。確かに忙しそうとは思っていたけれど、これほどの利益を生み出していたとは。
「まぁ、日本で始めた仕事とアメリカで起業した若者投資のはまだそれほど利益は出ていない。これはほとんど株で儲けた金だ」
これなら「家庭に入ってほしい」と簡単に言えてしまうのも納得だった。恐らく株も、使えるお金が多いから動く額も莫大なのだろう。安西には怖くて動かせない額。
「不自由をさせるつもりはない」
「……あの、よくわかりましたので、しまってください……」
画面そのものが現金ではないのだけれど、テレビの中でしか見ることのないような額に怖くなってしまった。
「諒。すぐにじゃなくていい。退職のことも考えてくれ。早く諒を独占したい」
「……わかりました」
仕事をしていないと自分がダメになってしまいそうな気がしていた。そして、ゆうくんのこともあった。けれど安西とて篠崎とずっと一緒にいられるのなら嬉しい。それに貯蓄額を見て、何かあったら自分が養う、という意気込みが消えた気がした。
「諒。嬉しいよ。考えてもらえるだけでも嬉しい」
篠崎の腕の中にすっぽりと納まる。そういえば飲み物はもう温くなってしまっている。
「せっかくプロポーズしてくれた日なのに、暗いことばかり考えてしまってごめんなさい」
「いいんだ。それだけこれからのことを真剣に考えてくれたということだろう」
あぁ、やはり優しい。篠崎はどこまでも優しい。
「……篠崎の匂いじゃない」
恥ずかしくて、話を変えるために言ったつもりだったけれど、言った直後に後悔した。匂いを嗅いだってバレてしまう。でも篠崎の腕の中にいるときはいつでも首筋の匂いを嗅いでしまうのだ。
「あぁ、石鹸が違うからな。でも諒と同じ匂いだよ」
「ン……」
ジュースを溢さないように気を付けながらぎゅうと抱きつく。安心する。でもドキドキもする。
「……篠崎、僕、やっぱり抱いて欲しいです。気持ちよくなりたいんじゃなくて、触れて欲しい」
数瞬の間。
「……本気か」
その声は少しだけ鋭かった。
「はい」
心がふわふわしているな、と思った。気持ちが安定していない。プロポーズに浮かれて、現実を考えて落ち込んで、そして篠崎の腕の中に閉じ込められてドキドキしている。
「触れ合いたいです……」
今はとにかく篠崎の肌を感じたかった。
篠崎が携帯を取り出し、何やら操作してこちらに向けた。画面には日本大手の銀行画面。
「……これ」
「日本に来てから作った金だ。言っておくが他国の銀行にもマイナスはない」
言葉が出なかった。確かに忙しそうとは思っていたけれど、これほどの利益を生み出していたとは。
「まぁ、日本で始めた仕事とアメリカで起業した若者投資のはまだそれほど利益は出ていない。これはほとんど株で儲けた金だ」
これなら「家庭に入ってほしい」と簡単に言えてしまうのも納得だった。恐らく株も、使えるお金が多いから動く額も莫大なのだろう。安西には怖くて動かせない額。
「不自由をさせるつもりはない」
「……あの、よくわかりましたので、しまってください……」
画面そのものが現金ではないのだけれど、テレビの中でしか見ることのないような額に怖くなってしまった。
「諒。すぐにじゃなくていい。退職のことも考えてくれ。早く諒を独占したい」
「……わかりました」
仕事をしていないと自分がダメになってしまいそうな気がしていた。そして、ゆうくんのこともあった。けれど安西とて篠崎とずっと一緒にいられるのなら嬉しい。それに貯蓄額を見て、何かあったら自分が養う、という意気込みが消えた気がした。
「諒。嬉しいよ。考えてもらえるだけでも嬉しい」
篠崎の腕の中にすっぽりと納まる。そういえば飲み物はもう温くなってしまっている。
「せっかくプロポーズしてくれた日なのに、暗いことばかり考えてしまってごめんなさい」
「いいんだ。それだけこれからのことを真剣に考えてくれたということだろう」
あぁ、やはり優しい。篠崎はどこまでも優しい。
「……篠崎の匂いじゃない」
恥ずかしくて、話を変えるために言ったつもりだったけれど、言った直後に後悔した。匂いを嗅いだってバレてしまう。でも篠崎の腕の中にいるときはいつでも首筋の匂いを嗅いでしまうのだ。
「あぁ、石鹸が違うからな。でも諒と同じ匂いだよ」
「ン……」
ジュースを溢さないように気を付けながらぎゅうと抱きつく。安心する。でもドキドキもする。
「……篠崎、僕、やっぱり抱いて欲しいです。気持ちよくなりたいんじゃなくて、触れて欲しい」
数瞬の間。
「……本気か」
その声は少しだけ鋭かった。
「はい」
心がふわふわしているな、と思った。気持ちが安定していない。プロポーズに浮かれて、現実を考えて落ち込んで、そして篠崎の腕の中に閉じ込められてドキドキしている。
「触れ合いたいです……」
今はとにかく篠崎の肌を感じたかった。
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