篠崎×安西(旧カルーアミルク2)(R-18)

gooneone(ごーわんわん)

文字の大きさ
上 下
35 / 75

3-13

しおりを挟む

「あの、篠崎」
「ん?」
 温いはずなのに、裸で篠崎に抱っこされていると思うと体温は高くなりっぱなしだった。それでも優しい空気と綺麗な夜景が嬉しくて、お湯の中にゆったりと座っていた。
「どうして、あそこだったんですか」
「あそこ?」
「えと、その、プロポーズ……」
 プロポーズなんて、された側が使っていい言葉じゃない。だって恥ずかしすぎる。
「……諒が可愛くて」
「え?」
「早く俺のものだと実感したかった」
「……嬉しい」
「ホテルの部屋でも夜景は綺麗だが、室内だと言いたい放題言われそうでな」
 何を想像しているのか、後ろからクツクツと珍しく笑い声が聞こえた。
「言いたい放題って何ですか」
 なんとなく想像はついたけれど、敢えて訊いてみる。
「諒はいろいろなことを気にするだろう。全てに答えることはできるが、二人きりの空間だと諒は頷いてくれない気がしてな」
「……作戦ですか」
「作戦?人聞きが悪いな。けれど近くを誰かが通るかもしれないと思ったらゲイの痴話喧嘩のような会話はしてこないだろうと思って」
「それは作戦って言うと思います……」
 上手く誘導されてしまった。
「それに、雰囲気にも流されてくれるだろうと思ってな」
「……流されてないです」
「そうか?」
 篠崎は尚も小さく笑っている。
「だって、流されて返事なんてできないです。ちゃんと好きだから……」
 雰囲気にのまれてOKを出したと思われているのならそれは心外だった。だってこんなに好きで、大好きで、愛しているからYESと言ったのに。
「あぁ、そうだな。すまなかった」
「ぁっ……」
 お腹に回された腕に力がこめられた。ぐっと距離が近くなる。熱い。
「機嫌を直してくれ。俺が悪かった。諒くんはちゃんと俺のことを愛してくれているな」
 ずるい。そういう言い方。でも答えないわけにはいかない。
「……大好き。……こういうちょっと意地悪なところも好きです」
「そうか。それは良かった」
「否定しないんですか」
「好きな子を虐めたいと思うのは本能だろう」
「……じゃあ僕は?」
「ん?」
「……何でもないです」
(好きな人に虐められて喜んでいる僕は……?)
「諒、上がろうか。逆上せそうだ」
「はい」
 恥ずかしいことを考えてしまったせいで、安西も体感はかなり熱かった。篠崎が先に立ち上がり、それから安西を引き上げてくれる。
「大丈夫か」
「はい……」
 恥ずかしい。お風呂は昨日だって一緒に入ったのに、プロポーズ一つでこんなにも気分が変わってしまうなんて。
「気分が悪くなったりは?」
「大丈夫です」
 優しい。付き合い始めてからだいぶ時間は経った。それでも篠崎が優しいところはずっと変わらない。傲慢になることもない。扱いが雑になることもない。むしろ日に日に過保護になっていっているような気さえする。
「ジュース飲みたいです」
「そうだな。俺も喉が渇いた」
「そういえばお酒飲んだ後ですもんね」
「あぁ、そうだった。緊張していたから忘れていたよ」
「緊張、してたんですか?」
 そんな気はしていたけれど、意地悪されたお返しだ。
「するよ。一世一代のプロポーズだったからな。二度と経験する予定はないからもうやり遂げた感じだが」
 篠崎は恥ずかしがるということはないのだろうか。いつでも堂々としている。羨ましいけれど、自分にはきっと同じようにはなれない。
「録音しておけばよかったな」
「やめてくれ。でも諒が望むなら何度でも言うよ」
「もう返事は分かって安心しているから?」
「そうだ」
 二人で笑った。バスローブを羽織って、窓辺に立って夜景を見ながら飲み物を飲む。安西はリンゴジュースだったけれど、篠崎は炭酸水だ。リンゴジュースも美味しいと勧めたのだけれど、身体が必要としていないからと言っていた。
「……篠崎」
 視線は外に投げたまま言う。思ったよりも深刻な声になってしまった。
「何かな」
 子供に対するような言い方を選んでおきながら、篠崎の声も些か硬い。
「……本当に僕でいいんですか」
「諒がいいんだと言っただろう」
「けれど、僕、勃起できません」
「しばらく忘れる約束だ」
「……抱いてください」
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

上司と俺のSM関係

雫@更新予定なし
BL
タイトルの通りです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...