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「しのざき、篠崎ッ」
「うん。愛してる」
部屋に戻ってすぐに抱き着く。篠崎はちゃんと受け止めてくれて、背中に腕を回してくれた。
「篠崎……好きです。好き」
「嬉しいよ。俺も愛してる」
ぎゅうぎゅうと抱き着いていると、次第に恥ずかしくなってしまった。ばっと離れ、下を向く。
「お風呂!お風呂入ってきます」
「……一人で?」
篠崎は小さく笑った。
「……一緒?」
「まぁ、俺はどちらでも楽しいから構わないが」
(楽しい……?あ!!)
そうだった、この部屋のお風呂はガラス張りなのだ。
「……しのざき、一緒にお風呂……」
だって身体を洗っているところをただ一方的に見られるだけなんてやはり恥ずかしくて無理だ。その点一緒に入っていれば篠崎だって髪や身体を洗ったりするから視線が集中することもないだろう。
「あぁ、じゃあ湯を溜めてくるよ」
篠崎はそう言って風呂に向かった。広い部屋で一人になる。篠崎は室内にいるのだし、すぐに戻ってくる。そう分かっているのだけれど、離れた温もりが寂しい。
「しのざき……」
でも、左手薬指にはまだ慣れないリングが嵌っている。時間が経てばそこにあるのが当たり前になって何も思わなくなるのだろうけれど、今はまだ嬉しい違和感があるのだ。
窓際に寄り、外を眺める。ライトアップされた京都タワー。京都タワーはがっかりする名所だと聞いたことがあるけれど、安西にとっては特別なものになった。大切な思い出がまた一つ増えたのだ。
そう言えば、篠崎はどうして鴨川でのプロポーズを選んだのだろう。篠崎ならもっと違ったところを選びそうなものなのに。
「諒」
「あ、篠崎。ありがとうございます」
「ゆっくり浸かるだろう。少し温めにしたよ」
「はい。ありがとうございます」
こういうところがいいよな、といつも思う。篠崎は仕事も忙しいのに、いつも安西のことを気にかけてくれている。それだけじゃない。生活費のほとんどを篠崎が出してくれていて、いわば大黒柱のようなものなのに決して威張ろうとしない。むしろこうして大切にしてくれるのだ。
「うん。愛してる」
部屋に戻ってすぐに抱き着く。篠崎はちゃんと受け止めてくれて、背中に腕を回してくれた。
「篠崎……好きです。好き」
「嬉しいよ。俺も愛してる」
ぎゅうぎゅうと抱き着いていると、次第に恥ずかしくなってしまった。ばっと離れ、下を向く。
「お風呂!お風呂入ってきます」
「……一人で?」
篠崎は小さく笑った。
「……一緒?」
「まぁ、俺はどちらでも楽しいから構わないが」
(楽しい……?あ!!)
そうだった、この部屋のお風呂はガラス張りなのだ。
「……しのざき、一緒にお風呂……」
だって身体を洗っているところをただ一方的に見られるだけなんてやはり恥ずかしくて無理だ。その点一緒に入っていれば篠崎だって髪や身体を洗ったりするから視線が集中することもないだろう。
「あぁ、じゃあ湯を溜めてくるよ」
篠崎はそう言って風呂に向かった。広い部屋で一人になる。篠崎は室内にいるのだし、すぐに戻ってくる。そう分かっているのだけれど、離れた温もりが寂しい。
「しのざき……」
でも、左手薬指にはまだ慣れないリングが嵌っている。時間が経てばそこにあるのが当たり前になって何も思わなくなるのだろうけれど、今はまだ嬉しい違和感があるのだ。
窓際に寄り、外を眺める。ライトアップされた京都タワー。京都タワーはがっかりする名所だと聞いたことがあるけれど、安西にとっては特別なものになった。大切な思い出がまた一つ増えたのだ。
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