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金曜の夜、出発することになった。土曜の朝に出ると結局着くのは昼で、チェックイン等を考えると実質中一日しかないと思っていたのだ。
「着くのが少し遅くても、あっちで一晩寝るだけでも翌日朝から動けば違うだろう」
篠崎はそう言って新幹線の手配をしてくれた。荷物は先にホテルに送ってしまえばいいと言って、そちらについても諸々取り計らってくれた。忙しいのに全て遣ってくれたのだ。感謝しかない。
だから安西はどうにか残業を回避する、それだけを目標に仕事をこなして会社を出ればよかった。
「お腹が空いただろう」
篠崎に会社まで迎えに来てもらい、着替えだけをしてすぐに家を出た。新幹線に乗って一息つくと篠崎が袋を掲げて見せた。
「買っておいた。好きな方を取ってくれ」
二つの駅弁。駅弁なんて食べたことがない。どちらも美味しそうで、二人で仲良くシェアして食べた。
宿泊先は結局京都駅直結のホテルとなった。夜の移動だったので、新幹線の駅から近い方がいいだろうとなったのだ。部屋は高層階。目の前にはライトアップされた京都タワー。
部屋はとても広いツインだった。篠崎は気を遣ってツインを取ってくれたのだろう。とてもありがたい。けれどやはり、寝るときに使うのは一つなのだけれど。
「うわ、すごい……」
すごいのは部屋から見える夜景だけではなかった。お風呂がガラス張りだったのだ。
「一緒に入ればいいだろう」
「恥ずかしいです……」
最近そういうことをするようになったとは言え、風呂はやはり恥ずかしい。実際には付き合う前から一緒に入ってもらったことはあるものの、それ以降一緒に入ったことはほとんどない。
「ここから見られながら一人で入るのと、一緒に入るのどちらがいい?」
「……一緒……」
一方的に見られるだけなんて恥ずかしくて絶対に無理だった。究極の二択。それなのに篠崎は「いいこだ」と額にキスをくれた。安西が選んだようでいて、選択肢なんてなかったようなものなのに。
「少し飲みに出ましょうか」
空気を変えたかったのだ。だってこのまま部屋にいたらそういう気分になってしまう。でもこの旅行はそもそも安西の意識から勃起を遠ざけるために篠崎が提案してくれたものだ。それを無下にはしたくなかった。それにいやらしい気分になったって、勃起できるとは限らないのだし。
「そうだな。行こうか」
当然安西の思惑に気付かないはずのない篠崎は快く頷いてくれた。
「着くのが少し遅くても、あっちで一晩寝るだけでも翌日朝から動けば違うだろう」
篠崎はそう言って新幹線の手配をしてくれた。荷物は先にホテルに送ってしまえばいいと言って、そちらについても諸々取り計らってくれた。忙しいのに全て遣ってくれたのだ。感謝しかない。
だから安西はどうにか残業を回避する、それだけを目標に仕事をこなして会社を出ればよかった。
「お腹が空いただろう」
篠崎に会社まで迎えに来てもらい、着替えだけをしてすぐに家を出た。新幹線に乗って一息つくと篠崎が袋を掲げて見せた。
「買っておいた。好きな方を取ってくれ」
二つの駅弁。駅弁なんて食べたことがない。どちらも美味しそうで、二人で仲良くシェアして食べた。
宿泊先は結局京都駅直結のホテルとなった。夜の移動だったので、新幹線の駅から近い方がいいだろうとなったのだ。部屋は高層階。目の前にはライトアップされた京都タワー。
部屋はとても広いツインだった。篠崎は気を遣ってツインを取ってくれたのだろう。とてもありがたい。けれどやはり、寝るときに使うのは一つなのだけれど。
「うわ、すごい……」
すごいのは部屋から見える夜景だけではなかった。お風呂がガラス張りだったのだ。
「一緒に入ればいいだろう」
「恥ずかしいです……」
最近そういうことをするようになったとは言え、風呂はやはり恥ずかしい。実際には付き合う前から一緒に入ってもらったことはあるものの、それ以降一緒に入ったことはほとんどない。
「ここから見られながら一人で入るのと、一緒に入るのどちらがいい?」
「……一緒……」
一方的に見られるだけなんて恥ずかしくて絶対に無理だった。究極の二択。それなのに篠崎は「いいこだ」と額にキスをくれた。安西が選んだようでいて、選択肢なんてなかったようなものなのに。
「少し飲みに出ましょうか」
空気を変えたかったのだ。だってこのまま部屋にいたらそういう気分になってしまう。でもこの旅行はそもそも安西の意識から勃起を遠ざけるために篠崎が提案してくれたものだ。それを無下にはしたくなかった。それにいやらしい気分になったって、勃起できるとは限らないのだし。
「そうだな。行こうか」
当然安西の思惑に気付かないはずのない篠崎は快く頷いてくれた。
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