篠崎×安西(旧カルーアミルク2)(R-18)

gooneone(ごーわんわん)

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「諒……」
「ん……」
 ベッドの上、寝転んで抱き合いながらたくさんのキス。感じれば感じるほどぼーっとして大胆になってしまう。
 寝支度を終えた二十二時。お互いしっかりとパジャマは身に纏ったまま、腕の中で唇にキスを受ける。触れて、食まれるキス。唇を唇で擦られる度に息が上がる。
「っは……しのざ……ん……」
 以前「鼻で息をするんだよ」と優しく教えてくれた篠崎は、少しだけ強引なキスをするようになった。強引と言っても息苦しいときは分かって放してくれるし、噛んだりもしない。でも休憩が欲しいと思っても、それはもらえない。
「んっ……ん……」
 舌を入れるようなキスはしない。それはまだ一度も経験がない。でもこうして触れ合うキスは何度もしてもらった。気持ちいい。これだけで、十分にドキドキする。
「……諒」
「はぁ……しのざき……」
 勃起はしなかった。こんなに気持ちがいいのにどうしてしないのだろう。けれど――勃起をしないのは篠崎も一緒だった。その事実は疑いようがない。だって身体はしっかりと密着している。けれど硬いものは、どちらの身体にもなかった。
「……篠崎はしたくならないですか?」
 そう訊くには勇気が必要だった。けれど訊けるようにしてくれたのは篠崎だ。出会ってから今日まで、たくさんの時間と言葉を使って思っていることを口にしていいと教えてくれた。
「ならないと思うのか。そんなことあるわけないだろう。こんなに可愛い諒に触れているのに」
 珍しく饒舌。でも嘘は感じなかった。
 そして今度は額へのキス。
「けど……」
 それならどうして。勃起はできないけれど、こんなにも安西はドキドキしているのに。きっと普通の身体だったら――勃起不全じゃなければ勃起しているのに。
「……ああ、起たないのが気になったのか。すまない、違うよ。諒くんが仕事に行っている間に抜いているから」
「えっ」
 あまりにもさらりと言われたので、驚いてしまった。内容にも、それを言えてしまうところにも。だって、抜くなんて。オナニーをしたことなんて、そんなの普通人に言えないのに。あぁでも篠崎はオカズは安西だと言い切ってくれたし、不安にさせないようにしてくれているのか。
 篠崎は何も気にした様子もなく、今度は頬へのキス。まるでキスをしていないと生きていけない人間になってしまったかのようだ。
「昼に抜いたのに、寝顔でまた抜くこともある」
「ゃ、そんな……」
 恥ずかしい。普通、言う方が恥ずかしいはずなのに。逆の立場だったら安西には決して、口が裂けても言えないような言葉。なのに聞いている安西の方が羞恥を覚えてしまう。
「……えと、」
 何を言ったらいいのだろう。何と返すのが正解なのだろう。言葉に詰まっていると篠崎が続けた。
「言うまでもなく、諒のことを考えながらしている」
 そうだと思っていた。もし本当は違ったとしても、そういうことにしてくれると思っていた。でもやはりそれを直接言葉で聞くと嬉しい。
「嬉しい……」
 嬉しくて嬉しくて、胸元に擦り寄る。
 篠崎に出会うまでは人に性欲の対象として見られることがあんなにも不快だったのに。それなのに、それが篠崎だと思うと嬉しくてたまらない。
 それにこうして言ってくれる篠崎の優しさも嬉しい。言ってくれるのは、すでに嫌悪感がないと伝えているからだ。だから大丈夫だと分かった上で安心できる言葉をくれている。
「諒くんも勃起できたらおちんちんよしよししような」
「っぁ、ゃ、ぁの……」
 脳裏に甦る先日の壮絶な快感。直接勃起を見られ、撫でられて射精をした。すごく気持ちよかった。またしてほしいと思う――思ってしまっている。今だって、本当は。
 けれどやはり回路がおかしい。こんなにドキドキしているのにどうして勃起しないのだろう。
「……僕も勃起したい……」
(勃起したら撫でてもらえるのに……)
 なのにどうして。
 勃起したいなんて思うのは人生で初めてだった。
「うん、頑張って勃起しような」
 篠崎は優しく言ってくれるけれど、どうやったら勃起できるのか知っているのだろうか。
「僕、すごくドキドキしてるのに、なのに勃起できないんです」
 今だってこんなにドキドキしている。あの快感を思い出しているのに。
 篠崎は優しく頭を撫でてくれた。けれどこれはきっと慰めだ。どうにか勃起させようとしてくれている感じではない。
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