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ハロウィン(篠崎×安西)
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ハロウィン
「ほう、もうすぐハロウィンか」
「あ、ほんとだ。可愛いですね」
休日、スーパーからの帰り道。今日は金木犀の香りを探したいと安西が言い、それに篠崎が付き合ってくれたので歩きだった。
その途中の雑貨屋の店先に飾られた小さなお化けたち。
「日本は大人が派手に仮装するんだろう」
「あぁ、テレビでニュースになりますね。コスプレ文化だからなのかな」
「諒はしないのか」
「え、したことありませんよ」
施設にいた頃はあまりイベント事はやらなかった。クリスマスでケーキが出るとか、その程度。あぁでもハロウィンの夕食はかぼちゃのスープが出て、小さな飴玉を一つもらったかもしれない。今思えばあれはきっと「飴をあげるから今日くらいは大人しくしてて」という職員の気持ちが入っていたのかもしれない。
「そうか。コスプレに興味はないのか」
「え……というか、考えたこともありませんでした」
やけに食いつくな、と思ったけれど、そういえば篠崎は海外の出身なのだ。日本のコスプレ文化に興味があるのかもしれない。だって妖怪も大好きだったから。
「篠崎は?コスプレしないんですか」
「したことはない。するのを手伝わされたことはあるが」
「ちなみに何の?」
「河童だ。背中を緑に塗ってやった」
笑うところだろうか。しかし篠崎にふざけた様子はない。
「あの、ちなみにその仮装をしたのって」
「あぁ、妖怪好きの奴だ」
やっぱり、と思った。
「諒もしたらいい」
「何をしてほしいです?」
緑に塗りたくられるのはちょっとやだな、と思う。いやちょっとじゃなくて全力で嫌だ。
「……そう言われると浮かばないな。塗りたくるのはだめだ。綺麗な肌が汚れてしまう」
ちょっとほっとした。
「考えておく」
やる前提なのか、と思ったけれど篠崎が喜ぶのならまぁいいか。
あぁ、でもこういうときの篠崎はちょっと普通じゃないから少し怖い……かも。
ハロウィン当日。
残念ながら今年のハロウィンは平日だった。いつも通り仕事から帰り夕食の支度をしようとキッチンに向かったときだった。
「諒」
「はい?」
「夕食はデリバリーを頼んである」
「あ、そうなんですか」
それなら助かる。仕事の後の夕食作りは苦ではないけれど、人間なのだから楽をできるのは嬉しい。
「それよりこっちだ。来てくれ」
背中を追い、書斎に入った。そこに置かれていた箱。普段はないものだ。
「今日はハロウィンだ。これに着替えてくれ」
「えと、デリバリーは」
「俺が出るよ」
届く時間も分からないけれど、篠崎がそう言うのならいいだろう。篠崎はさっさと書斎から出て行ってしまった。
一人になり、箱に向き直る。それにしても中身は何なのだろうか。箱はただの段ボールで、中身は分からない。箱を開ける。黒のスウェットだった。想定外。まさか腰パンヤンキー仕様か?と思い手で広げると違った。上衣はパーカーで、背中に小さな羽が生えていた。悪魔だ。続いてズボンを取る。こちらも普通のスウェット。けれど小さな尻尾がついていた。羽も尻尾も小さい。まるで子供の悪魔。
(子供の日、か)
きっとデリバリーもピザにポテトにジュースにアイスだろう。篠崎は子供扱いの日にするつもりなのだ。
篠崎は時々子供扱いの日と称して安西をひどく甘やかす。そして安西もそれが嫌じゃなくて、最初こそ羞恥心があったものの、今ではその羞恥心も消え、まるで本物の子供になったかのように甘えてしまっていた。
しかし明日も仕事だ。シャワーもまだだし時間がない。ワイシャツを脱ぎ、着替えを始めた。
「あの、篠崎」
「あぁ、諒くん!とても良く似合ってるよ!」
篠崎はリビングにいた。テーブルの上には大量のお菓子。嬉しい。普段あまりお菓子は買わないけれど、こうして用意してもらうとたくさん食べてしまう。
「今日、諒くんは子供の日だよ」
篠崎が想像通りのことを言った瞬間、チャイムが鳴った。
「あぁ、来たな。よしじゃあ座っていてくれ」
篠崎が玄関に向かったので、そちらは任せて安西は皿やフォークを準備する。ダイニングに入った篠崎が手にしていたものは、やはりこちらも想像通りだった。
「お腹いっぱい」
「そうか。デザートもあるんだが」
「アイス?」
「ケーキとプリンも」
嬉しい。けれどそんなに食べきれない。アイスは日持ちするので先にケーキを食べることにした。
冷蔵庫から出し、箱を開ける。オーソドックスなショートケーキから、ハロウィン仕様のかぼちゃのケーキまであった。やはり今日はハロウィンだろうとそれを取った。
「美味しい!」
「よかった」
ハッピーハロウィン!
「ほう、もうすぐハロウィンか」
「あ、ほんとだ。可愛いですね」
休日、スーパーからの帰り道。今日は金木犀の香りを探したいと安西が言い、それに篠崎が付き合ってくれたので歩きだった。
その途中の雑貨屋の店先に飾られた小さなお化けたち。
「日本は大人が派手に仮装するんだろう」
「あぁ、テレビでニュースになりますね。コスプレ文化だからなのかな」
「諒はしないのか」
「え、したことありませんよ」
施設にいた頃はあまりイベント事はやらなかった。クリスマスでケーキが出るとか、その程度。あぁでもハロウィンの夕食はかぼちゃのスープが出て、小さな飴玉を一つもらったかもしれない。今思えばあれはきっと「飴をあげるから今日くらいは大人しくしてて」という職員の気持ちが入っていたのかもしれない。
「そうか。コスプレに興味はないのか」
「え……というか、考えたこともありませんでした」
やけに食いつくな、と思ったけれど、そういえば篠崎は海外の出身なのだ。日本のコスプレ文化に興味があるのかもしれない。だって妖怪も大好きだったから。
「篠崎は?コスプレしないんですか」
「したことはない。するのを手伝わされたことはあるが」
「ちなみに何の?」
「河童だ。背中を緑に塗ってやった」
笑うところだろうか。しかし篠崎にふざけた様子はない。
「あの、ちなみにその仮装をしたのって」
「あぁ、妖怪好きの奴だ」
やっぱり、と思った。
「諒もしたらいい」
「何をしてほしいです?」
緑に塗りたくられるのはちょっとやだな、と思う。いやちょっとじゃなくて全力で嫌だ。
「……そう言われると浮かばないな。塗りたくるのはだめだ。綺麗な肌が汚れてしまう」
ちょっとほっとした。
「考えておく」
やる前提なのか、と思ったけれど篠崎が喜ぶのならまぁいいか。
あぁ、でもこういうときの篠崎はちょっと普通じゃないから少し怖い……かも。
ハロウィン当日。
残念ながら今年のハロウィンは平日だった。いつも通り仕事から帰り夕食の支度をしようとキッチンに向かったときだった。
「諒」
「はい?」
「夕食はデリバリーを頼んである」
「あ、そうなんですか」
それなら助かる。仕事の後の夕食作りは苦ではないけれど、人間なのだから楽をできるのは嬉しい。
「それよりこっちだ。来てくれ」
背中を追い、書斎に入った。そこに置かれていた箱。普段はないものだ。
「今日はハロウィンだ。これに着替えてくれ」
「えと、デリバリーは」
「俺が出るよ」
届く時間も分からないけれど、篠崎がそう言うのならいいだろう。篠崎はさっさと書斎から出て行ってしまった。
一人になり、箱に向き直る。それにしても中身は何なのだろうか。箱はただの段ボールで、中身は分からない。箱を開ける。黒のスウェットだった。想定外。まさか腰パンヤンキー仕様か?と思い手で広げると違った。上衣はパーカーで、背中に小さな羽が生えていた。悪魔だ。続いてズボンを取る。こちらも普通のスウェット。けれど小さな尻尾がついていた。羽も尻尾も小さい。まるで子供の悪魔。
(子供の日、か)
きっとデリバリーもピザにポテトにジュースにアイスだろう。篠崎は子供扱いの日にするつもりなのだ。
篠崎は時々子供扱いの日と称して安西をひどく甘やかす。そして安西もそれが嫌じゃなくて、最初こそ羞恥心があったものの、今ではその羞恥心も消え、まるで本物の子供になったかのように甘えてしまっていた。
しかし明日も仕事だ。シャワーもまだだし時間がない。ワイシャツを脱ぎ、着替えを始めた。
「あの、篠崎」
「あぁ、諒くん!とても良く似合ってるよ!」
篠崎はリビングにいた。テーブルの上には大量のお菓子。嬉しい。普段あまりお菓子は買わないけれど、こうして用意してもらうとたくさん食べてしまう。
「今日、諒くんは子供の日だよ」
篠崎が想像通りのことを言った瞬間、チャイムが鳴った。
「あぁ、来たな。よしじゃあ座っていてくれ」
篠崎が玄関に向かったので、そちらは任せて安西は皿やフォークを準備する。ダイニングに入った篠崎が手にしていたものは、やはりこちらも想像通りだった。
「お腹いっぱい」
「そうか。デザートもあるんだが」
「アイス?」
「ケーキとプリンも」
嬉しい。けれどそんなに食べきれない。アイスは日持ちするので先にケーキを食べることにした。
冷蔵庫から出し、箱を開ける。オーソドックスなショートケーキから、ハロウィン仕様のかぼちゃのケーキまであった。やはり今日はハロウィンだろうとそれを取った。
「美味しい!」
「よかった」
ハッピーハロウィン!
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