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最終章 笑顔の絶えない世界
アルシアの想い
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「…………マ……オ?」
思い切りひっぱたかれたサタニアの頬は、ほんのり赤く染まっていた。
「…………」
いったい何が起こったのか。サタニアは叩かれた頬を押さえながら、困惑した表情を浮かべる。
「……いい加減にしろよ……サタニア……」
「……マオ……どうして泣いているの?」
ひっぱたかれたサタニアでは無く、ひっぱたいた真緒の方が、瞳に涙を浮かべていた。
「……間違った行動をしているのに……サタニア自身が……それに気が付いていないから……」
「間違った行動?」
サタニアは、涙を流す真緒にどう接して良いのか分からず、途方にくれてしまう。只、真緒の言葉を聞き返す事しか出来ない。
「サタニア、私に言ったよね……“僕もエジタスの事を愛している”って……それなのに……それなのにその愛する人を殺そうとするなんて……そんなの間違っているよ!!」
「だっ、だってエジタスは……エジタスはアルシアを……僕の大切な仲間を……目の前で殺したんだよ!?その仇を取りたいと思うのは、当然じゃないか!!僕は……僕は間違っていない!!」
サタニアは、持っていたティルスレイブを真緒に当たらない様に、その場で薙ぎ払う。凄まじい衝撃波によって、土煙が舞い上がる。
「……サタニアの気持ちは分か……「嘘だ!!」……嘘じゃない!!」
「……私は……この異世界に来る前……お母さんを亡くしている……」
「!!!」
気まずい空気が流れる。激しい剣幕で睨み付けていたサタニアも、真緒の言葉に思わず怯んでしまった。
「……実際に殺された訳じゃない……間接的……って言うのかな……精神的に追い詰められて、自らその命を絶ったんだ……」
「……そう……だったんだ……だけど……だけど、そんなので同情はしない!!僕だって、アルシアを目の前で殺されたんだ!!」
「うん……私も同情して欲しい訳じゃない……サタニアの気持ちが分かる事を証明したかっただけだよ……」
気持ちの証明。それだけの為に、自身のトラウマを掘り返し、他人であるサタニアに打ち明けた。
「……だから……だから何だよ!?同じ様に大切な人を亡くしているから、お互い支え合えるって言うのか!?」
「そうだよ」
「ふざけるな!!僕に支えはいらない!!」
「いる、いらないの問題じゃ無い……今のサタニアには必要な物なんだよ」
「僕は“魔王”だ!!魔王は魔族の頂点にして、最高位の存在!!そんな存在に支えは不必要だ!!」
「……そう言う意味じゃありませんよ……“魔王”様」
「シーラ……ゴルガ……」
すると、二人の会話に割って入る様にシーラとゴルガが側に歩み寄って来た。
「魔王云々の前に今の魔王様……いや、今の“サタニア”様には支えが必要な物なんです」
「オレタチシテンノウハ、マオウサマヲササエルハシラデス。ココロガフアンテイナトキ、ソノミヲカエリミズ、ササエルノデス」
「心が不安定?……僕の心は正常だ!!今もこうして、エジタスを殺してアルシアの仇を取ろうとしている!!」
サタニアは、ティルスレイブの剣先をエジタスに向ける。そんなサタニアに、エジタスは片手を振って返事を返した。
「……アルシアさんが言ったんですか?」
「…………えっ?」
「アルシアさんが、魔王様に仇を取って欲しいと言ったんですか?」
「えっ、いや、そのえっと……それは……」
シーラに言われたサタニアは、必死にアルシアの言葉を思い出す。そこで思い出されるアルシアの最後の言葉は、“ありがとう”だった。
「…………」
「どうなんですか?」
「…………言って……無い……」
「やっぱり……」
「で、でも!!言葉にしていないとしても、アルシアだって殺されて無念の筈だよ!!仇を取って欲しいって、そう願っている筈だよ!!」
「あり得ませんよ……だって、本人がそう言っていましたからね……」
「…………えっ?」
シーラの口から発せられたまさかの言葉に、サタニアは戸惑いの表情を浮かべた。
「以前……言ったんです……アルシアさんが殺られたら、私が必ず仇を取ってやるって……そしたら……」
***
「“仇”?……おほほほほ!!いらないわよそんな物!!」
アルシアは笑いながら、シーラの背中を強く叩いた。突然の背中叩きに、シーラはよろける。
「痛……い、いきなり何するんですかアルシアさん!?」
「そんなくだらない事をするなっていう気持ちを、注入してあげたのよ」
「く、くだらないって何ですか!!私は真剣に……」
「シーラちゃん……あたしはね、スケルトンだから一度死んだ身なのよ……」
するとアルシアは、シーラの顔を見ずに真っ直ぐと正面を見つめ始める。
「存じています。スケルトンという身でありながら、“八大地獄”という強大なスキルを操る……尊敬しております」
「尊敬だなんて……照れ臭いわね……まぁ、とにかく……あたしが言いたいのは、一度死んだ者の仇なんて取っても意味が無いって言う事よ」
「それは……どう言う意味ですか?」
「一度死んだからかしらね……死に対しての恐怖が薄れているのよ……だから誰かに殺されても、別に気にしないわ。その人の方が、あたしよりも強かったって思うだけよ。そう言う訳だから、あたしの仇とか取らなくていいわ」
「だからって……だからって私の気持ちは抑えられません!!」
納得出来ない気持ちから、シーラは俯きながら両手で握り拳を作る。
「…………シーラちゃん」
するとアルシアは、俯いているシーラを優しく抱き締める。
「アルシアさん……」
「別に……憎むなって言っている訳じゃない……只、一度死んだ身であるあたしなんかの為に、行動を起こして欲しく無いだけ……仇とかそう言うのじゃ無く、己の意思で行動して欲しいの……そうじゃ無いと、死んでも死に切れないでしょ……」
気持ちを抑えるのでは無い。自身の仇を目的に動いて欲しく無いだけ、誰かの為では無く、自分自身の為に動いて欲しい。アルシアの言葉は、非常に耳に残る言葉であった。
「まぁ、あたし……もう死んでいるんだけどね!!」
「…………あ……あはははは」
「おほほほほほ!!!」
「あははははは!!!」
二人の笑い声が、周囲に響き渡る。しかし、その笑い声を聞いた者は誰もいなかった。
***
「……アルシアがそんな事を……」
あまりの事実に、サタニアは両膝を折り曲げてその場に座り込んだ。
「あの時のアルシアさんの言葉は……今でも忘れられません……」
アルシアとの会話を話したシーラは、過去を懐かしむ様に空を見上げていた。
「今の話を踏まえて聞きます……魔王様……魔王様は、エジタスを殺してアルシアの仇を取りたいですか?」
「…………」
サタニアはしばらくの間考え込むと、ゆっくりと顔を上げた。
「…………取りたい」
その言葉に、真緒達は目を瞑り眉間にシワを寄せて、残念という表情を浮かべる。
「でも…………殺したいとまでは、思っていない……」
「「「「「「!!!」」」」」」
真緒達の表情に笑顔が宿る。この瞬間、サタニアは誰かの為にでは無く、自分自身の為に行動を起こせる様になった。
「サタニア…………」
「マオ……ごめん……僕……」
すると真緒は、座っているサタニアに向けて片手を差し出した。
「マオ……ありがとう」
そう言いながらサタニアは、真緒が差し出した片手に掴まって、ゆっくりと立ち上がった。
「自分を取り戻せたね」
「うん……心配掛けちゃってごめん……」
「気にしなくていいよ。私は信じていたから、サタニアなら必ず自分を取り戻してくれるって……」
「僕、エジタスを止めたい。殺すんじゃ無く、止めて考えを改めさせたい……それが、僕のしたい事だ」
「微力ながら、私も手伝うよ!!」
掴んだサタニアの片手を、両手で強く握り締める。真緒の両手の温もりが、片手から伝わって来る。
「当然、私達も手伝わせて頂きますよ」
「マオウサマノネガイハ、オレタチノネガイデモアル」
「まぁ、元より俺達もそのつもりだったからな。手伝わせて貰うぜ」
「魔王一人に、良い格好はさせません」
「オラ達も、エジタスざんを止めだいど思っでいるだぁ」
真緒に続いてシーラ、ゴルガ、フォルス、リーマ、ハナコの五人も両手でサタニアの片手を握り締めた。
「皆……ありがとう……」
そう言うとサタニアは、残った片手で握り締めている皆の両手を握り締めた。
「絶対……エジタスを止めよう!!」
「「「「「「おぉ!!!」」」」」」
サタニアの掛け声と共に、一同は握っていた両手を離した。エジタスを止めたい。その想いが一つになった瞬間である。
「ふぅー、取り敢えず問題が一つ片付いて良かっ……マオ!!後ろだ!!」
「「「「「!!?」」」」」
問題が一つ片付き、喜びに浸っていたその時、フォルスがふと横を見ると、いつの間にか真緒の背後にエジタスが立っていた。鋭く尖らせた右腕を構え、今にも突き刺そうとしていた。
「(嫌だ嫌だ……こう言う説教染みた話は大嫌いなんだよ……言葉だけじゃ、世界は笑顔にならない……良くも悪くも行動を起こさなければ……何も始まらないんだよ!!)」
完全に不意を突かれた。真緒が振り向く前に、エジタスは鋭く尖らせた右腕を真緒の背中目掛けて突き出した。
「(大切な人を二人殺されても尚、殺したくないと思えるかな!!)」
真緒の背中に、鋭く尖らせた右腕が突き刺さる。そう思われたが、突き刺さる事は無かった。
「…………は?」
何故なら、エジタスの右腕は突き刺さる前に切り落とされてしまったからだ。
「間に合って良かった」
気が付くと、真緒とエジタスの間に割って入る様にサタニアが、ティルスレイブでエジタスの右腕を切り落としていた。
「あ……ああ!!お、俺の……俺の腕がぁあああああ!!!」
エジタスは慌てて、切り落とされた右腕を左手で拾い上げ、跳躍でその場から離れた。
「くそっ!!くそっ!!ふざけやがって!!」
エジタスは文句を垂れながら、切り落とされた右腕をくっ付けた。ちゃんと動くかどうか、五本の指を開いたり閉じたりして確認した。
「エジタスの事は殺したくない……止めたいと思っている……でも、その止め方に関しては僕の自由だよね。両手両足を切り落としてでも、君を止めて見せるからね」
「…………狂人が……」
思い切りひっぱたかれたサタニアの頬は、ほんのり赤く染まっていた。
「…………」
いったい何が起こったのか。サタニアは叩かれた頬を押さえながら、困惑した表情を浮かべる。
「……いい加減にしろよ……サタニア……」
「……マオ……どうして泣いているの?」
ひっぱたかれたサタニアでは無く、ひっぱたいた真緒の方が、瞳に涙を浮かべていた。
「……間違った行動をしているのに……サタニア自身が……それに気が付いていないから……」
「間違った行動?」
サタニアは、涙を流す真緒にどう接して良いのか分からず、途方にくれてしまう。只、真緒の言葉を聞き返す事しか出来ない。
「サタニア、私に言ったよね……“僕もエジタスの事を愛している”って……それなのに……それなのにその愛する人を殺そうとするなんて……そんなの間違っているよ!!」
「だっ、だってエジタスは……エジタスはアルシアを……僕の大切な仲間を……目の前で殺したんだよ!?その仇を取りたいと思うのは、当然じゃないか!!僕は……僕は間違っていない!!」
サタニアは、持っていたティルスレイブを真緒に当たらない様に、その場で薙ぎ払う。凄まじい衝撃波によって、土煙が舞い上がる。
「……サタニアの気持ちは分か……「嘘だ!!」……嘘じゃない!!」
「……私は……この異世界に来る前……お母さんを亡くしている……」
「!!!」
気まずい空気が流れる。激しい剣幕で睨み付けていたサタニアも、真緒の言葉に思わず怯んでしまった。
「……実際に殺された訳じゃない……間接的……って言うのかな……精神的に追い詰められて、自らその命を絶ったんだ……」
「……そう……だったんだ……だけど……だけど、そんなので同情はしない!!僕だって、アルシアを目の前で殺されたんだ!!」
「うん……私も同情して欲しい訳じゃない……サタニアの気持ちが分かる事を証明したかっただけだよ……」
気持ちの証明。それだけの為に、自身のトラウマを掘り返し、他人であるサタニアに打ち明けた。
「……だから……だから何だよ!?同じ様に大切な人を亡くしているから、お互い支え合えるって言うのか!?」
「そうだよ」
「ふざけるな!!僕に支えはいらない!!」
「いる、いらないの問題じゃ無い……今のサタニアには必要な物なんだよ」
「僕は“魔王”だ!!魔王は魔族の頂点にして、最高位の存在!!そんな存在に支えは不必要だ!!」
「……そう言う意味じゃありませんよ……“魔王”様」
「シーラ……ゴルガ……」
すると、二人の会話に割って入る様にシーラとゴルガが側に歩み寄って来た。
「魔王云々の前に今の魔王様……いや、今の“サタニア”様には支えが必要な物なんです」
「オレタチシテンノウハ、マオウサマヲササエルハシラデス。ココロガフアンテイナトキ、ソノミヲカエリミズ、ササエルノデス」
「心が不安定?……僕の心は正常だ!!今もこうして、エジタスを殺してアルシアの仇を取ろうとしている!!」
サタニアは、ティルスレイブの剣先をエジタスに向ける。そんなサタニアに、エジタスは片手を振って返事を返した。
「……アルシアさんが言ったんですか?」
「…………えっ?」
「アルシアさんが、魔王様に仇を取って欲しいと言ったんですか?」
「えっ、いや、そのえっと……それは……」
シーラに言われたサタニアは、必死にアルシアの言葉を思い出す。そこで思い出されるアルシアの最後の言葉は、“ありがとう”だった。
「…………」
「どうなんですか?」
「…………言って……無い……」
「やっぱり……」
「で、でも!!言葉にしていないとしても、アルシアだって殺されて無念の筈だよ!!仇を取って欲しいって、そう願っている筈だよ!!」
「あり得ませんよ……だって、本人がそう言っていましたからね……」
「…………えっ?」
シーラの口から発せられたまさかの言葉に、サタニアは戸惑いの表情を浮かべた。
「以前……言ったんです……アルシアさんが殺られたら、私が必ず仇を取ってやるって……そしたら……」
***
「“仇”?……おほほほほ!!いらないわよそんな物!!」
アルシアは笑いながら、シーラの背中を強く叩いた。突然の背中叩きに、シーラはよろける。
「痛……い、いきなり何するんですかアルシアさん!?」
「そんなくだらない事をするなっていう気持ちを、注入してあげたのよ」
「く、くだらないって何ですか!!私は真剣に……」
「シーラちゃん……あたしはね、スケルトンだから一度死んだ身なのよ……」
するとアルシアは、シーラの顔を見ずに真っ直ぐと正面を見つめ始める。
「存じています。スケルトンという身でありながら、“八大地獄”という強大なスキルを操る……尊敬しております」
「尊敬だなんて……照れ臭いわね……まぁ、とにかく……あたしが言いたいのは、一度死んだ者の仇なんて取っても意味が無いって言う事よ」
「それは……どう言う意味ですか?」
「一度死んだからかしらね……死に対しての恐怖が薄れているのよ……だから誰かに殺されても、別に気にしないわ。その人の方が、あたしよりも強かったって思うだけよ。そう言う訳だから、あたしの仇とか取らなくていいわ」
「だからって……だからって私の気持ちは抑えられません!!」
納得出来ない気持ちから、シーラは俯きながら両手で握り拳を作る。
「…………シーラちゃん」
するとアルシアは、俯いているシーラを優しく抱き締める。
「アルシアさん……」
「別に……憎むなって言っている訳じゃない……只、一度死んだ身であるあたしなんかの為に、行動を起こして欲しく無いだけ……仇とかそう言うのじゃ無く、己の意思で行動して欲しいの……そうじゃ無いと、死んでも死に切れないでしょ……」
気持ちを抑えるのでは無い。自身の仇を目的に動いて欲しく無いだけ、誰かの為では無く、自分自身の為に動いて欲しい。アルシアの言葉は、非常に耳に残る言葉であった。
「まぁ、あたし……もう死んでいるんだけどね!!」
「…………あ……あはははは」
「おほほほほほ!!!」
「あははははは!!!」
二人の笑い声が、周囲に響き渡る。しかし、その笑い声を聞いた者は誰もいなかった。
***
「……アルシアがそんな事を……」
あまりの事実に、サタニアは両膝を折り曲げてその場に座り込んだ。
「あの時のアルシアさんの言葉は……今でも忘れられません……」
アルシアとの会話を話したシーラは、過去を懐かしむ様に空を見上げていた。
「今の話を踏まえて聞きます……魔王様……魔王様は、エジタスを殺してアルシアの仇を取りたいですか?」
「…………」
サタニアはしばらくの間考え込むと、ゆっくりと顔を上げた。
「…………取りたい」
その言葉に、真緒達は目を瞑り眉間にシワを寄せて、残念という表情を浮かべる。
「でも…………殺したいとまでは、思っていない……」
「「「「「「!!!」」」」」」
真緒達の表情に笑顔が宿る。この瞬間、サタニアは誰かの為にでは無く、自分自身の為に行動を起こせる様になった。
「サタニア…………」
「マオ……ごめん……僕……」
すると真緒は、座っているサタニアに向けて片手を差し出した。
「マオ……ありがとう」
そう言いながらサタニアは、真緒が差し出した片手に掴まって、ゆっくりと立ち上がった。
「自分を取り戻せたね」
「うん……心配掛けちゃってごめん……」
「気にしなくていいよ。私は信じていたから、サタニアなら必ず自分を取り戻してくれるって……」
「僕、エジタスを止めたい。殺すんじゃ無く、止めて考えを改めさせたい……それが、僕のしたい事だ」
「微力ながら、私も手伝うよ!!」
掴んだサタニアの片手を、両手で強く握り締める。真緒の両手の温もりが、片手から伝わって来る。
「当然、私達も手伝わせて頂きますよ」
「マオウサマノネガイハ、オレタチノネガイデモアル」
「まぁ、元より俺達もそのつもりだったからな。手伝わせて貰うぜ」
「魔王一人に、良い格好はさせません」
「オラ達も、エジタスざんを止めだいど思っでいるだぁ」
真緒に続いてシーラ、ゴルガ、フォルス、リーマ、ハナコの五人も両手でサタニアの片手を握り締めた。
「皆……ありがとう……」
そう言うとサタニアは、残った片手で握り締めている皆の両手を握り締めた。
「絶対……エジタスを止めよう!!」
「「「「「「おぉ!!!」」」」」」
サタニアの掛け声と共に、一同は握っていた両手を離した。エジタスを止めたい。その想いが一つになった瞬間である。
「ふぅー、取り敢えず問題が一つ片付いて良かっ……マオ!!後ろだ!!」
「「「「「!!?」」」」」
問題が一つ片付き、喜びに浸っていたその時、フォルスがふと横を見ると、いつの間にか真緒の背後にエジタスが立っていた。鋭く尖らせた右腕を構え、今にも突き刺そうとしていた。
「(嫌だ嫌だ……こう言う説教染みた話は大嫌いなんだよ……言葉だけじゃ、世界は笑顔にならない……良くも悪くも行動を起こさなければ……何も始まらないんだよ!!)」
完全に不意を突かれた。真緒が振り向く前に、エジタスは鋭く尖らせた右腕を真緒の背中目掛けて突き出した。
「(大切な人を二人殺されても尚、殺したくないと思えるかな!!)」
真緒の背中に、鋭く尖らせた右腕が突き刺さる。そう思われたが、突き刺さる事は無かった。
「…………は?」
何故なら、エジタスの右腕は突き刺さる前に切り落とされてしまったからだ。
「間に合って良かった」
気が付くと、真緒とエジタスの間に割って入る様にサタニアが、ティルスレイブでエジタスの右腕を切り落としていた。
「あ……ああ!!お、俺の……俺の腕がぁあああああ!!!」
エジタスは慌てて、切り落とされた右腕を左手で拾い上げ、跳躍でその場から離れた。
「くそっ!!くそっ!!ふざけやがって!!」
エジタスは文句を垂れながら、切り落とされた右腕をくっ付けた。ちゃんと動くかどうか、五本の指を開いたり閉じたりして確認した。
「エジタスの事は殺したくない……止めたいと思っている……でも、その止め方に関しては僕の自由だよね。両手両足を切り落としてでも、君を止めて見せるからね」
「…………狂人が……」
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