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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト

成長

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 「本当に行かれてしまうのですか?」



 真緒達は現在、“アンダータウン”に繋がる洞窟の入口にいた。見送りとしてスゥー、ケイ、それとケイがスゥーの家政婦として勤める為に連れて来たイウの三人がいた。



 「はい、色々とお世話になりました」



 「何を言うのですか!?お礼を言うのはこちらです!」



 助けた筈の真緒がお礼を述べた事に、驚いてしまうスゥー達。



 「いえ、私も今回の出来事のお陰で自分自身を見つめ直す事が出来ました。そう言う意味でも、感謝しているんです」



 「マオさん…………」



 「でも、本当に行くのか?“ピースマーシュ”にはあの四天王の一人、ヴァルベルトがいるんだぞ……」



 真緒達の身を心配し、止めに入るケイ。



 「危険は承知です。例え四天王がいるのだとしても、私達は進まなければ行けません」



 「…………そうか、ならばもう何も言う事は無い。お前達の武運を祈る」



 「ケイさん、ありがとうございます」



 こんなにも自分を心配してくれるケイに、感謝する真緒。



 「もぉー、お兄ちゃんは心配性だな。この人達なら大丈夫だよ!」



 「お前なー、どうしてそんな事が言えるんだよ?相手はあの四天王だぞ、命がいくつあっても足りない……」



 「そんな怯えた姿勢だから、暗い考えしか思い付かないんだよ。物事はもっと明るく楽しく考えないとね!」



 「はぁー、お前って奴は……」



 ケイは、楽観的な考えのイウに頭を悩ませる。



 「イウさん、これから町の人達と一緒に頑張って下さいね」



 「当たり前よ!!私はお兄ちゃんと違って、相手の事も考えて行動するからね」



 「お前はいつも一言余計だ!」



 自慢気に語るイウの頭を、コツンと軽く叩いた。



 「痛い!そうやってすぐ手が出る癖、直した方が良いよ!!」



 「ふん、お前の余計な一言には言われたく無い」



 「何ですって!?」



 「はいはい、お二人供そこまでですよ」



 一触即発の雰囲気だった二人を、止めに入るスゥー。



 「それでは行かれる前に、こちらをお受け取り下さい」



 「これって…………!!」



 スゥーが懐から取り出して、真緒達に手渡したのは一枚の紙切れだった。勿論、只の紙切れでは無い。



 「約束の“アーメイデの魔導書”の引きちぎられたページです」



 「ほ、本当に良いんですか!?」



 「はい、元々そういう約束でこの町を救って下さったのですから」



 「そ、それじゃあ……遠慮無く……」



 真緒は、隣にいたリーマに引きちぎられたページを手渡した。



 「…………!!」



 「ま、眩しい……!」



 リーマが引きちぎられたページを受け取った瞬間、持っていた魔導書が光輝き、引きちぎられたページと重なり合いやがて光が収まると、魔導書は前よりも分厚く変わっていた。



 「……や、やりました!!やりましたよ皆さん!!」



 「それで、今回はどんな魔法が追加されたの?」



 「あ、ええっとですね……」



 リーマは魔導書に新たに追加されたページを黙読していく。



 「…………風属性魔法ですね!」



 「ねぇねぇ、ちょっと試して見ようよ!」



 「それではこちらで試されてはどうでしょうか?」



 そう言うとスゥーは右手を軽く挙げると、幾つもの氷が集まり一度戦った事のある氷像を作り出した。



 「こ、これはあの時苦戦した氷像……」



 「強さはあの時と全く同じにしております」



 「リーマ……」



 「リーマ、無理して試す事無いんだぞ。これから先試す機会はいくらでも……「いえ!」……」



 「やらせて下さい……」



 リーマの一言にその場の全員が沈黙する。静寂が場を支配し、緊張が流れる。



 「……“ウィンドカッター”!!」



 リーマの魔導書から、目に見えないむすうの風の刃が生み出され、氷像目掛けて飛んで行った。そして、氷像の頭、体、手、足とそれぞれの部分が切り落とされた。



 「す、凄いよリーマ!!」



 「私、やりました!氷像を倒す事が出来ました!!」



 意図も簡単に倒す事に成功し、あまりの嬉しさに思わず抱き合う真緒とリーマ。



 「いや~、これで戦力は大幅アップですね~」



 「風属性魔法だと、私の息でも凍らせる事は出来ませんね」



 「凄いな……」



 「本当だなぁ……」



 その光景に素直に驚く者もいれば、その光景に焦りを感じる者もいた。



 「もう今までの役立たずの私ではありません。これからは、前衛でガンガン活躍して見せますからね!」



 「そ、そうか……」



 「ぞれは楽じみだなぁ……」



 純粋な笑みを浮かべるリーマに、苦笑いをする二人。



 「そう言えば、これまでの活躍で皆さんのLvも上がったんじゃないでしょうか~?」



 「本当ですか!?」



 「い、今すぐ調べてくれ!!」



 「エジタスざん、お願いだぁ!!」



 エジタスの何気ない一言が三人に火を付けた。特に、フォルスとハナコは切羽詰まった表情をしていた。



 「慌てないで下さい。順番に調べて行きますからね……スキル“鑑定”」







 サトウ マオ Lv15

種族 人間

年齢 17

性別 女

職業 目覚めし勇者



HP 950/950

MP 730/730



STR 495

DEX 420

VIT 365

AGI 635

INT 530

MND 535

LUK 900



スキル

鑑定 ロストブレイク 過去への断罪 フィーリングストライク



魔法

“New”光魔法 



称号

過去を克服せし者 お人好し







 リーマ Lv20

種族 人間

年齢 15

性別 女

職業 魔法使い



HP 250/250

MP 400/400



STR 20

DEX 160

VIT 90

AGI 105

INT 300

MND 190

LUK 100



スキル

なし



魔法

音魔法 改変魔法



称号

なし



所持品

アーメイデの魔導書







 ハナコ Lv21

種族 熊人

年齢 16

性別 女

職業 武闘家



HP 185/185

MP 50/50



STR 205

DEX 150

VIT 185

AGI 120

INT 40

MND 100

LUK 90



スキル

熊の一撃 



魔法

なし



称号

破壊者 大食い







 フォルス Lv30

種族 鳥人

年齢 35

性別 男

職業 アーチャー



HP 220/220

MP 160/160



STR 65

DEX 260

VIT 100

AGI 130

INT 80

MND 140

LUK 120



スキル

ロックオン 急所感知



魔法

風属性魔法



称号

なし







 「うわぁ!私こんなにも成長していたんだ!?」



 「やっぱりマオさんは、勇者ですから私達とは桁が違いますね!」



 「いやー、そういうリーマだって魔法のレパートリーが豊富だよ!」



 「いえいえ、私なんかまだまだですよー!」



 「…………」



 「…………」



 真緒とリーマが喜び合っている中、フォルスとハナコが思い詰めた表情を浮かべるが、二人は気が付く事は無かった。



 「それでは私達はそろそろ行きます」



 「皆様のご活躍、心から応援しております」



 「またいつでも遊びに来てくれ!」



 「私達はここでずっと暮らしているからね!!」



 「はい、必ずまた会いに行きます!それまで、お元気で!!」



 こうして真緒達は、スゥー達に別れを告げて四天王の一人、ヴァルベルトが待つという安らぎの沼“ピースマーシュ”へと足を運ぶのであった。



 「…………」



 「…………」



 だがこの時、真緒は気付くべきであった。仲間達の小さな綻びに…………。
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