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第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

十五年の再会

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 「ハナちゃん!!リーマ!!」



 真緒達は、ヘルマウンテンから脱出した後、鳥人の里に着陸した。無事、地面に足が着いた事を確認すると真緒は、ハナコとリーマの側に駆け寄る。



 「マオぢゃん!」



 「マオさん!」



 二人も同様に地面に足が着いた事を確認すると、真緒の側に駆け寄る。



 「二人供、無事で本当に良かった!!」



 「マオさんも怪我が無いみたいで、安心しました!」



 「皆、助がっで良がっだだぁ!」



 駆け寄った三人は苦しくて息が出来なくなる程、肩を寄せ合い強く抱き締め合った。



 「お~い、皆さ~ん!!」



 すると遠くの方から、見慣れた人物が走って来た。誰であろう“奴”である。



 「あ、師匠!もぉー、何処行っていたんですか!?心配したんですよ!!」



 「いや~、すみませんね~。気がついたら鳥人の方に持ち上げられていて、伝えるに伝えられなかったのですよ」



 「(あの男…………そう言えば、あの男は誰が運んだんだ?)」



 ビントは走って来たエジタスを見て、誰が運んで来たのか疑問に思った。



 「(…………まぁ、誰かがやってくれたんだろうな)」



 しかしビントは深くは考えず、他の鳥人がやってくれたのだろうと、結論付けた。



 「おいビント、皆は…………里の皆は何処だ?」



 フォルスは辺りを見渡すが、里の者どころか人の気配すら無かった。



 「それに、どうしてお前ら飛べるんだよ!?上昇気流は止まったままなのに…………」



 質問が止まらない。聞きたい事が湯水の如く溢れ出る。そんなフォルスにビントとククは、ニヤリと笑みを見せる。



 「まあまあ、落ち着けよフォルス。忘れたのか、俺達鳥人の呼び名を?」



 「あたし達は…………“空の支配者”だよ!」



 そう言うとククは空を指差した。それが合図だったのか、上空に次々と鳥人達が姿を表した。



 「こ、これは…………」



 「どうだ、驚いたか!」



 上空を飛んでいる顔は、フォルスの見知った顔ばかりであった。近所の小鳥だった子達に、宿屋のおばさん、巨体持ちのペング、族長までもが優雅に空を飛んでいた。そして、その中でも最も目を引いた鳥人がいた。



 「お、お婆ちゃん…………」



 そう、フォルスの祖母であるトハだ。少し、平衡感覚が定まらないのかフラフラになりがらも、しっかりと飛んでいた。



 「おーい、こっちだ!!」



 「フォルスはここにいるぞー!」



 ビントとククの二人は、里の皆に手を振ってフォルスの居場所を伝えると、トハを先頭にその場所目掛けて着陸した。



 「お婆ちゃん…………」



 「十五年…………随分見ない間に老けたね」



 懐かしい声。十五年振りに聞く祖母の優しい声が心に響いてくる。



 「俺……俺…………!」



 「何も言わなくていい。只一言、家に帰ったら何て言うんだい?」



 「…………ただいま!」



 「はい、お帰りフォルスちゃん!」



 この時遂にフォルスは、十五年振りに故郷へと戻る事が出来たのであった。



 「話したい事が沢山あるんだ!!」



 「はいはい、取り敢えず一番広い族長の家で話そうか。構わないだろ、族長さん?」



 「勿論ですとも、トハさんの言う事は絶対ですから」



 族長は、中腰になりながら頭をペコペコさせ、トハの頼みを受け入れた。



 「じゃあ、早く行こう!早く早く!!」



 「そんなに急がなくても、時間はたっぷりあるからね」



 フォルスは、トハの腕を引っ張りながら、族長の家へと向かった。



 「…………何かフォルスさん、性格変わっていなかった…………?」



 いつものクールなフォルスとは違い明るく元気な姿に、呆気に取られていた真緒。



 「甘えたいんだと思いますよ……」



 「えっ?」



 「十五年間も一人で過ごしていて、私達の中でも最年長だったフォルスさんは、誰にも甘える事は出来なかったと思います。だからせめてこの故郷、肉親であるトハさんに我が儘を言いたいんだと思います」



 「オラもそう思うだぁ」



 「…………そっか……そうだよね。誰だって誰かに甘えたい気持ちはある筈だもんね…………」



 真緒は亡くなってしまった母親の事、ハナコは殺されてしまった母親の事、リーマは亡くなってしまった師匠の事を思い浮かべていた。



 「おーい、マオ。何してるんだ、置いてくぞ!」



 「はーい。じゃあ、行こっか」



 「「はい!」」



 フォルスに呼ばれて、真緒達も追い掛ける様に族長の家に向かった。只一人、エジタスを除いて…………。



 「…………お婆ちゃん……か」



 エジタスは見上げて呟くが、その呟きはいつもより何処か寂しそうに聞こえた。







***







 「そうか…………そんな事が……」



 現在、真緒達は族長の家で上昇気流が止まった原因と、ヘルマウンテンの真実について話していた。



 「これはもっと、ヘルマウンテンとそのドラゴンについて詳しく知らなくてはならないな」



 「そうだな…………」



 トハと族長は今後の里の状況に関して、考え始めた。



 「その前に聞かせてくれ、どうして里の皆が上昇気流無しで飛べているんだ?」



 「ああそれかい、何も驚く程の事じゃないさ。元々わし達鳥人は、上昇気流など無くても飛べる一族だ」



 フォルスのずっと気になっていた疑問をトハが答えると、続けて族長が説明して来た。



 「当時の飛び方を呼び覚ます為に、トハさん自ら、若者達を鍛え上げて頂いたのだ」



 「いやー、もう大変だったよ。失敗する度に尻をひっぱたかれるから、痛いの何のって…………」



 「鳥なのに猿の様に、尻が真っ赤になってしまったよ」



 そう言う若者達の尻の殆どが真っ赤に腫れ上がっていた。



 「ほほ、お主達はまだまだ未熟者という事だ」



 笑い飛ばす族長だが、その尻は真っ赤に腫れ上がっており、痛みで椅子に座れず空気椅子で耐えているのをトハだけが知っている。



 「その結果、里の全員が飛べる様になった訳さ」



 「もしかして、自分にしか出来ない事って…………!」



 真緒はトハと最後に会った時に言っていた言葉を思い出していた。



 「里で起こった事件なんだ。里の者が何もしなかったら、示しが付かないだろ?」



 「トハさん、お陰で助かりました。ありがとうございました!」



 トハが行動を起こしてくれたお陰で、生き埋めにならずに済んだ。その事に感謝を送る真緒。



 「さて、フォルス…………」



 「はい…………」



 急に真面目な雰囲気になった族長が、フォルスへ静かに話し掛ける。



 「お主を、飛べない事が理由でこの里から追放したな…………」



 「その通りです」



 「だが今現在お主は、空を飛べる様になったそうではないか?」



 族長がちらりと横に目をやると、ビントがフォルスに指でピースサインを送っていた。



 「よって、追放は無かった事とし、今をもってフォルスが成人した事を認める!」



 「ありがとうございます!!」



 成人の儀から十五年。今日この日、ようやくフォルスは大人の仲間入りを果たしたのであった。
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