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第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

脱出

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 「フォルスざんが…………空を飛んでるだぁ……」



 「何て言うんでしょうか……上手く言い表す事が出来ませんが、凄くかっこいいです!」



 ハナコとリーマの二人は、飛んでいるフォルスに見とれていた。



 「…………過去のトラウマを克服し、飛べる様になりましたか……まぁ、出来損ないの小鳥にしては良くやった方ですかね~」



 空を飛んでいるフォルスを見ながら、エジタスは他の人達に聞こえない様に呟いた。



 「よし、着陸するぞ」



 「はい!」



 落ちた穴から脱出したフォルス達は、ある程度空中を飛行すると、三人が待つ地上へと降り立った。



 「皆!!」



 「マオぢゃん!!」



 「マオさん、怪我はありませんか?」



 「うん、フォルスさんが守ってくれたから大丈夫だよ」



 ハナコとリーマが真緒に駆け寄り、体のあちこちを触って怪我が無いか確かめた。



 「それにしてもフォルスさん、ついに飛べる様になったんですね!」



 「オラ、ビッグリじぢまっだよぉ!」



 「ああ、全てマオのお陰だ。マオが勇気付けてくれたから、過去の自分と向き合う事が出来たんだ」



 ハナコとリーマは、フォルスが飛べる様になった事に驚いていると、フォルスは真緒のお陰だと説明した。



 「そんな、私は只もっと自分を大切にして欲しいと思っただけですよ」



 「その思いやりが俺を、空へと飛ばせる切っ掛けとなったんだ。マオ、お前は確かに仲間一人を救った、誇っていいぞ」



 「フォルスさん…………」



 謙遜をする真緒に、フォルスはもっと自分に自信を持てと言った。その時だった……。



 「グルルル…………」



 「何この声?」



 真緒達の耳に何処からか、うなり声が聞こえてきた。声のする方向を見るとそこには…………。



 「あ、ドラゴンの事忘れてた!!」



 ドラゴンは牙を剥き出しにしながら、低いうなり声を上げていた。



 「でも、どうしますか?ドラゴンが退いてくれないと、里に上昇気流が戻りませんよ」



 「そうは言っても、子育ての邪魔なんて出来ないよ」



 真緒達がドラゴンを退かすか、そのままにしておくかで悩んでいると、フォルスが口を開いた。



 「俺が里の皆に事情を説明しよう」



 「えっ、フォルスさんいいんですか!?」



 「ああ、元々は俺達の里がヘルマウンテンについて、知らなすぎたのが原因だからな。里の者がけじめをつけるべきだろう」



 「でも、本当にいいんですか?フォルスさんは里に戻るのは約十五年ぶりですよね…………」



 真緒は十五年も戻っていない故郷に、戻れるかどうか心配していた。いくら空を飛べる様になったとは言え、自らの意思で出て行った手前とても気まずい。



 「そうだ、だがそうやっていつまでも後悔し続ける訳には行かない。俺も覚悟を決めたのさ」



 「フォルスさん……ありがとうございます!!」



 フォルスは心の何処かで飛べない事を良いことに、里に戻るのを躊躇っていた。しかし、飛べる様になった今フォルスの中で里に戻る決心がついたのであった。



 「安心して下さい。もう、あなたの子育てを邪魔するつもりはありません」



 「グルルル!!!」



 真緒がドラゴンの気持ちを落ち着かせようとするが、うなり声を止める気配は無い。それどころか、先程よりも強くなる始末である。



 「うーん、中々落ち着いてはくれないみたいですね」



 「ぞりゃぞうだよなぁ。勘違いとは言え、自分の子供を殺ざれがげだんだぁ。怒りが収まらないのは当然だよぉ……」



 「…………何か変じゃありませんか?」



 どうにかしてドラゴンの怒りを静める為に、頭を捻っていた真緒達だったが、ここでリーマがある事に気がついた。



 「さっきからあのドラゴン、私達の方を見ていません!」



 「「「えっ!?」」」



 リーマの言葉に耳を疑った三人は、ドラゴンの方に目をやると、ドラゴンの目線は確かに真緒達には向けられておらず、代わりに真緒達が開けた天井に威嚇していた。



 「ま、まさか…………」



 真緒達が見上げると、天井のひびが広がっていた。亀裂が亀裂を生み出す、亀裂の連鎖が起こっている状況であった。



 「皆、出口へ走れ!!」



 フォルスの言葉と同時に、天井が崩れ落ち始めた。そして運の悪い事に、崩れ落ちて来る天井は真っ先に出入り口を塞いでしまった。



 「で、出口が!!閉じ込められちゃた!!」



 「このままだと生き埋めになるぞ!どうするんだ!?」



 「そうだ!!師匠の転移を使えば、一瞬で出られる筈です!…………あれ、し、師匠何処ですか!?」



 真緒が辺りを見渡すも、エジタスの姿は何処にも見当たらなかった。それもその筈、エジタスは既に外にいたのだ。出入り口が塞がれたのを見ると、即座に指を鳴らして一人だけ脱出していた。



 「…………マオさん、正直今回のあなたは無様を通り越して、滑稽でしたよ。私が理想とするマオさんなら、この窮地を切り抜けられる筈です。それが出来ないのであれば、それまでの事…………さて、あなたはどうしますか“勇者”さん…………」



 エジタスは外にいる為、中にいる真緒達に聞こえる事は無かった。



 「どうするんだ!?エジタスさんがいないと俺達は脱出出来ないぞ!!」



 「うーんと、うーんと…………」



 「方法ならありますよ…………」



 真緒が頭を悩ませていると、リーマが静かに口を開き、最初に真緒達が開けた天井の穴を指差した。



 「あそこから、微量ですが光が漏れています。おそらく外に通じている筈です」



 「でも、あんな高い所にあるんだよ!?それこそ、フォルスさんの様に飛べる人がいないと…………まさか……」



 真緒は恐ろしい考えが頭に浮かんだ。だがそれは、真緒が決して望まぬ考えであった。



 「はい…………マオさんの虚空が使えない今、飛べるのはフォルスさんだけ…………フォルスさん、マオさんを連れて脱出して下さい」



 「二人は、二人はどうするつもりなの!!?」



 「マオぢゃん…………オラ達はマオぢゃんが生き残っでぐれれば、ぞれで良いんだ」



 「すみませんマオさん…………私達の旅はここまでの様です」



 聞きたくなかった。二人からそんな言葉は聞きたくなかった。やるせない思いから真緒の頬を涙が零れ落ちる。



 「嫌だよ…………」



 「マオぢゃん…………」



 「マオさん…………」



 「嫌だよ、嫌だよ!!どうして簡単に諦めるの!!皆と離れたくない!ようやく、笑い合える仲間と会えたのに……こんなに早くお別れなんかしたくないよ!!」



 真緒は涙をボロボロ流しながら、ハナコとリーマを説得しようとする。その間にも次々と天井は崩れ落ちて来る。



 「…………皆と離れる位なら私も一緒に死ぬ!!」



 「「「!!!」」」



 突然の一緒に死ぬ宣言にハナコ、リーマ、フォルスの三人に衝撃が走る。



 「な、何言っでるだぁ!!考え直じでぐれマオぢゃん!!」



 「そうですよ!!フォルスさん、お願いします!!」



 「…………分かった」



 フォルスは飛び上がると、真緒の肩を鉤爪で掴み持ち上げようとする。



 「離してください!!フォルスさん、離してください!!皆と一緒に死ぬんです!!」



 「暴れないでくれマオ!これもあの二人が望んだ事なんだ!お前だけでも、生き残るんだ!!」



 真緒が逃れようと必死になって暴れるが、フォルスの掴む力が強く、中々逃れられなかった。



 「マオぢゃん……一緒に旅出来で楽じがっだよぉ…………」



 「私達はあの世でマオさん達を見守っていますよ…………」



 「嫌だーーー!!!」



 崩れ落ちた天井が、ハナコ達を押し潰そうとしたその時、二つの影が二人を拐った。



 「え…………?」



 「二人は何処だ!?」



 「全く…………お前はいつも勝手に決めようとする……なぁ、フォルス!」



 声のする方向を見ると、そこにいたのはハナコとリーマ、それぞれを持ち上げて飛んでいる。ビント、ククの二人だった。



 「お、お前ら……何で!!」



 「話したいのは山々だが、今は脱出するのに専念しろ!」



 「後でたっぷり聞かせて貰うからな!!」



 「は、はい……」



 ククの恐ろしい気迫に押されながら、三人の鳥人は、天井の穴から脱出するのであった。
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