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第二章 勇者
修行再開
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カルド王国の宿屋『馬の小屋』では事件が起こっていた。いつものように仕事をしていると、仮面をつけた不審な男が女の子を抱き抱えながら入ってきた。しかも男は一部屋でシングルベットを頼んだではないか。
宿屋の女将は流石に怪しく思い、どうして女の子を抱き抱えているのか聞いた。男はこれまでの経緯を話す、チンピラ二人に絡まれた事やそのチンピラが男の事を馬鹿にして女の子が怒り、疲れてそのまま寝てしまったため、ここまで運んできた事を……。
事情が分かればこちらも対応しやすい。女将は急いで部屋の準備に取り掛かり、鍵を男に手渡す。男は鍵を受けとるとお礼を述べてそのまま部屋へと向かった。女将は女の子の容態を心配し、料理を作ってあげようと厨房へ姿を消した。
***
「う、うーん」
気がつくとそこは知らない天井だった。いつの間にかベットに横になっており、何故こんなところにいるのか思い出そうとする。
「(……そうだ、確かあの三人と出会って、師匠が馬鹿にされたからそれに怒ったら私…………)」
「おや、目が覚めたようですね」
エジタスはずっと真緒の側にいた。
「師匠……私……」
「無理して喋らなくてもいいですよ」
「…………」
エジタスの言葉に甘えて喋らないように黙るが、やはり喋らないと気がすまない。
「私は本当に駄目な奴です」
「…………」
「過去を克服できたのにちょっと馬鹿にされたぐらいで怒って、終いには気絶しちゃって師匠に迷惑を掛けてしまうし、まだまだ子供だ。ってことですかね」
「マオさん……」
真緒の話を最後まで聞くとエジタスはゆっくりと口を開いた。
「あなたは私のために怒ってくれた。私が馬鹿にされてあなたはまるで、自分の事みたいにあの二人に怒鳴ってくれました」
「それは、師匠の事を何も知らないのに好き勝手に言うもんだから、つい……」
「それですよ、マオさん」
「え?」
「人間は基本、自己的主義者です。自分の事を最優先にして他人の事は後回しにしています。ですがマオさん、あなたは私の事を思って怒ってくれました。誰かのために泣き、誰かのために怒り、誰かのために笑う。そういう他人を思いやる心が大人になるために必要なことです。それが出来るマオさんはもう十分立派な大人ですよ」
「し、師匠…………」
涙が溢れだす。鼻水も垂れ、顔はぐちゃぐちゃになるが、これは嬉しさから来るものだ。真緒はエジタスに抱きつく。
「……ジジョヴー!!」
「おわ!マオさん離れてください。鼻水が服に付いちゃいますよ」
「うう、ししょう……師匠」
鼻声になりながらエジタスの服に顔を擦り付ける。
「はぁ~、誰かに見られたら大変ですね~」
その時、部屋の扉が開く。
「失礼します、具合の方はどうですか?実は料理を作って……きた……のですが…………」
「ああ~女将さん。これは違うんですよ」
スゥーと静かに扉が閉められた。
「女将さん!?話を聞いてください!女将さん、女将さーん!!」
女将さんの誤解を解くのには数時間を要した。
「これからは気をつけてください。いいですね!」
「はい、すみません」
女将さんは誤解だと分かると、真緒が食べた料理の皿を回収した。
「美味しかったです。わざわざ作ってくださりありがとうございます」
「それはよかった。これからお腹が空いた時は言ってね、腕によりをかけて料理してあげる」
「はい!よろしくお願いします」
「それじゃあ私はこれで失礼するわ。」
そう言うと女将さんは部屋から出ていった。エジタスと真緒の間に沈黙が流れる。沈黙を破って真緒がエジタスに謝罪する。
「……師匠、本当にごめんなさい」
「いえいえ、女将さんの誤解も解けたので別に気にしていませんよ。それよりも今日はもう遅いですから、明日修行を再開しましょう」
「はい、おやすみなさい師匠」
「おやすみなさい。いい夢を……」
***
「師匠、おはようございます!」
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
カルド王国の草原。再びここでエジタスと真緒は修行を開始する。
「はい、バッチリです」
「それは良かった。さて今回はマオさんが勇者として目覚めた為、スキルや魔法が使えるようになっているので、その確認も兼ねて修行しましょう」
「よろしくお願いします!」
「うむ。それではまずスキルについてですが、マオさんは見たところ三つのスキルがあるようですね」
「何でそんなことまで分かるんですか?」
「それはスキル“鑑定”のおかげです。これは、調べたい対象の物を選択すると詳しい情報が分かります。マオさんも持っているので実際にやってみましょう。調べたい物を見ながら知りたいと強く念じて、言ってみてください」
「はい!……スキル“鑑定”」
真緒はエジタスのステータスを鑑定した。
エジタス Lv1
種族 ???
年齢 ???
性別 男
職業 道化師
HP 1/1
MP 1/1
STR 1
DEX 1
VIT 1
AGI 1
INT 1
MND 1
LUK 1
スキル
鑑定 一触即発 偽装 ???
魔法
空間魔法
称号
道楽の道化師
「し、師匠……。この鑑定壊れていますよ…………」
「え、どうしてそう思うんですか?」
「だって、師匠のステータスが…………」
「ああ~成る程。私の事を鑑定したのですか。それは私が“偽装”というスキルを持っているからですよ」
「偽装?」
「偽装は自身のステータスや情報などを偽ることの出来るものです。オール1なのはそのためです」
「なんだ、そうだったんですか…………。ビックリしましたよ」
「ですが、その様子なら鑑定は大丈夫そうですね。次のスキルに移りましょう」
驚いたりはしたが軽蔑とかは全くなく、ただ純粋に意外だなと感じていた真緒。
「次は“ロストブレイク”です」
「これはどんな技なんですか?」
「それを知るためにもまず、そのロストブレイクを鑑定してみてください」
「分かりました。……スキル“鑑定”」
スキル ロストブレイク
太古の人達が考案したが誰にも使われることのなかった失われし一撃を放つ技。しかし、その強大な力のため自身の身を滅ぼす。
「これってつまり…………」
「発動する条件として自分の体力を削るということですね。とりあえず試しに使ってみましょう。あそこにある木に向かって使ってみてください」
その言葉を聞いた真緒はグラム・ソラスを引き抜いて木に向ける。
「はい…………スキル“ロストブレイク”」
真緒はスキルを放った。すると木の真ん中にくっきりとした穴が空いていた。
「うっ……」
突如胸に痛みが走る。いったい何が起こったのかと真緒は自分を鑑定するとHP 750/800 と減っていた。
「50も減ってしまいましたか。確かに強力ではありますがあまり多用するのは控えた方がいいでしょう」
「分かりました!」
「では三つ目のスキルの方もお願いします」
「はい!…………スキル“鑑定”」
スキル 過去への断罪
過去での過ちを悔い改めさせる技。心の闇が深ければ深いほどダメージ量が増える。逆に心に闇を抱えていない人には効果がない。
「これはまた使いどころが難しいですね」
「相手の心に闇があるかどうか、分からないですもんね」
「う~ん……ならその技は使わないようにするといいかもしれませんね」
「そうですか?」
「スキルにも当たりハズレがありますから気にしないようにしましょう。それにレベルが上がればスキルも覚えていくので心配要りませんよ」
「そういうことでしたら、大丈夫です」
真緒は使わないことに渋っていたが、新しくスキルを手に入れられると知ってからは素直に受け入れた。
「ではスキルはこの辺にして、次はいよいよ魔法について修行していきましょう」
宿屋の女将は流石に怪しく思い、どうして女の子を抱き抱えているのか聞いた。男はこれまでの経緯を話す、チンピラ二人に絡まれた事やそのチンピラが男の事を馬鹿にして女の子が怒り、疲れてそのまま寝てしまったため、ここまで運んできた事を……。
事情が分かればこちらも対応しやすい。女将は急いで部屋の準備に取り掛かり、鍵を男に手渡す。男は鍵を受けとるとお礼を述べてそのまま部屋へと向かった。女将は女の子の容態を心配し、料理を作ってあげようと厨房へ姿を消した。
***
「う、うーん」
気がつくとそこは知らない天井だった。いつの間にかベットに横になっており、何故こんなところにいるのか思い出そうとする。
「(……そうだ、確かあの三人と出会って、師匠が馬鹿にされたからそれに怒ったら私…………)」
「おや、目が覚めたようですね」
エジタスはずっと真緒の側にいた。
「師匠……私……」
「無理して喋らなくてもいいですよ」
「…………」
エジタスの言葉に甘えて喋らないように黙るが、やはり喋らないと気がすまない。
「私は本当に駄目な奴です」
「…………」
「過去を克服できたのにちょっと馬鹿にされたぐらいで怒って、終いには気絶しちゃって師匠に迷惑を掛けてしまうし、まだまだ子供だ。ってことですかね」
「マオさん……」
真緒の話を最後まで聞くとエジタスはゆっくりと口を開いた。
「あなたは私のために怒ってくれた。私が馬鹿にされてあなたはまるで、自分の事みたいにあの二人に怒鳴ってくれました」
「それは、師匠の事を何も知らないのに好き勝手に言うもんだから、つい……」
「それですよ、マオさん」
「え?」
「人間は基本、自己的主義者です。自分の事を最優先にして他人の事は後回しにしています。ですがマオさん、あなたは私の事を思って怒ってくれました。誰かのために泣き、誰かのために怒り、誰かのために笑う。そういう他人を思いやる心が大人になるために必要なことです。それが出来るマオさんはもう十分立派な大人ですよ」
「し、師匠…………」
涙が溢れだす。鼻水も垂れ、顔はぐちゃぐちゃになるが、これは嬉しさから来るものだ。真緒はエジタスに抱きつく。
「……ジジョヴー!!」
「おわ!マオさん離れてください。鼻水が服に付いちゃいますよ」
「うう、ししょう……師匠」
鼻声になりながらエジタスの服に顔を擦り付ける。
「はぁ~、誰かに見られたら大変ですね~」
その時、部屋の扉が開く。
「失礼します、具合の方はどうですか?実は料理を作って……きた……のですが…………」
「ああ~女将さん。これは違うんですよ」
スゥーと静かに扉が閉められた。
「女将さん!?話を聞いてください!女将さん、女将さーん!!」
女将さんの誤解を解くのには数時間を要した。
「これからは気をつけてください。いいですね!」
「はい、すみません」
女将さんは誤解だと分かると、真緒が食べた料理の皿を回収した。
「美味しかったです。わざわざ作ってくださりありがとうございます」
「それはよかった。これからお腹が空いた時は言ってね、腕によりをかけて料理してあげる」
「はい!よろしくお願いします」
「それじゃあ私はこれで失礼するわ。」
そう言うと女将さんは部屋から出ていった。エジタスと真緒の間に沈黙が流れる。沈黙を破って真緒がエジタスに謝罪する。
「……師匠、本当にごめんなさい」
「いえいえ、女将さんの誤解も解けたので別に気にしていませんよ。それよりも今日はもう遅いですから、明日修行を再開しましょう」
「はい、おやすみなさい師匠」
「おやすみなさい。いい夢を……」
***
「師匠、おはようございます!」
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
カルド王国の草原。再びここでエジタスと真緒は修行を開始する。
「はい、バッチリです」
「それは良かった。さて今回はマオさんが勇者として目覚めた為、スキルや魔法が使えるようになっているので、その確認も兼ねて修行しましょう」
「よろしくお願いします!」
「うむ。それではまずスキルについてですが、マオさんは見たところ三つのスキルがあるようですね」
「何でそんなことまで分かるんですか?」
「それはスキル“鑑定”のおかげです。これは、調べたい対象の物を選択すると詳しい情報が分かります。マオさんも持っているので実際にやってみましょう。調べたい物を見ながら知りたいと強く念じて、言ってみてください」
「はい!……スキル“鑑定”」
真緒はエジタスのステータスを鑑定した。
エジタス Lv1
種族 ???
年齢 ???
性別 男
職業 道化師
HP 1/1
MP 1/1
STR 1
DEX 1
VIT 1
AGI 1
INT 1
MND 1
LUK 1
スキル
鑑定 一触即発 偽装 ???
魔法
空間魔法
称号
道楽の道化師
「し、師匠……。この鑑定壊れていますよ…………」
「え、どうしてそう思うんですか?」
「だって、師匠のステータスが…………」
「ああ~成る程。私の事を鑑定したのですか。それは私が“偽装”というスキルを持っているからですよ」
「偽装?」
「偽装は自身のステータスや情報などを偽ることの出来るものです。オール1なのはそのためです」
「なんだ、そうだったんですか…………。ビックリしましたよ」
「ですが、その様子なら鑑定は大丈夫そうですね。次のスキルに移りましょう」
驚いたりはしたが軽蔑とかは全くなく、ただ純粋に意外だなと感じていた真緒。
「次は“ロストブレイク”です」
「これはどんな技なんですか?」
「それを知るためにもまず、そのロストブレイクを鑑定してみてください」
「分かりました。……スキル“鑑定”」
スキル ロストブレイク
太古の人達が考案したが誰にも使われることのなかった失われし一撃を放つ技。しかし、その強大な力のため自身の身を滅ぼす。
「これってつまり…………」
「発動する条件として自分の体力を削るということですね。とりあえず試しに使ってみましょう。あそこにある木に向かって使ってみてください」
その言葉を聞いた真緒はグラム・ソラスを引き抜いて木に向ける。
「はい…………スキル“ロストブレイク”」
真緒はスキルを放った。すると木の真ん中にくっきりとした穴が空いていた。
「うっ……」
突如胸に痛みが走る。いったい何が起こったのかと真緒は自分を鑑定するとHP 750/800 と減っていた。
「50も減ってしまいましたか。確かに強力ではありますがあまり多用するのは控えた方がいいでしょう」
「分かりました!」
「では三つ目のスキルの方もお願いします」
「はい!…………スキル“鑑定”」
スキル 過去への断罪
過去での過ちを悔い改めさせる技。心の闇が深ければ深いほどダメージ量が増える。逆に心に闇を抱えていない人には効果がない。
「これはまた使いどころが難しいですね」
「相手の心に闇があるかどうか、分からないですもんね」
「う~ん……ならその技は使わないようにするといいかもしれませんね」
「そうですか?」
「スキルにも当たりハズレがありますから気にしないようにしましょう。それにレベルが上がればスキルも覚えていくので心配要りませんよ」
「そういうことでしたら、大丈夫です」
真緒は使わないことに渋っていたが、新しくスキルを手に入れられると知ってからは素直に受け入れた。
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