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第7章 準備
1 クァーリア夫人の考え
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後日…ケイシロンでは、クァーリアが招かれていた。
その場にいたのは…、ローエン、ローカス、ルリーラ、マギーだ。
「その通りですわ、ローエン閣下…。
私の予想も、ほぼオルフィリア公爵夫人と同じです」
「そうか…」
代表で話したローエンは…やはり顔に深い皺を刻んだ。
「……水面下でそんなことが進行していたなんて…、全く気付かなかった…」
ローカスが落ち込んでいたが、
「致し方ありません。ゾフィーナ夫人の力が、それだけすごいと言う事です。
逆に…いくら情報収集能力に長けているからとはいえ、あそこまで予想できるオルフィリア公爵夫人
の方が、特別に凄いと言っていい…。
ギリアム公爵閣下と同じように…ね」
クァーリアは非常にすました顔で、お茶を口にしていた。
「カティラの件で、相手にしたのが…オルフィリア公爵夫人で良かったですね、ローエン閣下…」
「やはり、そうか」
「もちろんです。
オルフィリア公爵夫人がおっしゃっていたこともそうですが、オルフィリア公爵夫人をいきなり
尋ねて行った件…そして、無礼講と言われて、その通りにした件…。
相手がゾフィーナ夫人であったら、悪手もいい所です」
「ど、どうしてですか?(マギー)」
「まず…ギリアム公爵閣下がおっしゃった通り、密室というのは、第三者の目が無いのです。
だから…オルフィリア公爵夫人が、何かしらの無体をローエン閣下にされた…という言葉が、
通ってしまう可能性があります。
裁判を実際やるか否かはさておき、社交界では…間違いなく話題の種になるでしょう。
どう転ぶにせよ、ケイシロンにとってプラスには働きません」
「昔も今も…本当に社交界は恐ろしいわ…」
ルリーラがため息をつきつつ、ティーカップに手を添える。
「そうね…、そしてこれからも変らないわ。
だから…ひとまず収穫祭の…どのパーティーに出るか、対策を立てましょう。
ルリーラ夫人は王都に復帰して初めての公式行事だし、マーガレット夫人は初のお披露目。
どちらにせよ、手は抜けないわ」
「わしとローカスは警備があるゆえ…、基本出れんが…」
「まあ、近衛騎士団員であれば、それは多いですから、問題はありませんよ。
まず…最初のファンファーレパーティーは必須でしょうね…後は中間のものにいくつ出るか…」
「あ…あの…」
マギーがかなり、不安そうな顔をしながら、口を開いた。
「今回は…初めての公式的なパーティーなので…最後のフィナーレパーティーだけ出るということ
では…」
「それは得策ではありません、マーガレット夫人」
クァーリアはきっぱりと言い切った。
「商会をやっていたり、体調不良などの理由がない限り…そうした場合は、必ず噂のネタになって
しまいますし、揶揄もされます」
「いえ…商会をやっていたとしても、そもそも貴族の仕事にあらず…などと言われることは、
覚悟した方がいい…」
商会はそもそも…昔の考えを持っている人間には、それだけで揶揄される元になる。
「で、でも、フィリーは…」
「それも直す様に、言いましたよね?」
クァーリアの口調は、かなり強くなった。
「公式の場で…上位の夫人を愛称で呼んでいいのは、夫だけです。
それ一つとっても、アナタに学が無いと思われるし、オルフィリア公爵夫人への侮辱にも
なります!!
まして今…関係性がかなり微妙なのですから、それだけでさらに、関係が悪化してもおかしくない
ですよ?」
「も、申し訳ありません…」
かなり…しゅんとなるマギー。
クァーリアは深いため息をつき、
「そもそもオルフィリア公爵夫人は…商会を優先することで出る悪評は、すべて覚悟の上…と
いうより、悪評を利用するのが、とてもうまいのです。
だから…悪評が出たなら、それで人を見極め、対処するべきところと、放っておいてもいい所を
的確に判断する。
そうできるなら、私は何も言いません。
しかし…悪評が出ることもわからない、利用するどころか、対処も出来かねる…というなら、
顔を出した方がいい。
特にあなたの立場なら…、向こうから挨拶に来る方が多いでしょうから、出来るだけ話をして
親交を深めた方が良いです」
「あくまで焦らずに…じっくりとやっていくことを、お勧めします…。
くれぐれも、オルフィリア公爵夫人の真似はしないように」
クァーリアはその部分を、特に念押しした。
「まあ…あの王女殿下に詫びを入れさせるなど…、並大抵ではできまいよ」
ローエンが、感心したようにため息をつく。
「もちろんそれもありますが…、他の全てにおいても、規格外なんです…。
そしてその考え方も、通常のご令嬢やご夫人とは全く違う」
「ど、どんなところが?(ルリーラ)」
「私は…オルフィリア公爵夫人は、ゾフィーナ夫人の考えを、見抜くと思っていました。
ですが、そうであってもやはり押し付けたことに、変わりはありません。
だから…その後すぐに、私はオルフィリア公爵夫人の元に、お詫びに行ったのですがね…」
ゾフィーナ夫人来襲後のファルメニウス公爵家での対談
-----------------------------------------------------------------------------------------
「オルフィリア公爵夫人でしたら…ゾフィーナ夫人の意図が読めると思いましたので…。
ケイシロンで何とか止めたかったのですがね…、ローエン閣下がいない今では…」
「そうだと思いました…だから、謝らないでください。
クァーリア夫人はとても良い判断を、したと思いますよ」
にこやかに笑うフィリーに、少し安堵するクァーリア。
「私も今回ばかりは負けを覚悟しましたが…、ツァリオ閣下が出てくださって、事なきを
えましたし」
「しかし…それが無かったらと思うと…」
クァーリアだからこそ…ツァリオが現れたのは、本当に奇跡と言っていい幸運だったと
わかるのだろう。
表情が…だいぶ暗い。
「それならそれで何とかしますよ。私は…タダで負ける気はありませんでしたし。
ああ、いい機会ですので、これは言っておきますが…」
フィリーはティーカップを置き、
「私は…自ら望んで、ファルメニウス公爵夫人になりました。
今回ゾフィーナ夫人が標的にしたのは…、アナタとケイシロン…どちらも武に属する家です。
まして薬があるのはファルメニウス公爵家…ゆえに…」
フィリーは胸に手を置き、
「私には…ファルメニウス公爵夫人として、ゾフィーナ夫人を迎え撃つ…義務が生じます。
私はそれに忠実に従っただけです。
そしてそれに…アナタと私の実年齢は、何の関係もありません」
再度にっこりと笑った…。
「……そう言っていただけると、私も安堵いたしました…」
そう言ってエマの入れてくれたお茶を、一口飲むと、
「せっかくですので、一度…お聞きしたかった事、お聞きしてもよろしいですか?」
「何でしょう?」
「例の…クレア嬢のお茶会…、単純に予定がピッタリだったから…と、王立騎士団でおっしゃった
そうですが…違いますでしょう?」
クァーリアは少し伏目がちに、
「全て…計算ずくだったのでしょう?
敵しか集まらぬ場所に…ギリアム公爵閣下を伴い…赴いて…全てを薙ぎ払うために」
するとフィリーは…少し含み笑いを浮かべ、
「……私は…ギリアムに見初められたことで、身分の高い方を…かなりの数敵に回しました
からねぇ…。
通常のやり方では、潰される…と、判断いたしました」
「私は…元来できれば静かに暮らしたいし、平和に生きていきたいですし、優しい人間でいたい。
でも…」
フィリーの笑いが…黒ずむ。
「自分の権利を、不当に侵害してくる者たちに…優しくできるほど、出来た人間ではありませんし、
なりたくもない!!」
ここまで言ったフィリーは、お茶を一口。
「まあでも…私はクレア嬢にもお茶会に来たご令嬢にも…もちろん王女殿下にも、とても感謝して
いるんですよ」
「だってそうでしょう?私はあの時…吹けば飛ぶような、しがない男爵令嬢だった」
「その私を…完全に潰す気で来ましたからねぇ…、身分のとてもお高い方々が…」
唇の端を持ち上げた、フィリーは、
「それを完膚なきまでに、粉砕してこそ…私の実力を、存分に他者に示せるじゃないですか…。
その舞台を…わざわざ作ってくださったんですからね…、相手が好きか嫌いかは別として…、
それだけは大変感謝しておりますよぉ」
「このオルフィリアの、お茶会デビュー戦…。
物凄い錦を飾る手伝いを…してくださったんですから…ふふふ」
眼をつぶったまま…不敵に笑うフィリー。
だが…その姿は…。
決して不快には映らないから、不思議だ…とクァーリアは思うのだった。
--------------------------------------------------------------------------------------------
回想終り。
「わかりますか?オルフィリア公爵夫人は、自ら一番敵の多い所に行き、見事にその場を支配し、
敵を倒すと同時に、高い評価を得たのです。
ただこれは…大抵の人間は出来ません。
だから、地道に少しずつ…やっていくしかありません」
「あ…あの…」
ここで何かを決意したような…、確認したいような顔をしたマギーが、
「オ、オルフィリア公爵夫人の私兵に対して…、王立騎士団の方々は、不満は無いのですか?
心配ではないのですか?」
すると…クァーリアは、やっぱり暗い顔にため息をつき、
「心配や不満がないワケではないですよ。
でも…彼らを恩赦して私兵にする…というのは、オルフィリア公爵夫人のまがう事なき意思。
そうである以上…、彼らが何か不始末をしない限り、見守るしかないのです。
ましてオルフィリア公爵夫人は、彼らと王立騎士団が、出来るだけ和解できるよう、尽力して
らっしゃいます。
あの方は…下に対してだからと言って、押しつけを行う事はほぼしない。
だから王立騎士団員も…注意深く様子を見つつ、彼らを知る努力をしているようですよ」
「そ…そんな…」
マギーは…絶望の色を顔に濃く張り付けている。
それを見たクァーリアは、やっぱり頭痛そうな顔を隠さず、
「その状態では…、フィナーレパーティーではオルフィリア公爵夫人に接触するのは、控えた
ほうが良いですね…」
「え…?」
「オルフィリア公爵夫人は、ケイシロンに私兵を伴って来たのですよね…。
その意味があなたに、わかっていますか?」
「か、顔見せのため…って…」
「それは、建前ですよ」
「……ルリーラとマギーの反応を見るためじゃろ?
今後の距離を測るために…な」
さすがにローエンはわかっていたようだ。
その場にいたのは…、ローエン、ローカス、ルリーラ、マギーだ。
「その通りですわ、ローエン閣下…。
私の予想も、ほぼオルフィリア公爵夫人と同じです」
「そうか…」
代表で話したローエンは…やはり顔に深い皺を刻んだ。
「……水面下でそんなことが進行していたなんて…、全く気付かなかった…」
ローカスが落ち込んでいたが、
「致し方ありません。ゾフィーナ夫人の力が、それだけすごいと言う事です。
逆に…いくら情報収集能力に長けているからとはいえ、あそこまで予想できるオルフィリア公爵夫人
の方が、特別に凄いと言っていい…。
ギリアム公爵閣下と同じように…ね」
クァーリアは非常にすました顔で、お茶を口にしていた。
「カティラの件で、相手にしたのが…オルフィリア公爵夫人で良かったですね、ローエン閣下…」
「やはり、そうか」
「もちろんです。
オルフィリア公爵夫人がおっしゃっていたこともそうですが、オルフィリア公爵夫人をいきなり
尋ねて行った件…そして、無礼講と言われて、その通りにした件…。
相手がゾフィーナ夫人であったら、悪手もいい所です」
「ど、どうしてですか?(マギー)」
「まず…ギリアム公爵閣下がおっしゃった通り、密室というのは、第三者の目が無いのです。
だから…オルフィリア公爵夫人が、何かしらの無体をローエン閣下にされた…という言葉が、
通ってしまう可能性があります。
裁判を実際やるか否かはさておき、社交界では…間違いなく話題の種になるでしょう。
どう転ぶにせよ、ケイシロンにとってプラスには働きません」
「昔も今も…本当に社交界は恐ろしいわ…」
ルリーラがため息をつきつつ、ティーカップに手を添える。
「そうね…、そしてこれからも変らないわ。
だから…ひとまず収穫祭の…どのパーティーに出るか、対策を立てましょう。
ルリーラ夫人は王都に復帰して初めての公式行事だし、マーガレット夫人は初のお披露目。
どちらにせよ、手は抜けないわ」
「わしとローカスは警備があるゆえ…、基本出れんが…」
「まあ、近衛騎士団員であれば、それは多いですから、問題はありませんよ。
まず…最初のファンファーレパーティーは必須でしょうね…後は中間のものにいくつ出るか…」
「あ…あの…」
マギーがかなり、不安そうな顔をしながら、口を開いた。
「今回は…初めての公式的なパーティーなので…最後のフィナーレパーティーだけ出るということ
では…」
「それは得策ではありません、マーガレット夫人」
クァーリアはきっぱりと言い切った。
「商会をやっていたり、体調不良などの理由がない限り…そうした場合は、必ず噂のネタになって
しまいますし、揶揄もされます」
「いえ…商会をやっていたとしても、そもそも貴族の仕事にあらず…などと言われることは、
覚悟した方がいい…」
商会はそもそも…昔の考えを持っている人間には、それだけで揶揄される元になる。
「で、でも、フィリーは…」
「それも直す様に、言いましたよね?」
クァーリアの口調は、かなり強くなった。
「公式の場で…上位の夫人を愛称で呼んでいいのは、夫だけです。
それ一つとっても、アナタに学が無いと思われるし、オルフィリア公爵夫人への侮辱にも
なります!!
まして今…関係性がかなり微妙なのですから、それだけでさらに、関係が悪化してもおかしくない
ですよ?」
「も、申し訳ありません…」
かなり…しゅんとなるマギー。
クァーリアは深いため息をつき、
「そもそもオルフィリア公爵夫人は…商会を優先することで出る悪評は、すべて覚悟の上…と
いうより、悪評を利用するのが、とてもうまいのです。
だから…悪評が出たなら、それで人を見極め、対処するべきところと、放っておいてもいい所を
的確に判断する。
そうできるなら、私は何も言いません。
しかし…悪評が出ることもわからない、利用するどころか、対処も出来かねる…というなら、
顔を出した方がいい。
特にあなたの立場なら…、向こうから挨拶に来る方が多いでしょうから、出来るだけ話をして
親交を深めた方が良いです」
「あくまで焦らずに…じっくりとやっていくことを、お勧めします…。
くれぐれも、オルフィリア公爵夫人の真似はしないように」
クァーリアはその部分を、特に念押しした。
「まあ…あの王女殿下に詫びを入れさせるなど…、並大抵ではできまいよ」
ローエンが、感心したようにため息をつく。
「もちろんそれもありますが…、他の全てにおいても、規格外なんです…。
そしてその考え方も、通常のご令嬢やご夫人とは全く違う」
「ど、どんなところが?(ルリーラ)」
「私は…オルフィリア公爵夫人は、ゾフィーナ夫人の考えを、見抜くと思っていました。
ですが、そうであってもやはり押し付けたことに、変わりはありません。
だから…その後すぐに、私はオルフィリア公爵夫人の元に、お詫びに行ったのですがね…」
ゾフィーナ夫人来襲後のファルメニウス公爵家での対談
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「オルフィリア公爵夫人でしたら…ゾフィーナ夫人の意図が読めると思いましたので…。
ケイシロンで何とか止めたかったのですがね…、ローエン閣下がいない今では…」
「そうだと思いました…だから、謝らないでください。
クァーリア夫人はとても良い判断を、したと思いますよ」
にこやかに笑うフィリーに、少し安堵するクァーリア。
「私も今回ばかりは負けを覚悟しましたが…、ツァリオ閣下が出てくださって、事なきを
えましたし」
「しかし…それが無かったらと思うと…」
クァーリアだからこそ…ツァリオが現れたのは、本当に奇跡と言っていい幸運だったと
わかるのだろう。
表情が…だいぶ暗い。
「それならそれで何とかしますよ。私は…タダで負ける気はありませんでしたし。
ああ、いい機会ですので、これは言っておきますが…」
フィリーはティーカップを置き、
「私は…自ら望んで、ファルメニウス公爵夫人になりました。
今回ゾフィーナ夫人が標的にしたのは…、アナタとケイシロン…どちらも武に属する家です。
まして薬があるのはファルメニウス公爵家…ゆえに…」
フィリーは胸に手を置き、
「私には…ファルメニウス公爵夫人として、ゾフィーナ夫人を迎え撃つ…義務が生じます。
私はそれに忠実に従っただけです。
そしてそれに…アナタと私の実年齢は、何の関係もありません」
再度にっこりと笑った…。
「……そう言っていただけると、私も安堵いたしました…」
そう言ってエマの入れてくれたお茶を、一口飲むと、
「せっかくですので、一度…お聞きしたかった事、お聞きしてもよろしいですか?」
「何でしょう?」
「例の…クレア嬢のお茶会…、単純に予定がピッタリだったから…と、王立騎士団でおっしゃった
そうですが…違いますでしょう?」
クァーリアは少し伏目がちに、
「全て…計算ずくだったのでしょう?
敵しか集まらぬ場所に…ギリアム公爵閣下を伴い…赴いて…全てを薙ぎ払うために」
するとフィリーは…少し含み笑いを浮かべ、
「……私は…ギリアムに見初められたことで、身分の高い方を…かなりの数敵に回しました
からねぇ…。
通常のやり方では、潰される…と、判断いたしました」
「私は…元来できれば静かに暮らしたいし、平和に生きていきたいですし、優しい人間でいたい。
でも…」
フィリーの笑いが…黒ずむ。
「自分の権利を、不当に侵害してくる者たちに…優しくできるほど、出来た人間ではありませんし、
なりたくもない!!」
ここまで言ったフィリーは、お茶を一口。
「まあでも…私はクレア嬢にもお茶会に来たご令嬢にも…もちろん王女殿下にも、とても感謝して
いるんですよ」
「だってそうでしょう?私はあの時…吹けば飛ぶような、しがない男爵令嬢だった」
「その私を…完全に潰す気で来ましたからねぇ…、身分のとてもお高い方々が…」
唇の端を持ち上げた、フィリーは、
「それを完膚なきまでに、粉砕してこそ…私の実力を、存分に他者に示せるじゃないですか…。
その舞台を…わざわざ作ってくださったんですからね…、相手が好きか嫌いかは別として…、
それだけは大変感謝しておりますよぉ」
「このオルフィリアの、お茶会デビュー戦…。
物凄い錦を飾る手伝いを…してくださったんですから…ふふふ」
眼をつぶったまま…不敵に笑うフィリー。
だが…その姿は…。
決して不快には映らないから、不思議だ…とクァーリアは思うのだった。
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回想終り。
「わかりますか?オルフィリア公爵夫人は、自ら一番敵の多い所に行き、見事にその場を支配し、
敵を倒すと同時に、高い評価を得たのです。
ただこれは…大抵の人間は出来ません。
だから、地道に少しずつ…やっていくしかありません」
「あ…あの…」
ここで何かを決意したような…、確認したいような顔をしたマギーが、
「オ、オルフィリア公爵夫人の私兵に対して…、王立騎士団の方々は、不満は無いのですか?
心配ではないのですか?」
すると…クァーリアは、やっぱり暗い顔にため息をつき、
「心配や不満がないワケではないですよ。
でも…彼らを恩赦して私兵にする…というのは、オルフィリア公爵夫人のまがう事なき意思。
そうである以上…、彼らが何か不始末をしない限り、見守るしかないのです。
ましてオルフィリア公爵夫人は、彼らと王立騎士団が、出来るだけ和解できるよう、尽力して
らっしゃいます。
あの方は…下に対してだからと言って、押しつけを行う事はほぼしない。
だから王立騎士団員も…注意深く様子を見つつ、彼らを知る努力をしているようですよ」
「そ…そんな…」
マギーは…絶望の色を顔に濃く張り付けている。
それを見たクァーリアは、やっぱり頭痛そうな顔を隠さず、
「その状態では…、フィナーレパーティーではオルフィリア公爵夫人に接触するのは、控えた
ほうが良いですね…」
「え…?」
「オルフィリア公爵夫人は、ケイシロンに私兵を伴って来たのですよね…。
その意味があなたに、わかっていますか?」
「か、顔見せのため…って…」
「それは、建前ですよ」
「……ルリーラとマギーの反応を見るためじゃろ?
今後の距離を測るために…な」
さすがにローエンはわかっていたようだ。
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