34 / 56
第5章 敵襲
2 様々な物の怪の思惑と意図
しおりを挟む
応接間…結構モノが多いので、ジェードとレオニールは潜み済み。
「一体いつまで、待たせる気なんですか!!
義伯母上が来た時は…直ぐにいらしたのでしょう?」
苛々と額に青筋立てているのは…、現ビルフォネラル公爵家当主の…ピビュレオだ。
いかにも真面目そうな…オールバックの髪と、薄い茶髪に青い目…。
顔は…凄く美形というワケではないが、整ってまあまあに見える。
「そうね…でも…予約なしの訪問だし…たまたま空いていらっしゃらなければ、
待つのは仕方ないわ」
ルリーラは…穏やかに言って聞かせるが、
「そんな事では公爵夫人など、務まりませんよ!!
優先しなければいけない客が来た時は…時間を作る物です!!」
かなり…自分勝手な言動をしながら、応接間の椅子にドカリと座っている。
「まあ…そうですね。
これだけの地位の人間が揃ったのですから…。
そうではありあませんか、ルリーラ夫人…」
ゾフィーナが…ルリーラに問いかけると、
「そ、そうですね…。
ですが…女性は色々…お支度がありますので…」
ちょっとびくつきながら、答える。
「あら、伯母様!!伯母様の時に早く出てきたのですから…、言い訳はできませんわ!!」
ルニヴィア夫人…ルリーラ夫人の姪だが、あまり似ていない…。
全体的に髪はカールしたようにくせっ毛で、それが肩の下あたりまで延びている。
目鼻立ちは…整っているが、目の大きさと不釣り合いな細い眉…赤くとがった唇は…
かなり煽情的なイメージを人に与える。
「ゾフィーナ夫人…。ですが…ファルメニウス公爵家は本当に凄いですね…。
この部屋に来るまで…調度品や飾りつけを見ても、一目で別格に裕福だとわかりますわ」
「ルニヴィア!!はしたないですよ!!」
さすがにこの言動には…ルリーラが食って掛かったが、
「まあ…そんなに目くじらを立てずとも、良いではありませんか…。
ファルメニウス公爵家が…他の貴族と比べ、突出した経済力を持っているのは…平民でも
知っている事です」
やっぱりゾフィーナが出てきて、収めてしまった。
「伯母様だって…仮にもファルメニウス公爵家の、縁戚の家に嫁いだのですから…。
少しぐらい分けてもらおうとか、思わないのですか?」
ルニヴィアは周りを見渡し、眼を輝かせているが、
「馬鹿をおっしゃい!!!ケイシロンの旦那様がそういった行為を、非常に嫌う事…。
アナタだって知っているでしょう!!」
ルリーラの表情は…非常に厳しくなる。
だが…、
「そこは…伯母様が個人的に…オルフィリア公爵夫人と仲良くなれば、いいだけじゃない
ですか。
マーガレット小公爵夫人だって…大変仲が良いとお聞きしましたわ」
ルニヴィアは…反省する気は無いようだ。
にーっこりといい笑顔で、いけしゃあしゃあとのたまう。
「まあ…そうですね。
その辺を上手くやるのも…貴族夫人の力の見せ所…ですからね」
ゾフィーナが庇ってしまうと…、この場の人間は何も言えないようだ。
ルリーラは青い顔に深いため息をついて、
「あのですね…今日の目的が何だか…お忘れではないですよね…」
ゆっくり言う。
「もちろんですよ!!伯母様!!
ファルメニウス公爵家が独占している、ゴギュラン病の薬…平等に分けるべきだと
お話するためです」
笑みがなくなり、かなり…きつめの顔になる。
「その通りです!!
同じ貴族なのに、ゴギュラン病で苦しんでいる貴族たちに薬を売らないなど…。
何を考えているのやら…」
ピビュレオが呆れたように、両手を広げなが言った。
「でもね…評議会でオルフィリア公爵夫人は…怪我をされたから…。
現時点で、何の処罰も国から受けていないし…って事らしいわ」
ルリーラは…まあゾフィーナに怯えながらも、言うべきことは…言うようだ。
「それは確かかもしれませんが!!
そもそも、ファルメニウス公爵家が通そうとしたあの法案…あまりにも下の者を優遇しすぎている。
上位貴族の夫人となった以上、上位の付き合いを大切にするべきです!!」
ピビュレオが…大きく手を振り、もっともらしい発言をする。
「……別に大切にしていないワケじゃ、ないと思うけれど…」
身内だからこそなのか…、ルリーラはかなり消極的だ。
もともとの性格と、当事者じゃないからこそ…なかなか強くは出にくいのか…。
「大切にしておりませんわ、伯母様!!
もし大切にしていたら…ゾフィーナ夫人の出禁を…解くようにとギリアム様に
忠言しているハズですもの!!
それなのに…前ファルメニウス公爵夫人の恥を人前で話しただけでなく…、
ゾフィーナ夫人が姉の悪評にも負けず、頑張ってドラヴェルグ公爵家を盛り立てて
来た事…全く分かろうとしない!!」
ルニヴィアは…立ち上がり身振り手振りを大げさにして、熱弁する。
「ギリアム様とゾフィーナ夫人の確執は!!
ギリアム様が子供であったが故、様々な誤解をしたにすぎません!!
それを…一つ一つ聞いて、誤解を解き、ゾフィーナ夫人との間を取り持つのが、
新しく夫人として入った者の務めではありませんの?
ゾフィーナ夫人は…ギリアム様と同様、オルフィリア公爵夫人にも…色々教えたて
差し上げるつもりだったんですよ…。
それを…」
白熱してきたところで、
「もういいですよ、ルニヴィア夫人…。
2人とも若いのですから、向こう見ずになったり、足りなかったりは当然です。
それゆえ今回…貴族の在り方を教えて差し上げようと、参った次第…」
ゾフィーナが止めた…。
「で、ですが…私…自分の事のように、悔しくてなりません!!」
「アナタのそのお気持ちだけで、十分です」
ゾフィーナは終始…そのポーカーフェイスを崩さず、静かに…言うのだった。
--------------------------------------------------------------------------------
応接間で…しょーもない連中がしょーもない会話をしているころ…私は再度お着換えしていた。
「よしっ!!かなりいい出来ね!!」
私が着替えたのは…乗馬用の衣服だった。
制服のブレザーを模したデザインで、下は…純白のパンツスタイル。
皮を何回も叩いて柔らかくしたブーツに…手袋をして完了だ。
武のファルメニウスである以上…、乗馬は出来た方がいい!!
ギリアムはいい顔しなかったけど…、お願いして習っているのだ。
そしてフィリアム商会の技術の粋を結集し、乗馬服を作ってみたのだ。
それに身を包み…私は応接間へと向かった。
同行者は…リグルド卿とヴァッヘン卿、そしてフォルトだ。
応接間に入った私の姿が見えると、全員一応立とうとしたんだが、
「予定外の来客ゆえ、ご挨拶は結構!!
早速本題に入りましょう」
私の言葉に…全員が立つのをやめた…。
ルリーラ夫人とマギーは…大分バツが悪そうだな…。
まあ、それについちゃ、後でいい。
「なぜ!!あながた!!ここにいるのです?ゾフィーナ夫人!!」
私は…語尾を強調して、ハッキリと言い切った。
ゾフィーナくそばばぁからの返事はない。
「質問に答えていただけないなら、お帰りください。
そもそも…アナタはファルメニウス公爵家を出禁になった身!!
よくおめおめと来れましたね?
まあ、あの姉にして、この妹あり…という所でしょうか?
恥知らずな行為は、お得意ですね」
ひとまず…挑発してみる。
そうすれば…だいたいのパワーバランスがわかるからね。
まあ、この場の支配者は、間違いなくゾフィーナくそばばぁだろうが。
「お、お待ちください!!いくら何でも一番の縁戚に対し、いきなりその発言はいかがな
ものかと思います!!」
ルニヴィアは…もう、居ても立っても居られないと言わんばかりに、口を出したが、
「再度!!お尋ねいたします!!
なぜ!!アナタが!!ここにいるのですか?
ここは!!アナタの!!いるべき場所ではございません!!
早々に!!お帰り下さい!!」
私は…完全無視。
だが…ゾフィーナくそばばぁもさすがっちゃさすがだ。
これだけ言われても…眉一つ動かさないし、相変わらず座ってやがる…。
上位の夫人を叩き出す…ってのは、男以上に難しいんだよな。
手荒なことをして、体に傷でも負わせれば…それだけで男に傷を負わせるより、よっぽど
責められる。
ゾフィーナくそばばぁも、その事がよくわかっているから、動じないんだ。
もっともこのくそばばぁは…別の理由も加味されて、さらに追い出しずらいんだが…。
ギリアムが出立して…おいそれと帰ってこれない所で来る辺りは…やっぱ並大抵じゃ
いかんな。
不特定多数がいなければ…姉の醜聞もあまり吹聴されたところで、なんてこたない。
くそばばぁにしてみれば、会場がケイシロンでも、ファルメニウスでもよかったのだろう…。
……まあ、その考えが甘いってことは…いずれ証明してやるがな。
「これでは、話が進みませんね。
この家に不法侵入した件は…ギリアムに後日しっかりとご報告いたします」
このまま居座られても厄介だからな…。
しょーがない、会話をするか…。
「ルリーラ夫人に頼み込んだんですよ…。
昨今のファルメニウス公爵家の醜聞は…目に余るものがありましたのでね」
……ふ~ん、醜聞ね。
やっぱこのくそばばぁ…強かでやがる。
「醜聞ですか?巷では絶賛されこそすれ、醜聞など一切聞こえてきませんが」
「下々ではなく、貴族の間で…です」
だろうね…。
そっちだってちゃんと調査済みさ。
「あら、そうですか…。
私にインク瓶を投げつけるような、非常識な方々に、何を言われてもいいですわ」
シレっと答えてやった。
「確かに…彼らにも悪い所はあったかと思いますが…」
「インク瓶って、当たり所悪ければ死にますよ?
そうおっしゃるなら、自身で評議会場の中心に立って、インク瓶投げられてみたら
どうですか?」
このくそばばぁと話す時間がもったいないゆえ、サクサク行くよ。
なんて思っていたら、
「いい加減になさったらどうですか?オルフィリア公爵夫人…」
あくまで静かに言ってきたのは…ルニヴィア夫人だ。
「一体いつまで、待たせる気なんですか!!
義伯母上が来た時は…直ぐにいらしたのでしょう?」
苛々と額に青筋立てているのは…、現ビルフォネラル公爵家当主の…ピビュレオだ。
いかにも真面目そうな…オールバックの髪と、薄い茶髪に青い目…。
顔は…凄く美形というワケではないが、整ってまあまあに見える。
「そうね…でも…予約なしの訪問だし…たまたま空いていらっしゃらなければ、
待つのは仕方ないわ」
ルリーラは…穏やかに言って聞かせるが、
「そんな事では公爵夫人など、務まりませんよ!!
優先しなければいけない客が来た時は…時間を作る物です!!」
かなり…自分勝手な言動をしながら、応接間の椅子にドカリと座っている。
「まあ…そうですね。
これだけの地位の人間が揃ったのですから…。
そうではありあませんか、ルリーラ夫人…」
ゾフィーナが…ルリーラに問いかけると、
「そ、そうですね…。
ですが…女性は色々…お支度がありますので…」
ちょっとびくつきながら、答える。
「あら、伯母様!!伯母様の時に早く出てきたのですから…、言い訳はできませんわ!!」
ルニヴィア夫人…ルリーラ夫人の姪だが、あまり似ていない…。
全体的に髪はカールしたようにくせっ毛で、それが肩の下あたりまで延びている。
目鼻立ちは…整っているが、目の大きさと不釣り合いな細い眉…赤くとがった唇は…
かなり煽情的なイメージを人に与える。
「ゾフィーナ夫人…。ですが…ファルメニウス公爵家は本当に凄いですね…。
この部屋に来るまで…調度品や飾りつけを見ても、一目で別格に裕福だとわかりますわ」
「ルニヴィア!!はしたないですよ!!」
さすがにこの言動には…ルリーラが食って掛かったが、
「まあ…そんなに目くじらを立てずとも、良いではありませんか…。
ファルメニウス公爵家が…他の貴族と比べ、突出した経済力を持っているのは…平民でも
知っている事です」
やっぱりゾフィーナが出てきて、収めてしまった。
「伯母様だって…仮にもファルメニウス公爵家の、縁戚の家に嫁いだのですから…。
少しぐらい分けてもらおうとか、思わないのですか?」
ルニヴィアは周りを見渡し、眼を輝かせているが、
「馬鹿をおっしゃい!!!ケイシロンの旦那様がそういった行為を、非常に嫌う事…。
アナタだって知っているでしょう!!」
ルリーラの表情は…非常に厳しくなる。
だが…、
「そこは…伯母様が個人的に…オルフィリア公爵夫人と仲良くなれば、いいだけじゃない
ですか。
マーガレット小公爵夫人だって…大変仲が良いとお聞きしましたわ」
ルニヴィアは…反省する気は無いようだ。
にーっこりといい笑顔で、いけしゃあしゃあとのたまう。
「まあ…そうですね。
その辺を上手くやるのも…貴族夫人の力の見せ所…ですからね」
ゾフィーナが庇ってしまうと…、この場の人間は何も言えないようだ。
ルリーラは青い顔に深いため息をついて、
「あのですね…今日の目的が何だか…お忘れではないですよね…」
ゆっくり言う。
「もちろんですよ!!伯母様!!
ファルメニウス公爵家が独占している、ゴギュラン病の薬…平等に分けるべきだと
お話するためです」
笑みがなくなり、かなり…きつめの顔になる。
「その通りです!!
同じ貴族なのに、ゴギュラン病で苦しんでいる貴族たちに薬を売らないなど…。
何を考えているのやら…」
ピビュレオが呆れたように、両手を広げなが言った。
「でもね…評議会でオルフィリア公爵夫人は…怪我をされたから…。
現時点で、何の処罰も国から受けていないし…って事らしいわ」
ルリーラは…まあゾフィーナに怯えながらも、言うべきことは…言うようだ。
「それは確かかもしれませんが!!
そもそも、ファルメニウス公爵家が通そうとしたあの法案…あまりにも下の者を優遇しすぎている。
上位貴族の夫人となった以上、上位の付き合いを大切にするべきです!!」
ピビュレオが…大きく手を振り、もっともらしい発言をする。
「……別に大切にしていないワケじゃ、ないと思うけれど…」
身内だからこそなのか…、ルリーラはかなり消極的だ。
もともとの性格と、当事者じゃないからこそ…なかなか強くは出にくいのか…。
「大切にしておりませんわ、伯母様!!
もし大切にしていたら…ゾフィーナ夫人の出禁を…解くようにとギリアム様に
忠言しているハズですもの!!
それなのに…前ファルメニウス公爵夫人の恥を人前で話しただけでなく…、
ゾフィーナ夫人が姉の悪評にも負けず、頑張ってドラヴェルグ公爵家を盛り立てて
来た事…全く分かろうとしない!!」
ルニヴィアは…立ち上がり身振り手振りを大げさにして、熱弁する。
「ギリアム様とゾフィーナ夫人の確執は!!
ギリアム様が子供であったが故、様々な誤解をしたにすぎません!!
それを…一つ一つ聞いて、誤解を解き、ゾフィーナ夫人との間を取り持つのが、
新しく夫人として入った者の務めではありませんの?
ゾフィーナ夫人は…ギリアム様と同様、オルフィリア公爵夫人にも…色々教えたて
差し上げるつもりだったんですよ…。
それを…」
白熱してきたところで、
「もういいですよ、ルニヴィア夫人…。
2人とも若いのですから、向こう見ずになったり、足りなかったりは当然です。
それゆえ今回…貴族の在り方を教えて差し上げようと、参った次第…」
ゾフィーナが止めた…。
「で、ですが…私…自分の事のように、悔しくてなりません!!」
「アナタのそのお気持ちだけで、十分です」
ゾフィーナは終始…そのポーカーフェイスを崩さず、静かに…言うのだった。
--------------------------------------------------------------------------------
応接間で…しょーもない連中がしょーもない会話をしているころ…私は再度お着換えしていた。
「よしっ!!かなりいい出来ね!!」
私が着替えたのは…乗馬用の衣服だった。
制服のブレザーを模したデザインで、下は…純白のパンツスタイル。
皮を何回も叩いて柔らかくしたブーツに…手袋をして完了だ。
武のファルメニウスである以上…、乗馬は出来た方がいい!!
ギリアムはいい顔しなかったけど…、お願いして習っているのだ。
そしてフィリアム商会の技術の粋を結集し、乗馬服を作ってみたのだ。
それに身を包み…私は応接間へと向かった。
同行者は…リグルド卿とヴァッヘン卿、そしてフォルトだ。
応接間に入った私の姿が見えると、全員一応立とうとしたんだが、
「予定外の来客ゆえ、ご挨拶は結構!!
早速本題に入りましょう」
私の言葉に…全員が立つのをやめた…。
ルリーラ夫人とマギーは…大分バツが悪そうだな…。
まあ、それについちゃ、後でいい。
「なぜ!!あながた!!ここにいるのです?ゾフィーナ夫人!!」
私は…語尾を強調して、ハッキリと言い切った。
ゾフィーナくそばばぁからの返事はない。
「質問に答えていただけないなら、お帰りください。
そもそも…アナタはファルメニウス公爵家を出禁になった身!!
よくおめおめと来れましたね?
まあ、あの姉にして、この妹あり…という所でしょうか?
恥知らずな行為は、お得意ですね」
ひとまず…挑発してみる。
そうすれば…だいたいのパワーバランスがわかるからね。
まあ、この場の支配者は、間違いなくゾフィーナくそばばぁだろうが。
「お、お待ちください!!いくら何でも一番の縁戚に対し、いきなりその発言はいかがな
ものかと思います!!」
ルニヴィアは…もう、居ても立っても居られないと言わんばかりに、口を出したが、
「再度!!お尋ねいたします!!
なぜ!!アナタが!!ここにいるのですか?
ここは!!アナタの!!いるべき場所ではございません!!
早々に!!お帰り下さい!!」
私は…完全無視。
だが…ゾフィーナくそばばぁもさすがっちゃさすがだ。
これだけ言われても…眉一つ動かさないし、相変わらず座ってやがる…。
上位の夫人を叩き出す…ってのは、男以上に難しいんだよな。
手荒なことをして、体に傷でも負わせれば…それだけで男に傷を負わせるより、よっぽど
責められる。
ゾフィーナくそばばぁも、その事がよくわかっているから、動じないんだ。
もっともこのくそばばぁは…別の理由も加味されて、さらに追い出しずらいんだが…。
ギリアムが出立して…おいそれと帰ってこれない所で来る辺りは…やっぱ並大抵じゃ
いかんな。
不特定多数がいなければ…姉の醜聞もあまり吹聴されたところで、なんてこたない。
くそばばぁにしてみれば、会場がケイシロンでも、ファルメニウスでもよかったのだろう…。
……まあ、その考えが甘いってことは…いずれ証明してやるがな。
「これでは、話が進みませんね。
この家に不法侵入した件は…ギリアムに後日しっかりとご報告いたします」
このまま居座られても厄介だからな…。
しょーがない、会話をするか…。
「ルリーラ夫人に頼み込んだんですよ…。
昨今のファルメニウス公爵家の醜聞は…目に余るものがありましたのでね」
……ふ~ん、醜聞ね。
やっぱこのくそばばぁ…強かでやがる。
「醜聞ですか?巷では絶賛されこそすれ、醜聞など一切聞こえてきませんが」
「下々ではなく、貴族の間で…です」
だろうね…。
そっちだってちゃんと調査済みさ。
「あら、そうですか…。
私にインク瓶を投げつけるような、非常識な方々に、何を言われてもいいですわ」
シレっと答えてやった。
「確かに…彼らにも悪い所はあったかと思いますが…」
「インク瓶って、当たり所悪ければ死にますよ?
そうおっしゃるなら、自身で評議会場の中心に立って、インク瓶投げられてみたら
どうですか?」
このくそばばぁと話す時間がもったいないゆえ、サクサク行くよ。
なんて思っていたら、
「いい加減になさったらどうですか?オルフィリア公爵夫人…」
あくまで静かに言ってきたのは…ルニヴィア夫人だ。
43
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい
みおな
恋愛
何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。
死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。
死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。
三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。
四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。
さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。
こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。
こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。
私の怒りに、神様は言いました。
次こそは誰にも虐げられない未来を、とー
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる