ひとまず一回ヤりましょう、公爵様4

木野 キノ子

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第3章 二頭

16 ヘドネを利用しようってか?

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一度舞子さんの事を思い出した私の頭は、以前以上にフル回転度が速くなった。

まずレベッカ…2人にはもう帰って欲しいし出禁で構わないが、庇わないと自分が火傷する。
アイリンおばはん…出禁にしたいが、事情があると止められたこと、質の悪い奴は自分が
原因でも、自分の事棚に上げて悪評ばら撒く。だから直接追い出すのは他の人間にやらせたい。

つまりさぁ…。

このヘドネを…。

良いように利用しようってか?はっ!!

「……本当に、私が決めてしまっても、よろしいのですか?アイリン夫人…」

「ええ、どうぞ。オルフィリア嬢」

私は…ここには確かにファルメニウス公爵夫人として招かれた。
しかし本当の身分は男爵令嬢だ。
だから侯爵令嬢2人…それも平然と人をいじめるような奴に、睨まれるとかなりマズい。
しかし私ならギリアムの庇護があるから、そんなにひどい事にはならない…ってのも
アイリン夫人の考えなんだろーな。

もしかしたら、以前からこの二人…出禁にしたかったのかもな。
例え性格最悪でも、貴族社会ってのは様々な絡みから、申出を断れないこともある。
それはガルドベンダ公爵家とて、例外ではなかろう。
ギリアムほど調和を考えないなら、別だろうが。

そしてレベッカも…アイリン夫人が直接出禁を言い渡すより、私が出禁を言い渡す方がいい。
だって、公爵夫人じゃおいそれと悪口言えないけど…男爵令嬢だったらいくらでも悪口が
言える。
吐き出し口なんて、いくらでも作ってやれる自信があるのだろう。

……いいねぇ!!
わたしゃ、自分の欲に忠実な奴は大好きだ。
そしてそのために、良いカッコしいで振る舞い、やりたくないことを人に押し付ける人間も
大好きさ…なんでかって?

心から、一片の躊躇もなく…ぶっ潰せるからなぁ!!!!

「では…ポリネア嬢とラファイナ嬢は、今まで通りこのサロンの会員としてください。
そして本日、2人とも帰らなくてよいですよ」

爽やかーに、言ってのける。
…見なくてもわかる。
レベッカとアイリン夫人が、心の中でひきつっているのが。

「オ、オルフィリア嬢!!よくお考えに…」

「考えました、意見は変えません!!」

レベッカの言葉を遮った。
話するのもバカバカし。

「本当に…それでよいのですか?」

「はい!!もちろん!!」

極上の笑顔ではきはきと。

あのよ、アイリンおばはん。
他人を利用するのは誰しもがやるから、それについてどうこうは言わん。
しかし自分が利用できるレベルの人間かどうか、見極めてやれや、せめて。

ただ…一つ私も予想できないことがあった。
この2人…私の想像を絶する、超の付く大バカだったこと。
レベッカも…予想できなかっただろうな…うん。

事もあろうに…。

「ではオルフィリア嬢…そこに這いつくばって、私たちに謝罪してください」

は???
も~、今日は?がいっぱいだぁ。

「なぜですか?」

冷静にのたまう。

「テラスで私たちの足を傷付けたこと、そのせいで私たちが王女殿下の不況をかったこと、
様々な催しに参加できなくなったこと、今日の態度とふるまい…全てですわ」

おいおーい、私が足を踏んだのは一人だけだぞ~。
そしてすべての事象が…すべてあんたらの自業自得なんだけど~。

あ~、そっか、私がアンタらを出禁にしなかったから、私が今更恐れをなしたと思ったのか。

宇宙の広さ以上に、違う!!

「お断りいたします」

ハッキリキッパリ。

すると2人はクスクスと笑いながら、

「い~んですかぁ、私たちにそんな態度取ってぇ」

はい、いいですが何か?

「私たちはこのガルドベンダ公爵夫人のサロンの、正式会員なんですよぉ」

だから、なんだ?

「ここは国内でも…入るのが難しいことで有名な、屈指のサロンなんですぅ」

うん、知ってる、そんな所にキミらみたいなのがいて、わたくし大変驚きまちゅた。
どんな裏取引、したの~?
そっちが気になって来たよ、うん。

「だ・か・ら、私たちの機嫌を損ねると…いつまでたっても会員になれませんよぉ」

「あなた方の機嫌を取らなきゃ会員になれないなら、死んでもお断りです。
そもそも会員になる気、今日のサロンの状態を見て、一切合切無くなりましたので」

ホントのホントにね。
弱い者いじめを傍観する主催者のサロンなんか、頼まれてもお断りだっつーの。

「は、はあぁ?アナタ何様?」

それをお前らに言わないかんのか?

「何様でもいいです。とにかくあなた方と関わるのは、金輪際お断りいたします」

もう、面倒くさくなった。
確かに他の会員の意見もふんだんに聞くサロンだとは聞いているが…お前らに良く思われる
人間になんぞ、死んでもなりたくねぇ。

「ふーんだ、だったらアンタの悪口、言いふらしてやるんだから!!」

好きにせぇ。
アンタらの悪口真に受ける人間なんざ、同類だけだろうから、私の人生にいらん、そんな人間。

「どう?謝るなら今の内よぉ」

「謝りません!!」

もう頼むから、どっか行って私の悪口とやらを吹聴しとけ。
そんなもん、へでもねぇよ。

「な、なによ!!すましちゃって!!後でどうなっても、もう許してあげないわよ!!
このサロンにだって通えないわよ!!」

だから、許してくれんでいいっつの。
それにサロンに通っていいかどうかを決める権利、お前らにないだろうが。

「………出て行きなさい」

お、アイリン夫人の声だ…震えてる、だよね~。

「2人とも今すぐ出ていきなさい―――――――――――っ!!そして二度と近づかないで
ちょうだい!!」

そうなるだろ。
このサロンで悪口大会やるって言ったようなもんだし、会員を誰にするか決める権利が、さも
自分たちにあるように言ったんだから。
越権行為も甚だしい。

2人は抵抗するが、使用人数人に引きずられる。
私は改めてレベッカを目線だけ向けて、ちらりと見るが、動きはない。
ま、呆れてるよなぁ、庇う気も起きないくらい。

でもダメだよ。
ああいう連中はね、いつでも自分のいいようにしてもらえると思っているから。
さて…じゃあ、最後っ屁行くかね。

「あらぁ…散々偉そうなことを仰って、結局退場になるのはあなた方ですかぁ?
ご苦労様でーす」

すっげぇバカにした口調で言ってやる。

「ふふ…レベッカ嬢はあなた方のお友達のようですが…もうあなた方を庇う気はない
ようですね…儚い友情で・す・こ・と」

これは…できるだけ小声で言ったよ、2人にしか届かないようにね。

「ちょっと!!レベッカ嬢!!何とか言ってよ!!」

「どうして私たちが出て行かなきゃなんないの!!」

本気でわかってないなら、救いようのないバカだな。
レベッカ嬢…相手してあげなよ、じゃないと…。

2人はプルプル震えていたが、次の瞬間、

「そもそも今日、こいつが来るなんて、聞いてない!!」

「あなたの見せてくれたリストに、乗ってなかったじゃない!!」

はいぃ!!大・失・言頂きました~。
レベッカは力があるから、突き崩すの大変だな~と思って、こっちに標的移して正解やな。

「アンタたちだって!!仲間が連れていかれようとしてんのに、何で黙って見てんのよ!!」

「何とか言いなさいよ!!エクイード侯爵夫人!!フルーガル侯爵夫人!!」

おや、固まってますねぇ…しょーもな。

まあ、しょうがないか…。
今日のターゲットはレイチェルだからなぁ…。
もし私が来るって知ってたら…、この2人は連れてこんだろう。
レベッカはその位の頭の良さはある。

……クァーリア夫人はどこで情報を手に入れたのかな…。
まあ、助かったけどさ…。

まあ…この後は皆さまご承知の通り、阿鼻叫喚です。
ポリネア嬢とラファイナ嬢の爆弾発言を受け、名前の挙がった全員に話を聞きたいと5人+娘2人は
連行されていった…ドナドナド~ナ~ド~ナ~。

私はそんな殺伐とした現場で、コッソリとポリネア嬢とラファイナ嬢が座っていた席の
テーブルクロスをめくってみると…。

やっぱりかよ。

色々…小道具が置いてあった。
やっぱ挑発して正解だな。
使う暇もなく、私に食って掛かって来たから。

なんてことを考えていたら、

「オルフィリア嬢―――――――――っ!!」

ジュリアにタックルまがいの抱きつき方をされた。
皆居づらくて、私とレイチェルしか残ってないからいいけど…。

「本当によく来てくださいました!!今日の御恩は忘れません!!」

やっぱわかってるな。

「それじゃあ一つ、お願いできますか?」

「もちろーん」

私はお願いしたいことを説明する。

「そういった事でしたら…ぜひ私にお任せください」

「ええ、お願いします」

私は遠ざかっていくジュリアとレイチェルを見送りつつ、大きく伸びをする。

「お疲れ様でした、フィリー…」

いつの間にやらギリアムが。

「ギリアムも…見守りご苦労様です!!
でも、これからもっと忙しくなります!!
一緒にやって頂けますか?」

「もちろんです!!」

そう言って私達が去ろうとしたら、

「失礼いたします…」

待ったがかかった。
誰だぁ?
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