ひとまず一回ヤりましょう、公爵様4

木野 キノ子

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第2章 実家

1 お茶会参加中の無礼

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え~私、本日は…またエティリィ夫人(ヴァッヘン卿のお母様)のお茶会に招かれました~。
今日は季節がいいので、お庭ではなく公園でどうか…というお誘いだった。

例の百戦錬磨の猛者夫人たちとさらに親密になろう…の会なんだけど…。
ウチのママンが行くって言ってきかないから…。
許可も出たし、一緒に行くことにしたのさぁ…。

まあ、いいんだけどね…。
あくまで親睦を深めよう…の会だからさ…。
込み入った話をする予定じゃないし…。

それで着いたら当然みんなが待っていて…挨拶もそこそこに、井戸端会議スタート。

情報通の皆さま…大変貴重な情報をありがとうございました~。
さて、楽しいお茶会も終盤…と、相成ったのですが…。

「なんだか…向こうが騒がしくないですか?」

私は何だが、使用人がもめている声が耳に入った。

「あら本当…どうしたのかしら」

エティリィ夫人も異変に気付く。

まあ、私には関係ないよね~などと思って、ふとママンを見て…私はぎょっとした。
ママンの顔が…明らかに強張っていたから…。

さっき、夫人たちと話をしている時の…朗らかな感じが微塵もなくなっていた。

「お母様…どうしたの?」

私の声で、ハッとしたようで、

「ごめんなさい…私の予想があっていれば…あの騒ぎは私のせいかも…」

え~、ママンはトラブル起こすような人じゃないし…。
最近はパパンと一緒に、ファルメニウス公爵家でおとなしている。
舞踏会などは、私のごたごたの様子を見て、おいおい出て行こうかな…などと言っていたが…。
実際は礼儀作法を嫌がって逃げ回っているパパンを、それなりに一人前にしないと、人様の
前に出れないと判断している模様…。
さすが、生まれながらのお貴族様だ。

改めて揉めている方を見れば…エティリィ夫人側の使用人が必死に止めているようだが、
強引に入ってこようとしているようで、入ってこようとしている人も、使用人を連れて
結構な所帯みたいだから、なかなか止めきれない様子。

「誰かお知り合いでもいるのかしら?」

クァーリア夫人がママンの様子を見て、尋ねる。

「はい…遠目からだし、十年以上会っていない人達だけど、たぶん…」

かなり大きなため息つきたげだ。
私はそれでピンときた。
ああ、多分…あの人たちだなぁと。

「エティリィ夫人…ここに護衛騎士は?」

「もちろん連れてきていますが…今の所動向を見ているようですね…。
騎士を使って追い出すのは、最終手段ですから」

まあ、そうだよね。
相手も貴族のようだし、そうなると…ってはなし。

「いっそ…入れて話を聞いた方がいいかしら?」

私が提案してみる。
するとママンが明らかな不快感を示した。
だよね~。

「あのさ…お母様…、このままじゃ埒が明かなそうだし…ここで帰してもまた、突撃して
来るかもしれないからさ…ここらで一つ、けりつけておいた方がいいんじゃない?」

それでも悲しそうな顔をする。
大体わかった…だって…。

「私だったら大丈夫だよ。
ここにいる人達は、全員私の味方だし…。
だいたい私の実力は…もう十分示したでしょ?
私そんなに弱くないよ」

そう言って笑うと…。
ママンはやっぱり少し考えこんだが、

「エティリィ夫人…皆さま…お見苦しい所をお見せすることに、なるかもしれませんが…」

「あら…色んなものを見てきておりますので…。
逆に私を驚かせられたら、たいしたものですわ(クァーリア夫人)」

「私だって…主人共々、平民として生活する覚悟を決めた時に比べたら…怖いものなど
ありません(サーシャ夫人)」

「私は主人と共に、悪徳業者と戦った事、何度もありますから~、チンピラまがいの
人間達には、強いですよ(ケイティ夫人)」

「じゃあ…皆さまよろしいようですね。
ロザンヌ夫人の方が、逆にしっかり気合を入れる必要がありそうですよ?
大丈夫ですか?
私は追い返してもいいですよ。
無礼なのは明らかにあちらです(エティリィ夫人)」

するとママンは意を決したようで、

「皆様…ありがとうございます…。
私も覚悟を決めました…お願いします…」

さてママンの覚悟が決まったなら…私もふんどし絞めてかかりますかね。

エティリィ夫人がもめている所へ行って、何かを話している。
少し経つと、喧騒が無くなり、エティリィ夫人とともに、人数が…明らかに貴族とわかるのが
6人…+使用人複数人…結構な人数です事…。
貴族がどこかに行く場合…必ず使用人を連れ立ってだから…仕方ないのはわかるんだけどね。

あ、いつも省略しているけど、私だって今日、使用人連れてきているよ。
ついでにファルメニウス公爵家専属の護衛騎士も。
この人たちの紹介は、またの機会にさせてもらうけどね。
ちなみに今日はエマと…フォルトも一緒。
フォルトは普段は来ないんだけど…今日はなんてったって特別な人とのお茶会だからさ。

だからなんだよね。
私があの人たち…通した方がいいんじゃないって言ったのは。
下手に誰もいない所で鉢合わせするより、人員がいるところで対応した方が、絶対的に良い。

「ロザンヌ!!ようやっと会えた!!」

ママンは私たちに出来るだけ迷惑かけたくない…という事で、護衛騎士を両脇に、少し離れて
対応している。
エティリィ夫人は、その横で聞いている。
一応主催者だからな。
何かあったら、即追い出す気だろう。

「会えた…というより、強引に押し掛けた…と言うべきでは?」

ママンはもちろん、塩対応。
皆さまもう、お気づきかと思いますが…この人たちは全員ママンの実家関連です、はい。

え~っと、6人のうち…中年以上の男性が2人…女性が2人…明らかに私と同年代の男女が
1人ずつ…か…。
この中で…私と面識があるのは1人だけ…か。
ってか、こいつ…できれば二度と会いたくなかった奴じゃん…。
あ~あ、ママンじゃないけど、頭いた~。

「仕方ないだろう!!どれだけ手紙を出しても、返事一つよこさないで!!」

「返事をよこしてもらえると、どうして思われたのですか?お兄様…」

あ~、やっぱ私の生物学上の伯父だったか…。

「私たち家族を見捨てておいて、今更仲良くできるとお思いですか?」

「だからそれは…私たちも反省しているんだ…。
お前たちに酷いことを…と…」

「だったら、もう二度と関わらないでください。
特に何か償ってくださることなど、望みませんので!!」

反省してるって言うけどさぁ…。
私らの動向は…それなりにちょぼちょぼだけど知ってたろが…。
けど、手紙一つよこさんかったの、アンタらやん。

「オルフィリア嬢のお母様のご実家?例の?(サーシャ夫人)」

「ええそうです…。
何か被害には合われていませんか?」

「い~え、ウチは接点ないですからねぇ…(サーシャ夫人)」

まあ、サーシャ夫人は侯爵家だからなぁ…。
王立騎士団関係でもないし…フィリアム商会はすり寄って来たママンの実家、事情を知ってた
総括部が一蹴したし…。

「うちも特に…(ケイティ夫人)」

「私もですねぇ…ただ…(クァーリア夫人)」

「私の聞いたところによると…エティリィ夫人はだいぶ間に入って欲しいって言われたみたいね。
顔が広いのは、こういう時に不便なものです。
まあ、事情を知っていたから、エティリィ夫人は取り合いませんでしたが」

なるほどね…。
まあ、エティリィ夫人は出来る人やから、実家の以前の態度をネタに、しっかり拒絶したんだろうな。

実際…ママンの実家がどんな所かなんて、知りたくもないし、興味もないけど…酷い状態なのは
容易に想像がつく。
ただ…私たち家族にしたことは、割と一定数の人間がやっている事だろう。
誰だって自分たちの生活が大事だし、パパンが間抜けな理由で騙されたのは…紛れもない事実だからね。

でもだったら…今更すり寄ってくんなよって言うのは、私もママンと同意見。

そんなことを思っていたら…喧々諤々言い合う大人たちに飽きたのか…同年代2人が私の方によって来た。

げっ…。

おいおい、成人済みなんだろうから、せめて話が終わってからこいや…。

「ねぇ!!この子がオルフィリア・ステンロイドなの?」

女の方…年から推測するに…ママンの兄夫婦の娘…確か私と同い年だ。
田舎育ちにしちゃぁ、垢ぬけてるな…。
美人って言いていいだろうし…ママンと同じ、茶髪の茶色い目…髪は若い娘に今人気の…ツインテールに
大きなリボン…か。

…ってか、指さすな!!
失礼にも程がある!!

男の方は…金髪碧眼…実はこれ、この国ではごく一般的…。
多少の色の薄い・濃いは出るが、日本人のだいたいが、黒髪黒目なのと一緒レベル。
ただこの男ってさぁ…。

あ、フォルトが音もなく私の後ろに来た…。
だよねぇ…。

「ああ、そうだよ。
ナンシェーリアは初めて会うんだったよな~」

何だか…もう勝手にしろや。
実家の対応は、私が出るべきところは出るが、基本ママンの自由にさせてあげるのが良しと思って
いるからさ…。

ちなみにママンは許す気も、和解する気もないとさ。

私が2人を無視して、お茶を飲んでいると、

「おい、お前さ…、せっかく従姉と友達が尋ねてきたのに、何だんまりなんだよ」

男の方が、ガラ悪く絡んできたが…、こいつを相手にするのは時間がもったいねぇから無視。

「おい、返事くらいしたらどうだ!!」

無視むーし。
百戦錬磨の猛者夫人たちも、全員無視してるよ。
だよねー。

「ちょっと!!ウチの娘に近づかないで!!」

あ、ママン。
別に大丈夫だよ?
フォルトも護衛騎士もいるからさ~。

「ちっ、相変わらず口うるせぇババアだな…。
さっさと死にゃぁいいのに」

私はこの言葉が耳に響いた時…叩きつけるように持っていたティーカップを、テーブルへと
おろした!!
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