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第2章 事後
6 どっから来たの?どこにいたの?そして誰なの~
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私はハッとなり、目の前に突然現れた人物を改めて確認する。
年のころはギリアムと同じくらい…いや、少し上にも見える。
整えていないボサッとした黒髪に、ターバンを巻いて…。
顔中に傷があるから、もしかしたら体も、そんなカンジかも…。
太い眉と堀の深い顔…しかし特筆すべきは、やはり眼だろう。
彼の眼には瞳孔が存在しない…白目とその中心に、うすい灰色の
円があるだけ…だから…。
すぐにわかった、眼が見えないんだと。
「初めまして、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢がご挨拶
申し上げます」
まあだからって、私の行動が変わるわけじゃないんだが。
スカートを両手で軽く摘まみ上げ、頭をげ、礼の形をとる。
するとジェードはさもおかしげに笑って、
「オレなんかに、そんな行儀のいい挨拶をするとはね」
雇い主?上司?の奥方候補に対して、敬語は一切ない。
私はフォルトが何か言う前に、素早く、
「あら…私はあなたに感謝しているのだから、当たり前では
ないのですか?」
「はは…なるほど」
正直、行儀良くされるより、こっちの方が私の性に合うんだよね。
「改めて…ギリアム様を助けてくださり、ありがとうござい
ました」
「…アンタは本当にいい人だな」
「ジェード!」
フォルトが責めるような口調になるが、さりげなく制する。
「オレの眼のことや傷のことは、一切聞かないんだからな」
「あら…人には色々事情があるもので、ない人なんていないわ。
ジェード卿が自分から喋らない限り、私は詮索する気もないし、
その必要もない」
するとジェードはけらけら笑い、
「オレに卿なんて、必要ないですよぉ。
もともとそんな身分でもないしねぇ、呼び捨てで」
「わかりました、ジェード…。
重要なのは、あなたが私の大切な人の力になってくれたという
点だけよ」
するとジェードは先ほど以上に、愉快そうに笑い、
「まったく奥様は…どこまで聡明なんですかねぇ」
「ちょっと!!まだ奥様違う」
「これは失礼」
直す気がまったくなさそうな笑い方だ…うん。
さてそれでは役者はそろった。
「フォルト…改めて言うけれど、お茶会直後に指示した件…
ギリアム様への報告はまだでしょう?」
「……ことがことですので…」
大分暗い顔だ。
まあ、そうだよね。
「確保はできた?」
「…私が行った時には、ジェードがあらかた済ませていました」
うわお。
本当にギリアムの周りは優秀だ。
「それはそれは…重ねてお礼申し上げます」
「よしてください。
まあ…奥様がそうであるように、オレもお上品とはかけ離れた
世界で生きてきたんで…、下種な人間の考えることは、だいたい
わかるんですよ」
「そうなんですね、とても頼もしいです。
では、もう一つお願い聞いていただいても?」
「なんですか?」
「今日これから、公爵邸に帰って…食事をとったらギリアム様に
このことをお話しします。
そして、私なりのこの件に関する、今後のことを話し合いたい
のです」
「ふむ…」
フォルトはだいぶ難しい顔をしている。
「なるほど、ご当主殿を抑える役をやれと?」
本当に優秀だナー。
「ええ…、私ができる限り抑えますが、万が一王家に殴り込む
などがあってはまずいので…」
「わかりました、承りましょう」
「ありがとうございます!!
ことがことだけに、大人数に話を聞かせるわけにはいきません。
ただギリアムが暴れ出すと、私とフォルト、エマだけでは…」
「でしょうね。
まあ、ここまで関わりましたし、奥様のお役に立てるなら、
喜んで」
あ、また奥様言っとる。
まあ、今回は大目に見よう。
大役をしてもらわにゃならんし。
「あ、フォルト…」
「はい」
「その時一緒に、王家がこちらに連絡してこないだろう理由も
話しますよ」
「わかりました」
フォルト…なんか不満そうやね。
ジェードはくすくす笑っとるし…。
どしたんや?
そんなことを私が考えていると、公爵邸が見えてきた。
…ん?なんか見慣れたシルエットが、門の前に…。
「フィリー!!」
「ギリアム様?」
馬車の扉から出た私をエスコート…じゃなくて、抱き上げた。
「心配しましたよ!!
私が帰って来た時、まだ帰っていないと言うから!!」
あ~、昨日のことが、まだ響いてんな~。
当たり前か。
「すみません…、今日中にすべてのブティックを回ってしまい
たくて…」
「別に…いいですけど…」
ちっともよくねーって表情だぞ、おい!!
そんな中、ギリアムは馬車の中にいる、ジェードに気付いたよう
で…。
「珍しいな…お前が表に出るとは…」
緊張した表情になる…。
あ~、この人って何か緊急事態じゃないと、出てこん人なのか…。
「私がお礼を言いたいと、フォルトに言ったんです。
お茶会でだいぶ、ギリアムの力になってくれたみたいだから…」
「そうでしたか」
お、ホッとした顔。
よかった、よかった。
「お腹すきませんか?」
「すごくすきました」
「では、食事にしましょう。
フィリーの元気が出るようにと、今日は特にシェフに腕をふるわせ
ましたから」
「本当ですか?楽しみです…。
あ、それと…夕食の後、お茶会に関連した話をしたいのですが、
ジェードも同席して欲しいのです」
「それは…構いませんが」
「ありがとうございます」
パパンとママンも交えて、美味しい食事を堪能した後、私たちは
ギリアムの書斎に集まった。
私、ギリアム、フォルト、エマ、ジェードの5人だ。
私はまず、今日のブティックでの出来事と、今後起こりうる予想
と展開についてギリアムに話した。
「フィリーは本当に優秀ですね」
「ありがとうございます。
ギリアム様に褒めていただけると、本当に嬉しいです」
あ、これは本当。
だって、ギリアム本当に超優秀だから。
「私は今回本当にオペロント侯爵を許す気はありません。
息の根を止める勢いで、締め上げて差し上げます」
言葉使いが丁寧な分、怖いね。
「もちろんそれは構いませんが…それについては…」
私は自分の計画と、こういう形でまとめてはどうか…ということ
をギリアムにはなした。
するとギリアムは目を輝かせて、
「フィリーは天才ですか!!」
大袈裟ダネ。
大天才にいわれると、何かこしょったい。
「じゃあ、オペロント侯爵の件はひとまずその方向でよろしい
でしょうか?」
「ええ、フィリーの好きなように」
ギリアムは上機嫌だ。
「では改めて…本日の本題に移ります」
「本題?」
ギリアムは不思議そうな顔をする。
う~ん、育ちがいい分、やっぱりわかってねぇな~。
「お茶会の時…規則違反をした近衛騎士が最後に言っていた言葉
…覚えてらっしゃいますか?」
「…フィリーを取調室に連れていくよう、王女殿下に頼まれた…
でしたよね」
「それも間違いではありませんが、重要なのは…
―――そのあとの手筈は整えてある、迷惑はかけない―――の
部分です」
「…フィリーを拘束して、私と何か取引するつもりだったの
では?」
あ、なんかジェード呆れてるよ…だよね~。
「……貴族の令嬢(夫人)の、一番の醜聞が何か…ご存じですよ
ね、ギリアム様」
するとギリアムの顔がみるみる曇り、
「……まさか」
それはどんどん怒りの色へと変わる。
「ええ…そうです。
私を近衛騎士の取調室で…襲わせる気だったんですよ」
「……」
ギリアムは怒りで言葉が出ない用だ。
当然だけど。
代わりにフォルトが、
「なるほど…あそこまで酷いことをして、報復が怖くないのかと
思っていたのですが…そういう事ですか」
そう。
これに関しては、クレア嬢とタニア侯爵夫人がどこまで関わっていた
かはわからない。
だが、いくら証拠が残りずらい(招待状は回収されてしまう)状況でも
私のバックにはギリアムがいる。
あそこまでの事をするなら、私の口を確実に封じられる自信が無ければ
やるのはリスキーだ。
「まあ実際…一度の醜聞で婚約破棄をする貴族は、一定数いますからねぇ。
普通の家であれば、隠そうとするでしょう」
エマは少し歯がゆそうに、言う。
そうだよね。
それを縦に、私にギリアムに対しての口封じをする気だったんだろう。
まあ、あのバカ王女は口封じなんて生温いことせずに、私を社会的に
抹殺したかったんだろうけど。
「ただ、さすがに近衛騎士にそこまでやらせるとなると…無理
かもしれないと思ったのでしょう。
外部から人を入れて、やらせるつもりだったようですね。
あ、手配してあった人員は、ジェードが確保してくれました」
「……お手柄だ」
眼が怖いよ、ギリアム。
「そして私がお茶会後すぐに、フォルトに命じたこともあり、
捉えた人間から、手配した場所の大本が割れて、契約書等も無事
確保できました」
「よくやった…」
だからさ。
ほめるんだったら、せめて笑おうよ。
怖いよ、顔が!
ギリアムは静かに立ち上がる。
「ではこれから、証拠をもって、王宮へ…」
「おやめください!!」
珍しく私の声に反応せず、さっさと準備を続ける。
「今行ったところで、完全に息の根を止めることはできません!」
ギリアムはぴたりと行動を止め、やっぱり静かに私の前に来る。
「じゃあ…どうしろと言うのですか!!
あなたを襲わせようとした人間を、野放しにしろと?」
いつの間にか、ギリアムの眼からは涙の筋が…。
私はそんなギリアムを、何も言わず、ただ抱きしめた。
そして…。
「ギリアム様…お願いです。
お願いですから、私の言葉を最後まで聞いてください。
お願いです…」
お願いです…を、呪文のように繰り返した。
ギリアム…気持ちは嬉しい、嬉しいから…。
お願いだから、私の作戦を聞いて!!
私はあなた以上に…そういうことをする人間を嫌悪し…憎悪して
いるんだから!!
だから!!
完全に息の根を止めてやりたいんだよ!!
協力してくれ!!
年のころはギリアムと同じくらい…いや、少し上にも見える。
整えていないボサッとした黒髪に、ターバンを巻いて…。
顔中に傷があるから、もしかしたら体も、そんなカンジかも…。
太い眉と堀の深い顔…しかし特筆すべきは、やはり眼だろう。
彼の眼には瞳孔が存在しない…白目とその中心に、うすい灰色の
円があるだけ…だから…。
すぐにわかった、眼が見えないんだと。
「初めまして、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢がご挨拶
申し上げます」
まあだからって、私の行動が変わるわけじゃないんだが。
スカートを両手で軽く摘まみ上げ、頭をげ、礼の形をとる。
するとジェードはさもおかしげに笑って、
「オレなんかに、そんな行儀のいい挨拶をするとはね」
雇い主?上司?の奥方候補に対して、敬語は一切ない。
私はフォルトが何か言う前に、素早く、
「あら…私はあなたに感謝しているのだから、当たり前では
ないのですか?」
「はは…なるほど」
正直、行儀良くされるより、こっちの方が私の性に合うんだよね。
「改めて…ギリアム様を助けてくださり、ありがとうござい
ました」
「…アンタは本当にいい人だな」
「ジェード!」
フォルトが責めるような口調になるが、さりげなく制する。
「オレの眼のことや傷のことは、一切聞かないんだからな」
「あら…人には色々事情があるもので、ない人なんていないわ。
ジェード卿が自分から喋らない限り、私は詮索する気もないし、
その必要もない」
するとジェードはけらけら笑い、
「オレに卿なんて、必要ないですよぉ。
もともとそんな身分でもないしねぇ、呼び捨てで」
「わかりました、ジェード…。
重要なのは、あなたが私の大切な人の力になってくれたという
点だけよ」
するとジェードは先ほど以上に、愉快そうに笑い、
「まったく奥様は…どこまで聡明なんですかねぇ」
「ちょっと!!まだ奥様違う」
「これは失礼」
直す気がまったくなさそうな笑い方だ…うん。
さてそれでは役者はそろった。
「フォルト…改めて言うけれど、お茶会直後に指示した件…
ギリアム様への報告はまだでしょう?」
「……ことがことですので…」
大分暗い顔だ。
まあ、そうだよね。
「確保はできた?」
「…私が行った時には、ジェードがあらかた済ませていました」
うわお。
本当にギリアムの周りは優秀だ。
「それはそれは…重ねてお礼申し上げます」
「よしてください。
まあ…奥様がそうであるように、オレもお上品とはかけ離れた
世界で生きてきたんで…、下種な人間の考えることは、だいたい
わかるんですよ」
「そうなんですね、とても頼もしいです。
では、もう一つお願い聞いていただいても?」
「なんですか?」
「今日これから、公爵邸に帰って…食事をとったらギリアム様に
このことをお話しします。
そして、私なりのこの件に関する、今後のことを話し合いたい
のです」
「ふむ…」
フォルトはだいぶ難しい顔をしている。
「なるほど、ご当主殿を抑える役をやれと?」
本当に優秀だナー。
「ええ…、私ができる限り抑えますが、万が一王家に殴り込む
などがあってはまずいので…」
「わかりました、承りましょう」
「ありがとうございます!!
ことがことだけに、大人数に話を聞かせるわけにはいきません。
ただギリアムが暴れ出すと、私とフォルト、エマだけでは…」
「でしょうね。
まあ、ここまで関わりましたし、奥様のお役に立てるなら、
喜んで」
あ、また奥様言っとる。
まあ、今回は大目に見よう。
大役をしてもらわにゃならんし。
「あ、フォルト…」
「はい」
「その時一緒に、王家がこちらに連絡してこないだろう理由も
話しますよ」
「わかりました」
フォルト…なんか不満そうやね。
ジェードはくすくす笑っとるし…。
どしたんや?
そんなことを私が考えていると、公爵邸が見えてきた。
…ん?なんか見慣れたシルエットが、門の前に…。
「フィリー!!」
「ギリアム様?」
馬車の扉から出た私をエスコート…じゃなくて、抱き上げた。
「心配しましたよ!!
私が帰って来た時、まだ帰っていないと言うから!!」
あ~、昨日のことが、まだ響いてんな~。
当たり前か。
「すみません…、今日中にすべてのブティックを回ってしまい
たくて…」
「別に…いいですけど…」
ちっともよくねーって表情だぞ、おい!!
そんな中、ギリアムは馬車の中にいる、ジェードに気付いたよう
で…。
「珍しいな…お前が表に出るとは…」
緊張した表情になる…。
あ~、この人って何か緊急事態じゃないと、出てこん人なのか…。
「私がお礼を言いたいと、フォルトに言ったんです。
お茶会でだいぶ、ギリアムの力になってくれたみたいだから…」
「そうでしたか」
お、ホッとした顔。
よかった、よかった。
「お腹すきませんか?」
「すごくすきました」
「では、食事にしましょう。
フィリーの元気が出るようにと、今日は特にシェフに腕をふるわせ
ましたから」
「本当ですか?楽しみです…。
あ、それと…夕食の後、お茶会に関連した話をしたいのですが、
ジェードも同席して欲しいのです」
「それは…構いませんが」
「ありがとうございます」
パパンとママンも交えて、美味しい食事を堪能した後、私たちは
ギリアムの書斎に集まった。
私、ギリアム、フォルト、エマ、ジェードの5人だ。
私はまず、今日のブティックでの出来事と、今後起こりうる予想
と展開についてギリアムに話した。
「フィリーは本当に優秀ですね」
「ありがとうございます。
ギリアム様に褒めていただけると、本当に嬉しいです」
あ、これは本当。
だって、ギリアム本当に超優秀だから。
「私は今回本当にオペロント侯爵を許す気はありません。
息の根を止める勢いで、締め上げて差し上げます」
言葉使いが丁寧な分、怖いね。
「もちろんそれは構いませんが…それについては…」
私は自分の計画と、こういう形でまとめてはどうか…ということ
をギリアムにはなした。
するとギリアムは目を輝かせて、
「フィリーは天才ですか!!」
大袈裟ダネ。
大天才にいわれると、何かこしょったい。
「じゃあ、オペロント侯爵の件はひとまずその方向でよろしい
でしょうか?」
「ええ、フィリーの好きなように」
ギリアムは上機嫌だ。
「では改めて…本日の本題に移ります」
「本題?」
ギリアムは不思議そうな顔をする。
う~ん、育ちがいい分、やっぱりわかってねぇな~。
「お茶会の時…規則違反をした近衛騎士が最後に言っていた言葉
…覚えてらっしゃいますか?」
「…フィリーを取調室に連れていくよう、王女殿下に頼まれた…
でしたよね」
「それも間違いではありませんが、重要なのは…
―――そのあとの手筈は整えてある、迷惑はかけない―――の
部分です」
「…フィリーを拘束して、私と何か取引するつもりだったの
では?」
あ、なんかジェード呆れてるよ…だよね~。
「……貴族の令嬢(夫人)の、一番の醜聞が何か…ご存じですよ
ね、ギリアム様」
するとギリアムの顔がみるみる曇り、
「……まさか」
それはどんどん怒りの色へと変わる。
「ええ…そうです。
私を近衛騎士の取調室で…襲わせる気だったんですよ」
「……」
ギリアムは怒りで言葉が出ない用だ。
当然だけど。
代わりにフォルトが、
「なるほど…あそこまで酷いことをして、報復が怖くないのかと
思っていたのですが…そういう事ですか」
そう。
これに関しては、クレア嬢とタニア侯爵夫人がどこまで関わっていた
かはわからない。
だが、いくら証拠が残りずらい(招待状は回収されてしまう)状況でも
私のバックにはギリアムがいる。
あそこまでの事をするなら、私の口を確実に封じられる自信が無ければ
やるのはリスキーだ。
「まあ実際…一度の醜聞で婚約破棄をする貴族は、一定数いますからねぇ。
普通の家であれば、隠そうとするでしょう」
エマは少し歯がゆそうに、言う。
そうだよね。
それを縦に、私にギリアムに対しての口封じをする気だったんだろう。
まあ、あのバカ王女は口封じなんて生温いことせずに、私を社会的に
抹殺したかったんだろうけど。
「ただ、さすがに近衛騎士にそこまでやらせるとなると…無理
かもしれないと思ったのでしょう。
外部から人を入れて、やらせるつもりだったようですね。
あ、手配してあった人員は、ジェードが確保してくれました」
「……お手柄だ」
眼が怖いよ、ギリアム。
「そして私がお茶会後すぐに、フォルトに命じたこともあり、
捉えた人間から、手配した場所の大本が割れて、契約書等も無事
確保できました」
「よくやった…」
だからさ。
ほめるんだったら、せめて笑おうよ。
怖いよ、顔が!
ギリアムは静かに立ち上がる。
「ではこれから、証拠をもって、王宮へ…」
「おやめください!!」
珍しく私の声に反応せず、さっさと準備を続ける。
「今行ったところで、完全に息の根を止めることはできません!」
ギリアムはぴたりと行動を止め、やっぱり静かに私の前に来る。
「じゃあ…どうしろと言うのですか!!
あなたを襲わせようとした人間を、野放しにしろと?」
いつの間にか、ギリアムの眼からは涙の筋が…。
私はそんなギリアムを、何も言わず、ただ抱きしめた。
そして…。
「ギリアム様…お願いです。
お願いですから、私の言葉を最後まで聞いてください。
お願いです…」
お願いです…を、呪文のように繰り返した。
ギリアム…気持ちは嬉しい、嬉しいから…。
お願いだから、私の作戦を聞いて!!
私はあなた以上に…そういうことをする人間を嫌悪し…憎悪して
いるんだから!!
だから!!
完全に息の根を止めてやりたいんだよ!!
協力してくれ!!
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