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第1章 怪物
1 収穫祭スタートだよん
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「テメェ!!順番守れや!!オレが先だろうが!!」
「フザケンナ!!こちとら、5日前から並んでんだぞ、コラ!!」
「はいは~い、喧嘩しな~い」
殺伐した声に割って入ったのは…、クローバだった。
長蛇の列の真ん中で…喧嘩していた男2人は、顔をクローバに鷲掴みにさて、無理やり
引っぺがされた。
「順番は守って下さ~い。商品はまだまだ沢山ありますからぁ~」
ゆっるーい声とは裏腹に、男たちを抑えつける手の握力は、有無を言わせない。
この長蛇の列は…フィリアム商会のブースに入るために、並んでいる人々…。
フィリアム商会は沢山の人が来ることを見越して、少し離れた広場に各商品のカテゴリー
わけをし、出店のように見てもらえるよう配置した。
整備員もしっかりと準備して、順次入ってもらっているのだが…。
老若男女問わず、列はどんどん長くなる一方だ。
「商品もそうだけど!!オルフィリア公爵夫人を見に来ているんだってば!!」
「そうそう!!ギリアム様の最愛の人にして、庶民の味方!!」
「早く行かないと、どこかへ行っちまうかもだろ!!」
またギャーギャー言い出した。
「奥様は、今日は一日ブースにいるそうです~。
だから、しっかり並んでくださ~い」
フィリー軍団は…私の護衛に2人、2人は整備員の手伝い、2人は売り子といった具合に配置している。
どこで何が起こっても、対応できるよう、少しばらけさせた。
その頃…ブースにいる私はといえば…。
「オルフィリア公爵夫人~!!こっちむいてくださ~い!!」
「これからも応援しています~!!」
「病気治りました~!!これからも救いの女神でいてください~」
……たまに、こしょったいのが聞こえてくるが、まあしょうがない。
奥から笑顔で手を振るわたくし。
人気女優って…こんな感じなのかな…。
本当は…売り子でもやりたかったのだが、やっぱり警護の関係上、無理がある…ということで、
ブースの奥で、来る人に手を振っている。
そんな私には…フォルトとエマがピッタリとくっついている。
民衆が暴徒化すると、マズい…ということで。
……この2人も最近、ギリアムのわんこが移ってきているような、気がしてならない…。
「やっぱり奥様は…すごい人気ですね…」
スペードが本当に感心しているよう。
「嬉しい事だけどね…ああ、そうそう。昨日言った事だけどね…」
私はスペードに耳打ちするように、小声で、
「無理は絶対しないで!!積極的に行く必要はない…。
あくまで…向こうが接触して来たら…で、いいから」
「わかっています…」
スペードの抑揚のない声が…何だか私の不安をあおる。
「自分を…捨て駒にするようなことは、絶対になしよ!!
そんな感じを受けたら…直ぐに手を引かせるからね!!」
これだけは…強めに言わなきゃいけないと思った。
するとスペードは…一瞬だけなんだか…みょーな間を見せたが、
「もちろん…奥様の意にそぐわないことは、絶対に致しません…」
しっかりと答えたので、
「ならいいわ」
私も…それ以上は言わなかった。
一方…一番奥の隅っこの出店では…。
「はーい、並んで並んで~!!まだた~くさんあるから、順番にね~」
ハートと…ジョーカーが、何やら配っている。
周りには…沢山の子供たちと…大人もちらほら。
「ほい、出来たぞ~、落とすなよ」
目を輝かせた子供たちに渡しているのは…ズバリ わたあめ だ。
わたあめって、材料は砂糖のみの手軽なおやつとして、前世の世界じゃ有名だったろうが…。
それは砂糖が豊富に手に入るように、なってからの話。
前にも少し話したが、この世界の砂糖は大変貴重品かつ、高級品。
金持ちの物…だったんだが…。
「いや~、大盛況だなぁ~」
何だか他人事のように言っているのは、他のスタッフと一緒に作業をしているトールレィ卿…。
「ほっほ。砂糖菓子が食べられることなど、平民の子供は滅多にありませんからな」
ジョーカーが…かなり穏やかな…でも、説得力のある声を出している。
「そーですよ。ずっと指くわえて見ているしか、なかったんだから!!」
ハートも…かなり実感の伴った言を吐く。
「しかし…、祭りとはいえ、こんな大盤振る舞いをして、大丈夫なのですかな…?」
ジョーカーの心配も最もだった。
収穫祭…このわたあめは初ご披露なのだが、なんと!!子供はタダ!!そして大人でも1ブロンズ
(100円)という安さ。
砂糖菓子一人分が…1シルバー(1000円)前後の相場から見れば、破格の安さ。
ある程度、客寄せパンダと宣伝の意味合いもあるから、とはいえ…。
「いや~、それがですな…。これもオルフィリア公爵夫人の快挙の1つなのですが…」
トールレィ卿が話し出す。
ファルメニウス公爵家所有の鉱山とその一帯の地域に…おびただしい椰子の木が植わっていたのだ。
かなりデカくなってきていたので、そろそろ伐採しては…という話が持ち上がり、私の耳にも入った。
そこで待ったをかけたのが私。
だって…ヤシの木の樹液からは、良質の砂糖がとれるの…前世の砂糖マニアに聞いて知ってたから。
「オルフィリア公爵夫人は生活の知恵的知識はかなりお持ちだが…、それにはみな驚きましたね。
だから急遽、やってみたら…まあ見事に当たりで。
おかげで砂糖に関しては…ほぼほぼ自社生産が可能になりました。
フィリアム商会の系列店のスイーツメニューが豊富にできて…でもそれだけでなく、祭りの目玉として、
わたあめ…なんていう、見たことも聞いたこともないお菓子を作り出して…」
かなり感心しながら、言葉を紡ぐ。
「それに…商業的なところもしっかり考えてらして、このわたあめ…平時も1ブロンズで売る予定
ですが、それで十分採算が合うんですよ。
オルフィリア公爵夫人自身が、幼いころお菓子など食べられない生活をしたから…。
子供たちのおこずかいでも、気軽に帰るお菓子を…といって、作りだした物、多いんですよ。
このわたあめもその1つです」
「それはそれは…奥様はやはり素晴らしいですなぁ」
「さすが!!アタシらの奥様~!!」
ジョーカーとハートは…自分の事のように喜んでいる。
そんなこんなで、初日…あっという間に昼時に。
「みんな、お疲れ様~、お昼にしましょ~」
私は…商品でもある食料品を並べ、みんなを迎えた。
それを食べながら…報告会だ。
「やっぱり…並んでいる最中、喧嘩する奴いましたね~。しっかり止めましたけど(クローバ)」
「まあ、フィリアム商会のブースはある程度それを…見越していたからね」
私は…サンドイッチをつまみつつ、ハムスターになっていた。
「しかし…わたあめはいいですな。子供たちが…みんな目を輝かせていましたよ(ジョーカー)」
「ふだん…1ブロンズも払えないような子も、来てたしね~。
手招きしたら…恐る恐る来て、渡してあげたら喜んでた(ハート)」
「オレは見えないけど…変わった形をしているんだって?(ジェード)」
「そうよ!!本当に綿みたいにふわふわで…噛むと口の中でジュワッと溶けて、すごーく甘くて
美味しいの~(ハート)」
「ここにもあるから、ジェードも食べてみてよ。
手につくとべたべたするから、直ぐに口に入れてね」
私が渡してあげると…ヤギのようにもしゃもしゃ食べていた…。
ちょっと顔がほころんでいるから、美味しいのだろう…。
「でも…やっぱり影から…、ブースを見張っているって言うか…覗いている…って感じのが
いましたね…複数…(ダイヤ)」
「ん~、それはいつもの事だから、悪さしてこなければ、ほっといて。
場合によって…貴族とつながりがあると、厄介だから」
「どう言う事です?(クローバ)」
「人気があればやっかみを受ける。
フィリアム商会…ひいてはファルメニウス公爵家に粉かけたい奴は、不審者のフリして近づいて
…わざと手を出させようとするのもいるって事さ(スペード)」
「その通りよ…だから、スタッフやお客さんに手出しされない限り…、ひとまず動向を見張る
しかないってこと」
こればかりは…歯がゆくてもいかんともしがたい。
「オルフィリア公爵夫人、ただ今戻りました」
そんな話をしていたら…、ラルトが帰ってきた。
ラルトは…他の商会のブースを回って、状況を観察する係だったのよ、今回は。
「他の所を見回りましたが…、やっぱりちらほら、出店予定の所が急遽欠席していましたね」
「やっぱり…サバクアシをメインにしていた所かしら?」
「はい…おおむねそうです。キンラク商会も…自粛という名目で、今回の収穫祭…出店を
見合わせていますから…」
まあ、あれだけの事をしでかしたんだからなぁ…。
「サバクアシの関連商品は…不買運動までいきませんが、みな避けている傾向はありますね。
メインでやっていなかった所はまだしも…メインでやっていた所は、大打撃でしょう」
まあ…どうしても安さを売りにしているから…。
金を持っている人間より、金を持っていない人間の方が多ければ…、どうしてもそうなら
ざるを得ない。
「ひとまずわかったわ…。どうもありがとう。
午後からはどうする?ブースにいるなら、やることは色々あるけど…」
「ですねぇ…お昼になって、列が落ち着くどころか、ますます長くなってましたからねぇ」
そう言って、ブースの入り口を見れば…長蛇の列がさらに長く…。
嬉しい悲鳴…と言うやつなんだけどね。
「ところでオルフィリア公爵夫人…、ファンファーレパーティーは、本当に参加されないので?」
ラルトとしては、心配どころだろう。
貴族の集まりは貴族である以上、どうしても避けて通れない。
「ええ、しないわ。
どうせ…ファンファーレパーティーって、王都にいる連中のダベり会でしょ?
下ごしらえはいろいろ済ませたし…、ちょっと試したいこともあるから、参加しない…の
方がいいわ」
薬の件や、新法案…かなり個人的なこと以外にも、暴れまわったからねぇ…。
注目の的になるのはわかりきっているし、様々な利権目的で寄ってくるのがいるのは眼に
見えている。
そいつらが、私のいるところといないところで…何を言うのか…楽しみたいのだよ。
ギリアムも…警備の関係上、ファンファーレパーティーは欠席だし。
「なるほど…計算されているなら、特に問題ございませんね」
ラルトは…これで引いてくれるから、ありがたいよ。
「……って、なんか騒がしくない?入り口付近…」
「本当ですね…ちょっと見てきます…」
ラルトのその言葉と共に、フィリー軍団が食べるのをやめ、私の…周りに陣形を作るのだった。
「フザケンナ!!こちとら、5日前から並んでんだぞ、コラ!!」
「はいは~い、喧嘩しな~い」
殺伐した声に割って入ったのは…、クローバだった。
長蛇の列の真ん中で…喧嘩していた男2人は、顔をクローバに鷲掴みにさて、無理やり
引っぺがされた。
「順番は守って下さ~い。商品はまだまだ沢山ありますからぁ~」
ゆっるーい声とは裏腹に、男たちを抑えつける手の握力は、有無を言わせない。
この長蛇の列は…フィリアム商会のブースに入るために、並んでいる人々…。
フィリアム商会は沢山の人が来ることを見越して、少し離れた広場に各商品のカテゴリー
わけをし、出店のように見てもらえるよう配置した。
整備員もしっかりと準備して、順次入ってもらっているのだが…。
老若男女問わず、列はどんどん長くなる一方だ。
「商品もそうだけど!!オルフィリア公爵夫人を見に来ているんだってば!!」
「そうそう!!ギリアム様の最愛の人にして、庶民の味方!!」
「早く行かないと、どこかへ行っちまうかもだろ!!」
またギャーギャー言い出した。
「奥様は、今日は一日ブースにいるそうです~。
だから、しっかり並んでくださ~い」
フィリー軍団は…私の護衛に2人、2人は整備員の手伝い、2人は売り子といった具合に配置している。
どこで何が起こっても、対応できるよう、少しばらけさせた。
その頃…ブースにいる私はといえば…。
「オルフィリア公爵夫人~!!こっちむいてくださ~い!!」
「これからも応援しています~!!」
「病気治りました~!!これからも救いの女神でいてください~」
……たまに、こしょったいのが聞こえてくるが、まあしょうがない。
奥から笑顔で手を振るわたくし。
人気女優って…こんな感じなのかな…。
本当は…売り子でもやりたかったのだが、やっぱり警護の関係上、無理がある…ということで、
ブースの奥で、来る人に手を振っている。
そんな私には…フォルトとエマがピッタリとくっついている。
民衆が暴徒化すると、マズい…ということで。
……この2人も最近、ギリアムのわんこが移ってきているような、気がしてならない…。
「やっぱり奥様は…すごい人気ですね…」
スペードが本当に感心しているよう。
「嬉しい事だけどね…ああ、そうそう。昨日言った事だけどね…」
私はスペードに耳打ちするように、小声で、
「無理は絶対しないで!!積極的に行く必要はない…。
あくまで…向こうが接触して来たら…で、いいから」
「わかっています…」
スペードの抑揚のない声が…何だか私の不安をあおる。
「自分を…捨て駒にするようなことは、絶対になしよ!!
そんな感じを受けたら…直ぐに手を引かせるからね!!」
これだけは…強めに言わなきゃいけないと思った。
するとスペードは…一瞬だけなんだか…みょーな間を見せたが、
「もちろん…奥様の意にそぐわないことは、絶対に致しません…」
しっかりと答えたので、
「ならいいわ」
私も…それ以上は言わなかった。
一方…一番奥の隅っこの出店では…。
「はーい、並んで並んで~!!まだた~くさんあるから、順番にね~」
ハートと…ジョーカーが、何やら配っている。
周りには…沢山の子供たちと…大人もちらほら。
「ほい、出来たぞ~、落とすなよ」
目を輝かせた子供たちに渡しているのは…ズバリ わたあめ だ。
わたあめって、材料は砂糖のみの手軽なおやつとして、前世の世界じゃ有名だったろうが…。
それは砂糖が豊富に手に入るように、なってからの話。
前にも少し話したが、この世界の砂糖は大変貴重品かつ、高級品。
金持ちの物…だったんだが…。
「いや~、大盛況だなぁ~」
何だか他人事のように言っているのは、他のスタッフと一緒に作業をしているトールレィ卿…。
「ほっほ。砂糖菓子が食べられることなど、平民の子供は滅多にありませんからな」
ジョーカーが…かなり穏やかな…でも、説得力のある声を出している。
「そーですよ。ずっと指くわえて見ているしか、なかったんだから!!」
ハートも…かなり実感の伴った言を吐く。
「しかし…、祭りとはいえ、こんな大盤振る舞いをして、大丈夫なのですかな…?」
ジョーカーの心配も最もだった。
収穫祭…このわたあめは初ご披露なのだが、なんと!!子供はタダ!!そして大人でも1ブロンズ
(100円)という安さ。
砂糖菓子一人分が…1シルバー(1000円)前後の相場から見れば、破格の安さ。
ある程度、客寄せパンダと宣伝の意味合いもあるから、とはいえ…。
「いや~、それがですな…。これもオルフィリア公爵夫人の快挙の1つなのですが…」
トールレィ卿が話し出す。
ファルメニウス公爵家所有の鉱山とその一帯の地域に…おびただしい椰子の木が植わっていたのだ。
かなりデカくなってきていたので、そろそろ伐採しては…という話が持ち上がり、私の耳にも入った。
そこで待ったをかけたのが私。
だって…ヤシの木の樹液からは、良質の砂糖がとれるの…前世の砂糖マニアに聞いて知ってたから。
「オルフィリア公爵夫人は生活の知恵的知識はかなりお持ちだが…、それにはみな驚きましたね。
だから急遽、やってみたら…まあ見事に当たりで。
おかげで砂糖に関しては…ほぼほぼ自社生産が可能になりました。
フィリアム商会の系列店のスイーツメニューが豊富にできて…でもそれだけでなく、祭りの目玉として、
わたあめ…なんていう、見たことも聞いたこともないお菓子を作り出して…」
かなり感心しながら、言葉を紡ぐ。
「それに…商業的なところもしっかり考えてらして、このわたあめ…平時も1ブロンズで売る予定
ですが、それで十分採算が合うんですよ。
オルフィリア公爵夫人自身が、幼いころお菓子など食べられない生活をしたから…。
子供たちのおこずかいでも、気軽に帰るお菓子を…といって、作りだした物、多いんですよ。
このわたあめもその1つです」
「それはそれは…奥様はやはり素晴らしいですなぁ」
「さすが!!アタシらの奥様~!!」
ジョーカーとハートは…自分の事のように喜んでいる。
そんなこんなで、初日…あっという間に昼時に。
「みんな、お疲れ様~、お昼にしましょ~」
私は…商品でもある食料品を並べ、みんなを迎えた。
それを食べながら…報告会だ。
「やっぱり…並んでいる最中、喧嘩する奴いましたね~。しっかり止めましたけど(クローバ)」
「まあ、フィリアム商会のブースはある程度それを…見越していたからね」
私は…サンドイッチをつまみつつ、ハムスターになっていた。
「しかし…わたあめはいいですな。子供たちが…みんな目を輝かせていましたよ(ジョーカー)」
「ふだん…1ブロンズも払えないような子も、来てたしね~。
手招きしたら…恐る恐る来て、渡してあげたら喜んでた(ハート)」
「オレは見えないけど…変わった形をしているんだって?(ジェード)」
「そうよ!!本当に綿みたいにふわふわで…噛むと口の中でジュワッと溶けて、すごーく甘くて
美味しいの~(ハート)」
「ここにもあるから、ジェードも食べてみてよ。
手につくとべたべたするから、直ぐに口に入れてね」
私が渡してあげると…ヤギのようにもしゃもしゃ食べていた…。
ちょっと顔がほころんでいるから、美味しいのだろう…。
「でも…やっぱり影から…、ブースを見張っているって言うか…覗いている…って感じのが
いましたね…複数…(ダイヤ)」
「ん~、それはいつもの事だから、悪さしてこなければ、ほっといて。
場合によって…貴族とつながりがあると、厄介だから」
「どう言う事です?(クローバ)」
「人気があればやっかみを受ける。
フィリアム商会…ひいてはファルメニウス公爵家に粉かけたい奴は、不審者のフリして近づいて
…わざと手を出させようとするのもいるって事さ(スペード)」
「その通りよ…だから、スタッフやお客さんに手出しされない限り…、ひとまず動向を見張る
しかないってこと」
こればかりは…歯がゆくてもいかんともしがたい。
「オルフィリア公爵夫人、ただ今戻りました」
そんな話をしていたら…、ラルトが帰ってきた。
ラルトは…他の商会のブースを回って、状況を観察する係だったのよ、今回は。
「他の所を見回りましたが…、やっぱりちらほら、出店予定の所が急遽欠席していましたね」
「やっぱり…サバクアシをメインにしていた所かしら?」
「はい…おおむねそうです。キンラク商会も…自粛という名目で、今回の収穫祭…出店を
見合わせていますから…」
まあ、あれだけの事をしでかしたんだからなぁ…。
「サバクアシの関連商品は…不買運動までいきませんが、みな避けている傾向はありますね。
メインでやっていなかった所はまだしも…メインでやっていた所は、大打撃でしょう」
まあ…どうしても安さを売りにしているから…。
金を持っている人間より、金を持っていない人間の方が多ければ…、どうしてもそうなら
ざるを得ない。
「ひとまずわかったわ…。どうもありがとう。
午後からはどうする?ブースにいるなら、やることは色々あるけど…」
「ですねぇ…お昼になって、列が落ち着くどころか、ますます長くなってましたからねぇ」
そう言って、ブースの入り口を見れば…長蛇の列がさらに長く…。
嬉しい悲鳴…と言うやつなんだけどね。
「ところでオルフィリア公爵夫人…、ファンファーレパーティーは、本当に参加されないので?」
ラルトとしては、心配どころだろう。
貴族の集まりは貴族である以上、どうしても避けて通れない。
「ええ、しないわ。
どうせ…ファンファーレパーティーって、王都にいる連中のダベり会でしょ?
下ごしらえはいろいろ済ませたし…、ちょっと試したいこともあるから、参加しない…の
方がいいわ」
薬の件や、新法案…かなり個人的なこと以外にも、暴れまわったからねぇ…。
注目の的になるのはわかりきっているし、様々な利権目的で寄ってくるのがいるのは眼に
見えている。
そいつらが、私のいるところといないところで…何を言うのか…楽しみたいのだよ。
ギリアムも…警備の関係上、ファンファーレパーティーは欠席だし。
「なるほど…計算されているなら、特に問題ございませんね」
ラルトは…これで引いてくれるから、ありがたいよ。
「……って、なんか騒がしくない?入り口付近…」
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