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第1章 狩猟
7 黒い波の正体
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「まだ状況はわからんのか!!」
ギリアムの怒声が響く。
「ひとまず国王陛下と王家の方々を避難させろ!!
私は爆発のあった場所を、見に行く!!」
ギリアムが走って来た愛馬に、またがろうとした時、
「お待ちなさい!!ギリアム!!」
王后陛下から待ったがかかる。
「レティアが先ほどの爆発に驚いて、足をくじいたようです!!
アナタが運搬と護衛を担当なさい!!」
「!!」
ギリアムは一瞬だけ、苦しそうな顔をしたが…。
「……かしこまりました」
感情を込めず答え、黙ってバカ王女を抱え上げた。
あーこれ…ちゃんと言い聞かせといてよかったぁ~。
私は絶対やってくるって、予想していたから。
ギリアムは事が起こったら、真っ先に私の所に来るって言ったけど、もし王家から
待ったがかかったら、それに従うよう言ってあった。
私のそばには師団長たちも、護衛騎士たちも、ジェードもいる…。
フォルトもエマもね。
だから…王家より己の妻を優先する素振りを見せちゃダメだって!!
もしそんな素振りを見せたら、それを私が指示したと言って、結婚自体の無効を言い渡して
来る可能性があるからって。
ギリアムは、
「ローカス卿!!ベンズ卿!!後は任せた!!」
「もちろんだ!!
おい、お前ら!!ギリアム公爵閣下について行って、王家の護衛を頼む!!
オレと副団長は、会場の避難を指示して回る!!」
「了解いたしました!!」
王家の馬車はすぐに出立し、ギリアムと近衛騎士団員達が、周りを囲む。
それを見送りつつ、
「オレとベンズ卿は、ファルメニウス公爵家の旗の下に行く!!
残りの団員は、その他の人間達の救助と、爆発物の有無を調査しろ!!」
あ、貴族は移動中、必ず旗を掲げることになってんの。
居場所がすぐにわかるようにって。
(マギー…無事でいろよ!!)
的確な指示を出しつつ、馬にまたがろうとした時…、
「お、お待ちください!!ローカス様!!」
飛び出してきたのは…レベッカだ。
「じっ、実は負傷した人間があちらに多数…どうやら敵があちらからも来ているようです!!
ですのでローカス様は…」
レベッカの言葉はそこで止まる。
その顔色は…真っ青だ。
理由は簡単。
ローカス卿が、今にも殺しそうな目で、レベッカを睨んだからだ。
レベッカの言葉が止まったことを見計らい、
「オイ!!2人ほど、レベッカ嬢について行って、詳細を確認しろ!!
オレとベンズ卿は行く!!」
「了解しました!!」
2人がレベッカに寄って行ったのを確認する前に、ローカス卿は馬に乗り、ベンズ卿と共に
その場を走り去った。
レベッカは、寄って来た2人の近衛騎士が何を言っても、しばらくその場を動かなかった…。
---------------------------------------------------------------------------------------
私の朦朧とした意識を復活させたもの…。
黒い…波のようなもの…。
それは…。
「うわっ!!」
「ぎゃぁっ!!」
「な、なんだ、こいつ等!!」
「こんなにたくさん、いったいどこから!!」
大量の…ネズミだった。
ネズミは…体が小さいからこそ、一匹、二匹だったら、さしたる害はない。
しかしそれが…どう少なく見積もっても、万の桁に匹敵する数が居れば…。
そしてそれに襲われれば、どうなるか…は、火を見るよりも明らかだった。
ネズミたちは、私達だけでなく、猛獣たちにも襲い掛かっている…。
おそらく薬が使われている…。
猛獣のモノと同じ…かな…。
だが…。
なんだか、違和感が拭えない。
私の頭は一瞬の電撃によって、少し回復したとはいえ、まだまだぼけた部分を残している。
そのうち…。
「うおおぉっ!!」
私を吊り上げていた敵の手にも…ネズミ達は群がるようにたかり始める。
そして敵は…本気で驚いているようにしか見えない。
……マジか?
これでハッキリした…。
このネズミは…黒幕実行犯の仕込みじゃない。
じゃあ…。
次の考えが私の中に浮かぼうとした時、私の喉から、敵の手が離れる。
「ぐがぁぁっ!!」
敵も味方も関係なく、ネズミたちは群がる。
さながらどんどん粉を足していく団子のように、我先にとネズミたちは、人や動物に群がり、
噛みついているようだ。
でも…。
私とマギーには、群がってこない…。
って、ことは!!
奥の手が使える!!
私は急いでドレスのボタンを全外し!!
ルベンディン侯爵家の時のように、一気に脱ぎ捨てた!!
「フィ、フィリー!!」
打合せしていても、やっぱりマギーは慌てている。
お嬢様だなぁ…。
って、そんなこと考えている暇はない!!
私は急いでマッチを擦り、ドレスにありったけぶっさす!!
あ、マッチはフィリアム商会で作ったの。
火をつけるったら、火打石か、木をこする…という、原始的な方法しかなかったから~。
特許取得して、ただ今製造中!!
って、宣伝している場合じゃねぇ!!
上手い具合に火はついてくれて、ドレスはどんどん燃え上がる…。
「全員、鼻と口を布で塞いで!!
煙をなるべく吸わないように!!」
ドレスが燃えれば燃えるほど、どんどん鼻を突く…異臭が漂い始める。
それが目に入ると…かなり涙が出るが、今は仕方がない。
なるべく煙の来ない方へ、移動するしかない。
そしてあたりに異臭と煙が広がると…。
ネズミたちは一斉に、悲鳴のような声を上げつつ、森の奥へと逃げていく…。
あ~、良かった。
実は…私とマギーのドレスにね…しこたま唐辛子を仕込んでおいたのだ。
柑橘系同様、動物ってのは、香辛料…特に唐辛子系の、ツンと来る匂いや煙が大嫌い。
猛獣に囲まれた時…いざとなったら使うつもりだったんだが、ネズミの撃退にも役立つとはね。
煙が引いたころ…。
「大丈夫ですか!!奥様!!」
ジェードが登場。
「大丈夫よ、ジェード!!ネズミに噛まれなかった?」
「噛まれました。
でも、煙でいなくなったんで!!
すぐ来ました!!」
「敵は?」
「逃げました!!」
なるほどね…ネズミとは言え、あんな大量に湧いたのに噛まれたんじゃぁ…結構な痛手だと
思うしね…。
「おーい!!大丈夫かぁ!!」
おお、ローカス卿とベンズ卿。
「全員…ケガはありますが、無事です!!」
私が答えると、ホッとしたようで、
「マギー!!」
「ローカス様!!」
今になって腰を抜かしているマギーの元に、ローカス卿が駆け寄る。
「大丈夫か!!」
「はい!!」
マギーの無事を確認し、胸をなでおろしたようだ。
「…ローカス様、お怪我を…」
「あ~、ネズミにかじられただけだから、心配すんな!!」
私はそれを聞いて、
「あの…ベンズ卿も噛まれました?」
と聞けば、
「ああ、来る途中、木の上からぼたぼたと落ちてきてな…。
その対処で時間がかかってしまった」
「なるほど…」
私は改めて、近くに転がっていたネズミの死体を確認する。
…………………………………。
やっぱりね。
私の当たってほしくない予想が、当たってしまったようだ。
「あの…皆さん、よろしいでしょうか?」
「どうしました?オルフィリア公爵夫人…」
「ネズミは…結構、病気を媒介することは、知っていらっしゃると思います。
ですので、全員揃ってでなくて構いませんから、後日…ファルメニウス公爵家に
いらしていただけませんか?
今度新しくファルメニウス公爵家の主治医になった方が、大変腕が良く、物知り
なので…。
念のため一度見てもらって欲しいのです」
「わかりました…」
こういう時、信頼関係作っとくと便利ね。
私は一抹の心配を抱えつつ、今日という日を終わりにするのだった。
ギリアムの怒声が響く。
「ひとまず国王陛下と王家の方々を避難させろ!!
私は爆発のあった場所を、見に行く!!」
ギリアムが走って来た愛馬に、またがろうとした時、
「お待ちなさい!!ギリアム!!」
王后陛下から待ったがかかる。
「レティアが先ほどの爆発に驚いて、足をくじいたようです!!
アナタが運搬と護衛を担当なさい!!」
「!!」
ギリアムは一瞬だけ、苦しそうな顔をしたが…。
「……かしこまりました」
感情を込めず答え、黙ってバカ王女を抱え上げた。
あーこれ…ちゃんと言い聞かせといてよかったぁ~。
私は絶対やってくるって、予想していたから。
ギリアムは事が起こったら、真っ先に私の所に来るって言ったけど、もし王家から
待ったがかかったら、それに従うよう言ってあった。
私のそばには師団長たちも、護衛騎士たちも、ジェードもいる…。
フォルトもエマもね。
だから…王家より己の妻を優先する素振りを見せちゃダメだって!!
もしそんな素振りを見せたら、それを私が指示したと言って、結婚自体の無効を言い渡して
来る可能性があるからって。
ギリアムは、
「ローカス卿!!ベンズ卿!!後は任せた!!」
「もちろんだ!!
おい、お前ら!!ギリアム公爵閣下について行って、王家の護衛を頼む!!
オレと副団長は、会場の避難を指示して回る!!」
「了解いたしました!!」
王家の馬車はすぐに出立し、ギリアムと近衛騎士団員達が、周りを囲む。
それを見送りつつ、
「オレとベンズ卿は、ファルメニウス公爵家の旗の下に行く!!
残りの団員は、その他の人間達の救助と、爆発物の有無を調査しろ!!」
あ、貴族は移動中、必ず旗を掲げることになってんの。
居場所がすぐにわかるようにって。
(マギー…無事でいろよ!!)
的確な指示を出しつつ、馬にまたがろうとした時…、
「お、お待ちください!!ローカス様!!」
飛び出してきたのは…レベッカだ。
「じっ、実は負傷した人間があちらに多数…どうやら敵があちらからも来ているようです!!
ですのでローカス様は…」
レベッカの言葉はそこで止まる。
その顔色は…真っ青だ。
理由は簡単。
ローカス卿が、今にも殺しそうな目で、レベッカを睨んだからだ。
レベッカの言葉が止まったことを見計らい、
「オイ!!2人ほど、レベッカ嬢について行って、詳細を確認しろ!!
オレとベンズ卿は行く!!」
「了解しました!!」
2人がレベッカに寄って行ったのを確認する前に、ローカス卿は馬に乗り、ベンズ卿と共に
その場を走り去った。
レベッカは、寄って来た2人の近衛騎士が何を言っても、しばらくその場を動かなかった…。
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私の朦朧とした意識を復活させたもの…。
黒い…波のようなもの…。
それは…。
「うわっ!!」
「ぎゃぁっ!!」
「な、なんだ、こいつ等!!」
「こんなにたくさん、いったいどこから!!」
大量の…ネズミだった。
ネズミは…体が小さいからこそ、一匹、二匹だったら、さしたる害はない。
しかしそれが…どう少なく見積もっても、万の桁に匹敵する数が居れば…。
そしてそれに襲われれば、どうなるか…は、火を見るよりも明らかだった。
ネズミたちは、私達だけでなく、猛獣たちにも襲い掛かっている…。
おそらく薬が使われている…。
猛獣のモノと同じ…かな…。
だが…。
なんだか、違和感が拭えない。
私の頭は一瞬の電撃によって、少し回復したとはいえ、まだまだぼけた部分を残している。
そのうち…。
「うおおぉっ!!」
私を吊り上げていた敵の手にも…ネズミ達は群がるようにたかり始める。
そして敵は…本気で驚いているようにしか見えない。
……マジか?
これでハッキリした…。
このネズミは…黒幕実行犯の仕込みじゃない。
じゃあ…。
次の考えが私の中に浮かぼうとした時、私の喉から、敵の手が離れる。
「ぐがぁぁっ!!」
敵も味方も関係なく、ネズミたちは群がる。
さながらどんどん粉を足していく団子のように、我先にとネズミたちは、人や動物に群がり、
噛みついているようだ。
でも…。
私とマギーには、群がってこない…。
って、ことは!!
奥の手が使える!!
私は急いでドレスのボタンを全外し!!
ルベンディン侯爵家の時のように、一気に脱ぎ捨てた!!
「フィ、フィリー!!」
打合せしていても、やっぱりマギーは慌てている。
お嬢様だなぁ…。
って、そんなこと考えている暇はない!!
私は急いでマッチを擦り、ドレスにありったけぶっさす!!
あ、マッチはフィリアム商会で作ったの。
火をつけるったら、火打石か、木をこする…という、原始的な方法しかなかったから~。
特許取得して、ただ今製造中!!
って、宣伝している場合じゃねぇ!!
上手い具合に火はついてくれて、ドレスはどんどん燃え上がる…。
「全員、鼻と口を布で塞いで!!
煙をなるべく吸わないように!!」
ドレスが燃えれば燃えるほど、どんどん鼻を突く…異臭が漂い始める。
それが目に入ると…かなり涙が出るが、今は仕方がない。
なるべく煙の来ない方へ、移動するしかない。
そしてあたりに異臭と煙が広がると…。
ネズミたちは一斉に、悲鳴のような声を上げつつ、森の奥へと逃げていく…。
あ~、良かった。
実は…私とマギーのドレスにね…しこたま唐辛子を仕込んでおいたのだ。
柑橘系同様、動物ってのは、香辛料…特に唐辛子系の、ツンと来る匂いや煙が大嫌い。
猛獣に囲まれた時…いざとなったら使うつもりだったんだが、ネズミの撃退にも役立つとはね。
煙が引いたころ…。
「大丈夫ですか!!奥様!!」
ジェードが登場。
「大丈夫よ、ジェード!!ネズミに噛まれなかった?」
「噛まれました。
でも、煙でいなくなったんで!!
すぐ来ました!!」
「敵は?」
「逃げました!!」
なるほどね…ネズミとは言え、あんな大量に湧いたのに噛まれたんじゃぁ…結構な痛手だと
思うしね…。
「おーい!!大丈夫かぁ!!」
おお、ローカス卿とベンズ卿。
「全員…ケガはありますが、無事です!!」
私が答えると、ホッとしたようで、
「マギー!!」
「ローカス様!!」
今になって腰を抜かしているマギーの元に、ローカス卿が駆け寄る。
「大丈夫か!!」
「はい!!」
マギーの無事を確認し、胸をなでおろしたようだ。
「…ローカス様、お怪我を…」
「あ~、ネズミにかじられただけだから、心配すんな!!」
私はそれを聞いて、
「あの…ベンズ卿も噛まれました?」
と聞けば、
「ああ、来る途中、木の上からぼたぼたと落ちてきてな…。
その対処で時間がかかってしまった」
「なるほど…」
私は改めて、近くに転がっていたネズミの死体を確認する。
…………………………………。
やっぱりね。
私の当たってほしくない予想が、当たってしまったようだ。
「あの…皆さん、よろしいでしょうか?」
「どうしました?オルフィリア公爵夫人…」
「ネズミは…結構、病気を媒介することは、知っていらっしゃると思います。
ですので、全員揃ってでなくて構いませんから、後日…ファルメニウス公爵家に
いらしていただけませんか?
今度新しくファルメニウス公爵家の主治医になった方が、大変腕が良く、物知り
なので…。
念のため一度見てもらって欲しいのです」
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こういう時、信頼関係作っとくと便利ね。
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