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第6章 暗雲
3 いざルイザーク伯爵邸のパーティーへ
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ルイザーク伯爵家は、建国以来からある家柄だ。
その邸宅はかつて要塞であったものを、功績により賜ったため、
かなりしっかりした造りになっている。
現当主であるテオルド卿の意向で、華美に飾ることは一切ないが
歴史の重みと、飾らないからこそのエレガントさがある。
これもギリアムが好感を持っている理由の一つだった。
さて、一般的に公私関係なくパーティーの場では、身分の低い
者から順にパーティー会場に入り、待機するのが通例である。
ゆえに王族を除けば、ギリアムは最後に入るものだ。
だからギリアムが会場に入ると、もともと招待されている人達は
ほぼそろっていた。
もちろん我先にとギリアムに挨拶しようと寄ってくる。
ギリアムがあまりパーティーというものに出席しないせいもあり
ここぞとばかりに皆必死だ。
内心めんどくさいと思いながら、作り笑顔を浮かべ、一つ一つに
対応するギリアム。
そんな空気の中、
「ギリアム様――――――!!」
ギリアムのほうに1つの影が、走り寄ってきた。
…だけならよかったのだが、その影はまるでタックルでもする
かのような勢いで、ギリアムの腰にしがみついた。
まあ、ギリアムの足腰はそんなタックルなど、涼しい顔で受け
止められるのだが、問題は…。
実はギリアムには、フィリーと同じような能力があるのだ。
何かというと、
人が自分に他意を持たずに触れてきているのか、それとも
異性としての好意を望んで触れてきているのか
が、わかる能力だ。
そしてギリアムはハッキリ言って、フィリー以外にそういった
好意を求められることに、嫌悪感しか抱かない。
「ギリアム様、ギリアム様!!いらしてくださって嬉しいです」
抱きついてきたのは、本日の主役フェイラ・ルイザーク伯爵令嬢。
くりくりとしたくせ毛に、大きなリボンを二つ結び付け、
愛くるしい丸顔と、大きな瞳が印象的である。
小動物チックで可愛らしいといった表現がよく似合う。
だが可愛かろうが、屈託ない笑顔を向けられようが、嫌なもんは
嫌だ。
フェイラ嬢は絶対離すまいという意気込みで、ギリアムに抱き
ついたのだろうが、ギリアムにしてみれば、容易に引っぺがせる
ような力である。
もちろんすぐ引っぺがされた。
「フェイラ嬢…あなたは今年、成人のはずだが?」
「はい!!一か月後の王家主催建国記念パーティーで、正式に
デビュタントいたします!!」
目を輝かせている。
「ならば余計に、公衆の面前で男に抱き着くような真似は、
おやめになることをお勧めします」
キッパリと言えば、
「わ、私!!誰にでもそのようなことは致しません!!
ギリアム様だからですわ!!」
引っぺがされてもまだギリアムのほうに来ようと、力を込めて
いるのがわかる。
大きな瞳に涙をにじませ、上目遣いで訴える。
意識的なのか無意識なのかはわからないが、男がぐらっときて
しまう仕草を身につけているようだ。
しかし。
ハッキリ言って、ギリアムには迷惑だし嫌悪感を抱かせるだけだ。
「私だからとか、私じゃないからとかいう問題では
ありません!!」
どうしたって、口調が強くなる。
そんなやり取りに割って入ったのは、
「フェイラ!!」
透き通った女性の声だ。
「申し訳ございません、ギリアム公爵閣下…。
妹にはよく言って聞かせますので!!」
ロングストレートの髪をさらりとなびかせ、整った目鼻立ちに
薄く塗った化粧。
まさに深窓の令嬢らしい気品を漂わせている。
華美に飾らない装いと所作の美しさが、まじめでしっかりした
印象を醸し出している。
「ルイーズ嬢…わかりました。
お任せします」
ルイーズ嬢に肩をつかまれ、フェイラ嬢は渋々ギリアムへの
突撃をやめたようだ。
だがまだ足りないといった目で見られて、ギリアムは寒気がした。
「私からもお詫びいたします、ギリアム公爵閣下…」
そう言って脇から出てきたのは、腰まである長い赤毛の髪に、軽い
ウェーブがかかった、長身の女性。
目じりが少し上がり、ルイーズ嬢よりも濃い化粧が美しさと
同時に、気の強さを漂わせている。
「クレア・オペロント侯爵令嬢…いらしていましたか」
「そりゃあもちろん。
大事ないとこのお祝いですから」
クレア嬢はテオルド卿の妻の妹の子である。
ギリアムと同い年だ。
「気分直しに、あちらでお料理などいかがですか?」
と、さりげなくギリアムの腕に自分の手を回そうとしてきたもの
だから、
「どうぞおかまいなく」
そっけない返事をして、すぐにその場を離れた。
実はクレア嬢も過去、フェイラ嬢と同じようにかなりスキン
シップが激しかった。
しかも何度言ってもやめようとせず、しまいには3年前、とある
事件を起こてしまう。
ギリアムは許す気はなかったのだが、親戚であるテオルド卿が
怒りを鎮めて欲しいと頭を下げてきたため、矛を収めたのだ。
しかしそれ以降も、反省するどころか、さりげなくギリアムに
近づこうとするから、本当に始末が悪い…とギリアムは思っている。
そんな時、入り口のほうが騒がしくなった。
(…来たか……)
ギリアムは静かに心身を整える。
「こ…ここ…これは…ケイルクス王太子殿下とレティア王女殿下に
ご挨拶申し上げます」
「あ~、堅苦しくしなくていいよ。
今日は本当のお忍びだから」
ケイルクス王太子殿下がにこやかに軽く手を振る。
ギリアムほどではないにせよ、長身で金髪碧眼、整った目鼻立ち。
体は少々華奢であるため、まさしく中性的な美青年といったところ
だろう。
ファンクラブができてもおかしくないレベル。
しかしお忍びとはいえ、王族だ。
しっかり警護の騎士は伴っての入場だから、緊張するなと言う方が
無理と言うもの。
ギリアムは、そんな両殿下の前にすっと歩み出て、
「いらっしゃるとは知らず…失礼いたしました。
ケイルクス王太子殿下、レティア王女殿下にギリアム・アウススト・
ファルメニウスがご挨拶いたします」
内心を隠し、形式ばった挨拶をする。
すると王太子殿下が何か言う前に、王女殿下が前に出る。
その笑顔はまさに大輪の華のような…という表現があっている。
王太子殿下と同じ金髪・碧眼。癖のある長い髪は、逆に癖を強調する
ことによって、一つの完成した美しさを表現している。
高い鼻とその両脇の目は吊り上がり気味だが、嫌味な感じは一切
与えない。
そのうえ、強調することなく調和をとるためだけに施された化粧が
全体の美貌をさらに引き立たせている。
まがうことなき、超の付く美人だ。
「お忍びなのだから、堅苦しくしないでちょうだい、ギリアム。
王女殿下ではなく、いつものようにレティアとお呼びになって」
この声色は、色気を含めど気品を失うことはなく、空気を心地よく
振動させ、耳障りが大変良い。
声だけで、男を陥落させられるぐらいの力は持っているだろう。
しかしながらギリアムはこの王女殿下に、すでに心の底から辟易
している。
なぜかといえば、好意を示されるたびキッパリはっきり否定している
にもかかわらず、いかにも普段親密に接しているかのような態度を
とるからだ。
それが何度言っても直るどころか、ひどくなる一方なのだ。
「失礼ながら、王女殿下を名前でお呼びしたことは今までありませんし、
この先もするつもりはありません!!」
今回もキッパリ否定。
場の空気が凍る…。
「ま…まあまあ、ギリアム公爵…。
この場は本当に堅苦しい場ではないのだから…」
と、王太子殿下が何とかフォローを入れようとするも、
「堅苦しい場でないことと、このことは別問題です!!」
と、これまたバッサリ切り捨てた。
通常、いくら序列第一位の公爵家と言えど、王家の人間に対して
こんな態度をとれば、すぐさま罰せられておかしくない。
しかしそこは、ギリアム・アウススト・ファルメニウス。
救国の英雄であることも勿論だが、それだけではない。
政略結婚の事以外では、命令に逆らうこともなく、国内外の様々な
問題を解決してきた。
また、ギリアムを擁立して王家の転覆をほのめかすようなことを
する者が現れれば、逐一報告し、即座に処罰し、特に褒賞も求めない
徹底ぶり。
まあ…。
要するに、国及び王家への貢献度が、他の貴族に比べてダントツの
ピカ一なんだよね。
そうなると、王家も下手な扱いはできない。
何せギリアムがいるから、国&王家に手を出してこない奴も結構いるからね。
これが全てギリアムの計算ずくだというのだから、年齢のサバ読みを
疑ってしまうよ、ホント。
皆が言葉に窮する中、
「そ…そうだ!今日のお祝いに、王家秘蔵のワインを持って
きたんだった」
王太子殿下は、なんとか場をつなごうと必死だ。
「あ!!そこの君!!
グラスをみんなに配ってくれ」
近くにいた使用人に王太子殿下が声をかける。
その使用人は急いでグラスを持ってきて、皆に配った。
「ふむ…なるほど…。
これはいいワインですな」
「いや、まったく。
さすが王家秘蔵なだけある」
「大変良いものをいただきました。
我々は運がいい」
と、口々にほめる。
まあ、口が裂けてもまずいなどとは言えまいが…。
そんな中、ギリアムは何も言わずにワインを一息に飲み干す。
その眼は…とても鋭く光っていた。
まるで猛獣が自身を害そうとする者に相対した時の様な…そんな
物騒な光を纏って…。
----------------------------------------------------------------------
ギリアムに抱きつくフェイラ
フェイラとルイーズ
ギリアムとクレア
ケイルクス王太子殿下とレティア王女殿下
その邸宅はかつて要塞であったものを、功績により賜ったため、
かなりしっかりした造りになっている。
現当主であるテオルド卿の意向で、華美に飾ることは一切ないが
歴史の重みと、飾らないからこそのエレガントさがある。
これもギリアムが好感を持っている理由の一つだった。
さて、一般的に公私関係なくパーティーの場では、身分の低い
者から順にパーティー会場に入り、待機するのが通例である。
ゆえに王族を除けば、ギリアムは最後に入るものだ。
だからギリアムが会場に入ると、もともと招待されている人達は
ほぼそろっていた。
もちろん我先にとギリアムに挨拶しようと寄ってくる。
ギリアムがあまりパーティーというものに出席しないせいもあり
ここぞとばかりに皆必死だ。
内心めんどくさいと思いながら、作り笑顔を浮かべ、一つ一つに
対応するギリアム。
そんな空気の中、
「ギリアム様――――――!!」
ギリアムのほうに1つの影が、走り寄ってきた。
…だけならよかったのだが、その影はまるでタックルでもする
かのような勢いで、ギリアムの腰にしがみついた。
まあ、ギリアムの足腰はそんなタックルなど、涼しい顔で受け
止められるのだが、問題は…。
実はギリアムには、フィリーと同じような能力があるのだ。
何かというと、
人が自分に他意を持たずに触れてきているのか、それとも
異性としての好意を望んで触れてきているのか
が、わかる能力だ。
そしてギリアムはハッキリ言って、フィリー以外にそういった
好意を求められることに、嫌悪感しか抱かない。
「ギリアム様、ギリアム様!!いらしてくださって嬉しいです」
抱きついてきたのは、本日の主役フェイラ・ルイザーク伯爵令嬢。
くりくりとしたくせ毛に、大きなリボンを二つ結び付け、
愛くるしい丸顔と、大きな瞳が印象的である。
小動物チックで可愛らしいといった表現がよく似合う。
だが可愛かろうが、屈託ない笑顔を向けられようが、嫌なもんは
嫌だ。
フェイラ嬢は絶対離すまいという意気込みで、ギリアムに抱き
ついたのだろうが、ギリアムにしてみれば、容易に引っぺがせる
ような力である。
もちろんすぐ引っぺがされた。
「フェイラ嬢…あなたは今年、成人のはずだが?」
「はい!!一か月後の王家主催建国記念パーティーで、正式に
デビュタントいたします!!」
目を輝かせている。
「ならば余計に、公衆の面前で男に抱き着くような真似は、
おやめになることをお勧めします」
キッパリと言えば、
「わ、私!!誰にでもそのようなことは致しません!!
ギリアム様だからですわ!!」
引っぺがされてもまだギリアムのほうに来ようと、力を込めて
いるのがわかる。
大きな瞳に涙をにじませ、上目遣いで訴える。
意識的なのか無意識なのかはわからないが、男がぐらっときて
しまう仕草を身につけているようだ。
しかし。
ハッキリ言って、ギリアムには迷惑だし嫌悪感を抱かせるだけだ。
「私だからとか、私じゃないからとかいう問題では
ありません!!」
どうしたって、口調が強くなる。
そんなやり取りに割って入ったのは、
「フェイラ!!」
透き通った女性の声だ。
「申し訳ございません、ギリアム公爵閣下…。
妹にはよく言って聞かせますので!!」
ロングストレートの髪をさらりとなびかせ、整った目鼻立ちに
薄く塗った化粧。
まさに深窓の令嬢らしい気品を漂わせている。
華美に飾らない装いと所作の美しさが、まじめでしっかりした
印象を醸し出している。
「ルイーズ嬢…わかりました。
お任せします」
ルイーズ嬢に肩をつかまれ、フェイラ嬢は渋々ギリアムへの
突撃をやめたようだ。
だがまだ足りないといった目で見られて、ギリアムは寒気がした。
「私からもお詫びいたします、ギリアム公爵閣下…」
そう言って脇から出てきたのは、腰まである長い赤毛の髪に、軽い
ウェーブがかかった、長身の女性。
目じりが少し上がり、ルイーズ嬢よりも濃い化粧が美しさと
同時に、気の強さを漂わせている。
「クレア・オペロント侯爵令嬢…いらしていましたか」
「そりゃあもちろん。
大事ないとこのお祝いですから」
クレア嬢はテオルド卿の妻の妹の子である。
ギリアムと同い年だ。
「気分直しに、あちらでお料理などいかがですか?」
と、さりげなくギリアムの腕に自分の手を回そうとしてきたもの
だから、
「どうぞおかまいなく」
そっけない返事をして、すぐにその場を離れた。
実はクレア嬢も過去、フェイラ嬢と同じようにかなりスキン
シップが激しかった。
しかも何度言ってもやめようとせず、しまいには3年前、とある
事件を起こてしまう。
ギリアムは許す気はなかったのだが、親戚であるテオルド卿が
怒りを鎮めて欲しいと頭を下げてきたため、矛を収めたのだ。
しかしそれ以降も、反省するどころか、さりげなくギリアムに
近づこうとするから、本当に始末が悪い…とギリアムは思っている。
そんな時、入り口のほうが騒がしくなった。
(…来たか……)
ギリアムは静かに心身を整える。
「こ…ここ…これは…ケイルクス王太子殿下とレティア王女殿下に
ご挨拶申し上げます」
「あ~、堅苦しくしなくていいよ。
今日は本当のお忍びだから」
ケイルクス王太子殿下がにこやかに軽く手を振る。
ギリアムほどではないにせよ、長身で金髪碧眼、整った目鼻立ち。
体は少々華奢であるため、まさしく中性的な美青年といったところ
だろう。
ファンクラブができてもおかしくないレベル。
しかしお忍びとはいえ、王族だ。
しっかり警護の騎士は伴っての入場だから、緊張するなと言う方が
無理と言うもの。
ギリアムは、そんな両殿下の前にすっと歩み出て、
「いらっしゃるとは知らず…失礼いたしました。
ケイルクス王太子殿下、レティア王女殿下にギリアム・アウススト・
ファルメニウスがご挨拶いたします」
内心を隠し、形式ばった挨拶をする。
すると王太子殿下が何か言う前に、王女殿下が前に出る。
その笑顔はまさに大輪の華のような…という表現があっている。
王太子殿下と同じ金髪・碧眼。癖のある長い髪は、逆に癖を強調する
ことによって、一つの完成した美しさを表現している。
高い鼻とその両脇の目は吊り上がり気味だが、嫌味な感じは一切
与えない。
そのうえ、強調することなく調和をとるためだけに施された化粧が
全体の美貌をさらに引き立たせている。
まがうことなき、超の付く美人だ。
「お忍びなのだから、堅苦しくしないでちょうだい、ギリアム。
王女殿下ではなく、いつものようにレティアとお呼びになって」
この声色は、色気を含めど気品を失うことはなく、空気を心地よく
振動させ、耳障りが大変良い。
声だけで、男を陥落させられるぐらいの力は持っているだろう。
しかしながらギリアムはこの王女殿下に、すでに心の底から辟易
している。
なぜかといえば、好意を示されるたびキッパリはっきり否定している
にもかかわらず、いかにも普段親密に接しているかのような態度を
とるからだ。
それが何度言っても直るどころか、ひどくなる一方なのだ。
「失礼ながら、王女殿下を名前でお呼びしたことは今までありませんし、
この先もするつもりはありません!!」
今回もキッパリ否定。
場の空気が凍る…。
「ま…まあまあ、ギリアム公爵…。
この場は本当に堅苦しい場ではないのだから…」
と、王太子殿下が何とかフォローを入れようとするも、
「堅苦しい場でないことと、このことは別問題です!!」
と、これまたバッサリ切り捨てた。
通常、いくら序列第一位の公爵家と言えど、王家の人間に対して
こんな態度をとれば、すぐさま罰せられておかしくない。
しかしそこは、ギリアム・アウススト・ファルメニウス。
救国の英雄であることも勿論だが、それだけではない。
政略結婚の事以外では、命令に逆らうこともなく、国内外の様々な
問題を解決してきた。
また、ギリアムを擁立して王家の転覆をほのめかすようなことを
する者が現れれば、逐一報告し、即座に処罰し、特に褒賞も求めない
徹底ぶり。
まあ…。
要するに、国及び王家への貢献度が、他の貴族に比べてダントツの
ピカ一なんだよね。
そうなると、王家も下手な扱いはできない。
何せギリアムがいるから、国&王家に手を出してこない奴も結構いるからね。
これが全てギリアムの計算ずくだというのだから、年齢のサバ読みを
疑ってしまうよ、ホント。
皆が言葉に窮する中、
「そ…そうだ!今日のお祝いに、王家秘蔵のワインを持って
きたんだった」
王太子殿下は、なんとか場をつなごうと必死だ。
「あ!!そこの君!!
グラスをみんなに配ってくれ」
近くにいた使用人に王太子殿下が声をかける。
その使用人は急いでグラスを持ってきて、皆に配った。
「ふむ…なるほど…。
これはいいワインですな」
「いや、まったく。
さすが王家秘蔵なだけある」
「大変良いものをいただきました。
我々は運がいい」
と、口々にほめる。
まあ、口が裂けてもまずいなどとは言えまいが…。
そんな中、ギリアムは何も言わずにワインを一息に飲み干す。
その眼は…とても鋭く光っていた。
まるで猛獣が自身を害そうとする者に相対した時の様な…そんな
物騒な光を纏って…。
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ギリアムに抱きつくフェイラ
フェイラとルイーズ
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