ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

文字の大きさ
上 下
23 / 71
第4章 交渉

6 両親の元へ

しおりを挟む
ギリアムはまっすぐ私の眼を見て、

「あなたのせいじゃない!!あなたのせいじゃないって
わかってる!!けど!!けどっ!!」

「何で私の前から消えたんだ!!
借金??
そんなもの私がどうにでもしてあげた!!
あなたと一緒にいるためなら…私は何だって出来るんだ!!
何だって……。
そう、私は…フィリーの為なら何でもできる!!」

「…ギリアム……」

頬においた手を、ギリアムの頭の後ろに回す。

「たとえどうしようもなかったとはいえ、私はあなたを
これほど傷つけました…」

「それは紛れもない事実…」

「だから私はこれから、あなたのそばであなたの傷を
癒し続けます」

「本当…に…?」

「ええ、あなたがもういいと言うまで…」

「そういうことなら、私が死ぬまでになりますが…」

「もちろん、あなたが望むなら…でも一つだけ
約束してください」

「何を?」

「もし今後、こうして傷を追ったり、古傷が開いたり
した場合…」

「しっかりと私に言ってください」

「心についた傷は見えにくいので…。
お願いしますね…」

するとようやっと少し、ギリアム様の顔は穏やかになった。
そして私の肩口にぽすっと顔を埋め、

「だったら言いますけど…」

少し間が空き、

「すごくショックだったんですよ…
あなたに求婚を断られた時…」

「前日に私が好きだと…一緒にいて幸せだとずっと言って
くれたから…」

「てっきり私と同じように、十年以上私を想ってくれていたと
思ったのに…」

いや、マジでごめん、ギリアム様。
私、誘った男にそー言うクセがついっちゃってるのよ、うん。

「すみません…。
色々混乱してしまって…。
でも信じてください!!
誰でもいいからと、お誘いしたわけではありません!」

「それは勿論…信じますが…」

頭をガリガリ掻くギリアム様。
うまく考えがまとまらないようだ。
………………だろうね。
私の中に入りっぱのギリアム様の分身が、すっかり元気を
取り戻して…いや、さっきより元気になっちゃってるもん。

「ギリアム」

ギリアム様をまっすぐ見つめ、

「ひとまず一回ヤりましょう」

にこやかに言う。

「え…え…」

照れた顔、カワイイね…ギリアム様。

「欲が強く出ている時は、ひとまず解消しないと、頭がうまく
働きませんよ」

お腹の中で自己主張しているギリアム様を、お腹の上から
優しく撫でる。

「う…」

さらに顔を赤くしつつ、

「ああ、もうっ!!」

私の足を自身の肩に乗せる。

「あなたの言う通りです、フィリー!!
一回だけじゃ、とても足りません!!
やめてくれだなんて、言わないでくださいよ」

「もちろん…いくらでもお付き合いいたします」

いや、ホントに。

やがて広い広い温室に、睦み合う声のみがただ響く。

ギリアム様…あなたお世辞じゃなく、筋がいいよ…。
本当に約束するよ。
このヘドネをエッチで満足させてくれるなら…。
どこにもいかない…。
ギリアム様に尽くしちゃうからさ。
だからギリアム様も…狂おしいほどの欲情をどんどん
このヘドネにぶつけてね…。
それだけが私の望みだよ…ギリアム様…。


---------------------------------------------------------------

さて、何度もヤってたら勿論時間はさっさと過ぎさり、
すでに夕暮れ時。

ギリアム様と私は馬車に揺られていた。

パパンとママンへの報告に向かうためだ。

ちなみにギリアム様は現在また、仮面舞踏会翌日と同じように
そっぽを向いてしまっている。

あのさー、ギリアム様。

温室での件は、お互いすごく楽しんだんだから、喜ぶべき
ことでしょーが。
なのに何でまた、罪悪感もっちゃってるかなー、もー。

う~ん。

元々の性格なんだろーけど、それ以外にも…。
まあもっと親密にならないと、聞けないことだから今は
黙っとこうかね。

ひとまずまた…。

などと私が考えていたら、ギリアム様の方から声をかけてきた。

「あの…どうしても一つ聞きたいのですが…」

「何でしょう?」

「私がポチだとわからなかったのに…何で私に…その…
ああいった事をしようと持ち掛けたのですか…」

ああ、なるほど。
確かに気になるよね、うん。

「ん~、まあ。
ハッキリ言えば…ギリアムの顔と体が物凄く私の好みにマッチ
していたからですね~」

「は…え…」

「私はハンサムで体格のイイ人が好みです。
だからあの時の様な状況にまたなって、変な人に純潔を奪われる
位だったら、ギリアムに貰ってもらいたいなと思ったのです」

ニコニコしながら言うと、

「そう…ですか…はあ…」

ギリアム様はまたゆでだこのようになった。

「後で冷静になって考えたら、そんなふしだらな女はお好みでは
ないかもしれないとも思ったのですが、私も薬で朦朧として
いましたし…」

「は?い、いえ…あなたからなら…どんな誘い方でも…嬉しい
です…はい…」

「それなら、良かった…」

私は終始笑っていたが、ギリアム様は首まで真っ赤なままだった。

さてさて、そんなことをやっていたら、我が家に到着いたしました。
ギリアム様は私を優雅にエスコートしてくださり、お家に入ると、
これまた所作の美麗な挨拶をパパンとママンに繰り出しておりました。

ママンは平然としていたが、パパンはかなりびっくりしとった。
そりゃそうか。

私はとりあえず、今までにおこった経緯を(エッチしたことは除いて)
伝えた。

「ひとまず我が公爵家に出来るだけ早く移住して頂きたいのですが、
そちらのご都合もあるかと思います。
引っ越しの手伝い要員なども…」

「フィリー!」

ママンがギリアム様の話に割り込んだ。
ほんっと、怖いもの知らずやなー。

「あなたは本当にそれでいいのね?
後悔しないのね?」

「はい!
私はギリアム様の所にご厄介になります」

「わかったわ。
あなた、引っ越しの準備をしましょうか?」

「うん、そうだね。
失礼、公爵様。
公爵様の方は、いつ頃私たちを受け入れる準備が整うのでしょうか?」

「こちらはすでにできております」

おお、すごい。
公爵家ってホント優秀~。

「じゃあこちらも、引っ越しの準備を始めますね」

「ありがとうございます。
失礼ですがどのくらいかかりますか?
手伝い人員は何人ほど…」

「え?ああ。
手伝いは要りません。
一時間もあれば、終わりますよ」

「はい?」

ギリアム様、ハトが豆鉄砲喰らった顔になっとる…。
うん。
わかるよ。
平民のフツーのご家庭だって、引っ越しともなればもう少し時間が
かかるだろーな。
ましてお貴族様の引っ越し準備なんて…。

けどねぇ…、ギリアム様。
ウチってひじょーに夜逃げ慣れしてるんですよ。
いつでも逃げられるようにってクセが一度ついちゃうとですね…。
自然と持ち物も少ないんですよね。

そして本当に一時間以内に準備を完了しまして…。
ギリアム様…さらに信じられねーって顔になってたなぁ…。

そんなこんなで、私ら家族はさっさと公爵邸にやってきた
わけですよ。
フォルトさんとエマさんも、事情聴いて仰天してましたよ、はい。
ここまでか…って感じだったようで…。
後日、公爵家の使用人たちがこぞって三割り増しぐらい優しく
なったような感じがした…。

話を戻すが、私ら家族に割り当てられた離宮は…一言でいえば

‟御殿”

だった。

前に住んでた家だってボロ屋ではあるが郊外であったこともあり、
広さだけはそれなりにあった。
その家のゆうに10…いや20倍はあろうかという広さだ。
しかも執事とメイド付き…。

ひぃえぇ~。

パパンがもっと小さくていいと言うのだが、そこはギリアム様が
譲らない。

まあ、今住んでいる家、お世辞にもお貴族様の暮らすような家じゃない。
まず大雨降ると、雨漏りするからなぁ…。
木造で台風来たら、家の中じゃなくて外に避難しなきゃね~、などと
冗談じゃなく話してたくらい、色んな所にガタがきてるし…。

それでも借金取りに追われている時より、遥かにマシなんだけど…。

そんなパパンにママンが

「公爵様のお立場上、それなりの所に義家族を住まわせないと醜聞に
つながるから…」

と説得しとった。

さすがママン。
生粋のお貴族様。

んで、そのあとギリアム様も交えて離宮で夕食会。
離宮のシェフさんも腕良いぞ!すげぇ。

そんな感じで、その日の夜は更けていった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】男爵家に嫁ぎましたが、夫が亡くなったので今度こそ恋をしたい

野々宮なつの
恋愛
ソフィアは社交デビューしてすぐに嫁いだ夫が亡くなり2年になった。 愛のない結婚だったから悲しみに暮れることはなかったが、ソフィアには他の問題が立ちはだかっていた。 後継者がいないのだ! 今は義父がいるけれど、このままでは生活が立ち行かなくなる。できたら家庭教師の職を見つけたい。 そんな時、義父の紹介で伯爵令嬢の舞踏会の付き添い役を務めることに。 職を紹介してもらえるかもしれない。そんな下心から伯爵令嬢の付き添い役を了承したが、社交嫌いで有名な伯爵は優しくて気づかいもできる素敵な人だった。 ソフィアはあっという間に彼に恋に落ちてしまう。 でも伯爵は今でも亡き妻を愛しているようで? ソフィアが仕事に恋に、再び自分の人生に希望を見出して生きるお話です。 全20話です この話は小説家になろう様にも載せています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...