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囚われの陛下

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わたくしと共に残ってくれた騎士たちとともに、わたくしは陛下の捜索をすることにした。

一人の隊長の話によると、数名を連れて敵の本拠地の方向へと向かったそうだ。
それを聞いた途端、嫌な予感がした。

すぐさま敵の本拠地へと隠れながら向かい、敵の気配を伺っていた。そこにはやはり、取り押さえられている陛下がいた。

そして……その後方にはミランダの姿も。

アレンが話していたようにミランダは敵国の王子の後ろに控えていた。陛下と騎士たちが取り押さえられていても、助ける様子はない。

(……ほんとうに貴方は敵なの?…ミランダ。)

豪華な椅子に座っている偉そうな若い男。彼が敵国を率いている王子だろう。シリウスやルイスと同じぐらいの歳だうか、まだ幼さの残るその顔には勝ち誇ったような卑しい笑みを浮かべていた。

立ち上がり、ゆっくりと陛下へと近づく一人の壮年の男性。それでも、早計すれば、陛下もわたくしに着いてきてくれた騎士も助からない。

(落ち着いて……。好機を待つのよ。)

はやる気持ちを押さえ込み、タイミングを見計らっていた。その時陛下の怒鳴り声が聞こえた。

「貴方はソフィーナの父親だろう!なぜ、ソフィーナを殺そうとした!」

叫ぶようにそう声を張り上げる陛下に、わたくしは胸が締め付けられた。

「…なぜ…か。貴方にはわかりますまい。初めから恵まれた人間に、わたしなんかの気持ちは。

…わたしはこの国で伯爵の三男だった。長男が家を継ぎ、次男は保険のため国で飼い殺しにされる。だが、三男ともなればより良い家格の家に嫁ぐしかその存在価値はない。

他国とはいえ、公爵家に嫁げば自分は公爵になれるはずだった。だが、妻が死に、後継出来るのは妻と血が繋がったまだ10歳の子供だった。わたしがどれだけ悔しかったか、あの子の存在が憎らしく思うのも仕方ないでしょう…?」

「そんなことのために…そんなプライドなんかのためにソフィーナを傷つけてきたのかっっ!」

「そんなこと…だと?
だから、嫌なんだ王族や高位貴族は…。

……だったら、なんなんだ?いまから殺される貴女にどうこう言われようとどうでもよい。負け犬の遠吠えですな。
あぁ…それから、娘だろうがなんだろうがわたしの邪魔をするものは全て敵。排除して何が悪い。…王子、もうよいでしょう。さっさと殺しましょう。」

「そうだな。殺れ。」

にやにやと二人が言い合う様子を伺っていた王子は、一人の騎士に首で殺すように合図した。

陛下は二人の騎士に取り押さえられ、動くことができない。取り押さえられている仲間の騎士たちがなんとか阻止しようと抵抗を見せるなか、陛下は微動だにせず、ずっと元ルミナリエ公爵だけを睨み付けていた。

「…王妃、ご命令を!」

わたくしと共に来た騎士たちも焦りを見せ、小声でそう乞うてきた。

「………。しばらく待機。2分後、戦いに参加しなさい。」

「……2分後…?」
訳が分からないだろう騎士を置いて、わたくしは一人飛び出した。


ーーーーーーーーーーーーーーー。


~捕まっている騎士視点~

陛下が危ない!なんとか止めようと身体を揺するも二人がかりで背後から押さえ込まれて抜け出せない。隣の仲間も声を張り上げ、どうにか陛下から注意をそらそうとしているが、その騎士は歩みを止めない。

目の前で自分たちの王が殺されようとしているのに、どうすることもできない歯痒さ。虚しさ。

(どうすればいい…なにか…なにか手は!)


必死に周りを見渡していると、その騎士は突然歩みを止めた。ゆっくりと前へと傾く騎士の身体。

その首には王妃さまが作らせたという我が国にしかない、手裏剣という武器が刺さっていた。


誰もが倒れていく騎士に視線を向ける中、陛下を見ると、横切る黒い影。陛下を押さえていた騎士二人を一瞬で切り伏せた。

陛下を守るように背に庇い振り向いたその人は…我らが王妃、ソフィーナ様だった。


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