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王妃として?いいえ、親としての罪

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「王妃さま、本日は昼食をぜひ陛下とご一緒に…とアレン王子から仰せ付かっております。」

もうすぐ昼食の時間だろうとハンカチに刺繍をしながら待っていると、唐突にミランダはそう言った。

「…え?へ、陛下と?アレンったらどうして急に…。」

ミランダはしばらく思案すると
「申し訳ございません、理由は伺っておりませんがいま従者がそう知らせを持って参りました。陛下もご了承済みですので、食堂へ参りましょう。」

「えぇ…そうね。陛下をお待たせするわけにはいかないわね」

陛下との食事は無言のまま続いた。相変わらずこちらをみることもない陛下にわたくしは話しかけるのを諦め、ただ静かに食事を摂るしかなかった。
二人とも食べ終わりようやくこの時間が終わったとほっとするわたくしに、まだこんな苦痛など序章なのだと思い知らされた。

魔法と魔石の可能性を研究しているという魔道士の方たちを紹介された。彼らがいま研究しているのは魔石と魔方陣を組み合わせた映像記録投影システムだという。詳しい仕組みは不明だが、前世でいうLIVE中継のようなものらしい。小耳に挟んだアレンはまだ試験段階のそれを学園にて是非検証してほしいと願いでたそうだ。学園長も快く了承し、本日、試験という形で王と王妃から生徒たちに激励の言葉を頂きたいとのことだった。

ふふっ
(…なんて立派なのかしら)
愛息子の聡明さと行動力には本当に驚かされる。

「それでは出番まで、しばらく学園の様子をご覧ください」

そうして映し出された映像は、きっと一生背負い続けなければならない、親という責任を軽く考えていたわたくしへの罰なのだと、思い知らされた。

「~婚約は破棄させてもらうぞ!」
「…あぁ、可哀想なマリア…」
「~国外追放…としたいところだが、わたしも情けはある。学園を辞め、領地から出ることを禁ずる。」


(……なんてこと。)
思わず口を覆い、その映像を凝視した。

その後も繰り広げられる目を覆いたくなるような浅慮で情けない息子の姿。

「……陛下、王妃さま、そろそろお時間ですが…」

中止されますか?そう言いたかったのだろう魔道士の言葉に

「…よい。予定通り頼む。」

そう答える陛下には、怒りも動揺も落胆もみえない。真剣な横顔だった。

そんな陛下にわたくしも心を決めた。王、王妃である前に親であるわたくしたちが逃げてはならないのだと。



ーーーーーーーー。

~アレン視点~

「面白くもない退屈なお芝居なんて、もうおしまいにして頂けませんか?兄上。」

にこにこと笑顔を浮かべ、アレンはその騒動の中心へと進み出た。

「兄上たちの最近の素行は目に余りますよ。
男爵令嬢の言葉だけを鵜呑みにし、事実確認も周りの苦言さえ聞き入れないその浅慮な脳ミソも…

陛下のお決めになった、さらなる結束を高めるための婚約の意も介さず勝手に破棄しようとする傲慢さも………あまりに嘆かわしい。
アイリーン公爵令嬢には貴族の品位がない。でしたっけ?兄上方には王族の品位どころか、人としての品位も疑わしいですね。」

「アレン…黙って聞いていれば…!」
怒りを顕にアレンに言い返そうとするシリウスにアレンは尚も言葉をつないだ。

「自分は関係ないなどと思わないことですね。ルイス兄上。…誰にでも媚びへつらい、簡単に身体をひらくような頭も身体もお花畑なご令嬢なんかに陥落するとは…趣味を疑いますよ。母上の足元どころか爪の垢にさえ満たない容姿も教養もどこに魅力を感じたのかさっぱり理解できませんね。
わたしは貴方の側にずっといるわ。だとか、
貴方が頑張っていることは知っているわ。
とでも、言われましたか?」フッ

兄上たちの驚愕に満ちた顔に、笑いを誘われそうになる。

(あぁ…本当に簡単すぎる。)


「あぁ…本当に残念です。今日は記念すべき日になるはずだったのに…申し訳ございません、父上、母上。」

落胆したように、申し訳なさそうに…そんな演技など簡単にできる。後方の柱に隠れるように立っていた魔術士へと視線を送るとわたしのすぐ隣に立体的ホログラムの父上と母上の姿が浮かび上がった。



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