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閑話編②
閑話⑥ 侯爵夫人と第2王子は夢を見る
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私――アイラ=ステュアートは考えた。まずはジェレミー殿下の意思を確認しなければ話にならない。ジェレミーに現在婚約者が居ない、という話はパーティーの会場で噂されていた。
ジェレミー殿下のような人なら直ぐに代わりの婚約者くらい見つかりそうなものだが――もしかして、イザベルを待っているのではないだろうか?
イザベルが自分から殿下の元へ戻るのを待っているのではないだろうか。それを以てイザベルの彼への愛を確かめようとしているのでは――?
そう考えた私は、すぐにジェレミー殿下と会ってその意志を確認するべく、『一度会って話がしたい』と、ジェレミー殿下とお会いする約束を取り付けた。
◇
私は、ジェレミー殿下と約束を取り付けてから数日後、約束の日に屋敷を出た。迎えの馬車を出して貰おうと考えていたが、なぜだか殿下は今馬車が用意出来ない状況にあるそうなので、仕方なく自分で侍女に命じて馬車を出した。
ガタン、ガタン、と揺れる馬車の中で私は考える――イザベルは私たちの元へ本当に戻って来るだろうか。いや、イザベルが幼い頃から徹底的にジェレミー殿下のために、と教育をしてきたのだ。きっとイザベルは殿下と結婚することの意味を理解しているはずだ。
あぁ……イザベルを真剣に教育していて良かった。私は長年の努力が報われたような気持ちになる。イザベルが戻って来さえすれば、パーティーで遠巻きに見られて嗤われることも無いだろう。それどころか、逆に見返して見下してやろう。私は第2王子の義理の母親になるのだ、と。
そんなことを考えていると、だんだんと国王陛下とそのご子息達――ジェレミー殿下が住まう屋敷が近付いてきた。
屋敷というよりかはそれは城と呼ぶ方が正しく、近づいて行くにつれてその大きさがはっきりとわかるようになる。
私は門の前で馬車を降りると、門番をしている2人組に事情を説明する。
門番たちは私から少し距離を置きひそひそと話し、こちらを向いて笑った後、門を通してくれた。少し、と言わずかなり不快だったが今はジェレミー殿下にお会いするのが先だ。門番のことも彼に伝えて置こう。
そんなふうに考えていると、屋敷の扉が勢いよく開いた。
「す、ステュアート侯爵夫人! い、イザベルを連れ戻してくれるというのは本当だろうか!?」
出てきたのはジェレミー殿下のようで、かなり焦燥した様子で早口で私に問いかけた。どうやら私の読みが正しく、イザベルを待ってくれていたようだ。
「ええ! 本当です! 彼女もきっとすぐに貴方の元に戻ってきてくれるはずです!」
私はにっこりと笑って彼にそう言った。
絶望の中にいた侯爵夫人アイラと第2王子ジェレミーはイザベルが戻ってくる可能性に光を見出した。しかし、それは彼女らがイザベルのことを知らないが故に生まれた彼らの妄想に過ぎなかった。
ジェレミー殿下のような人なら直ぐに代わりの婚約者くらい見つかりそうなものだが――もしかして、イザベルを待っているのではないだろうか?
イザベルが自分から殿下の元へ戻るのを待っているのではないだろうか。それを以てイザベルの彼への愛を確かめようとしているのでは――?
そう考えた私は、すぐにジェレミー殿下と会ってその意志を確認するべく、『一度会って話がしたい』と、ジェレミー殿下とお会いする約束を取り付けた。
◇
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ガタン、ガタン、と揺れる馬車の中で私は考える――イザベルは私たちの元へ本当に戻って来るだろうか。いや、イザベルが幼い頃から徹底的にジェレミー殿下のために、と教育をしてきたのだ。きっとイザベルは殿下と結婚することの意味を理解しているはずだ。
あぁ……イザベルを真剣に教育していて良かった。私は長年の努力が報われたような気持ちになる。イザベルが戻って来さえすれば、パーティーで遠巻きに見られて嗤われることも無いだろう。それどころか、逆に見返して見下してやろう。私は第2王子の義理の母親になるのだ、と。
そんなことを考えていると、だんだんと国王陛下とそのご子息達――ジェレミー殿下が住まう屋敷が近付いてきた。
屋敷というよりかはそれは城と呼ぶ方が正しく、近づいて行くにつれてその大きさがはっきりとわかるようになる。
私は門の前で馬車を降りると、門番をしている2人組に事情を説明する。
門番たちは私から少し距離を置きひそひそと話し、こちらを向いて笑った後、門を通してくれた。少し、と言わずかなり不快だったが今はジェレミー殿下にお会いするのが先だ。門番のことも彼に伝えて置こう。
そんなふうに考えていると、屋敷の扉が勢いよく開いた。
「す、ステュアート侯爵夫人! い、イザベルを連れ戻してくれるというのは本当だろうか!?」
出てきたのはジェレミー殿下のようで、かなり焦燥した様子で早口で私に問いかけた。どうやら私の読みが正しく、イザベルを待ってくれていたようだ。
「ええ! 本当です! 彼女もきっとすぐに貴方の元に戻ってきてくれるはずです!」
私はにっこりと笑って彼にそう言った。
絶望の中にいた侯爵夫人アイラと第2王子ジェレミーはイザベルが戻ってくる可能性に光を見出した。しかし、それは彼女らがイザベルのことを知らないが故に生まれた彼らの妄想に過ぎなかった。
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