【完結】G.o.D 完結篇 ~ノロイの星に カミは集う~

風見星治

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終章 呪いの星に神は集う

362話 合流 其の3

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「助けを呼びました」

 驚き戸惑う4人の声に、助けを呼んだと誰かが重ねた。

「あ、もしかしてお願いした助っ人かな?」

「その認識で間違いないですよ。では、お願いします」

 九死に一生。神父が安堵を漏らした直後、何処までも続く白い廊下に灰色の光が滲んだ。光源は量産型とセオ達の中間地点。まるで彼らを守るかの様に割り込んだ灰色の光から現れたのは、黒のスーツと灰色のシャツに身を包んだ物憂いげな表情の青年。

「安心しろ、味方だ。もうすぐ俺の部下が到着するから少し待っていろ。それから一番後ろの男。外法処置を甘く見過ぎだ。下手すれば死んでいるぞ?」

 開口一番の言葉は整った相貌に反した青年のやや粗雑な内面が滲む。少しばかり口は悪いが、真っ先に外法処置の心配をする辺りそこまで冷酷ではないらしい。

 一方、魔女達は酷く驚いた。突然現れた青年に、ではない。視界に映った筈の量産型に背を向けるという行動に、だ。隙だらけで、自殺と同義の行動に疲弊した魔女達は焦る。

「いや、あの……」

「オイ、後ろ!!」

「危ない!!」

 その隙を量産型が逃す筈もなく。青年の背後に鈍色の影が踊ったかと思えば、瞬く暇さえ無い間に無機質な手が貫いた。余りの光景に3人は目を背ける。

覇王剣はおうけん

 3人の背中から青年の声が突き抜けた。刹那、無数の剣が虚空から出現、急加速しながら量産型を貫いた。一撃、二撃、剣が量産型に刺さる度に踊る様に吹き飛ぶ。神父もセオもアレムも、何が起きているか分からないと茫然自失で空を踊る量産型を見つめるが……

 ドンッ、ドンッ

 廊下の遥か奥から届いた衝撃に傍と覚醒した。衝撃の発生源は数十メートル先の壁に叩きつけられた量産型。無機質な体躯には無数の剣が突き刺さっている。どうにか抜こうと腕を動かしてはいるが、標本の様に壁に固定されている為にままならず。やがて、止めの一撃が頭部に放たれた。バラバラと破片を巻き散らしながら、量産型はその動きを完全に停止した。

「幻覚だ。しかし流石にザルヴァートル製、無駄に性能が高い。後でマリンに文句でも言っておくか」

 事態を飲み込めず、呆然とする3人に背後から声が掛かる。振り向けば先ほどの青年が無傷で立っていた。幻覚という単語に3人は疑問を飲み込む。実物と見紛う幻覚を一瞬で作って己と入れ替え、量産型を苦も無く破壊した青年の実力は疑いようない。安堵した3人は仲良く廊下に崩れ落ちた。

 ※※※

「イテテテテテテッ」

「そりゃそうでしょ。こんな事態ですから、余り責めたくないんですけどね」

 セオの情けない叫びが廊下に反響した。治療に当たる魔導士達はそんな彼にやや冷めた視線を向ける。青年の指示に集まった彼の部下達の内、白い魔導衣を纏った数人がセオとアレムの治療に当たっている。が、知識として持ち合わせる"外法"と言う処置をここまで長時間使用した人間に心当たりがないようで、ある者はセオの腕から外された装置に、ある者はボロボロの腕に溜息を漏らした。

「地球に魔導があるという報告は聞いてないが、魔導士か?」

「えぇと。まぁ、一応そうなるかな」

「何処の体系とも違うのは興味深い。戦闘経験は?」

「それなりに」

 その横では魔女と青年が押し問答を続ける。青年の関心は魔女の持つ力にあるようで、ともすれば量産型よりも明確な興味と関心を魔女に向けている。

「やはり無理だな。力は申し分ない様だが、経験不足の方が致命的だ。死ぬぞ?」

「分かってる」

「言っておくが外法は許可できんぞ。後遺症云々の前にそもそも違法でな。それでも行くつもりか?」

 魔女はセオとアレムに代わり大聖堂での戦闘に参加したいようだが、対する青年の返答はにべもない。事情を殆ど知らない彼にすれば、生身に加え地球人であるというだけで否定するには十分。このまま戦場に送りだしても数秒と持たずに死ぬ事など火を見るよりも明らか。

「今は人手が足りない。セオとアレムはもう無理だ。なら、アタシがその分を引き受ける」

「……仕方がない。俺がこの先に言う台詞を分かっているなら許可する」

「自分の身は自分で守れるし、誰にも責任おっかぶせねぇ。全部、覚悟の上だ」

 それでも尚、魔女は食い下がった。死など承知。責任も取る。その言葉に青年の態度は軟化、最終的に許可を出した。魔女の言葉と頑固な態度に大いに呆れた青年だが、しかし彼女の意志は尊重するようで、背後に控える部下に何か指示を飛ばした。

「承知した。が、一応監視は付けるぞ。問題ないな?」

「異論はないよ。良ければアンタの名前、教えて貰っていいか?」

「リュード=カウント・ブレスト。惑星アヴァロンで四原とかいう詰まらん仕事をしてる」

「ありがと。アンタの名前、忘れないよ」

「あぁ。そうだ、もののついでだから一つ頼んで良いか?地上に出たら俺と似た魔導衣を着た赤髪の熱血馬鹿男に一言伝えておいてくれ。死ぬなよって」

「良いけど、アンタ妙に辛辣だね?」

「性分だ、それではな」

 それまでの仏頂面から一転、口の端に僅かばかりの笑みを浮かべながらリュードは魔女を見送った。

「リュード、感謝します」

 その僅かばかり弛緩した顔が、直後に入った通信に一変した。ディスプレイに映ったのは旗艦アマテラスの神"アマテラスオオカミ"。今はヒルメと名付けたタケミカヅチ参号機を操る神の顔に、リュードはうやうやしくかしずいた。

「勿体ないお言葉。以前と御姿が違い驚きましたが、ご健在で何よりです」

「オニーサンもオネーサンも助けてくれてありがとー。いやぁ、ソウタロウから紹介された何とかって人経由で色々と教えて貰ったんだけどさ、正直時間なさすぎて全然対応できなかったよ」

「おい、俺は構わんがこちらの方に無礼な口を利くな。この方は……」

 アヴァロンにとって旗艦の神は最大の恩人。故に神父のぞんざいな口調に彼は眉をひそめた。

 惑星アヴァロンは長らく続いた戦争状態に介入、終結に導いた旗艦アマテラスの神に多大な恩義を感じている。それは長い歴史を経ても途切れることなく脈々と受け継がれており、リュードも幼少時から叩き込まれてきた。普段は物憂い気な表情で少々口の悪い彼神の前では極めて誠実で礼儀正しいのはそう言った事情もある。

「紹介が遅れ申し訳ありません。私はアマテラスオオカミと申します。それから、私の事は気に掛けなくて構いませんよ。大層な肩書を持っていたのは昔の事です。それにしても大した手腕ですね、短時間という割には随分と手慣れています」

「えへへ、ン?アレ、その名前。もしかしてコッチの神様?」

「今頃気付いた……いや、知らなかったのか」

「それよりも、アヴァロンの代表を危険に晒す事になり申し訳ありません。ですが、敵の目的は確実に深緑の炎です」

「構いません。我らも過去の恩義に報いる為、死力を尽くし対処に当たります」

「あの。ココってそんな重要な施設、なのかなーなんて思ったりするんですが?」

 重要な会話に、再び神父が割って入った。アハハっと、屈託ない笑みを浮かべながらの質問に青年と神は驚く。どうやら相当に重要な場所らしいが、神父の口振りからすれば全く知らなかった様子。神は驚き、青年は呆れた。その雰囲気にこの場所の重要性を察した神父は一転、バツの悪そうな表情を浮かべた。

「知らぬのも無理からぬ話。ココは旗艦アマテラスと周囲を巡航するアメノトリフネにエネルギーを供給する"深緑の炎"が安置された機関部です」

「ほへー」

「付け加えるなら深緑の炎は僅かな物質から恒星並のエネルギーを生み出すが、その特性故に取り扱いを誤れば最悪銀河中が吹っ飛ぶ危険性がある」

「え!?」

 リュードの説明に、神父の顔から一気に血の気が引く。

「何かありましたか?」

「え、あの、さっきを放り込んじゃったなーって、アハハ」

「オイ、待て!?」

「リュード、落ち着いて下さい。確認しましたが特に問題ありませんでした。何を放り込んだのかは敢えて聞きませんが」

「エヘヘッ」

「笑い事じゃないぞ。ところで口振りからするに、この場所に転移した理由は俺達が向かっている事を知ったから、という訳ではないようだが?」

「いやー、この周辺が転移不可能区域に指定されていて。で、なんか都合よく転移の邪魔してた機能が消えたからもうココしかないかなって」

「無計画、か。とは言えこんな状況では無理もない。後は俺達に任せて、何処かに避難していろ」

「場所を教えて下さい。安全な場所に誘導します」

 もう神父に出来ることは無いと、神と青年は避難を勧めた。アマテラスオオカミとツクヨミが復活する前ならばまだしも、復活した今となってはお役御免。神父は満身創痍のセオとアレムへと視線を移す。見知った仲の2人の容態は想像以上に酷く、戦闘が不可能どころか今後さえ危うい。

「ハーイ。じゃあ2人の看病したいから同じ場所でヨロシク」

「承知しました」

「だから口の利き方……ハァ、もういい」

 屈託ない少年の答えと、盛大に呆れる青年の溜息が巨大な通路に木霊した。

 ※※※

 旗艦アマテラス 機関部
 
 今より僅か前に遡る。巨大な空間の上空に黒い穴が開き、その奥からカーティスが飛び出した。

「う、うおおおおおおおっ!!」

 何が起こったか理解出来ない男は、しかし眼下に広がる何も無い真っ白な空間に酷く慌てふためいた。大声をあげ、時には更に声を張り上げ助けを求めるが、残念ながら音は聞こえない。仮に聞こえていたとしても、この空間には何人たりとも転移する事が出来ない。寧ろしない。理由は単純、危険すぎる為。

 恒星に匹敵するエネルギーを生み出す深緑の星がある空間に転移すれば、命など容易く消し飛ぶ。今は材料となる物が投入されていないのでその空間は何も無い真空状態。

 カーティスは吹き飛ばされた勢いのまま一直線に落下しながら、尚も助けを求め続ける。それまで信じなかった神に浅ましく助けを願う姿は、何処までも傲慢で我儘でみっともない。そんな男が不意に叫びを止めた。視界に、とても小さく揺らめく緑色の光が入った。

 深緑の炎。その輝きに男は記憶の底から一つの任務を思い出した。旗艦アマテラス破壊の最終段階、地球への激突前に深緑の炎を奪取する。その任務と共に提示された、極めて危険で特異な性質が頭の片隅に過った。

「オイ、ふざけるなッ!!止めろッ、オイ誰か助けろーーーーーーーーーーーーッ!!」

 幾ら叫べども、声は真空に阻まれ届かず。無情な死が傲慢な男に迫る。

 暫しの後、深緑の炎はくべられた"材料"を元に莫大なエネルギーを生成、壁面に取りつけられた無数のエネルギー変換装置を経由し旗艦中に遍く行き渡った。
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