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第8章 運命の時 呪いの儀式
326話 囮
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佳境へと至る戦いの最中、それは唐突に付きつけられた。明らかとなった事実。半年前の戦いの混乱に乗じて盗まれた神代三剣の一振りが姿を見せ、幸福と共に祝われる筈であった儀の主役は死を願う。
スサノヲに心ない言葉を投げかける者はもう何処にも居ない。が、それがどうしたというのか。時、既に遅く。大勢は決した。死力を尽くそうとも覆せない差は、確実に存在する。ここまで大いに疲弊させられたスサノヲ達に、守護者達は容赦なく牙を剥く。
「いい加減に諦めたら?」
「諦めが良い方ではないッ」
余裕のタナトスに、ルミナが即反応する。諦めないと、その言葉に誰もが継戦を望む声をあげた。が、虚勢は火を見るより明らか。敵の数は大きく減らせはしたが、そもそも彼我戦力差が圧倒的過ぎる。
「そう。でも、もう終わり」
憐憫。ルミナに重ねたタナトスの声色は、心底から残念そうに聞こえた。何に期待していたのか、ほんの一瞬だけ覗かせた本音は、この戦いを仕掛けた者にしては余りにも相応しくない。
「私がまだ奥の手を残している事、理解しているでしょう?」
「肆号機か」
奥の手と、そう語った青天の空を切り裂く深紅の流星に視線が集まる。大聖堂上空。空を駆けるルミナと切り結ぶ改式が余裕を貫く理由は、肆号機と名乗った正体不明の式守の存在。
ルミナとの別れ際に式守はこう言った。"相応しい戦場で再び会う"と。しかし、最後の戦いとなるこの場にその姿はない。勿体ぶっているのか、それとも何か他の狙いがあるのか。何れにせよ、未だ姿を見せぬ肆号機の存在が、戦いの全体像を霧のようにぼかす。
まだ、何かがある。
明らかになった目的。守護者へと傾く戦況。あらゆる状況が追い詰めようとも尚、佳境ではない。絶望の影が、青天の端からジワリと侵食する。
「ウフフッ、可愛いわね。けど残念。正確にはそれも、よ?」
「何ッ!?」
動揺に、支配される。この程度ではない。まだ何かあると匂わせるタナトスの言に誰もが驚いた直後、けたたましい音が青天を揺さぶった。
艦全体の運航に関わる緊急事態を告げる、極めて重大な問題が発生した時だけ流れる特別な警報。その音に、折り重なる想定外にルミナ達の身体が硬直する。音が物語るのは、旗艦アマテラス就航3000年の間に一度も起きなかった緊急事態の発生。
「た、大変ですッ。超長距離転移の制御に異常発生!!」
開示された奥の手の1つ、刑法の発信元は旗艦の艦橋。事態の打開を求めスサノヲが開いた通信に映るのは、唐突に起きた想定外の事態にまるで対処できない艦橋オペレーター達の醜態。
「落ち着け!!原因の特定は?」
「分かりません!!それが突然……げ、原因判明!!は、破壊!?何者かが、制御施設を破壊した模様!!」
遠からず、問題の原因が突き止められる。主星側で管理する超長距離転移の補佐を行う補助システム、転移制御施設が破壊された。単純かつ最悪の手段は、事前の言葉から察するにタナトスが切った奥の手の1つ。
「そ、それだけじゃありません!!主星、向こうからの通信が完全に途絶えました!!こ、これでは門を開けません!!」
「途絶の原因は不明!!呼びかけに一切応じません……い、いえ違うッ!!主星側の通信系統です、何らかの不具合が発生した模様!!」
「馬鹿なッ、それじゃあ奴等も帰れないぞ!?」
破壊されたと言うならば修復すれば良い。少々楽観的ではあるが、誰もがそう考えていた矢先、状況が最悪を更新した。主星からの連絡途絶。中継地点である旗艦アマテラスに、超長距離転移を制御する機能は無い。この事態が意味するのは、連合各惑星の完全孤立化。
「マズいぞ!!主星には伊佐凪竜一とクシナダとスクナ総代しかいないッ。このままでは、彼等を助けに行けない!!」
「それどころか惑星間の移動自体が不可能です!!」
「まさか、転移妨害の為だけにこんな無茶を!?」
「ど、どどどどうしよう……ちょっと、イクシィ!!無理言って戻してもらったんだからサボってないで手伝ってよ!!」
「わ、わかってますよぉ!!」
周囲は転移施設破壊に伴う旗艦と各連合の孤立を驚きを持って伝える。誰もが何故、どんな意図をもってこの様な真似をしたのか予測出来ずただ慌てふためく。そんな馬鹿げた事をする理由に、誰も見当がつかない。主星側との通信が途絶したならば、誰かが語った通り守護者達の帰還も不可能となった。
滅茶苦茶だと、方々から困惑の声が上がる。ルミナは何も語らず、代わりに深紅の改式を睨みつける。眼差しに、伊佐凪竜一との合流手段を強引な形で断ち切ったタナトスへの怒りが隠し切れない。
「イクシィ、聞こえるか?状況は?どうなってイる?」
「あ、タケル……君。警報、旗艦側の転移制御施設の破壊が原因でした。それに主星との連絡も取れません。私もこんな事態想定できなくて何が何だか」
混乱の終息しない艦橋にタケルが問うと、スサノヲ間の連絡中継を担っていたイクシィが反応した。ディスプレイに映る疲弊しきった表情が、問題解決の糸口を掴めない現状を色濃く伝える。
「オイオイオイ、不味いって!?ナギ助けに行けねぇだろ!?」
堪らず、タガミが口を挟んだ。現状における最大の問題は戦力配分。事態が解決しない場合、姫を助ける役目は主星に移動した伊佐凪竜一とクシナダに加え、アイアースと共に転移したスクナの僅か3名に委ねられる事となる。
「そうだな、現状は?」
「手配は既に行いました。だけど……」
「時間、掛かるのか?」
「はい。修理用ナノマシン散布と予備部品で何処まで、何時までに直せるか全く不透明です」
「悪イが不明では困る。可能な限りの人員と資材を回してくれ。向こうは僅か3人、下手をすれば数に押し切られる」
「分かりました。改めて手配します。でも、でも何でこんな事……」
「今、原因究明をすべきではなイ。そう言う事は後に回すべきだ」
明らかになる事実が、疲弊した精神を更に追い詰める。混乱は波及し何処までも広がる。事態を冷静に見つめるのは守護者達のみ。酷く、不気味な光景だ。転移が行えない影響を受けるのは彼等とて同じ。だというのに、不気味なまでに落ち着いている。一方通行の旅路を承知の上か、それとも……
「やはり、囮か」
ルミナが一言で現状を看破した。囮、と。
「えぇ!!えぇそうよ!!私は、私を囮に使ったのよ。貴女には私の元に来てもらわないと計画が台無しになってしまうから、ね」
タナトスの嬉しそうな声。正解だと、対面に立つ改式が語った。全て己が掌の上。その事実に、興奮が堪えきれない。
「私の顔を見て驚いていなかった態度から薄々、そんな予感がしたがまさかこんな手まで使うとはッ。お前、正気か!?」
「当たり前でしょ、フフッ。だって貴女、こうしないと愛しの彼の元へ駆けつけちゃうでしょ?だからよ」
「半年前の、地球の……」
「そう。私達の計画唯一最大の障害、地球で起きた奇跡の再現を阻む為!!結果が今よ。もう、奇跡は起こせない!!後は貴女達を殺せば全てお終い、と言う訳。可哀そうに。貴女が焦がれる愛しの王子様は本物のお姫様に夢中、貴女を捨てて行ってしまった。フフッ、アハハハッ」
挑発的な言動に、改式を睨むルミナの視線が鋭さを増す。対するタナトスは歪んだ笑みを浮かべる。改式の中で全てを嘲笑う女の顔は、現状を覆すには何もかもが手遅れだと理解しているが故。
「地球で奇跡を起こした英雄。どれ程のものかと思ったけど、結局駄目じゃない。がっかりだわ」
「タナトス。お楽しみのところ申し訳ありませんが、時間が迫っております」
「あらそう、残念。じゃあ始めましょうか」
「はい。コレが最後の舞台。死力を尽くし、踊りきって見せましょう」
「えぇ、そうね。さぁ踊りましょう、狂いましょう、殺し合いましょう。全ては今日この日の為。真の絶望と言う名の終幕が上がる。もう、誰にも止められない!!」
「そうと決まれば、タガミィ!!心置きなく殺してやるよ!!」
「では私も、彼と彼女の分まで頑張りましょうかね」
最後の舞台。その言葉を合図に、山県令子を除く全員がスサノヲへと突撃した。一歩遅れる形で守護者達も同様の行動を起こすと、相対するスサノヲ達が迎え撃つ。
「オウオウオウ、じゃあ景気づけにテメェからブッ飛ばしてやるよ!!」
「英雄の分断、各個撃破が目的とは。だが諦めると言う選択肢は存在しなイ。必ず、助け出す!!」
「それに、思うほどに動揺はしていなくてな。恐らく転移機能を搭載した艦を製造している筈。そうでなければ帰れん」
「主星の転移管理部門の動向が読めないが、いずれにせよ協力させるには前達が邪魔だ。覚悟しろ」
タガミも、タケルも、他のスサノヲ達も。誰もが諦めない。守護者が覚悟という刃を持つとタナトスは語ったが、そんなモノは彼等もとうに持っている。
動揺はした。が、即座に立ち直った。もう、誰も揺らぐことはない。その理由は覚悟だけに在らず。落ち着き、冷静となった頭脳が単独の転移機能を搭載した艦の存在をを導き出す。
現在、単独での転移機能を持つ機体は儀式機"大雷"のみ。しかし、守護者が今日この日の為に計画を立てたというのならば、その中に旗艦側の転移制御装置の破壊が含まれていたならば、帰還用の手段が用意されていると考えて然るべきだと、スサノヲ達は考えた。
戦況に変化なし。が、スサノヲ達の意識は高揚する。刃と刃が激しく激突する。遠方からの援護射撃が行われれば、それを阻止する為に黒雷が飛び立つが、それをさせまいと別のスサノヲが追跡する。双方に戦闘不能者が出ようが、顧みることなく踏み越え、刃を交える。戦いが更に激化するに伴い、戦場に舞い散る血の赤にカグツチの白い輝きが混ざる。
「早計な判断は出来ませんが、我々は現実的に戻れなかった時の事を考える必要がありそうですね」
「そういやアンタもだったな、魔導士さんよ」
「微力ながら私もお手伝いしますよ、それから……」
「アンだよ?」
「いえ、後で結構ですのでお名前を教えて頂けますか?」
「了解了解。ついでに、生きてたら旨い酒の一杯でも奢ってやるよ」
「僕、下戸なんですけど。とは言え好意は無下には出来ないですね。では、お互い無事に生き延びましょう」
「アックス、それは……かなり不味イと思うのだがな」
スサノヲ達の意志は、僅かに離れた場所で戦う2人の男にも伝播した。ルミナの意志に賛同、無謀を承知で加勢したアックスとカルナに、二度と故郷を踏めぬ悲壮感は無い。それどころか、雑談の余裕さえ見せる。程度は違えども双方共に規格外の能力と精神性を併せ持つが故に、何処か通じ合うものがあったのか。
「ウフフッ、余裕ね。でもいいのかしら?」
その余裕を、上空から女が嘲笑う。余裕の態度への怒りか、それとも単に小馬鹿にしているだけか。しかし、何れにせよ女の笑みには狂気が混ざる。
刹那、赤の飛沫に白の粒子が入り乱れる戦場に、青い雨が降り注ぎ始めた。改式の操縦席では、タナトスがフツノミタマの封印を更に解除する光景。青い刀身は、既に半分ほどが露出している。人が制御できる限界をとうに超えた力が、顕現しようとしていた。
「何がだッ!!」
「言ったでしょう?絶望と。ソレが何を指すか分からないと言うなら、やはり貴女達全員ココで死ぬ運命なのよ」
否、怒りでも嘲笑でもなかった。まだ絶望が続くと、女は語る。真実か否か。混乱は、未だ終わりを見せない。
スサノヲに心ない言葉を投げかける者はもう何処にも居ない。が、それがどうしたというのか。時、既に遅く。大勢は決した。死力を尽くそうとも覆せない差は、確実に存在する。ここまで大いに疲弊させられたスサノヲ達に、守護者達は容赦なく牙を剥く。
「いい加減に諦めたら?」
「諦めが良い方ではないッ」
余裕のタナトスに、ルミナが即反応する。諦めないと、その言葉に誰もが継戦を望む声をあげた。が、虚勢は火を見るより明らか。敵の数は大きく減らせはしたが、そもそも彼我戦力差が圧倒的過ぎる。
「そう。でも、もう終わり」
憐憫。ルミナに重ねたタナトスの声色は、心底から残念そうに聞こえた。何に期待していたのか、ほんの一瞬だけ覗かせた本音は、この戦いを仕掛けた者にしては余りにも相応しくない。
「私がまだ奥の手を残している事、理解しているでしょう?」
「肆号機か」
奥の手と、そう語った青天の空を切り裂く深紅の流星に視線が集まる。大聖堂上空。空を駆けるルミナと切り結ぶ改式が余裕を貫く理由は、肆号機と名乗った正体不明の式守の存在。
ルミナとの別れ際に式守はこう言った。"相応しい戦場で再び会う"と。しかし、最後の戦いとなるこの場にその姿はない。勿体ぶっているのか、それとも何か他の狙いがあるのか。何れにせよ、未だ姿を見せぬ肆号機の存在が、戦いの全体像を霧のようにぼかす。
まだ、何かがある。
明らかになった目的。守護者へと傾く戦況。あらゆる状況が追い詰めようとも尚、佳境ではない。絶望の影が、青天の端からジワリと侵食する。
「ウフフッ、可愛いわね。けど残念。正確にはそれも、よ?」
「何ッ!?」
動揺に、支配される。この程度ではない。まだ何かあると匂わせるタナトスの言に誰もが驚いた直後、けたたましい音が青天を揺さぶった。
艦全体の運航に関わる緊急事態を告げる、極めて重大な問題が発生した時だけ流れる特別な警報。その音に、折り重なる想定外にルミナ達の身体が硬直する。音が物語るのは、旗艦アマテラス就航3000年の間に一度も起きなかった緊急事態の発生。
「た、大変ですッ。超長距離転移の制御に異常発生!!」
開示された奥の手の1つ、刑法の発信元は旗艦の艦橋。事態の打開を求めスサノヲが開いた通信に映るのは、唐突に起きた想定外の事態にまるで対処できない艦橋オペレーター達の醜態。
「落ち着け!!原因の特定は?」
「分かりません!!それが突然……げ、原因判明!!は、破壊!?何者かが、制御施設を破壊した模様!!」
遠からず、問題の原因が突き止められる。主星側で管理する超長距離転移の補佐を行う補助システム、転移制御施設が破壊された。単純かつ最悪の手段は、事前の言葉から察するにタナトスが切った奥の手の1つ。
「そ、それだけじゃありません!!主星、向こうからの通信が完全に途絶えました!!こ、これでは門を開けません!!」
「途絶の原因は不明!!呼びかけに一切応じません……い、いえ違うッ!!主星側の通信系統です、何らかの不具合が発生した模様!!」
「馬鹿なッ、それじゃあ奴等も帰れないぞ!?」
破壊されたと言うならば修復すれば良い。少々楽観的ではあるが、誰もがそう考えていた矢先、状況が最悪を更新した。主星からの連絡途絶。中継地点である旗艦アマテラスに、超長距離転移を制御する機能は無い。この事態が意味するのは、連合各惑星の完全孤立化。
「マズいぞ!!主星には伊佐凪竜一とクシナダとスクナ総代しかいないッ。このままでは、彼等を助けに行けない!!」
「それどころか惑星間の移動自体が不可能です!!」
「まさか、転移妨害の為だけにこんな無茶を!?」
「ど、どどどどうしよう……ちょっと、イクシィ!!無理言って戻してもらったんだからサボってないで手伝ってよ!!」
「わ、わかってますよぉ!!」
周囲は転移施設破壊に伴う旗艦と各連合の孤立を驚きを持って伝える。誰もが何故、どんな意図をもってこの様な真似をしたのか予測出来ずただ慌てふためく。そんな馬鹿げた事をする理由に、誰も見当がつかない。主星側との通信が途絶したならば、誰かが語った通り守護者達の帰還も不可能となった。
滅茶苦茶だと、方々から困惑の声が上がる。ルミナは何も語らず、代わりに深紅の改式を睨みつける。眼差しに、伊佐凪竜一との合流手段を強引な形で断ち切ったタナトスへの怒りが隠し切れない。
「イクシィ、聞こえるか?状況は?どうなってイる?」
「あ、タケル……君。警報、旗艦側の転移制御施設の破壊が原因でした。それに主星との連絡も取れません。私もこんな事態想定できなくて何が何だか」
混乱の終息しない艦橋にタケルが問うと、スサノヲ間の連絡中継を担っていたイクシィが反応した。ディスプレイに映る疲弊しきった表情が、問題解決の糸口を掴めない現状を色濃く伝える。
「オイオイオイ、不味いって!?ナギ助けに行けねぇだろ!?」
堪らず、タガミが口を挟んだ。現状における最大の問題は戦力配分。事態が解決しない場合、姫を助ける役目は主星に移動した伊佐凪竜一とクシナダに加え、アイアースと共に転移したスクナの僅か3名に委ねられる事となる。
「そうだな、現状は?」
「手配は既に行いました。だけど……」
「時間、掛かるのか?」
「はい。修理用ナノマシン散布と予備部品で何処まで、何時までに直せるか全く不透明です」
「悪イが不明では困る。可能な限りの人員と資材を回してくれ。向こうは僅か3人、下手をすれば数に押し切られる」
「分かりました。改めて手配します。でも、でも何でこんな事……」
「今、原因究明をすべきではなイ。そう言う事は後に回すべきだ」
明らかになる事実が、疲弊した精神を更に追い詰める。混乱は波及し何処までも広がる。事態を冷静に見つめるのは守護者達のみ。酷く、不気味な光景だ。転移が行えない影響を受けるのは彼等とて同じ。だというのに、不気味なまでに落ち着いている。一方通行の旅路を承知の上か、それとも……
「やはり、囮か」
ルミナが一言で現状を看破した。囮、と。
「えぇ!!えぇそうよ!!私は、私を囮に使ったのよ。貴女には私の元に来てもらわないと計画が台無しになってしまうから、ね」
タナトスの嬉しそうな声。正解だと、対面に立つ改式が語った。全て己が掌の上。その事実に、興奮が堪えきれない。
「私の顔を見て驚いていなかった態度から薄々、そんな予感がしたがまさかこんな手まで使うとはッ。お前、正気か!?」
「当たり前でしょ、フフッ。だって貴女、こうしないと愛しの彼の元へ駆けつけちゃうでしょ?だからよ」
「半年前の、地球の……」
「そう。私達の計画唯一最大の障害、地球で起きた奇跡の再現を阻む為!!結果が今よ。もう、奇跡は起こせない!!後は貴女達を殺せば全てお終い、と言う訳。可哀そうに。貴女が焦がれる愛しの王子様は本物のお姫様に夢中、貴女を捨てて行ってしまった。フフッ、アハハハッ」
挑発的な言動に、改式を睨むルミナの視線が鋭さを増す。対するタナトスは歪んだ笑みを浮かべる。改式の中で全てを嘲笑う女の顔は、現状を覆すには何もかもが手遅れだと理解しているが故。
「地球で奇跡を起こした英雄。どれ程のものかと思ったけど、結局駄目じゃない。がっかりだわ」
「タナトス。お楽しみのところ申し訳ありませんが、時間が迫っております」
「あらそう、残念。じゃあ始めましょうか」
「はい。コレが最後の舞台。死力を尽くし、踊りきって見せましょう」
「えぇ、そうね。さぁ踊りましょう、狂いましょう、殺し合いましょう。全ては今日この日の為。真の絶望と言う名の終幕が上がる。もう、誰にも止められない!!」
「そうと決まれば、タガミィ!!心置きなく殺してやるよ!!」
「では私も、彼と彼女の分まで頑張りましょうかね」
最後の舞台。その言葉を合図に、山県令子を除く全員がスサノヲへと突撃した。一歩遅れる形で守護者達も同様の行動を起こすと、相対するスサノヲ達が迎え撃つ。
「オウオウオウ、じゃあ景気づけにテメェからブッ飛ばしてやるよ!!」
「英雄の分断、各個撃破が目的とは。だが諦めると言う選択肢は存在しなイ。必ず、助け出す!!」
「それに、思うほどに動揺はしていなくてな。恐らく転移機能を搭載した艦を製造している筈。そうでなければ帰れん」
「主星の転移管理部門の動向が読めないが、いずれにせよ協力させるには前達が邪魔だ。覚悟しろ」
タガミも、タケルも、他のスサノヲ達も。誰もが諦めない。守護者が覚悟という刃を持つとタナトスは語ったが、そんなモノは彼等もとうに持っている。
動揺はした。が、即座に立ち直った。もう、誰も揺らぐことはない。その理由は覚悟だけに在らず。落ち着き、冷静となった頭脳が単独の転移機能を搭載した艦の存在をを導き出す。
現在、単独での転移機能を持つ機体は儀式機"大雷"のみ。しかし、守護者が今日この日の為に計画を立てたというのならば、その中に旗艦側の転移制御装置の破壊が含まれていたならば、帰還用の手段が用意されていると考えて然るべきだと、スサノヲ達は考えた。
戦況に変化なし。が、スサノヲ達の意識は高揚する。刃と刃が激しく激突する。遠方からの援護射撃が行われれば、それを阻止する為に黒雷が飛び立つが、それをさせまいと別のスサノヲが追跡する。双方に戦闘不能者が出ようが、顧みることなく踏み越え、刃を交える。戦いが更に激化するに伴い、戦場に舞い散る血の赤にカグツチの白い輝きが混ざる。
「早計な判断は出来ませんが、我々は現実的に戻れなかった時の事を考える必要がありそうですね」
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「アンだよ?」
「いえ、後で結構ですのでお名前を教えて頂けますか?」
「了解了解。ついでに、生きてたら旨い酒の一杯でも奢ってやるよ」
「僕、下戸なんですけど。とは言え好意は無下には出来ないですね。では、お互い無事に生き延びましょう」
「アックス、それは……かなり不味イと思うのだがな」
スサノヲ達の意志は、僅かに離れた場所で戦う2人の男にも伝播した。ルミナの意志に賛同、無謀を承知で加勢したアックスとカルナに、二度と故郷を踏めぬ悲壮感は無い。それどころか、雑談の余裕さえ見せる。程度は違えども双方共に規格外の能力と精神性を併せ持つが故に、何処か通じ合うものがあったのか。
「ウフフッ、余裕ね。でもいいのかしら?」
その余裕を、上空から女が嘲笑う。余裕の態度への怒りか、それとも単に小馬鹿にしているだけか。しかし、何れにせよ女の笑みには狂気が混ざる。
刹那、赤の飛沫に白の粒子が入り乱れる戦場に、青い雨が降り注ぎ始めた。改式の操縦席では、タナトスがフツノミタマの封印を更に解除する光景。青い刀身は、既に半分ほどが露出している。人が制御できる限界をとうに超えた力が、顕現しようとしていた。
「何がだッ!!」
「言ったでしょう?絶望と。ソレが何を指すか分からないと言うなら、やはり貴女達全員ココで死ぬ運命なのよ」
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昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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