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第4章 凶兆
115話 闇
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「フッ、ならば教えてやろう。ヤツは艦長を解任され、アチコチ逃げ回っているよ」
アイアースが語るルミナの現状は半年前以上に悲惨だった。伊佐凪竜一の捕縛と姫の確保失敗に対する罰は、ソレが意図した行動であったことを差し引いても過大極まりない。無論、身内びいきの発言ではない。
向こう側からすれば最優先すべき姫を確保できなかったのだから言い訳の仕様がなく、だから旗艦アマテラスの艦長をアッサリと解任されたところまでは納得も出来る。しかしその後が問題だ。奴等が彼女にした仕打ちは余りにも非合理的で、それまで丁寧に構築した包囲網をご破算にする程の暴挙だった。
「奇しくも貴様と同じ状況だな。理由?語るまでも無かろう」
簡潔な説明は正鵠を射ている。但し、幾つか肝心な部分が欠落しているが。言わない……いや、言えないのか。姫がいるから?しかし、この男が何らかの意図でもってルミナが逃走するに至る経緯を伏せたのは間違いない。
「そんな……」
「貴様を守りたかったようだが、端的に愚かと言わざるを得ない。結果、艦内をネズミの如く逃げ回る羽目になったのだからな。残念な事だが、美しく希少な銀色の髪もゴミの中ではくすんで鼠色と区別がつかない。さて、貴様はどうする?抵抗するならば実力で排除させて貰うが?」
戦いは避けられない、向こう側に避けるつもりが微塵もない。相手は抵抗するかどうか尋ねてはいるが、その一方で臨戦態勢を取っている。闇夜に大量のカグツチが舞い踊り、渦を巻き始め……
「ちょっと待ってください!!」
不意に聞こえた外野からの大声にその動きが鈍った。アイアースの意識が僅かに逸れた。
「彼の言い分も少しは聞いてください。曲がりなりにもココまで姫をお守りして来たんですよ!!」
「そうです、事情も聞かず一方的な判断で刃を向けるのが守護者の作法なのですか?」
「ハハッ、蛮族に作法を説かれるとは笑い話にもならんな」
しかし、至極真っ当な反論をぶつけられようがアイアースは微塵も動じず、寧ろ皮肉めいた笑みさえ浮かべる始末。が、その目には明確な殺意が滲み出す。
睨み付けられたセオとアレムは微動だに出来ない。動けば次の瞬間に首を跳ね飛ばされるイメージに身体が強張り、足が竦む。距離などお構いなし、猛者を相手にイメージだけで相手を委縮させる真似を容易く行う程にこの男は強い。
また伊佐凪竜一も同じくだ。最も彼の場合は実力差でなく、現状で足手纏いのセオとアレムの命を盾にされれば成す術が無いという理由からだ。
守護者の使命とは姫を守る事。それのみを唯一絶対の指標とする組織だと彼等は喧伝し、実行してきた。
守護者が他の実力組織と明確に違うのはその一点のみであり、詰まるところ彼等は法の守護者でもなければ正義の味方でもない。姫の為という大義名分を法や倫理や正義その他諸々の美徳よりも平然と上に置く、ソレが守護者。
だから……スサノヲは守護者に均衡する必要があった。姫の手綱が緩めば、あるいは姫自体が暴走する危険性を考慮したアマテラスオオカミの判断は間違いではない。
その守護者としての在り方を最も強く体現するアイアースは、姫を除くこの場の誰の意も介さない。正論など聞く耳持たず、その必要さえないと突っぱねる。
直後、一部始終を遠巻きに見ていた他の守護者達がアイアースの意を汲むかの如く伊佐凪竜一を取り囲んだ。彼は相変わらず動けないまま自らを取り囲む守護者達と、その後ろから殺気を振りまきながら向かってくる男をただじっと見つめる。
「これ以上の無益な血を流す事は私が許しません」
凛とした声が響いた。不穏な空気を切り裂いたのは凛としたフォルトゥナ姫の声。それはとても落ち着き払っており、同時にとても冷たく、ほんの僅か前まで恐怖に震えていた少女とまるで一致しない。
守護者達は正しく神の如きその言葉を聞くや一斉に伊佐凪竜一の元から離れた。そう、守護者を止められるのは彼女しかいない。連合の頂点、フォルトゥナ=デウス・マキナしかいない。
だが間が悪いというべき事態はどんな時にでも起こる。守護者が一斉に引き上げたその瞬間を見計い、カーティスと山県大地が伊佐凪竜一の背後から姿を見せた。油断した彼は山県大地に羽交い締めされ、そしてその横にいるカーティスは動かせない頭に銃口を突きつける。
「何だァ?コイツは予定外だなぁ、カーティスのオッサン?」
「あぁ、しかしこの機会を逃す必要もあるまい。では仕事の続きと行こうか」
「そう言う事。じゃあナギ、お別れは済ませたか?」
その様子を守護者達は何をするでもなく見つめ、アイアースは舌打ち交じりの不快な表情で睨んだ。
一方、守護者達が作る縦列の中央で立ち止まるフォルトゥナ=デウス・マキナは、立ち止まると守護者達に退く様に命じた。縦列に隙間が出来た事でフォルトゥナ=デウス・マキナと山県大地達は互いを見つめ合う形となる。映像越しに見た神の目は悍ましい程に冷徹で冷酷で、有無を言わせない威圧感を与える。
「下がりなさい」
一言。そう命じた姫は、たったそれだけを発すると再び伊佐凪竜一を抑え囲む2人を見つめた。山県大地とカーティスはその言葉を軽薄に受け止め、無下にするだけに止まらず、あろうことかゲラゲラと笑った。
目の前にいるのは見た目だけならばタダの少女だが、連合を実行支配する現人神。つい最近までカガセオ連合の存在を知らなかった地球人に神の威光を理解しろというのは難しい話。だから無謀にも喧嘩を吹っ掛けてしまった。
が、神を嘲る愚か者達は姫の目を見つめた途端にその表情を一変させた。自らを見つめるその視線が余りにも冷たく不気味であったからだ。
気圧された。これまで数え切れない程の人を殺してきた2人はその目の奥に潜む何かを察知すると身体を強張らせた。いや、目を逸らす事が出来なくなった。目を逸らせば死ぬ。圧倒的、根源的な恐怖に支配され動けなくなった。
しかしそれも僅かの間。彼らは克った、不幸にも自らの恐怖に打ち克ってしまった。ほんの僅かの時間で心中の恐怖を払いのけた2人は伊佐凪竜一を殺傷すべく行動を開始し……
「ば、馬鹿な!!」
「なななっ、何が起こったオイ!!」
直後に愚かな行いを後悔する羽目になった。無様に叫ぶ山県大地とカーティスは神の力の一端を目の当たりにした。2人が伊佐凪竜一に殺意を向けたその瞬間、山県大地の義肢とカーティスの銃がバラバラに分解した。それはあっと言う間で、それ以上に不自然だった。
「下がりなさい」
その言葉に愚か者達は逆らえなかった。神の威光の一端を垣間見た山県大地とカーティスは口々に"化け物"と吐き捨てながら車に逃げ戻ると風の様にその場から去った。姫は逃げ去る車を一瞥すらせず、今度は地面に倒れ込むハシマへと向けた。
「その方の爆弾を外してください。即座に爆発はしませんから」
フォルトゥナ=デウス・マキナは自らの傍にいた守護者に命じれば、その男は無表情でハシマの元へ駆け寄りると何の躊躇いも無く強引に爆弾を取り外し、川へと投げ捨てた。
直後、爆弾は姫の言葉通り盛大な大爆発を起こした。飛沫が端まで飛び散り、下からの衝撃に橋が大きく揺れ動く。
「私の我儘により皆様にご迷惑をおかけしました。では参りましょう」
姫は一連を見守ると灰色の光へと歩き始めた。夜の闇の中にぽっかりと浮かんだ灰色の光、その目の前に来たフォルトゥナ=デウス・マキナは……不自然に一旦立ち止まるとクルリと半回転、真後ろを見た。同時、言わずとも神の意図を察したアイアースは一礼と共に神の右側に退く。
遮る障害がなくなった神の視線は伊佐凪竜一、セオ=デイヴィース、アレム=アディスを映した。
それまで命懸けで自らを守って来た彼等を見つめるその目は冷え切っており、少なくとも今日この時まで共に旅をして来た相手に向けるには余りにも酷薄で、まるで面識が無いかの様に振る舞う。同じ場所に立つのに、同じ世界にいるのに、両者の間には絶望的な隔たりがある。
「伊佐凪竜一。私の言葉は全て真実だ。貴様の行動は良かれと思った……善意からの行動かも知れないが、結果は無駄に犠牲を増やしただけだ。そして、これ以上足掻いても無関係な人間を巻き込みながら自滅するだろう。他人を巻き込む自殺願望者と罵られたくなければこの星で大人しくしている事だ。もし素直に従うならば、私は寛大な心でもって貴様を一時だけ見逃してやろう」
神の横に立つアイアースが伊佐凪竜一に向け吐き捨てると……
「やはり……アナタではありませんでしたね。さようなら」
フォルトゥナ=デウス・マキナは酷く落胆した様子と共に小さな声でそう呟いた。ソレが彼の耳にまで届いたかどうかは定かでは無いが、再び踵を返し灰色の光の中へと消えゆく少女の背中を見つめる伊佐凪竜一の瞳に且つて程の力は無かった。
そうして、程なく姫が地球からその姿を消した。何の余韻も残さず、後ろ髪を引かれる事もなく、連合の頂点フォルトゥナ=デウス・マキナは夜の闇に浮かぶ灰色の光の向こうへと去った。
時を同じく、守護者達も主を追いかけるように灰色の門の中へと足早に消え去った。誰も彼もが淡々としており、伊佐凪竜一など気にも留めない。彼等が気に掛けるのは周囲を仄かに照らす淡い輝きの先、はるか上空に停止する航宙艦へと転移した姫だけなのだから。
程なく最後の光が消失すれば、後に残ったのはココまでの出来事を泡沫の夢ではないかと呆然と立ち竦む伊佐凪竜一達と、そんな彼等を優しく包む夜の闇だけとなった。
静かな世界に、虫の声だけが虚しく響く。
アイアースが語るルミナの現状は半年前以上に悲惨だった。伊佐凪竜一の捕縛と姫の確保失敗に対する罰は、ソレが意図した行動であったことを差し引いても過大極まりない。無論、身内びいきの発言ではない。
向こう側からすれば最優先すべき姫を確保できなかったのだから言い訳の仕様がなく、だから旗艦アマテラスの艦長をアッサリと解任されたところまでは納得も出来る。しかしその後が問題だ。奴等が彼女にした仕打ちは余りにも非合理的で、それまで丁寧に構築した包囲網をご破算にする程の暴挙だった。
「奇しくも貴様と同じ状況だな。理由?語るまでも無かろう」
簡潔な説明は正鵠を射ている。但し、幾つか肝心な部分が欠落しているが。言わない……いや、言えないのか。姫がいるから?しかし、この男が何らかの意図でもってルミナが逃走するに至る経緯を伏せたのは間違いない。
「そんな……」
「貴様を守りたかったようだが、端的に愚かと言わざるを得ない。結果、艦内をネズミの如く逃げ回る羽目になったのだからな。残念な事だが、美しく希少な銀色の髪もゴミの中ではくすんで鼠色と区別がつかない。さて、貴様はどうする?抵抗するならば実力で排除させて貰うが?」
戦いは避けられない、向こう側に避けるつもりが微塵もない。相手は抵抗するかどうか尋ねてはいるが、その一方で臨戦態勢を取っている。闇夜に大量のカグツチが舞い踊り、渦を巻き始め……
「ちょっと待ってください!!」
不意に聞こえた外野からの大声にその動きが鈍った。アイアースの意識が僅かに逸れた。
「彼の言い分も少しは聞いてください。曲がりなりにもココまで姫をお守りして来たんですよ!!」
「そうです、事情も聞かず一方的な判断で刃を向けるのが守護者の作法なのですか?」
「ハハッ、蛮族に作法を説かれるとは笑い話にもならんな」
しかし、至極真っ当な反論をぶつけられようがアイアースは微塵も動じず、寧ろ皮肉めいた笑みさえ浮かべる始末。が、その目には明確な殺意が滲み出す。
睨み付けられたセオとアレムは微動だに出来ない。動けば次の瞬間に首を跳ね飛ばされるイメージに身体が強張り、足が竦む。距離などお構いなし、猛者を相手にイメージだけで相手を委縮させる真似を容易く行う程にこの男は強い。
また伊佐凪竜一も同じくだ。最も彼の場合は実力差でなく、現状で足手纏いのセオとアレムの命を盾にされれば成す術が無いという理由からだ。
守護者の使命とは姫を守る事。それのみを唯一絶対の指標とする組織だと彼等は喧伝し、実行してきた。
守護者が他の実力組織と明確に違うのはその一点のみであり、詰まるところ彼等は法の守護者でもなければ正義の味方でもない。姫の為という大義名分を法や倫理や正義その他諸々の美徳よりも平然と上に置く、ソレが守護者。
だから……スサノヲは守護者に均衡する必要があった。姫の手綱が緩めば、あるいは姫自体が暴走する危険性を考慮したアマテラスオオカミの判断は間違いではない。
その守護者としての在り方を最も強く体現するアイアースは、姫を除くこの場の誰の意も介さない。正論など聞く耳持たず、その必要さえないと突っぱねる。
直後、一部始終を遠巻きに見ていた他の守護者達がアイアースの意を汲むかの如く伊佐凪竜一を取り囲んだ。彼は相変わらず動けないまま自らを取り囲む守護者達と、その後ろから殺気を振りまきながら向かってくる男をただじっと見つめる。
「これ以上の無益な血を流す事は私が許しません」
凛とした声が響いた。不穏な空気を切り裂いたのは凛としたフォルトゥナ姫の声。それはとても落ち着き払っており、同時にとても冷たく、ほんの僅か前まで恐怖に震えていた少女とまるで一致しない。
守護者達は正しく神の如きその言葉を聞くや一斉に伊佐凪竜一の元から離れた。そう、守護者を止められるのは彼女しかいない。連合の頂点、フォルトゥナ=デウス・マキナしかいない。
だが間が悪いというべき事態はどんな時にでも起こる。守護者が一斉に引き上げたその瞬間を見計い、カーティスと山県大地が伊佐凪竜一の背後から姿を見せた。油断した彼は山県大地に羽交い締めされ、そしてその横にいるカーティスは動かせない頭に銃口を突きつける。
「何だァ?コイツは予定外だなぁ、カーティスのオッサン?」
「あぁ、しかしこの機会を逃す必要もあるまい。では仕事の続きと行こうか」
「そう言う事。じゃあナギ、お別れは済ませたか?」
その様子を守護者達は何をするでもなく見つめ、アイアースは舌打ち交じりの不快な表情で睨んだ。
一方、守護者達が作る縦列の中央で立ち止まるフォルトゥナ=デウス・マキナは、立ち止まると守護者達に退く様に命じた。縦列に隙間が出来た事でフォルトゥナ=デウス・マキナと山県大地達は互いを見つめ合う形となる。映像越しに見た神の目は悍ましい程に冷徹で冷酷で、有無を言わせない威圧感を与える。
「下がりなさい」
一言。そう命じた姫は、たったそれだけを発すると再び伊佐凪竜一を抑え囲む2人を見つめた。山県大地とカーティスはその言葉を軽薄に受け止め、無下にするだけに止まらず、あろうことかゲラゲラと笑った。
目の前にいるのは見た目だけならばタダの少女だが、連合を実行支配する現人神。つい最近までカガセオ連合の存在を知らなかった地球人に神の威光を理解しろというのは難しい話。だから無謀にも喧嘩を吹っ掛けてしまった。
が、神を嘲る愚か者達は姫の目を見つめた途端にその表情を一変させた。自らを見つめるその視線が余りにも冷たく不気味であったからだ。
気圧された。これまで数え切れない程の人を殺してきた2人はその目の奥に潜む何かを察知すると身体を強張らせた。いや、目を逸らす事が出来なくなった。目を逸らせば死ぬ。圧倒的、根源的な恐怖に支配され動けなくなった。
しかしそれも僅かの間。彼らは克った、不幸にも自らの恐怖に打ち克ってしまった。ほんの僅かの時間で心中の恐怖を払いのけた2人は伊佐凪竜一を殺傷すべく行動を開始し……
「ば、馬鹿な!!」
「なななっ、何が起こったオイ!!」
直後に愚かな行いを後悔する羽目になった。無様に叫ぶ山県大地とカーティスは神の力の一端を目の当たりにした。2人が伊佐凪竜一に殺意を向けたその瞬間、山県大地の義肢とカーティスの銃がバラバラに分解した。それはあっと言う間で、それ以上に不自然だった。
「下がりなさい」
その言葉に愚か者達は逆らえなかった。神の威光の一端を垣間見た山県大地とカーティスは口々に"化け物"と吐き捨てながら車に逃げ戻ると風の様にその場から去った。姫は逃げ去る車を一瞥すらせず、今度は地面に倒れ込むハシマへと向けた。
「その方の爆弾を外してください。即座に爆発はしませんから」
フォルトゥナ=デウス・マキナは自らの傍にいた守護者に命じれば、その男は無表情でハシマの元へ駆け寄りると何の躊躇いも無く強引に爆弾を取り外し、川へと投げ捨てた。
直後、爆弾は姫の言葉通り盛大な大爆発を起こした。飛沫が端まで飛び散り、下からの衝撃に橋が大きく揺れ動く。
「私の我儘により皆様にご迷惑をおかけしました。では参りましょう」
姫は一連を見守ると灰色の光へと歩き始めた。夜の闇の中にぽっかりと浮かんだ灰色の光、その目の前に来たフォルトゥナ=デウス・マキナは……不自然に一旦立ち止まるとクルリと半回転、真後ろを見た。同時、言わずとも神の意図を察したアイアースは一礼と共に神の右側に退く。
遮る障害がなくなった神の視線は伊佐凪竜一、セオ=デイヴィース、アレム=アディスを映した。
それまで命懸けで自らを守って来た彼等を見つめるその目は冷え切っており、少なくとも今日この時まで共に旅をして来た相手に向けるには余りにも酷薄で、まるで面識が無いかの様に振る舞う。同じ場所に立つのに、同じ世界にいるのに、両者の間には絶望的な隔たりがある。
「伊佐凪竜一。私の言葉は全て真実だ。貴様の行動は良かれと思った……善意からの行動かも知れないが、結果は無駄に犠牲を増やしただけだ。そして、これ以上足掻いても無関係な人間を巻き込みながら自滅するだろう。他人を巻き込む自殺願望者と罵られたくなければこの星で大人しくしている事だ。もし素直に従うならば、私は寛大な心でもって貴様を一時だけ見逃してやろう」
神の横に立つアイアースが伊佐凪竜一に向け吐き捨てると……
「やはり……アナタではありませんでしたね。さようなら」
フォルトゥナ=デウス・マキナは酷く落胆した様子と共に小さな声でそう呟いた。ソレが彼の耳にまで届いたかどうかは定かでは無いが、再び踵を返し灰色の光の中へと消えゆく少女の背中を見つめる伊佐凪竜一の瞳に且つて程の力は無かった。
そうして、程なく姫が地球からその姿を消した。何の余韻も残さず、後ろ髪を引かれる事もなく、連合の頂点フォルトゥナ=デウス・マキナは夜の闇に浮かぶ灰色の光の向こうへと去った。
時を同じく、守護者達も主を追いかけるように灰色の門の中へと足早に消え去った。誰も彼もが淡々としており、伊佐凪竜一など気にも留めない。彼等が気に掛けるのは周囲を仄かに照らす淡い輝きの先、はるか上空に停止する航宙艦へと転移した姫だけなのだから。
程なく最後の光が消失すれば、後に残ったのはココまでの出来事を泡沫の夢ではないかと呆然と立ち竦む伊佐凪竜一達と、そんな彼等を優しく包む夜の闇だけとなった。
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