異世界お嬢様は世界最強の人型機動兵器と踊る（仮）

???

　――プロジェクトエインヘリヤルの経過報告

　――試作0号機よりデータ受信

　――位置推定、当該宙域より6574光年先、アハト銀河団内第35恒星系内と断定

　――戦闘データ受信……解析完了。試作0号機は無事"赤い糸"と接触した模様

　――モニタリングデータ解析……完了。"赤い糸"との共振効果による戦闘能力増幅割合は接触時点で+25％程度。しかし、以後も徐々に上昇を続け現在は87％まで上昇し、尚も上昇中。

　――"赤い糸"側にも同じ結果が出た。かの者に眠る特殊な因子が共振効果により活性化の兆しを見せている。想定外だが、実に有用だよ。彼女も、このデータも

　――本データにより計画の実効性の高さ、妥当性は証明された。故に計画は継続との結論を下す

　――異議あり。計画の続行は慎重に判断すべきと進言する。人類が持ちうる感情、意志という力は移ろいやすく脆い。それが原因で数えきれないほどの争いが、不幸が起きた事実を忘れたか？

　――異議あり。故に対象を"赤い糸ツガイ"に限定したのだ。過去の接触例と今回のデータを総合すれば、"次なる絶望"の楔クサビになり得るとの判断は希望的観測に基づく結論ではない

　――結論。プロジェクトエインヘリヤルは継続とする。試作0号機は引き続き監視対象とし、特筆事項があれば即時共有、解析を行う事とする。以上

　――我々には時間が無いのだ。例えコレが薄氷の上を歩む行為だとしても、止まる事は許されない

　――なればこそ見守ろう。試作0号機、"プロトステラ"と、現地の"赤い糸"ルビー＝イセルベルクを。両名が希望となるか……あらゆる障害を乗り越え、理解し、認め、許し、受け入れるか。その果てに尊ぶべき8つの感情の1つ"愛"を発露できるか否か

　――人同士ですら理解しあえ無い現状を見て、どうして人と人ではない物が乗り越えられると？夢想ではないか？理想論に耽溺するほどの猶予があるかどうかでさえ定かではないのだぞ？

　――そう感じるのは我々の主観だ。長い間をただひたすらに監視してきたが故、折り重なった絶望に心が浸食されているのだ。楽観せよと言わないが、無意味に悲観する理由もない

　――だから本ケースの監視を継続するのだ。データによればルビー＝イセルベルク側にはその兆候が見られる。期待しようではないか。我が子と赤い糸ツガイが紡ぐ結末を。彼女等が次なる絶望を阻止し得る希望となり得るか

　――ならなければ？

　――その時は……