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△月20日
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次の不幸を心待ちに死ながら数日が過ぎた。が、しかしそれ以後は何も起こらなかった。ソレまで不幸のドン底だった俺に訪れた順風満帆な日々は逆に不安を煽る。俺の頼りはお守りだけなんだ。だからこれからも俺に金を運んでくれなければ困る訳で、だから今の生活は有難いようで全く有り難くない。
しかし、そんな思いを裏切る様にそれ以後も何一つ起こらなかった。ならばと考え方を少し変えてみた俺はわざと転んで怪我をしてみたのだが、それでも何も変わらず。どうして?何か条件があるのか?もしかしたら偶発的な不幸じゃないとだめなのか?だが、色々考え試行してみてもやはり結果は同じで、だから打つ手の無くなった俺はお守りをもう一度ほじくり返してみた。
中にあったのは白い紙切れと……それ以外には何もなかった。おかしいな、前に見た時は何かあった筈だ。アレは……そう、小汚くくすんだ藁を捻じった縄の様な何かがどこにもなく、それ以外に特に変わった部分は無い。アレはゴミだろうから大した意味は無い筈。となれば、やはり馬鹿みてぇに不幸が来るのをボケっと待ち続けるしかないらしい。まさか、不幸続きだった以前の暮らしを切望する日が来るとは思いもしなかった。世の中、そうそう上手く回らねぇってか。クソが……
「不幸の後に幸運は訪れる。必ず。」
また声だ。
「オイッ。どうなってるんだ!!次の不幸はまだなのか?」
矢も楯もたまらず俺は怒鳴り散らした。八つ当たりは百も承知だ。
「だが……逆もまた……」
が、次に聞こえてきたのはそんな言葉。何だ?不幸の後に幸運が来るってだけで終わりじゃなかったのか?なんだよ逆って?今までとは違う言葉に何か嫌な予感が頭を過った直後……ピピピという電子音が部屋に響いた。音源を調べればPCからで、驚かせるなと悪態を付きながら画面を見れば何かの通知が届いていた。しかも一通だけじゃなくて何通も届いている。
これは……応募した事さえすっかり忘れていたキャンペーンサイトからの返信通知だ。内容は……当たり?しかも一つだけじゃない。届いた通知は手当たり次第に登録したキャンペーンの内の幾つかだったが、その全てに当選してるという通知。しかも、ソレは全部が全部高額商品だった。最新のPC、TV、果ては車までザっと計算しても合計すれば軽く数百万は超えている。
「ハハハッ、何だ。ご利益あるじゃないか。驚かせ……」
だけど俺はそれ以上を言えなかった。気づいた。俺は、俺の身にはまだ何も不幸が起きていない。ならなんで当たる?なんだコレ?
「だが……逆もまた然り。」
驚き戸惑う俺の背後からまた同じ声と言葉が聞こえた。逆。そう、逆だ。それはつまり……そこまで考えたところで再びピピピ、と電子音が鳴った。恐る恐る届いた通知を開けば、ソコにはやはり当選の文字。見るまでも無い、手当たり次第に登録応募したキャンペーンの当選通知だ。不味いまずいマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!
「オイッ!!もしかしてお前、お前ッ!!不幸の後に幸運を呼び込むんじゃなくて、もしかして不幸と幸運の帳尻を合わせているのかッ!!そうなんだな!?」
誰もいない部屋に俺の怒号だけが響くが答えなど帰って来る筈も無く、それ以外には何かを告げる電子音だけが不気味に響き続けた。逆という言葉の意味が漸く分かった。そう、帳尻を合わせるんだ。小さな不幸には小さな幸運で、大きな不幸には大きな幸運で。だがソレは逆も同じ。つまり、小さな幸運には小さな不幸で、大きな幸運には大きな不幸で。
なら……今、俺の身に起きているのは大きな幸運で、ならばその帳尻を合わせる為に……そう考えれば、俺はお守りを見つけた時に厳重に封がされていたことを思い出した。それに、そもそもオレが考えるように都合が良い代物ならばバーサンはなんでコレを使わなかったんだ?俺は今になって漸く全てを理解した。こいつは持ち主に大きな不幸を与える隙を伺っていて、その為に小さな幸運という餌をばら撒いていた。
「ふざけんなオイッ、もう止めろッ!!」
未だに止まらないPCからの電子音を無理やり止める為、俺は椅子を持ち上げるとディスプレイ目掛けて叩きつけた。大きな音と衝撃が起き、ディスプレイは壊れた。もう動かない。だがコレで終わるわけじゃない。何とかしないと、だが何をどうすれば?そう考えた俺の視界の端に朱いお守りが映った。そうだ。これだ。これさえなければチャラに出来るかもしれない。
「そして、逃げること能わず。」
また言葉が聞こえた。逃げる事がなんだって?だが今はその不気味な声に耳を傾ける余裕はない。俺は小汚いソレを引っ掴むと台所に来て、そしてコンロの前に来てツマミを捻る。直後。
「無駄ヨ。」
無慈悲な声が耳元から聞こえ、そして背後に何かの気配を感じ……
しかし、そんな思いを裏切る様にそれ以後も何一つ起こらなかった。ならばと考え方を少し変えてみた俺はわざと転んで怪我をしてみたのだが、それでも何も変わらず。どうして?何か条件があるのか?もしかしたら偶発的な不幸じゃないとだめなのか?だが、色々考え試行してみてもやはり結果は同じで、だから打つ手の無くなった俺はお守りをもう一度ほじくり返してみた。
中にあったのは白い紙切れと……それ以外には何もなかった。おかしいな、前に見た時は何かあった筈だ。アレは……そう、小汚くくすんだ藁を捻じった縄の様な何かがどこにもなく、それ以外に特に変わった部分は無い。アレはゴミだろうから大した意味は無い筈。となれば、やはり馬鹿みてぇに不幸が来るのをボケっと待ち続けるしかないらしい。まさか、不幸続きだった以前の暮らしを切望する日が来るとは思いもしなかった。世の中、そうそう上手く回らねぇってか。クソが……
「不幸の後に幸運は訪れる。必ず。」
また声だ。
「オイッ。どうなってるんだ!!次の不幸はまだなのか?」
矢も楯もたまらず俺は怒鳴り散らした。八つ当たりは百も承知だ。
「だが……逆もまた……」
が、次に聞こえてきたのはそんな言葉。何だ?不幸の後に幸運が来るってだけで終わりじゃなかったのか?なんだよ逆って?今までとは違う言葉に何か嫌な予感が頭を過った直後……ピピピという電子音が部屋に響いた。音源を調べればPCからで、驚かせるなと悪態を付きながら画面を見れば何かの通知が届いていた。しかも一通だけじゃなくて何通も届いている。
これは……応募した事さえすっかり忘れていたキャンペーンサイトからの返信通知だ。内容は……当たり?しかも一つだけじゃない。届いた通知は手当たり次第に登録したキャンペーンの内の幾つかだったが、その全てに当選してるという通知。しかも、ソレは全部が全部高額商品だった。最新のPC、TV、果ては車までザっと計算しても合計すれば軽く数百万は超えている。
「ハハハッ、何だ。ご利益あるじゃないか。驚かせ……」
だけど俺はそれ以上を言えなかった。気づいた。俺は、俺の身にはまだ何も不幸が起きていない。ならなんで当たる?なんだコレ?
「だが……逆もまた然り。」
驚き戸惑う俺の背後からまた同じ声と言葉が聞こえた。逆。そう、逆だ。それはつまり……そこまで考えたところで再びピピピ、と電子音が鳴った。恐る恐る届いた通知を開けば、ソコにはやはり当選の文字。見るまでも無い、手当たり次第に登録応募したキャンペーンの当選通知だ。不味いまずいマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!
「オイッ!!もしかしてお前、お前ッ!!不幸の後に幸運を呼び込むんじゃなくて、もしかして不幸と幸運の帳尻を合わせているのかッ!!そうなんだな!?」
誰もいない部屋に俺の怒号だけが響くが答えなど帰って来る筈も無く、それ以外には何かを告げる電子音だけが不気味に響き続けた。逆という言葉の意味が漸く分かった。そう、帳尻を合わせるんだ。小さな不幸には小さな幸運で、大きな不幸には大きな幸運で。だがソレは逆も同じ。つまり、小さな幸運には小さな不幸で、大きな幸運には大きな不幸で。
なら……今、俺の身に起きているのは大きな幸運で、ならばその帳尻を合わせる為に……そう考えれば、俺はお守りを見つけた時に厳重に封がされていたことを思い出した。それに、そもそもオレが考えるように都合が良い代物ならばバーサンはなんでコレを使わなかったんだ?俺は今になって漸く全てを理解した。こいつは持ち主に大きな不幸を与える隙を伺っていて、その為に小さな幸運という餌をばら撒いていた。
「ふざけんなオイッ、もう止めろッ!!」
未だに止まらないPCからの電子音を無理やり止める為、俺は椅子を持ち上げるとディスプレイ目掛けて叩きつけた。大きな音と衝撃が起き、ディスプレイは壊れた。もう動かない。だがコレで終わるわけじゃない。何とかしないと、だが何をどうすれば?そう考えた俺の視界の端に朱いお守りが映った。そうだ。これだ。これさえなければチャラに出来るかもしれない。
「そして、逃げること能わず。」
また言葉が聞こえた。逃げる事がなんだって?だが今はその不気味な声に耳を傾ける余裕はない。俺は小汚いソレを引っ掴むと台所に来て、そしてコンロの前に来てツマミを捻る。直後。
「無駄ヨ。」
無慈悲な声が耳元から聞こえ、そして背後に何かの気配を感じ……
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