天国地獄闇鍋番外編集

田原摩耶

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齋藤総受け、複数攻め

阿賀松を怒らせて犬扱いされる齋藤にちょっかいかける縁②END※【阿賀松+縁×齋藤/3P/無理矢理/二輪挿し】

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「っごめんなさい、ごめんなさいっ」
「なんでそんなに謝んだよ」
「だって、こんな……っこんなこと……っ」
「いつもやってんだろ?今更照れんなよ」

 それとこれとは状況がまるで違うじゃないか。
 阿賀松に引きずり倒されたソファーの上。
 ふかふかの上質なクッションの寝心地なんて確かめる余裕なんてなくて、目の前、腿を撫でてくるその無骨な手の感触に短い悲鳴が漏れる。

「いいなぁ、伊織はいつでも齋藤君とヤれるんだからさ。ずるいよね」

「俺だって齋藤君と色んなことしたいのに」と、拗ねたように呟く縁の声は背後からした。
 抱え込まれるように密着した背後の縁の手が胸元に回る。
 衣類越し、両手で胸板を鷲掴みにされれば嫌でも全身の筋肉がびくりと反応した。

「こんな風にさ」
「ぃっ、んんっ」

 衣類ごとぎゅっと突起を摘まれ、そのまま引っ張られれば突き抜けるような鋭い痛みに胸が反る。
 縁の指から逃げるように体を捻るが、手足を縛られた今まともに身動き取ることができない。

「やっ、やめてください……っ、縁先輩……っ!」
「そんな冷たい事言うなよ。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」

 そういう問題じゃないし、だからといっていいなんて言えるわけもないし。
 阿賀松の顔を見るのが怖くて、ぎゅっと目を瞑り耐えようとしたとき。耳にべろりと舌を這わされ、濡れた感触に堪らず「あっ」と震え上がった。

「やっ、も、だめ、だめです……っほんと……っ!」

 耳の穴へと入り込んでくる縁の舌が、くちゅくちゅとわざと音を立てるようにして鼓膜を脳髄を犯してくる。
 必死に堪えようとするが、脳味噌に直接繋がっているそこは見ないことにするにはあまりにも刺激が強すぎて、胸の奥、心臓がバクバクと騒ぎ始めた。

「伊織がいるからってそんな嫌がったフリしなくていいって」
「ちっ、ちが……っ」
「よかったなぁ、ユウキ君。たーっぷり可愛がってもらえよ」

 掛けられる声に思わず目を見開けば、「今のうちにな」と笑う阿賀松と視線が絡み合う。助けてくれる気配はない。
 耳と胸、両方を弄ばれ、震える俺は目の前が暗くなっていくのを感じた。

「っそんな、先輩……っ」

 元より阿賀松が助けてくれるなんて微塵も期待していないのだが、やはり、このままは、辛い。あまりの羞恥に涙が込み上げ、視界が揺らいだ。
 我慢できず涙ぐむ俺に、阿賀松は狼狽えるどころかどこか嬉しそうに「泣くほど嫌か」と笑う。

「ま、どうせ後から俺が一番だってわかるだろうけど」

「どうかなー?もしかしたら『やっぱり縁先輩のがいいっ!』ってなるかもしんねえし?」

 摘まれ、じんじんと痺れ、疼くそれを指の腹で柔らかく潰されれば、先ほどと違う電流が背筋を走った。
 ぶるりと仰け反った時、「ああ?」と阿賀松の眉間に深い皺が寄せられる。

「っぁ、やっ、ゆび、やめてくださっ、ぁ」
「んなわけねーだろ、つまんねー冗談言うなら潰すぞ」
「さあ?冗談だと思う?齋藤君、伊織のこと好きじゃないみたいだしさぁ?あながち外れでもないと思うけど」

「ねえ、齋藤君?」と問い掛けてくる縁。
 正直なにがなんだかわからなくて、取り敢えず阿賀松が不機嫌になっていくけど二人の会話が全く耳に入って来ない俺がそんな問いかけに答えられるわけがなくて。
 返答を促すように指先で凝り始める先端を押されれば、びくんと腰が揺れる。

「っ、すみません、ほんと、やめてくださっぁ、んん……っ!」

 言い終わる前に、履いていたズボンのウエストを緩められ、そのままその中に阿賀松の手が捩じ込まれた。

「ちょっ、どっ、どこに……っやめてください、駄目ですっ、そこは……っ!」

 あろうことか縁に乳首嬲られただけで既に俺のものは熱を持ち始めていたのだ。
 硬くなったそこを阿賀松に知られたくなくて、必死に腰を引くが勿論意味なんてなくて。

「あ?なんだって、聞こえねえよ」
「んぅっ」

 下腹部をまさぐる手とは別の手で、俺の口に指をねじ込んだ阿賀松は強引に黙らせるように口端を拡げる。
 ぐっぐっと裂けさせるように引っ張られ、閉じることのできない口からは声と舌がだらしなく漏れた。

「ちゃんと言わねえと舌引っこ抜くぞ」

 下腹部、下着の膨らみを指先ですっとなぞられればもどかしいその感触に腰がずくんと疼いた。
 やり場をなくし、蠢く舌を親指で擽られ、体中を巡る血液が沸騰するみたいに熱くなるのが分かった。

「っぅ、えっ、ほんは、ふひへふぅ……ッ」

 唾液が止まらない。
 ぽたぽたと溢れる唾液は阿賀松の指を濡らし、それでも構わず俺の口をこじ開けた阿賀松。

「聞こえねえ」

 そう言うなり、顔を寄せた阿賀松はそのまま外に放られた舌にしゃぶりつく。
 緊張で尖った舌を唇で啄まれ、唾液ごと先端を吸い上げられればぞくりと体が震えた。勿論、それくらいで阿賀松がやめるわけがなくて。

「っん、うぅっ、ふっ、ぅ……ッ!」

 阿賀松の赤い舌に、舌ごと絡め取られるとそのまま深く口を重ねてきた。
 キスなんて生易しいものではなく、重なった唇から強引に捩じ込まれる濡れた肉にぐちゃぐちゃに咥内を掻き回されるその感触は犯されているとでも形容した方が納得できる、そんな一方的な愛撫で。

「っふ、ぅ……っ」

 残った酸素を奪われ、頭がぼうっとしてきた。
 体が、脳が、喉が、皮膚が、蕩けたみたいに熱くなり、まるで夢でも見ているような錯覚さえ覚える。
 これが夢だったらどれほどいいのだろうか。
 短い間の夢現は、ズボンの下で蠢く阿賀松の手によって覚醒した。

「っ、ぅんんっ!」

 乱暴にズボンをずり下げられ、必死に隠していた(つもり)のテント張った下半身が二人の眼下に晒され、青褪める。
 唇さえ塞がれていなければ今頃声を上げていたかもしれない。

「齋藤君ってば、結構感じやすいんだ」

 耳に吹き掛けられる生暖かい吐息と嘲笑に、かあっと顔が熱くなる。
 ああもう、舌を噛み切りたい。噛み切って息絶えたい。そう思うのに、肝心の舌まで嬲られていてなんだかもうどうかなりそうだった。
 まだどうにもなっていない時点で、それはそれで異常なのかもしれないが。

「つーかさ、さっきから伊織ばっかずりぃ。次、俺もちゅー」
「っ、ん、るっせぇよ……」

 唇を吸われ、舌を甘噛みされ、開きっぱなしになった口内には流れ込んでくる阿賀松の唾液と自分の唾液が混ざってなにがなんだかもうわからない。
 朦朧とした意識の中、唇に触れる阿賀松の吐息が孕んだ熱だけがやけにはっきりしていた。
 阿賀松の即答に「ケチ」と唇を尖らせる縁。

「いいもん。じゃあ俺、こっちもらうから」

 言うやいなや、脱げかけの下着の中へと縁の無骨な手がするりと入り込んできたかと思うと、その指先は躊躇いもなく臀部の割れ目をなぞり、その最奥に触れた。瞬間、問答無用で肛門に指を捩じ込まれる。

「っんん!っふ、ぅ……ッ!」
「あ、結構狭いな。意外。もっと緩いかなって思ってたけど、これならすぐいっちゃいそー」

 中を探るように奥へとずぶずぶと入り込んでくる細くはない指に、乾いた内壁が引っ張られ、鋭い痛みが脳天へと突き抜ける。
 身を捩らせ、縁の指から逃げるように目の前の阿賀松にしがみついたときだった。
 ぬるりとしたなにかが、剥き出しになった下半身に垂らされる。

「んぅ――っ!!」

 人肌ほど暖められたそれは、すぐにローションだとわかった。
 余計な知識、経験のみ着実に蓄えていっている自分に凹む暇もなく、皮膚を滑り落ちていくぬめりのある液体を指に絡め取った縁は、濡れた指を同様濡れたそこへと宛てがう。
 今度は、ローションの助けもあり、緊張する筋肉を押し広げるようにスムーズに入ってきた。

「っはっ、ぁっ、やめっ、そんな……っ!」

 腹の中で指に絡み付く内壁が摩擦され、ぐちゅぐちゅと聞きたくもないような生々しい音が響く。
 体の中を弄られる感触は不快以外のなにものでもないのだが、たっぴりとローションを流し込まれたそこを激しく擦られれば、腹の底から湧き上がってくる新たな熱に自然と息が上がった。

「大丈夫大丈夫。ちゃぁんと慣らしてやるから。俺、伊織と違って痛がる齋藤君に勃起するような変態野郎じゃないし」

 にやにやと笑いながら、中をくすぐってくる縁にぶるりと腰が揺れる。
 呻く俺の唇から垂れる涎を舐め取る阿賀松は肩を揺らして笑った。

「ハッ、よく言うよ」

 阿賀松の言葉には同意するが、俺からしてみればどっちも目糞鼻糞というか俺にとってやさしくない人間であることは間違いない。
 性器と肛門、前後からの指責めに行く場を無くした俺の頭はそのうち弾け飛ぶんではななかろうかと思うくらいなにも考えることができなくなるくらいには混濁していた。

「っもっ、ほんと、やめてくださいっ、これ以上は、ぁ、俺っ、俺……っ!」
「イキそう?イッちゃえイッちゃえ」

 楽しそうに笑う縁は、痙攣する俺の腰を捉え、濡れたそこに捩じ込んだ四本の指をばらばらに動かす。
 ぐちゃぐちゃに掻き乱された内壁に全身の筋肉が凝縮し、喉から自分のものとは思えないような声が漏れた。
 汗が止まらない。心臓が煩い。熱い。苦しい。
 逃げ出したいほどの快感は最早苦痛でしかなく、パンパンに腫れ上がった性器は下着から溢れるほど膨張している。

 イキたい。イキたいし、射精の準備もできている。
 そうは思うけど、性器の根本を掴む下着の中に入り込んだ大きな手がそれを邪魔をしていた。

「おい、だらしねえな。もう根ぇあげんのかよ」

 詰まらなさそうな目で俺の顔を覗き込んでくる阿賀松と視線がぶつかる。
 大量の汗で濡れる俺に口角を上げ、阿賀松は真っ赤になったそこを親指でなぞった。
 全血液を集め、くっきりと血管を浮かび上がらせたそこは今もっと敏感になっていて、触れるか触れないかのもどかしい感触すら俺にとっては酷い苦痛だった。

「っ、あっ、がまつせんぱ、ぁっ、っ、お願いしますっ、も、俺……ッ!」
「我慢できない?」

 低く問い掛けられ、こくこくと何度も頷く。
 行き場を無くした快感が腹の中をぐるぐると回り、気が狂いそうだった。

「じゃ、そのままでいろ」

 鬼か。

「っそ、……んな………っ」

 絶望的な一言に目の前が真っ白になり、一瞬気が遠のく。
 バクバクと脈打つ心臓は今にでも破裂しそうで、すぐそこまでせり上がっている熱に耐え切れず先端からはとろとろと溢れ出す透明の汁が性器をぬらすばかりで。

「伊織ってそーいうの好きだよな。嫌われるぞ」

「っふ、ぅッ」

 ぎちりと内壁を刺激され、腰が揺れる。
 溢れ出る先走りと唾液は止まらなくて、中で縁の指が動く度に「あっ、あっ」と声が漏れた。
 脳髄がじんじんと熱くなり、思考回路までも痺れてくる。

「いいんだよ、こいつ、こういうの好きだから」
「あ、ほんとだ。すっごい締め付けてくる」
「だろ?」
「入れちゃっていい?」

 なんでもないように交わされる会話に、嫌な汗が滲む。
 なにをさらっと当たり前のように。

「だっ、だめですっ!」

 今この状態で突っ込まれてみろ、考えることすら恐ろしくて、青ざめ顔を横に振れば阿賀松が「嫌われてんじゃん」と笑う。

「少しは俺のものっていう自覚が出てきたみてぇだな。ん?ご褒美に、一回出してやるよ」

 その言葉を頭が理解するよりも早く、阿賀松は締め付けていた手をぱっと離す。
 勿論、今にも射精したくて限界突破しているところを力ずくで塞き止めていたものがなくなったとなると、あとは塞き止められていたものが暴発するわけで。

「っひ、ぁ――ッ!!」

 ビクン、と脈が一層大きくで響いたと同時に、体内に篭っていた熱が一気に放たれる。
 目の前が、頭が、真っ白になって、もしかしたら意識が飛んでいたのかもしれない。突き抜けるような爽快感とともにどっと襲い掛かってくる疲労感に脱力したとき、目の前の阿賀松の顔がみるみるうちに不快なものになっていく。

「クソ、飛ばしすぎなんだよてめぇは……あんたのせいで汚れただろうが。綺麗にしろ」

 そんな無茶苦茶な。
 限界まで溜めるまで溜めさせておいて横暴な阿賀松に今更なにも言わないが、精液を絡めた指を目の前に差し出されると自分のものとはいえ顔が引き攣ってしまう。

「え、いや……っ」
「はあ?嫌じゃねえよ。てめえのだろうが。責任とれよ」

 確かに、そうだけど。と、差し出された手から顔を背けようとした瞬間、片方の手で顎を固定され、強引に唇へとねじ込まれた。

「んっ、ぅぶっ」

 瞬間、咥内いっぱいに広がる独特の匂いと熱い液体に吐き気を催したが、それすら構わず無理矢理喉奥まで入り込んでくる指にそれどころじゃなくなるわけで。

「ふ……っ、んん……っ」

 逃げる舌を掴まれ、精液に濡れた指を擦られる。
 そのまま咥内をぐちゅぐちゅと掻き回されれば、息苦しさと恥ずかしさと人間扱いされていない屈辱で頭がごっちゃになり、次第に全身が熱くなった。

「でも本当すごい量だね。伊織にちゃんと相手してもらえなかったんだ?」

 可哀想、と呟き、縁は指を引き抜く。
 ちゅぽんと音を立て、執拗に解されたそこからとろりとローションが垂れ、それを拭う余裕もなく体に力がこもる。

「うるせえ、こいつマグロだから普通んときヤル気になれねえんだよ」
「あ?そうなの?俺ならマグロ大歓迎だけどなぁー。ほら、好き勝手できるし?いいじゃんマグロ」

 マグロ連呼され、いたたまれなくなった俺が身動いだ時、ふと縁に腰を掴まれた。
 高く腰を持ち上げられ「っえ」と慌てた俺は思わず振り返る。

「縁先輩っ、なにを」
「んー?なにって?そりゃあ、ねえ?」

 わざとらしくはぐらかす縁は言いながら剥き出しになったそこに取り出した自身を宛てがう。
 押し当てられるその感触に青褪めた俺は慌てて逃げようとするが、確りと腰を抱き寄せられれば余計密着した下半身にぬるりとそれが触れなんかもう声にならない悲鳴が出た。

「っぃ、やっ、ちょっ、待ってくださッ」
「だーめ、待たないっ」

 甘い声とは裏腹に、アザが残りそうなくらい強い力で俺を押さえ込んだ縁は問答無用で押し当てたそれをぐっと押し込んでくる。
 受け入れるため、指で解されたそこは少しの力でも簡単にそれを飲み込んでしまう。
 痛みはない。痛みはないが、指よりも何倍もある質量のそれを捩じ込まれればもちろん息が詰まるわけで。

「ひぃ……ッ!!」

 ぐぐっ、と肛門を強引に拡げ、内壁を押し進んでくる性器に堪らず背筋を仰け反らせる。
 押し潰されるような圧迫感に身悶え、目の前の阿賀松に抱きつけば、そのまま背中を擦られる。

「っあ、うそっ、やだ、先輩っ!」
「やりやがったな、てめぇ。方人」
「っはは!まさか、今更齋藤君に独占欲なんて発揮しないよねぇ?」

 にやにやと笑う縁に、小さく舌打ちした阿賀松は顔を強張らせる。
 阿賀松に縋っても無駄だというのは重々承知していたが、あまりの重量に、熱に、耐え切ることが出来ず俺は藻掻くように阿賀松にしがみついた。

「ほーら、さっさと逃げないともっと奥までいっちゃうぞ」
「あっ、んん……っ!」
「……っまあ、無理だろうけどね」

 腕を引っ張られ、ぐっと腰を寄せられれば、埋め込まれた硬いそれが奥へと無理矢理入り込んでくる。
 貫かれたような衝撃に頭が真っ白になり、一瞬、息を忘れた。
 そして次の瞬間、内壁を濡らすローションを絡め取るようにゆるく擦るように腰を動かし始める縁にハッとした俺は青褪めた。

「ッはぁ……ぁ……ッ、やっ、あっ、やめっ、せんぱっ!うそっ!抜いて、ぇっ、抜いてくださいっ!」
「んーと、やだ」
「っあっ、ひッ、やっ、いやだ、せんぱっぁ、あがまつせんぱ、たす……っ助け……ッ!」

 ずぷずぷと次第に早まるピストンに腰が動き、それが嫌で必死に腰に力を込めるけど余計中の縁のが大きくなるばかりで。
 こんな醜態を阿賀松の前で晒すことに耐え切れず、込み上げてくる羞恥の涙を飲みながら堪らず懇願すれば、こちらをじっと見据えていた阿賀松と視線がぶつかった。

「……」
「せんぱ……っあ……っ?」

 なにも言わない阿賀松は、返事の代わりに俺の腰に触れる。
 腰を抱き抱えられ、まさか本当に助けてくれるのか、と驚く俺だったがよく考えてみなくてもそれはありえないことな訳で。
「えっ?えっ?」と狼狽える俺を無視し、すでに縁のものを深く飲み込んだそこに指を捩じ込めば、阿賀松の意図に気付いたらしい縁は顔を引き攣らせた。

「ん?って、ちょ、伊織、なにして……」
「そのままそいつ、捕まえてろよ」
「うっそ、冗談でしょ」
「どうだろうなぁ……っと、」

 ぐっと広げられたそこに、もう一本、先端を充てがわられ、ようやく阿賀松が何をしようとしているのか気付いた俺は全身の血の気が引いていくのを感じた。
 まさか、まさか、冗談だろう。しかし、そんな俺の意思は反対に強引に拡げられたそこに先端をつぷりと埋め込まれ、

「っや、待ってくださっ、ぁっ、む、無理ですっ無理ですからっ!」
「……はっ、無理じゃねえだろ?……やるんだよ。舌噛まねえように黙ってろ」
「っうそ、駄目ですっ、せんぱ……っあぁ……――ッ!!」

 慌てて二人の上から逃げようとした直後のことだった。
 腰を支えていた縁の手が離れ、支えを無くした俺の腰はそのまま落ちるわけで。
 そのまま体重で一気に突き刺さるそれに、最早声にならなかった。

「は……ぁあ……ッ」

 開いた口が閉じれず、どれくらいだろうか。確かに俺は短い間意識が飛んでいたと思う。
 捩じ込まれた二本の性器の形に無理矢理広げられる痛みを和らげるほどローションは万能ではない。
 どこか切れたような音がして、それが下半身からなのか俺の我慢の糸なのかわからなかったけど、これが夢ならどれだけよかっただろうか。そう思う程度には、打撃は大きかった。 

「っ、ふ、……ま、流石にキツイよなぁ……」
「っぁ、あぁ……ッ」
「そりゃそーでしょ……ってね」

 引きつったように笑う縁は、半分まで飲み込んだ俺の腰を両手で掴み、そのまま一気に下ろす。
 瞬間、突き抜けるような痛みと奥をえぐるような挿入感に麻痺しかけていた脳味噌は一気に晴れ、感覚を取り戻した。戻したのはいいが。

「あぁっ?!」

 体が、鉛みたいに動かない。
 動くこと自体が恐ろしく、石みたいに二人の上で固まる俺に阿賀松と縁はなにやら目を配せあった。
 そして、「よいしょっと」と小さく息を漏らし縁は腰を持ち上げる。
 力を振り、逃げようとするが阿賀松に抱き締められ、そのまま相手の腕の中に収まってしまった。慌てて降りようとするが抵抗する力もなく、おまけにケツの違和感のせいで動くことも儘ならない。

 四面楚歌とはこのことだろうか。
 いっそのこと、気絶でもした方がましだ。

「っぃ、ぎっ、ひ、うそ、入ってる、入ってますってばぁ……ッ!」
「あーあ、齋藤君のお尻の穴、こんなに広がっちゃって。ちゃんと元に戻るかな?」
「いっや、だぁ……ッ」

 茶化すような縁の言葉がただただ笑えない。
 中で二本の性器が擦れるたびに腰が震え、ただでさえ一本だけでも辛いのに多分というか確実にどっかいかれてしまってるだろう。

「っふ、うぅ……ッ」

 突っ込まれてしまった今、行為が終わることをひたすら祈ることしかなくて。
 出来る限り負担が掛からないように力を抜くが、中で交互に突かれる度に全身が硬くなり、細やかなそれも無意味なものになる。

「大丈夫だろ」
「なにその自信」

 濡れた音が響く中、俺を間を挟んで二人がなにやら話し込んでいる。
 人が、こんなに死にそうになっているのに、なんの与太話する余裕があるなんて。悔しいというかそんな雑談交わす暇があるならさっさとイッて欲しいのだけれど。
 なんて思いながら、目下の阿賀松に目を向けたとき、視線が絡み合う。熱い吐息を漏らした阿賀松は、口元を緩め笑った。

「貰い手がなくなったら、俺が貰ってやる」

「えっ」と、俺は息を飲む。
 全くなんのことかわからなくて、わからないけど、多分、もしかしたら、きっと、俺の話しだろう。
 飛び出したその一言に、いつもの軽口だとわかっているはずなのに、繋がったそこがきゅんと熱くなって、次の瞬間、全身を巡る熱が顔面に集まった。
 しかし、それも束の間。ズッと、背後の縁が腰を引いたと思えば、乱暴な動作で深く捩じ込まれた。
 まるで意識を逸らさせるかのように激しくピストンをされ、目の前がチカチカと点滅し始める。

「っ、ぁっ、はっ……あぁッ!せんぱ、せんぱいっ!」
「ちょっとさあ、ねえ、なに?いまの?さらっと抜け駆けしてんじゃねーよっ!」
「ひいっ!」

 ごりっと奥を抉られた瞬間、背筋に電流が走り、胸を仰け反らせた。
 口を開くこともままならず、溢れる唾液に舌を這わせた阿賀松はそのまま俺の背中に手を這わせた。
 首筋に顔を埋めてきたかと思えば、そのまま筋を舐められ、全身がカッと熱くなる。
 意識があっちこっち飛んでしまい、なにがなんだかわからなくなる俺だったが、触れられた箇所、繋がった場所への感覚だけは嫌にはっきりしているわけで。

「っやっ、まっ、もっと、ゆっくりぃ……っ!だめですっそんなっ、裂けちゃいますって……っんひ、ぁっ、あぁっ!」
「いいな、それ……っ真っ二つに裂けてみろよ……っ!避けてもてめえにはやらねえけどなぁ!」
「っ、伊織まじうるさいんだけど……っ!俺は本物の齋藤君一体いたらいいんだよ!」

「あっ、ひっ、あっ、もっ無理……ッ!」
「その考え方自体がおこがましいんだよっ!いい加減諦めろよ!」
「嫌だっ!」

 というか人に突っ込みながら言い争うのをやめてもらえないだろうか。
 二人の声が響くし、耳痛いし、しかもヒートアップするに連れ人の扱いが乱暴になるし、怖いし……というか、死ぬ。

「ひっ、あっ、ぁあっ、あぁぁ……っ!」

 通常よりも二倍のピストンの激しさに腰が、腿が、掴まれた肩が、悲鳴を上げる。
 まるで食われそうな勢いで突っ込まれ、息継ぐ暇もなくもがき、阿賀松の背中に手を回したとき。
 反り返った性器が腹に当たり、びくりと全身が強張った。そして。

「んんぅああッ!!」

 もう出ないと思っていたそこからは搾り出されるようにして精液が飛び出し、迎えた何度目かの絶頂とともに俺の意識は二人に挟まれたままどっかに飛んでいった。


 ◆ ◆ ◆

 確かに俺に非があるのは事実だ。
 事実だけど、だからって、こんな仕打ちは非道いんじゃないのか。

「うっ、ひぐ……っ」
「おい、いい加減泣くのやめろ!鬱陶しいんだよ!」
「だって、だって、こんなの……酷いです……っ」

「元はと言えばてめえが悪いんだろうが」

 むっとした阿賀松に即答され、早速言葉に詰まってしまう俺。

 事後、目を覚ませば至るところに噛み跡があるわ骨は痛むはケツは広がってるし痛いし、手首の拘束は解けているものの痕は残ってるし痛いし、それなのに阿賀松と縁はどこかスッキリした調子で当たり前のように飯食ってて「あ、お前の分はそれな」って犬用の器に入った野菜の切れ端渡されて喜ぶ奴が特殊だろう。
 声を押し殺し、咽び泣く俺の横。並ぶようにしゃがみ込んだ縁はそのまま俺の頭をそっと抱き寄せる。

「おーよしよしよし、可哀想な齋藤君。鬼伊織に酷いことされちゃったねぇ。ほら、俺に見せてご覧。傷物になってないか確かめてやるから……っぶねえ!」

 誰のせいだと、とどさくさに紛れて体を触れてくる縁を振り払おうとしたとき。空瓶が飛んできた。
 勿論そんな危ないものを投げるやつなんか一人しかいないわけで。

「ベタベタすんじゃねえよ。手垢がつく」
「ひっでぇ!そんなんだから齋藤君が心開いてくれないんだろ!」

 面白くなさそうに唇を尖らせる縁を、阿賀松は一笑した。

「良いんだよ、別にそんなもん開かなくても。黙って股だけ開いとけば」

「お前がどう思おうが俺のものには変わりねえんだから」そう、当たり前のように宣言する阿賀松。
 ふと視線がぶつかって、収まっていたはずの鼓動が再び乱れ始める。

「せ、先輩……」
「え?齋藤君、いいの?最低なおっさんみたいな発言で頬染めちゃっていいの?」

「齋藤君、早まらないで!」と肩揺すってくる縁を無視し、「それ、さっさと食べろよ」と目の前の器を蹴る阿賀松に、慌てて俺はそれを平らげた。綺麗になったそれに「よくできた」と頭を撫でられれば、全身の痛みが軽くなったような気がしないでもない。俺?末期だと思う。


 おしまい
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