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真欺君と叶え屋さん
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しおりを挟むあっという間に時間は経過し、放課後。
「鮮花、帰るのか?」
早速今晩に向けて体休めておこうか、などと考えているとふと今世がやってきた。
「適当に時間潰して帰る」
「……一人でか?」
「そうだけど」
「じゃあさ、どっか寄ろうぜ。時間まで。……鮮花がいいんなら、ほら、俺んちとか……」
なんでお前んちに?と思ったが、その疑問を口にするよりも先に「ほら、この前お前んちにお邪魔したから」と今世は矢継ぎ早に続ける。
確かに今世の家は学校からは遠くはない。丁度よくはあるが。
「いいのか」
「まあ、な。作戦会議には静かな部屋が必要だろ? ……それに」
「それに?」
「……何かあった時のために、先に絢から肖っておこうと思って」
「…………」
「い、今のはギャグとかじゃないからな?!」
別に何も言ってないが。
自分で言って自分で恥ずかしそうにしてる今世。取り敢えず「俺は嫌いじゃないぞ」とだけ肩を叩いておいてやる。
今世の提案は悪くはない。
けど、今世絢なら校内でも教室に行けば会えるのではないか。
そこまで考えてふと気付いた。多分、効率だけの話ではないのだろうなと。
それに、俺自身今世からの誘いは悪い気はしなかった。それが全てだろう。
「……ああ、じゃあお邪魔する」
「本当か!?」
「なんでお前が驚くんだ」
「いや、はは……そうだよな。んじゃ途中で飯買って帰ろうぜ、俺んちで食ってもいいし」
「飯……」
確かに小腹が減っている。頷き返せば、今世は嬉しそうに「よし決まりだな」と破顔する。
それから、俺は今世とともに学校を出ることになった。
今世のやつ、思ったよりも元気だな。
今晩のこともあるし普段ならば怯えていたのではないかと思ったが、この浮かれ具合。もしかして夜の遠足かなんだと思っていないだろうか。
……まあ、怖がられているよりかはましか。
◆ ◆ ◆
「絢、帰って来るのちょっと遅くなるらしいから先に帰っててだってさ」
「ああ」
「飯、食いたいのある?」
「お任せで」
「お任せでいいのかよ。そんなこと言ってたら俺の手料理食わせるぞ」
今世家へと向かう途中の住宅街。
スマホを制服へとしまいながらそんなことを言い出す今世に思わず顔を上げる。
「お前、料理できるのか?」
「……俺はできると思ってる。本気を出せば」
「ならお前の手料理以外で」
「言いすぎだろ。まあ、味以外なら自信はあるんだけどな」
そう言えばこいつは兄との二人暮らしだったはずだ。料理担当は絢が担ってるようだ。
まあ細かいことはあまり気にしなさそうな今世のことだ。想像はつく。
「そういや鮮花は自炊だっけ? 器用だよな」
「……俺も似たようなもんだ。自分が食べるだけなら困らない程度しかできない」
「はは、そうか。それ聞いたらちょっと気になるな、鮮花の手料理」
「食わせないからな」
「なんだよ、まだなんも言ってないだろ」
「顔に書いてた」
「バレた? いつか食ってみたいな、お前の料理」
「そんときはお前も食わせろ。練習して」
「……おー、それならモチベ出るわ」
他愛もない会話を交えつつ歩いていると、ふと首筋に焼けるような熱を感じた。咄嗟に頸を抑えるが、その熱はすぐに痺れとなって全身に広がる。
「ん? どうした? 鮮花」
急に動きを止めた俺に釣られて今世が立ち止まった。
人ならざるものに接触されたときの身体的違和感によく似ていた。が、今世が無事だってことは狙われたのは俺だけだったってことだ。
辺りを見渡す。遊びの帰りらしい親子連れや、老夫婦たちが和やかに話しながら行き交う住宅街。
そんな長閑な光景の中、電柱の影で何かが蠢くのを感じた。
――またあいつか?
今世から気付かれないように姿を隠したみたいだが、なんとなくそんな気はした。
別にここで騒ぎ立てる必要もないだろう。それに、今世家まで行けば逃げられる。
こいつには後で伝えればいい。そう、「気のせいだ、なんでもない」とだけ伝えて再び俺は足を進めた。
ぢぐぢぐと皮膚の奥で根を伸ばしていくような嫌な痺れと疼きが首の下へと広がっていく。そして末端まで痺れさせ、血管を収縮させて感覚が麻痺していくその不快感は所謂“不安”と呼ばれるものによく似ていた。
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待ってました!!更新ありがとうございます…!
真欺君可愛いし、人外攻め好きなので楽しみにしてます!