七人の囚人と学園処刑場

第六章『山邊先生の更生指導室』

１３【ｓｉｄｅ：木賀島】

　◇　◇　◇


　頭の中がピンクの霧に染まっていく。
　脳味噌に絵の具ぶち撒けられたみたいに気持ちよくなって、ふわふわ～って。そんな感覚。

　あ、これ、俺死ぬんかな。
　天井から降り注ぐよくわかんねー霧浴びながらぼんやりと考えてる間に気付けば眠ってたらしい。

　倒れた意識もなかった。けど。
　いきなり体に衝撃走って目が褪めた。多分、蹴られた。んで、その反動で壁にでもぶち当たったんだろう。自分の声と全身に走る衝撃で目を覚ます。

　目の前、気を失う前に見た霧はなくなっていた。その代わり。

「……おい。いつまで寝てるんだ？」
「つ、かさ……？」
「さっさと起きろ。それとも、とうとうくたばったのか？　……木賀島」
「……」

　これは、夢、なのか。
　目の前には宰が立っていた。その後ろにはスーツを着た男達を連れて。

　視界がぼやけてよく見えない。焦点が定まらない。けど、そこにいるのは間違いなく宰で――いや、宰？顔がよく見えないと思ったら、口元にはガスマスクみたいなものを付けてる。それで、分かんなかったんだ。

「まだ薬が効いてるらしいな。……悲鳴すら出せないのか。どこまでもつまらないやつだな」
「どうしますか？」
「予定変更だ。進藤を使え。あいつなら多少保つだろ。……この死に損ないと比べたらな」

　なんの話をしてるんだ。
　宰は何を言ってるんだ。いや、そもそも宰はそこに……。
　じゃあ、こいつはなんなのか。というか、使うってなんだ。なんで俺はこいつを宰だと思った。駄目だ、頭が動かない。

　まとまらない頭の中、辺りを探ろうとした時だった。離れたところから「ぐあっ！」と悲鳴が聞こえてきた。これは、進藤の声だ。

「おい、なんだよお前ら……っ！　離せ……っ！　ぐ……っ！」
「……」

　何かがぶつかるような音。骨がぶつかるような音とともに進藤の悲鳴が途切れる。その声に、頭が冴えてきた。
　あー多分これかぁ、ゲームを台無しにした罰だって。
　んじゃ、俺もこのまま殺されんのかな。と思った矢先「おい、殺すなよ」という声が飛んでくる。偽宰だ。
　さて、と言うかのようにこちらを振り返る偽宰。ああ、そうだ。俺が宰だって思ったのは制服だ。それから――。

「……ああ、お前はもういい」

　けど、お前。全然宰に似てなかったわ。つか宰だったら普通に「死ね」だしな。
　なんて思いながら取り出された注射器を首にぷすっと刺されて、抵抗することもできなかったからそのまま意識手放して……。
　意識が地の底に落ちていく中、ちょっとだけ進藤には悪いことしたなと思った。あと、感謝も。

　あいつのが元気だったお陰で、俺が許されたんだから。
　ま、次目を覚ましたとき借りを返してやったっていいかなって。
　お互い生きていたらの話だけど。


　◇　◇　◇