七人の囚人と学園処刑場

第六章『山邊先生の更生指導室』

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「な、なに、何が起きてるの……っ？！　待って、指導室って……」
「うるせえ……良いから落ち着け、周子……っ！」
「落ち着けって、君分かってるのこの状況。つまりこれって――」
「……あそこに出されたイラストと同じようにしろってことだろ」

　つまり右足の小指、それを失くせってことなのだ。
　制限時間以外にクリアできなければ俺だけではない、他のやつらも終わる。

　皮肉なものだと思う。近くに自分よりも狼狽えてるやつがいると頭ん中が冷えていくんだから。

「……やるんなら、さっさとやれ」

　そう声を絞り出せば、周子は「本気で言ってるの？」と目を丸くした。

「まだ、まだ他に方法があるかもしれないっていうのに」
「あったとしても、五分だ。過ぎれば全員共倒れになる」
「右代君……ッ」
「小指くらいなんだよ、大したことねえだろ」

　――少なくとも、あいつよりは。
　こんなときにあの憎たらしい顔を思い出してしまい苛ついたが、実際手の指よりは……まだマシだ。
　ただ、今後歩行が困難になることは間違いないだろう。

「……そうだな、右代の言う通りだ」

　そして、そんな俺に同意してきたのは進藤だった。

「止血もしっかりすりゃすぐ済む。……周子、お前ができねえって言うなら俺がやるけど？」

　そう、拘束椅子の側までやってきた進藤は「触っていいか？」とこちらを見た。
　陣屋の、あいつの言う通りだと思う。こういうときの進藤の考えがまるで読めない。
　けれど、話が早いのは助かった。
　ああ、と頷き返したとき。俺の足首に触れようとしていた進藤の手を木賀島が掴んだ。

「おい、なんだよ木賀島」
「これさー普通おかしくね？」
「おかしいって、なにが」
「俺じゃなきゃ駄目じゃん、小指落とすんだったら。指導対象は俺のはずだったんだからさ」
「……それは、テメェがマネキンぶっ壊すからおかしくなったんだろ」
「じゃあさ、俺でいいじゃん？　ってこと」
「は……」

　そう言い終わるよりも先に、ワゴンの上に転がっていた包丁を手に取る木賀島。
　おい、待て。と声を上げるよりも先に、履き潰された靴を脱ぎ捨てた木賀島はそのままくるぶし丈の靴下を脱ぎ、その場に座り込む。
　やつが何をしようか気付いたとき。

「待って、ストップ！」

　周子は慌てて木賀島を羽交い締めにし、体ごと止める。

「委員長、何～？」
「……っ、分かった。君たちの行動力は……」
「うん、で？」
「あと、後三分ある……話し合おう。ちゃんと。僕たちには猶予がある」

　話し合うべきだ、と周子はそう自分に言い聞かせるように繰り返した。