七人の囚人と学園処刑場

田原摩耶

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第六章『山邊先生の更生指導室』

05

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「ん~~おいひぃ~~」 

 言いながらバクバクと目の前に置かれた自分の飯を食っていく木賀島。緩みきった口元は汚れ、雑に指でソースを拭う。それを舐めるのを見て、汚えなと思わず目を逸した。

「おい木賀島、お前大丈夫かよ」

 そんな木賀島を見て、進藤は顔を引き釣らせるのだ。飯の食い方の汚さは今に始まったことではない。
 寧ろ、こいつが言ってるのは別の部分のことだろう。

「大丈夫ってえ? なにがあ?」
「いや、そんなにバクバク食ってさ……気持ち悪くなんねえの?」

 目の前進藤に周子は「進藤君」と声をかける。余計な刺激をするな、ということなのだろうが、当の本人は気にした様子もなく、寧ろ不思議そうに小首を傾げた。

「別にい? だってこれ俺好きだし?」

 しん、と空気中の温度が冷たくなっていくのを感じる。
 ……面倒臭えな。口の中で舌打ちをし、俺は固まる進藤たちの横を抜けて保健室へと足を踏み入れた。
「右代君」と心配そうな周子の声が聞こえてきたが、無視する。
 そしてそのまま適当な椅子を引いて腰をかけた。

「食えるやつは食えばいいだろ。……今度はいつ食えるかもわかんねえしな」
「……右代」
「食えねえなら食うなよ。それだけだろ」
「君らしいね」
「事実を言ったまでだ」

 たかが飯くらいで揉めることほど無駄なことはない。ここから先は自己責任だ。
 席につく俺に、木賀島は「宰ぁ」と嬉しそうに甘ったるい声を出す。汚れた手を伸ばしてきたのでそれを避け、代わりに置かれてたティッシュを押し付けた。

「汚れた手で触るな、あと舐めるのもやめろ。ガキか」
「え~、じゃあ宰綺麗にしてよ」
「気色悪いこと言う暇あるならそれ、さっさときれいにしろ」

「ケチぃ」と唇を尖らせながらも、渋々汚れた口元を拭う木賀島。篠山がいなくなった途端これだ、こいつよく今まで生きてこれたな。
 そんなやりとりをしていると、不意に隣の椅子が動いた。そこには周子が座ってる。
 それから、進藤、陣屋も保健室内には入ってきた。
 一人増えて、一人減った。人数は変わらないはずなのに、酷く少なく感じる。
 椅子にどしりと腰をかけた陣屋はこちらに目を向けた。

「お前は食わないんだな」
「匂い嗅ぐだけで十分だ」
「それは……そうだね、僕もよしとくよ」
「え~~? 宰も委員長もいらねえの? じゃあ俺、二人の分も食べちゃお」
「おい、お前はもう食ってんだろ」

 勝手に手を伸ばす木賀島の手を叩いた。均等に他の食えるやつらと分けた方がいい。
 ちらりと周りを確認すれば、流石に陣屋も食っていた。
 進藤は手をつける様子がない。先程の様子からして薄々わかってたが、普段バクバク食ってる進藤だからこそ余計その姿が目についた。
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