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金属バットとラブレター
02※他攻め
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僕は榛葉郁の弱点を突き止めるため、色々聞き回ってみた。
榛葉郁。運動神経よし学力よし容姿よし家柄並み恋人なし因みになかなかの偏食家だということ以外は特になにもないような、まあ、絵に描いたような優等生だった。その分、なかなか人気あるらしい。絶対ボクの方が人気だけどね。
まあ、そんなこんなで周りからドン引かれるような弱点もなければ噂もない、腹立つくらいつまんないやつだった。
ただ一つ気になることがあれば榛葉郁のその周囲だろう。
不自然なのだ。噂では榛葉郁は人気があり、実際狙っている生徒の話も聞いたことがある――なのに、榛葉郁の周りには人が寄り付かない。
普通ならモテるなら話し掛けられたりするものじゃないのだろうかと思ったが、周囲の人間は榛葉郁を避けていた。
実は榛葉郁はものすごく性格が悪いとかそういう秘密があるのかもしれない。そう思ってストーカーしてみたが、本当、性格そのものはどこにでもいる好青年でますます榛葉郁というものがわからなくなってくる。
と、同時にボクは一つ気になったことがあった。
榛葉郁の側近のあの陰が薄いというかぱっとしない男だ。
名前は御厨要人というらしい。
人に避けられがちな榛葉だったが、御厨にだけはいつもべったりくっついていて、なんというかまあ、怪しかった。もしかして榛葉と御厨は付き合っているのだろうかと思ったが真偽はわからない。
が、噂によれば榛葉と御厨は入学したときからずっと一緒で、そんなのもう仲良しでしかないだろう。そして間違いなく、御厨という存在は榛葉にとって大きいはずだ。
どんな経緯があって二人がつるんでいるのかわからなかったが、弱点がわかった今することはただ一つだ。
――御厨を奪って榛葉を一人ぼっちにしてやる。
ああいう地味なやつは高確率で童貞だからちょっと色目使えばすぐボクに惚れるに違いない。ボクから慶太を奪ったように、榛葉から御厨を奪ってやる。
と言うわけでどうやって御厨を連れ出そうか試行錯誤した結果、二年生の教室前までやってきたボクは御厨たちの教室をこっそり覗いていた。
「佳夫ちゃん、なにやってんの? セックスしようよ」
「今忙しーから無理」
「えー」
「しっし」
教室の中には御厨と榛葉、そして慶太がいた。ああ、あんなに楽しそうに話しやがって。ボクも混ざり……いや、違う、これが最後の晩餐になるであろう。精々今の内に平和ボケするがいい。
くくく、と一人笑いながらボクは御厨が一人になるのを待つ。
そして数分後。
御厨要人は榛葉郁と別れ、教室を出た。
しかし、その隣には慶太がいた。榛葉を残して教室を出た二人は、人気のない廊下まで移動する。
なんとなく気になってこっそり後をつけたボクはその場の光景に硬直した。
人気のない廊下の突き当たり。
壁に背中を預けた慶太と向かい合うように立つ御厨が、なんか、キス、らしきことをしていたのだ。
というかボクからは御厨の背中しか見えないのだが、これは絶対キスしている。そう直感した。
「え? ……え?」
なんで慶太と御厨が。
もしかしてあの二人が付き合ってるのか。え、どういうこと?慶太は榛葉じゃなくて御厨本命ってこと?え?
わけがわからなくなって、壁についたまま固まるボクの手にはじんわりと嫌な汗が滲んだ。
なんだか、見ちゃいけないものを見てしまったような背徳感。
なんで慶太が、あんな地味なやつと。そう、一歩後ずさったときだった。
足音に反応したのか、不意に御厨がこちらを振り返る。
――まずい。
そう冷や汗を滲ませたボクは、慌ててその場を後にする。ただひたすら、逃げるように走って数少ない友人へ連絡した。
――学生寮、ラウンジ。
時間帯が時間帯なだけに人の気配はないそこで、ボクは再び恭次と落ち合った。
「っ、ぁん……っねえ、恭次、御厨要人って知ってる?」
「御厨要人ぇ? 誰それ」
「ほら、……いっつも榛葉郁の側にいる地味なやつ」
「ああ、はいはい。いたなあそんなの」
生徒たちが談話してお互いに高め合うことが出来るように、と取り付けられたソファーの上。
座面に座った恭次の膝の上、そこに股がるボクはそのまま恭次の背中に腕を回したまま腰を動かす。上等のディルド代わりに、自分のいいところに当たるようにぐちぐちと締めつければ、恭次のものは更にお腹の中で大きくなった。
そんな僕の腰を掴んで揺さぶるように突き上げてくる恭次は、そのまま目の前の僕の胸元に顔を埋めるのだ。そして人の乳首にしゃぶりついてくる恭次。
子供みたいだ、とか思いながら、繋がったまま恭次の頭部を見詰める。
「ぅ、んっ……恭次、そいつについてなんか知らない?」
「俺可愛い子しか興味ねーからさあ。御厨は知らねえわ」
舌先でぷっくりと腫れ上がった乳首を舐られ、堪らず「んんっ」と甘い声が漏れる。
恭次が喋る度に唾液で濡れた胸元に息が吹き掛かり、くすぐったい。
本当、わかりやすいやつというか単純というか開き直ってるというか。
「……じゃ、榛葉郁は?」
「榛葉? ああ、色々聞くなあ。ガードが硬いってわけじゃないのに、誰一人落とせないって」
それはボクも知っている。
『不落城』榛葉郁、なんて学園じゃちょっとした有名人だ。
唇が離れ、軽く乳首にキスをされる。柔らかい唇が胸に触れ、そのこそばゆさに小さく身動ぎをさせた。
「……っ他には……?」
「まあ、そんな急くなって。他なあ、他。あれほど落とそうと意気込んでたやつも急に榛葉郁に興味失せたっていうか、全く話題に出さなくなったりしたりするって。……ほら、いたろ。お前のパシりやってた巳弥子(みやこ)、あいつとか」
「……あぁ、巳弥子のならボクも知ってる。……っケツペン、だっけ?」
そう尋ねれば、恭次は笑いながら頷いた。
巳弥子――ボクのパシりにしていた根暗で、なにを考えたのかあろうことか榛葉に一目惚れした気持ち悪いやつだ。
今まで尽くしといて「一度も優しくしてくれないやつなんか興味ない!」だとか散々喚き散らしてから数日、巳弥子はケツにペンぶっ刺されて失神したところを生徒に見つかり、確かどっか入院していたはずだ。
何度かおちょくりにいったとき、巳弥子は怯えていて根暗い顔が更に悲惨なことになっていたのを覚えている。
当時はボクに生意気なこと言ったせいだざまあみろと思ったが、よく考えてみれば不自然だ。
なにがあったか巳弥子は話してくれないのでわからないが、巳弥子みたいなやつが他にもいると思ったらなかなか不気味な話に思える。
「でも、慶太は? 慶太は一緒にいるじゃん、あと……」
「御厨か? まあ、俺は詳しく知らねえからさ、その辺は巳弥子辺りに聞いてみろよ」
「んっ、ぅ……無理でしょ、巳弥子は」
腰を動かし、内壁全体で締め付けるように中のものを擦れば、顔をしかめた恭次は「確かにな」と笑う。
腹の中で熱を持った恭次の性器がまた膨張するのがわかった。触れ合った箇所が暖かい。
「……っ、は、取り敢えず、ストーカーするのはいいけどあまり榛葉郁には近付くなよ。言った通り、いい噂聞かねえから」
そして、伸びてきた無骨な手に腰を掴まれ、奥深くまで突き上げられる。
脳天を突き抜けるような甘い感覚が全身に走り、その刺激に喘いだボクは大きく胸を仰け反らせた。
ぞくぞくと走る寒気にも似たその心地好い感触に息が漏れた。そして、目の前にあった恭次を見上げる。
「っ……なに? 心配、してくれてんの?」
「そりゃあな、お前がいなくなったら誰が俺の性欲処理するんだよ」
まあ、そんなことだろうとは思ったが。
当たり前のようか顔して続ける恭次の相変わらずの酷い性格には今さら呆れはしない。
「あはっ、……さいってえ」
そう、ずり落とされないよう恭次の上半身にしがみつけば、不意に腰を抱き寄せられる。
「お互い様だろ、糞ビッチが」
密着した体。耳元に唇を寄せ囁かれ、そのままねっとりと耳を舐め上げられれば這い上がるような快感に背筋がゾクゾクと震えた。
……本当に、性癖というのは嫌になる。
自分と恭次の腹部に挟まれるようにガチガチに反り返った性器を感じながら、ボクは一人苦笑した。
恭次に会って色々話したおかげか、なんとか落ち着いたボクは一先ず情報をまとめることにした。
御厨と慶太がもし万が一、億が一そういう関係だとすれば、もしかしてボクが気にする人間は榛葉郁ではなく御厨要人ではないのかという結論に至る。
特に注意していなかっただけになんとも大きい収穫だったが、それと同時にあからさまに自分よりも劣った容姿の人間に慶太を取られたことが歯痒くて堪らない。
だからといって相手が榛葉郁ならよかったかと言われればそれも違う。
いくらフラれたからとはいえ、まだ慶太を諦めたわけではないボクからしてみれば慶太に関わるあらゆる人間が妬みの対象になった。
榛葉郁を潰したいと思ったが、本当に始末すべきは御厨要人なのかもしれない。
そして、御厨と慶太のキスシーンを目撃してその翌日、御厨へのストーキングを再開させた矢先だった。
ボクはとんでもない場面を目撃してしまうことになった。
――放課後の空き教室。
誰もいなくなったそこで、御厨は一人の男子生徒に暴行を加えていた。
教室が暗かったのもあってかよくは見えなかったが、時おり聞こえてくる柔らかい声といいその後ろ姿といい御厨本人なのは間違えないだろう。
椅子に座らせたまま縛りつけるかして固定したその男子生徒になにかしているのはわかったが、詳細まではわからなかった。
しかし、聞こえてくる呻き声といい煙の匂いといいよくないことをしているのは間違いだろう。
昨日の今日でこんな場面を目撃してしまい、冷静でいろという方が難しい。
それでもなんとか写真に収めることは成功したが、逃げることに夢中になったお陰で助けようとかそんな気になれず、もちろん写真をちゃんと確認することも出来なかった。
御厨から逃げ切って後から確認してみたところ、御厨の後ろ姿しか映ていなかった。けれどよく見ればぼんやりと生徒の顔も写っていたし、誰がどう見てもこれは犯行現場と捉えられるだろう。
この生徒に証言を取ることさえ出来れば強力な証拠にもなるし、御厨を脅すネタになること間違いない。
外まで逃げ切ったボクは携帯端末に表示されたその写真に人知れずほくそ笑んだ。
それからその翌日。
ボクは昨夜盗撮した写真をプリントした写真と、それから呼び出す旨の手紙をまとめて御厨の下駄箱に投入する。
目的はただひとつ、御厨を呼び出し慶太に近付かないよう脅迫するためだ。
そして数分後、二年の下駄箱の前。
上履きを取り出そうとしてそのまま硬直する御厨の背中を眺め、ボクは笑みを浮かべたのだ。
榛葉郁。運動神経よし学力よし容姿よし家柄並み恋人なし因みになかなかの偏食家だということ以外は特になにもないような、まあ、絵に描いたような優等生だった。その分、なかなか人気あるらしい。絶対ボクの方が人気だけどね。
まあ、そんなこんなで周りからドン引かれるような弱点もなければ噂もない、腹立つくらいつまんないやつだった。
ただ一つ気になることがあれば榛葉郁のその周囲だろう。
不自然なのだ。噂では榛葉郁は人気があり、実際狙っている生徒の話も聞いたことがある――なのに、榛葉郁の周りには人が寄り付かない。
普通ならモテるなら話し掛けられたりするものじゃないのだろうかと思ったが、周囲の人間は榛葉郁を避けていた。
実は榛葉郁はものすごく性格が悪いとかそういう秘密があるのかもしれない。そう思ってストーカーしてみたが、本当、性格そのものはどこにでもいる好青年でますます榛葉郁というものがわからなくなってくる。
と、同時にボクは一つ気になったことがあった。
榛葉郁の側近のあの陰が薄いというかぱっとしない男だ。
名前は御厨要人というらしい。
人に避けられがちな榛葉だったが、御厨にだけはいつもべったりくっついていて、なんというかまあ、怪しかった。もしかして榛葉と御厨は付き合っているのだろうかと思ったが真偽はわからない。
が、噂によれば榛葉と御厨は入学したときからずっと一緒で、そんなのもう仲良しでしかないだろう。そして間違いなく、御厨という存在は榛葉にとって大きいはずだ。
どんな経緯があって二人がつるんでいるのかわからなかったが、弱点がわかった今することはただ一つだ。
――御厨を奪って榛葉を一人ぼっちにしてやる。
ああいう地味なやつは高確率で童貞だからちょっと色目使えばすぐボクに惚れるに違いない。ボクから慶太を奪ったように、榛葉から御厨を奪ってやる。
と言うわけでどうやって御厨を連れ出そうか試行錯誤した結果、二年生の教室前までやってきたボクは御厨たちの教室をこっそり覗いていた。
「佳夫ちゃん、なにやってんの? セックスしようよ」
「今忙しーから無理」
「えー」
「しっし」
教室の中には御厨と榛葉、そして慶太がいた。ああ、あんなに楽しそうに話しやがって。ボクも混ざり……いや、違う、これが最後の晩餐になるであろう。精々今の内に平和ボケするがいい。
くくく、と一人笑いながらボクは御厨が一人になるのを待つ。
そして数分後。
御厨要人は榛葉郁と別れ、教室を出た。
しかし、その隣には慶太がいた。榛葉を残して教室を出た二人は、人気のない廊下まで移動する。
なんとなく気になってこっそり後をつけたボクはその場の光景に硬直した。
人気のない廊下の突き当たり。
壁に背中を預けた慶太と向かい合うように立つ御厨が、なんか、キス、らしきことをしていたのだ。
というかボクからは御厨の背中しか見えないのだが、これは絶対キスしている。そう直感した。
「え? ……え?」
なんで慶太と御厨が。
もしかしてあの二人が付き合ってるのか。え、どういうこと?慶太は榛葉じゃなくて御厨本命ってこと?え?
わけがわからなくなって、壁についたまま固まるボクの手にはじんわりと嫌な汗が滲んだ。
なんだか、見ちゃいけないものを見てしまったような背徳感。
なんで慶太が、あんな地味なやつと。そう、一歩後ずさったときだった。
足音に反応したのか、不意に御厨がこちらを振り返る。
――まずい。
そう冷や汗を滲ませたボクは、慌ててその場を後にする。ただひたすら、逃げるように走って数少ない友人へ連絡した。
――学生寮、ラウンジ。
時間帯が時間帯なだけに人の気配はないそこで、ボクは再び恭次と落ち合った。
「っ、ぁん……っねえ、恭次、御厨要人って知ってる?」
「御厨要人ぇ? 誰それ」
「ほら、……いっつも榛葉郁の側にいる地味なやつ」
「ああ、はいはい。いたなあそんなの」
生徒たちが談話してお互いに高め合うことが出来るように、と取り付けられたソファーの上。
座面に座った恭次の膝の上、そこに股がるボクはそのまま恭次の背中に腕を回したまま腰を動かす。上等のディルド代わりに、自分のいいところに当たるようにぐちぐちと締めつければ、恭次のものは更にお腹の中で大きくなった。
そんな僕の腰を掴んで揺さぶるように突き上げてくる恭次は、そのまま目の前の僕の胸元に顔を埋めるのだ。そして人の乳首にしゃぶりついてくる恭次。
子供みたいだ、とか思いながら、繋がったまま恭次の頭部を見詰める。
「ぅ、んっ……恭次、そいつについてなんか知らない?」
「俺可愛い子しか興味ねーからさあ。御厨は知らねえわ」
舌先でぷっくりと腫れ上がった乳首を舐られ、堪らず「んんっ」と甘い声が漏れる。
恭次が喋る度に唾液で濡れた胸元に息が吹き掛かり、くすぐったい。
本当、わかりやすいやつというか単純というか開き直ってるというか。
「……じゃ、榛葉郁は?」
「榛葉? ああ、色々聞くなあ。ガードが硬いってわけじゃないのに、誰一人落とせないって」
それはボクも知っている。
『不落城』榛葉郁、なんて学園じゃちょっとした有名人だ。
唇が離れ、軽く乳首にキスをされる。柔らかい唇が胸に触れ、そのこそばゆさに小さく身動ぎをさせた。
「……っ他には……?」
「まあ、そんな急くなって。他なあ、他。あれほど落とそうと意気込んでたやつも急に榛葉郁に興味失せたっていうか、全く話題に出さなくなったりしたりするって。……ほら、いたろ。お前のパシりやってた巳弥子(みやこ)、あいつとか」
「……あぁ、巳弥子のならボクも知ってる。……っケツペン、だっけ?」
そう尋ねれば、恭次は笑いながら頷いた。
巳弥子――ボクのパシりにしていた根暗で、なにを考えたのかあろうことか榛葉に一目惚れした気持ち悪いやつだ。
今まで尽くしといて「一度も優しくしてくれないやつなんか興味ない!」だとか散々喚き散らしてから数日、巳弥子はケツにペンぶっ刺されて失神したところを生徒に見つかり、確かどっか入院していたはずだ。
何度かおちょくりにいったとき、巳弥子は怯えていて根暗い顔が更に悲惨なことになっていたのを覚えている。
当時はボクに生意気なこと言ったせいだざまあみろと思ったが、よく考えてみれば不自然だ。
なにがあったか巳弥子は話してくれないのでわからないが、巳弥子みたいなやつが他にもいると思ったらなかなか不気味な話に思える。
「でも、慶太は? 慶太は一緒にいるじゃん、あと……」
「御厨か? まあ、俺は詳しく知らねえからさ、その辺は巳弥子辺りに聞いてみろよ」
「んっ、ぅ……無理でしょ、巳弥子は」
腰を動かし、内壁全体で締め付けるように中のものを擦れば、顔をしかめた恭次は「確かにな」と笑う。
腹の中で熱を持った恭次の性器がまた膨張するのがわかった。触れ合った箇所が暖かい。
「……っ、は、取り敢えず、ストーカーするのはいいけどあまり榛葉郁には近付くなよ。言った通り、いい噂聞かねえから」
そして、伸びてきた無骨な手に腰を掴まれ、奥深くまで突き上げられる。
脳天を突き抜けるような甘い感覚が全身に走り、その刺激に喘いだボクは大きく胸を仰け反らせた。
ぞくぞくと走る寒気にも似たその心地好い感触に息が漏れた。そして、目の前にあった恭次を見上げる。
「っ……なに? 心配、してくれてんの?」
「そりゃあな、お前がいなくなったら誰が俺の性欲処理するんだよ」
まあ、そんなことだろうとは思ったが。
当たり前のようか顔して続ける恭次の相変わらずの酷い性格には今さら呆れはしない。
「あはっ、……さいってえ」
そう、ずり落とされないよう恭次の上半身にしがみつけば、不意に腰を抱き寄せられる。
「お互い様だろ、糞ビッチが」
密着した体。耳元に唇を寄せ囁かれ、そのままねっとりと耳を舐め上げられれば這い上がるような快感に背筋がゾクゾクと震えた。
……本当に、性癖というのは嫌になる。
自分と恭次の腹部に挟まれるようにガチガチに反り返った性器を感じながら、ボクは一人苦笑した。
恭次に会って色々話したおかげか、なんとか落ち着いたボクは一先ず情報をまとめることにした。
御厨と慶太がもし万が一、億が一そういう関係だとすれば、もしかしてボクが気にする人間は榛葉郁ではなく御厨要人ではないのかという結論に至る。
特に注意していなかっただけになんとも大きい収穫だったが、それと同時にあからさまに自分よりも劣った容姿の人間に慶太を取られたことが歯痒くて堪らない。
だからといって相手が榛葉郁ならよかったかと言われればそれも違う。
いくらフラれたからとはいえ、まだ慶太を諦めたわけではないボクからしてみれば慶太に関わるあらゆる人間が妬みの対象になった。
榛葉郁を潰したいと思ったが、本当に始末すべきは御厨要人なのかもしれない。
そして、御厨と慶太のキスシーンを目撃してその翌日、御厨へのストーキングを再開させた矢先だった。
ボクはとんでもない場面を目撃してしまうことになった。
――放課後の空き教室。
誰もいなくなったそこで、御厨は一人の男子生徒に暴行を加えていた。
教室が暗かったのもあってかよくは見えなかったが、時おり聞こえてくる柔らかい声といいその後ろ姿といい御厨本人なのは間違えないだろう。
椅子に座らせたまま縛りつけるかして固定したその男子生徒になにかしているのはわかったが、詳細まではわからなかった。
しかし、聞こえてくる呻き声といい煙の匂いといいよくないことをしているのは間違いだろう。
昨日の今日でこんな場面を目撃してしまい、冷静でいろという方が難しい。
それでもなんとか写真に収めることは成功したが、逃げることに夢中になったお陰で助けようとかそんな気になれず、もちろん写真をちゃんと確認することも出来なかった。
御厨から逃げ切って後から確認してみたところ、御厨の後ろ姿しか映ていなかった。けれどよく見ればぼんやりと生徒の顔も写っていたし、誰がどう見てもこれは犯行現場と捉えられるだろう。
この生徒に証言を取ることさえ出来れば強力な証拠にもなるし、御厨を脅すネタになること間違いない。
外まで逃げ切ったボクは携帯端末に表示されたその写真に人知れずほくそ笑んだ。
それからその翌日。
ボクは昨夜盗撮した写真をプリントした写真と、それから呼び出す旨の手紙をまとめて御厨の下駄箱に投入する。
目的はただひとつ、御厨を呼び出し慶太に近付かないよう脅迫するためだ。
そして数分後、二年の下駄箱の前。
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