作り物は嫌ですか?

田原摩耶

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友達の作り方

02※根性焼き

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「あ、おいちゃんと野菜も食えよな」
「食べてる」
「隅っこ寄せてんじゃん。はい、俺のもやるよ」
「あっなに勝手に入れるんだよ!」
「怒んなって、ほら。俺の分までどんどん食って身長伸ばせよ」
「むぅ……」
「おー食えたじゃん、偉い偉い~」

 食堂内。
 テーブルを挟んで向かい合うように座る郁君と渋谷君。
 ひょいひょいと郁君の皿の上に野菜を乗せる渋谷君に対し、むむむと眉を寄せた郁君は「別に食えないわけじゃねーし」と唇を尖らせた。
 正直郁君の偏食には僕も困っていたのだが、今郁君の皿に乗っている野菜に渋谷君の使った箸が触れていると思ったら不快感が込み上げてきた。だからと言ってこの場で二人の邪魔をするような真似はしない。あくまでも、僕のモットーは郁君に悟られないことだ。
 
 全てを食べ終わり、水の入ったグラスに口を付けながら二人のやり取りをぼんやり眺める。
 二人とも食事中はずっと喋っているのでまだ皿には料理が残っている。
 一分一秒でも早く渋谷君を連れ出したかったが、ここは我慢だ。
 思いながら渇いた喉に水を流し込んだときだった。

「ほら、御厨にもやるよ」

 言いながら渋谷君は僕の空いた皿の上に野菜を置く。断る暇もなかった。

「これ、結構硬くなかった? あんま美味しくないよな」

 驚いたように顔を上げれば、渋谷君は言いながらそう笑う。そんな渋谷君の言葉に、郁君は「やっぱりお前が食いたくなかっただけじゃんか」と顔をしかめた。
 そんな二人のやり取りに苦笑を浮かべた僕は、置いたばかりの箸を手にし皿の上に乗せられた野菜をぱくりと口にした。
 確かに、硬い。そして焦げたような苦味に舌が痺れた。
 最初食べたときはあまり気にしなかったが、言われてみれば独特な味をしている。
 あり過ぎる歯応えを噛みちぎり、それをごくんと喉に流し込んだ俺は再び箸を置いた。

「僕は結構好きだよ、こういう味付け」

 賑やかな食事を終え、僕たちは食堂を後にした。




 そして翌日。
 休み時間になりまたやってきた渋谷君と郁君のやり取りを眺めること数十分。
 予鈴がなると郁君に別れを告げた渋谷君が教室を出ていった。そして、僕は「トイレに行く」と適当な理由をつけ渋谷君を追うように教室を出たのだ。


 廊下まで行き、渋谷君の背中を見付けた。
 どうやらこのままサボるようだ、本来ならば渋谷君の教室がある方向とは全く逆の廊下を歩いていく渋谷君。
 その先には下の階へ繋がる階段があり、もしかしたらこのまま外へ出るのかもしれないなんて思いながら僕は辺りを見回した。
 教室から離れたお陰か周りに人影は見えない。
 しかし時間が時間だ、いつ人が来るかもわからない。
 そのまま片手で携帯を弄りながら歩く渋谷君は後をつける僕に気付いていない。――絶好のチャンスだった。
 そのまま気配を悟られぬよう、渋谷君の真後ろまで接近する。ふと、香水の淡い薫りがした。

 余程携帯に夢中になっているようだ。こんなに僕が近くにいるにも構わずこちらを見ようともしない渋谷君はそのまま段差を降りようと足を踏み出す。
 ――思ったよりも無防備だな。これならすぐ済みそうだ。
 思いながら僕は渋谷君の背中にぽんと手を置き、そのまま渋谷君の体を前に突き出すように背中を強く押した。

 いきなりの背中への衝撃に何事かとこちらを振り返る渋谷君。そこに僕の姿を見つけると楽しそうに微笑んだ。
 そして次の瞬間、渋谷君は僕の視界から消える。
 凄まじい音がして、気付いたときには彼は階段の下にいた。

 それから、渋谷君を拘束するのに然程手間はかからなかった。
 足を抑えて呻く渋谷君に慌てて駆け寄り、謝りながら保健室へ連れていく。という体で適当な空き教室に連れてきたときには既に渋谷君は気を失っていた。そのまま渋谷君をタイル張りの床へと転がした僕は眠っている渋谷君の上着を脱がす。そのままポケットの中身を物色すれば、出てきたのは小銭にライターにタバコ、それからコンドーム。
 避妊するだけましなのだろうか、評判通りの渋谷君に今さら驚きはしない。


 この空き教室は僕が頻繁に使っている場所でもある。普通教室から離れ、人通りも少ないので人目を避けて物事を行うのには丁度いいのだ。

 置きっぱなしにしていたガムテープを使い、気絶した渋谷君を正座させたままぐるぐるに拘束する。右手右足、それから左手左足をそれぞれ股が開いた状態でしっかりと固定した。
 足を捻ったのか時々渋谷君は顔をしかめさせていたが簡単には起きなかった。打ちどころが悪かったのかもしれない。
 それから最後にガムテープを口に、完成。

 最初に比べて中々上手く縛れるようになったが、素人なので力の加減がうまくできない。だから、ほら、関節がぎちぎちになるくらい強く緊縛した渋谷君は苦しそうな顔をして、呻く。
 まあ渋谷君みたいな体格がいい男にはこのくらいが丁度良いかもしれない。でなければ、暴れられたら堪らないし。

 蒸した室内の中、僕は用意していたペットボトルの水を喉奥へと流し込んだ。
 一応窓はついているのだが敢えて開けていない。
 気を失った渋谷君の全身は汗で濡れていた。呼吸もしづらくなって余計苦しいのだろう。
 シャツが張り付いて気持ち悪そうだなあと思いながら僕は渋谷君の前に座り込み、上下する胸元に手を伸ばす。
 それと、渋谷君がぱちりと目を開くのはほぼ同時だった。

「っ……ん?」
「ああ……おはよう、渋谷君」

 寝惚けたような目、蒸し風呂状態で体温が上昇してるからか、ほんのりと顔を赤くした渋谷君の目は濡れている。まだとろんと重い瞼で僕を見上げていた渋谷君は、そのままキョロキョロと辺りを見回す。
 そして次の瞬間、思うように動かない自分の体に気付いたようだ。ぎょっと目を丸くさせた渋谷君は驚いたように身動ぎをしたが、強力を謳う粘着性のガムテープはちょっとやそっとじゃ取れないだろう。多分、僕でも刃物なしじゃ無理かも。

「んぅっ、んんっ」
「あまり暴れない方がいいよ。渋谷君の足、捻挫してるみたいだからさ――まあ、ゆっくりしなよ」

 意味がわからないとでも言うかのようにもごもごと口を動かす渋谷君。構わず、渋谷君の胸に手を這わせた僕はそのままシャツのボタンを引きちぎった。

「っ、……?!」
「だから、そんなに動いても解けないってば。……あまり体力は無駄にしない方がいいよ、疲れるよね?」
「ふ、う……っ」

 シャツの下、顕になった胸は濡れていた。流石、ちゃんと鍛えているようだ。制服の上からでも分かったが、膨らんだその胸を鷲掴みにすれば、渋谷君はびくりと肩を震わせた。
 まだ状況が飲み込めていないようだ。そのまま弾力性のあるその胸を揉み、そのまま先端についた乳首に触れた瞬間、「んう」と渋谷君は肩を震わせた。

「羨ましいな……君の体。僕はあまり筋肉がつく体質じゃないから、羨ましいよ、本当に」
「ふ、う……っ、んん……ッ!」
「ねえ、渋谷君。なんで自分がこんな目に遭ってるのかまだわからない?」

 ふるりと、渋谷君の胸が震える。身動いで僕の手から必死に逃げようとしていた渋谷君だったが、問いかけにこくこくと何度も頷いた。
 今更無害そうな顔してしらばっくれるなんて、本当に悪い人だな。
 そう、僕はそのまま渋谷君の乳首を柔らかく揉み、そしてそのままぎゅっと先端を引っ張った。
 瞬間、「んう!」と目を見開いた渋谷君の体が面白いほど跳ね上がる。

「っ、う゛、んん……ッ」
「渋谷君、君が郁君を使って賭けしてるって聞いたんだけどそれって本当なの?」
「ん゙ん、んっ」
「否定肯定くらいできるよね、首自由にしてるんだから」 

 呻くだけでなにも応えない渋谷君に、更に突起を引きちぎる勢いで引っ張れば、涙を滲ませる渋谷君はぶんぶんと首を横に振った。勿論嘘だ。
 渋谷君の身辺調査でその真偽を確かめている僕は乳首から手を離し、思いっきり胸を叩いた。瞬間、破裂したような乾いた音とともにびくりと渋谷君の上半身が跳ねる。
 仰け反った胸元は真っ赤な手の形が浮かび上がり、渋谷君は目に涙を溜めていた。
 なんで――そう言いたげな顔をして僕を見上げるのだ。

「本当のことだけ言ってよ。今度嘘吐いたら焼くよ」

 そう立ち上がった僕は、先程上着から回収した渋谷君のタバコの箱を手に取る。そして潰れかけた箱の中から一本のタバコを取り出した。
 僕の言葉と動作に目を見開いた渋谷君は眉を寄せた。

「ねえ、返事は」

 一本を唇に挟み、そのままライターを使って火を付ける。じじっと小さな音を立て赤い灯を点すタバコ。その先端を見上げながら、渋谷君は怯えながら頷いた。

 もっと抵抗するかと思っていたので、思ったより従順な渋谷君はちょっと気に入らない。
 だから、唇からタバコを外した僕はじんじんと腫れた乳首にタバコの先端を押し付けた。
 じゅっと焼けるような音がして渋谷君の体が再び跳ねる。皮膚の焼けるような匂い、そして音が密室内に広がる。

「ん゛、う゛ッ!」

 胸から立つ煙に顔を青くした渋谷君は、必死にタバコの火から逃げるように暴れる。けれど、この部屋でのイニシアチブは僕にある。無論、逃れるはずもない。
 はんこのように更に強くその皮膚にタバコの先端部を押しつければ、更に渋谷君は声を漏らした。あまりにも強くしすぎたせいで火が消えてしまったようだ、僕は使い物にならなくなったそれを床に捨てた。
 渋谷君の乳首。その一部分は丸く、焦げたように変色していた。そこにふっと息を吹きかければ、更に渋谷君は逃げ出すのだ。腕を掴み、力づくで引き寄せた僕はそのまま渋谷君の胸元に顔を寄せ、そして火傷痕に舌を這わせる。

「っ、う゛、ふ……ッ!!」

 ぴちゃぴちゃと音を立て、限界まで尖った乳首を愛撫すればするほど、渋谷君は腕の中で身悶えた。恐怖からか勃起してる渋谷君の下半身を見て、思わず笑ってしまった。

「これ、結構面白いね」
「……っ、ぅ」
「ハマってしまいそうだな」
「……ッ」
「ねえ、渋谷君」

 そう再び二本目のタバコを手に取り、僕は渋谷君に笑いかけた。

「郁君を賭けに使ってるって本当なんだよね」

 こくりと頷く渋谷君。
 僕はタバコを咥え、ライターで火を点した。再び空き教室には紫煙が立ち込めた。僕はあまりこの味は好きになれそうにないだろう。

「なんでそんなことしたのか聞いても良いかな」
「……っう、んん」
「なんだって? 聞こえないよ。早く言わないとこっちにもおんなじことしちゃうよ」
「ふっん゙ん゙っんーッ!!」

 待って、やめてくれ。とかそんなところだろう。
 イヤイヤする渋谷君の体を捕まえ、再び無防備な胸元に触れる。

「はい、ご、よん、さん、にー、いち、ぜろ。残念、時間切れ」
「う゛、んん゛ーっ!」
「渋谷君がちゃんと答えないから悪いんだよ」

 言いながら僕はまだなにもしていない方の乳首に触れた。触れてすらいないというのに、その先端には血液が集まりこりこりと固くなっている。
 そのまま無傷の乳首へとタバコの先端を胸に近付けた瞬間、渋谷君の体が飛び跳ねた。
 まだ擦っていないのにも関わらず、ふるふると震える渋谷君。一瞬演技かと思ったが、乱れ、肌に張り付く濡れた髪から覗く渋谷君の目に浮かぶら恐怖は本物だろう。

 人を平気で弄ぶくせに、自分が傷つくのは嫌だという。本当にいい性格だ。

 ぢり、とほんの少しタバコの先端に溜まった灰が落ちただけで渋谷君の胸は更に跳ね、拍子にタバコの火に当たったようだ。一人で涙目になってる渋谷君を見て笑いながら、今度はちゃんとその乳首にハンコをしてやることにした。
 
 ーー根性焼き、と言うらしい。俗に。





 藻掻き、呻く渋谷君の腕を掴み、胸を中心に身体中至るところに先端を押し付ける。焦げた皮膚の匂いはなんだか焼き肉屋を思い出した。
 そして、箱に残っていた最後の一本を手にする。

「なんかこれってキスマークみたいだよね」

 床の上、膝立ちになったまま項垂れる渋谷君。その下腹部は濡れ、足元には黄色の水たまりができていた。こうして、一線を越えた相手が漏らすのはよくあった。
 耐えるように眉を寄せ、額から顎先へとだらだら汗を滴らせる渋谷君の涙で潤んだ目は既に焦点が合っていない。

 ここまで効果が出るとは。今度から邪魔な奴出たら根性焼き使おうかな。でも僕タバコ吸わないし、直接ライター押し付けるのも良いかもしれない。ーーいや、それじゃただの火炙りか。

「渋谷君、痛いの?」

 こくり。

「やめて欲しい?」

 こくり。こくり。

「じゃあ郁君に近付かないで。あ、でも郁君を邪険にするのもダメだよ。あくまでこっそり離れること。わかった?」

 こくりこくりこくり。

「ねえ、なんでそんなに嬉しそうに頷くのかな。ちょっとは郁君の気持ち考えなよ」
「っん、んっんっ」

 勢いよく頷く渋谷君が気に入らなくて、言いながら渋谷君のズボンを下ろせば渋谷君は慌てて首を横に振った。
 どうやらそういうつもりはないと言っているようだ。

「聞こえないよ」

 濡れた下着の中に手を突っ込む。渋谷君の性器は硬くなっていた。勃起した性器を取り出せば、渋谷君は更に青ざめた。

「相当君、色んな子を弄んできたみたいだね。“これ”でさ」
「ふ、ぅ゛」
「悪いおちんちんだよね。ねえ、捨ててきた子達に申し訳ないと思わないの?」
「う゛、む゛……」
「こんな悪いおちんちん、使えなくなった方が皆幸せになると思わない?」

 だらだら、ぽたぽた。汗でびっしょりと濡れた渋谷君の顔から胸元へと流れ落ちる汗。
 座り込み、渋谷君の性器の根本を掴めばその緊張は更に増す。
 渋谷君は僕がなにをしようとしているか気付いたようだ。
 手の中のそれがびくんっと跳ね、その動きを押さえるように僕はぎゅっと指に力を入れ、その根元を握った。

「う゛、んむ゛」
「幸せになると、思わない?」
「……ふ、ぅ゛……」

 握り締めた性器から渋谷君の震えは伝わってきた。
 やめてくれ、と小さく首を横に振る渋谷君。正直僕はどうでもいい。渋谷君がどこの誰と寝ようが、捨てようが、恨まれようが、どうでも。郁君以外の誰が不幸になろうが、どうでもいい。

「ここにこれ押し付けたらさあ、どうなると思う?」
「……っ」
「乳首だけで泣いちゃうんだもんね。どうなるんだろ、試してみようか」

 とろ、と透明な液体が肉色の亀頭から垂れる。それがまたお漏らししてるみたいで滑稽だ。
 震える体。そのまま亀頭、その尿道口へと火の点いたタバコを近付ける。
 少しでも手が滑れば直撃するような至近距離だ。薄皮一枚の距離、渋谷君はそれをわかっているようだ。抵抗を止め、全てを諦めたような目で渋谷君はぎゅっと目をつむった。

「でもこんだけぬるぬるってなってたら火ぃ消えちゃうかもね」

 思いっきり押しつけたら渋谷君はどうなるのだろうか。ああ、押し付けてみたい。けど、やり過ぎると後が面倒だ。
 既に怯んで反省している相手を怯えさせるのは簡単だが、過度の恐怖心の膨張は反抗心を抱かせるだけだ。自分の中の加虐心を押さえ、「冗談だよ」と笑いながら僕はタバコを離す。
 そして、ほっと安心する渋谷君。その陰毛にライターの火を付け、着火させた。




 性器に根性焼きを入れる代わりに、僕は渋谷君の陰毛を燃やしてパイパンにしてやった。
 ちりちりと大体を燃やし尽くし終えたとき、渋谷君の下腹部にはたくさんの真っ赤な火傷の跡が残ってしまう。
 いっそのこと全身火傷の跡残したら目立たなくなるんじゃないのかと思ったが、目立つ場所に跡残したら面倒だということで諦めた。

 部屋の中は異臭が立ち込めていた。

 たまたま部屋で見つけた安全ピンをライターで炙って、渋谷君の乳首を貫通させようとしたとき渋谷君はとうとう気を失った。どうやら脱水症状が起きたようだ。暇だったのでそのまま安全ピンを刺し、もう片方の乳首にも安全ピンを貫通させた。渋谷君の携帯を取り出し、僕は彼の端末でそのときの思い出の写真を撮っておいてやることにした。記憶はなくなるのは可哀想だし、ああならば一番よく見えるようにロック画面とホーム画面にも設定しておいてやろう。

 全てを終えたあと、残されたのは片付けのみだった。

 無事厄介ごとの芽を摘み終えたと判断した僕は渋谷君の拘束を解き、服を着せ、予め用意していたペットボトルの水を口移しで飲ませた。
 そして水分補給を済ませ、そしてそのまま抱えて保健室へと運んだ。気を失った渋谷君をベッドに寝かせ、僕はそのまま教室へと帰る。
 そのまま何事もなかったかのように席についた僕は「遅すぎるんだよ」と怒る郁君を宥め授業中の教室に溶け込んだ。

 ――そして休み時間、勿論渋谷君はこなかった。
 その次の休み時間も、その次も、放課後になっても渋谷君は姿を現さなかった。
 当たり前だ、そういう約束で解放したのだから。
 それでも、やっぱり郁君は寂しそうだった。
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