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崩壊前夜
望んでない再会
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あーやだ、本当やだ。
なんでこんなことばっか起きてんだろう。
いつの日かの記憶と重なる。
あいつが襲撃してきたときの、電話越しに聞いた仲間の悲鳴や断末魔。
……ほんっと、やだ。
「おい! 少しは説明しろ!」
言いながらもちゃんと走ってついてきてくれるなっちゃんって本当優しー。
けど、
「そんなの、俺にもわかんないよ」
「はあ?」
「だから、確認しに行くの。……自分の目で」
本調子ではない体では普段通りの速度はでない。
それでも行かなければ、と思った矢先、なっちゃんに腕を掴まれて止められる。
「っ、なっちゃん……」
「場所は?」
「え?」
「いいから場所を言え、どこに行くつもりなんだよ」
怖い顔して聞いてくるなっちゃんに、「かいちょーの部屋」と呟いたときだ。
面倒臭そうに舌打ちをするなっちゃん。
そして、
「う、わ……」
いきなり視界が大きく揺れたと思った矢先、なっちゃんに担がれていることに気づく。
俺の目からはなっちゃんの後頭部しか見えない。
「ちょ、なに、なっちゃん降ろして」
「お前先導だと時間がかかる。……このまま行くぞ」
「え、うそ……って、わ……っ!」
……生まれてこの方、人に担がれた状態で全力疾走されたことなんてあっただろうか。
もしかして俺が走りづらそうにしてたのに気づいたのかな、なんて考える余裕もなかった。
ちょっとしたアトラクションのような、そんな時間だった。
通り過ぎる生徒たちは何事かとこっち見てた。そりゃそうだ。はずかしーけど、正直大分楽ちん。
それからあっという間に目的地までやってきたようだ。なっちゃんはあっさりと俺を下ろした。
「う、ちょっと、もうちょい丁寧に扱えって……」
「軽すぎんだよお前、持ちにくい」
「持ちにく……」
そんなこと初めて言われた。そもそも持たれることなんて早々ないし、と言い返しつつ俺は立ち上がった。
そして辺りを見渡す。
廊下の前は恐ろしく静かだった。
人っ子一人いない。……純の姿も。
「……それで、かいちょーの部屋がなんだって?」
「………………」
物陰に隠れていないだろうか、と思って廊下の陰を覗き込む。
そこで、ふと物陰の辺りになにかが落ちていることに気づいた。
それは純の携帯端末だった。
見覚えのある派手なカバーのそれを手にとったまま、息を飲んだ。
「……なっちゃん、風紀委員増援呼んで」
「増援ってお前そんな簡単に……せめて説明しろって!」
「かいちょーがなんかよくないこと企んでる」
そう告げれば、なっちゃんは片眉をぴくりと上げた。
「企んでるって、なんだよ」
「日桷がいなくなったのと関係してるってこと。……そんで、それを追ってた純が巻き込まれた可能性がある」
「純って、お前んところのきゃんきゃんうるせえのか」
そんな認識されてるのか、純。間違ってないけど。
頷き返せば、なっちゃんは小さくため息をつき、面倒臭そうにガシガシと髪をかき上げた。
「……わかった、呼ぶから少し待て」
「……俺も?」
「当たり前だろ、つーかお前しかいねえだろ。……間違っても、このまま単身で生徒会長の部屋殴り込みに行くんじゃねえよ」
なっちゃんは人の頭の中でも覗き込めるのだろうか。実行する前に釘を刺されてしまう。
「わかったよ」と観念して答えれば、俺から目を離さないようにしながらそのまま携帯端末取り出したなっちゃんはどこかに電話を掛け始めた。
「……ああ、俺だ。悪いが今から学生寮の生徒会フロアに――」
なんてなっちゃんが言いかけた矢先、奥の会長の部屋の扉が開いた。
そして、そこから現れた男に血の気が引いた。
ヅラ感丸出しのもさもさの黒髪、そして素顔も見えない瓶底眼鏡。
この世で最も会いたくない男――ヒズミがそこにいた。
なんでこんなことばっか起きてんだろう。
いつの日かの記憶と重なる。
あいつが襲撃してきたときの、電話越しに聞いた仲間の悲鳴や断末魔。
……ほんっと、やだ。
「おい! 少しは説明しろ!」
言いながらもちゃんと走ってついてきてくれるなっちゃんって本当優しー。
けど、
「そんなの、俺にもわかんないよ」
「はあ?」
「だから、確認しに行くの。……自分の目で」
本調子ではない体では普段通りの速度はでない。
それでも行かなければ、と思った矢先、なっちゃんに腕を掴まれて止められる。
「っ、なっちゃん……」
「場所は?」
「え?」
「いいから場所を言え、どこに行くつもりなんだよ」
怖い顔して聞いてくるなっちゃんに、「かいちょーの部屋」と呟いたときだ。
面倒臭そうに舌打ちをするなっちゃん。
そして、
「う、わ……」
いきなり視界が大きく揺れたと思った矢先、なっちゃんに担がれていることに気づく。
俺の目からはなっちゃんの後頭部しか見えない。
「ちょ、なに、なっちゃん降ろして」
「お前先導だと時間がかかる。……このまま行くぞ」
「え、うそ……って、わ……っ!」
……生まれてこの方、人に担がれた状態で全力疾走されたことなんてあっただろうか。
もしかして俺が走りづらそうにしてたのに気づいたのかな、なんて考える余裕もなかった。
ちょっとしたアトラクションのような、そんな時間だった。
通り過ぎる生徒たちは何事かとこっち見てた。そりゃそうだ。はずかしーけど、正直大分楽ちん。
それからあっという間に目的地までやってきたようだ。なっちゃんはあっさりと俺を下ろした。
「う、ちょっと、もうちょい丁寧に扱えって……」
「軽すぎんだよお前、持ちにくい」
「持ちにく……」
そんなこと初めて言われた。そもそも持たれることなんて早々ないし、と言い返しつつ俺は立ち上がった。
そして辺りを見渡す。
廊下の前は恐ろしく静かだった。
人っ子一人いない。……純の姿も。
「……それで、かいちょーの部屋がなんだって?」
「………………」
物陰に隠れていないだろうか、と思って廊下の陰を覗き込む。
そこで、ふと物陰の辺りになにかが落ちていることに気づいた。
それは純の携帯端末だった。
見覚えのある派手なカバーのそれを手にとったまま、息を飲んだ。
「……なっちゃん、風紀委員増援呼んで」
「増援ってお前そんな簡単に……せめて説明しろって!」
「かいちょーがなんかよくないこと企んでる」
そう告げれば、なっちゃんは片眉をぴくりと上げた。
「企んでるって、なんだよ」
「日桷がいなくなったのと関係してるってこと。……そんで、それを追ってた純が巻き込まれた可能性がある」
「純って、お前んところのきゃんきゃんうるせえのか」
そんな認識されてるのか、純。間違ってないけど。
頷き返せば、なっちゃんは小さくため息をつき、面倒臭そうにガシガシと髪をかき上げた。
「……わかった、呼ぶから少し待て」
「……俺も?」
「当たり前だろ、つーかお前しかいねえだろ。……間違っても、このまま単身で生徒会長の部屋殴り込みに行くんじゃねえよ」
なっちゃんは人の頭の中でも覗き込めるのだろうか。実行する前に釘を刺されてしまう。
「わかったよ」と観念して答えれば、俺から目を離さないようにしながらそのまま携帯端末取り出したなっちゃんはどこかに電話を掛け始めた。
「……ああ、俺だ。悪いが今から学生寮の生徒会フロアに――」
なんてなっちゃんが言いかけた矢先、奥の会長の部屋の扉が開いた。
そして、そこから現れた男に血の気が引いた。
ヅラ感丸出しのもさもさの黒髪、そして素顔も見えない瓶底眼鏡。
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