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人の心も二週間
予期せぬ訪問者 *純side
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やり場のない、というのはまさにこの事だろうか。
仙道さんに手を出した野郎に殺意を覚えて、それを逃がした雪崎に腹が立って、そのくせ強がって何でもないフリをしやがる仙道さんにムカついて、何より、守ると覚悟決めておきながらなんの役にも立てなかった自分を殺したくて堪らなかった。
なのに、ヘラヘラ笑う仙道さんにムカついて八当りのような真似をしてしまって、さっきの仙道さんの顔を思い出す度に口からは溜息が溢れる。
「はあぁぁ…」
溜まり場代わりの空き部屋にて。
一人でいる気にもなれなくて他の連中の様子を見に来たはずなのに何故だろうか。
ここに居ると余計仙道さんのことを考えてしまい自己嫌悪に陥らずには居られなくなる。
「純のやつ、随分と凹んでるみてーだな」
「あっ、そういや仙道さんも最近見掛けないな」
「仙道さんは雪崎さんと一緒にいるっていうの聞いてたぞ」
「なら大丈夫だよな!俺達よりも強いし!」
「うるせーんだよ、てめえら!!」
おまけに、赤髪たちは何も知らずに呑気なもので。「やべ、なんか純の地雷踏んだ」とテーブルの裏へと避難する連中を睨み、俺はまた溜息を吐いた。
他の奴らは仙道さんに何があったのか知らない。
仙道さんに連絡が取れなくて不審に思い雪崎の元へ向かって、そこで俺は知ったのだ。
雪崎は仙道さんのためにも黙ってくれと頭を下げてきた。そんなの、言えるわけがない。一度ならず二度までも、同じ失態を晒すなんて――謝るにも謝れない。
仙道さんもきっと呆れてるだろう、肝心の時におらず挙句の果てに逆ギレした俺に。でも仙道さんだって、なんで雪崎なんだ。俺を頼ってくれたってよかったのじゃないか。
そんなことを考えているから雪崎に負けるのではないのかともう一人の自分が頭の中で笑う。…否定できない。
「つーかほら、またどうせ仙道さんと喧嘩したんじゃねえの?」
「うるせー!」
「うお、地獄耳こええ!逃げろ!」
「逃げろー!」
バタバタと部屋の中を走り回る赤髪と黄髪に一発殴ってやろうかと立ち上がったとき、ぽんっと肩を叩かれる。振り返れば、グラスを手にした青髪が立っていた。
「純、荒れてるな」
「……普通だし」
「嘘つけ」
「取り敢えず、飲めよ。腹減ってんだろ」と、テーブルの上、グラスを乗せる青髪は笑い掛けてくる。
その笑顔になんだか肩から力が抜けるようで、深いため息とともに俺はソファーの上に崩れ落ちた。
「…もう、なんかさぁ、どうしたらいいのかわかんねえ」
「えっ?」
「…なんだよその反応」
「い、いや…お前が弱音吐くの珍しいから」
「悪いかよ」
「別に、いいけど。…で?どうした?」
「……」
少し迷って、俺は「例えばの話だけどさ」と口を開く。
「放っとけない人がいるんだよ。…けど、なんか、俺が言っても言う事聞いてくれないしさ、無理に言ったら嫌がるってのも分かってんだけどあの人アホだから放っとけなくて」
「…おう」
「甘やかしてくれる優しい方がいいのは分かってんだけど、それでも優しくできねーってか、もう、まじ、どうしたらいいのかわかんねえっていうか…」
「ああ…仙道さんか」
「はっ?!ち、ちげーから!関係ねえし!例えばっつってんだろうが!つかうるせえんだよお前!」
「…分かった分かった、俺が悪かったな今のは」
隣に腰を下ろした青髪は苦笑し、そしてバシッと俺の背中を叩いた。
「取り敢えず、元気だせ」
「アドバイスくれるとかじゃねえの?!」
「いや俺もそういうのわかんねーし」
んだよお前思わせぶりな態度取っておいて聞くだけかよ。
色々言いたいことはあったけど、俺だってこんなこと相談されたら答えようもない。
仕方ないのかと項垂れていると「ならさ」と思い出したように青髪は手を叩いた。
「そう本人に言えばいいんじゃね?」
「…無理」
「なら諦めろ」
「……………お前本当適当だよな」
赤髪と黄髪の相手をしていたらそうなるのだろうか、とやつを見れば、青髪は誇らしげに笑う。
「元気出たか?」
「なんか馬鹿馬鹿しくなってきた」
「よし」
よしじゃねえよ。
「はぁ…」
口に出したおかげで幾分胸の中の突っ掛かりは軽くなったものの、やはり、仙道さんのことを考えると気が沈んでいくようだった。
「いっそのこと、部屋にでも閉じ込めて見張っとくかな」
そう何気なしに呟いた時、青髪がきょとんと目を丸くした。
「……」
「あ、や、今のは例えってか…」
「…いや、同じこと考えんだなって思ってさ」
もしかして引かれたか?と思ったがそうではなかったようだ。
それよりも青髪の言葉が引っ掛かり、「同じこと?」と聞き返せば何かを思い出したのか青髪は笑う。
「そうそう、この前、雪崎さんも同じこと言ってたから」
「……は?」
雪崎が?
比較的温厚な性格である雪崎も仙道さんの腕白っぷりに痺れを切らしていたということだろうかと思ったが、なんとなく、胸の奥がざわつく。
――なんだろうか、この違和感は。
そんなときだった。
「あっ、おい、純純!」
赤髪と黄髪が大きな声で呼んでくる。
「あ?!うるせーな、なんだ……」
よ、と振り返ったとき。
開かれた扉の前、立っているそいつの姿に今度こそ俺は停止した。
「佐倉純…だな」
「お前は…っ!」
いつものきっちり着込んだ制服姿でもなく、右腕にぶら下がる腕章もない。それでも、間違えるわけがなかった。
「京…いや、会計の場所は分かるか?」
風紀委員長、敦賀真言はそう一言。
俺達になんて興味ないとでも言うかのように無表情貼り付けたまま吐き捨てた。
仙道さんに手を出した野郎に殺意を覚えて、それを逃がした雪崎に腹が立って、そのくせ強がって何でもないフリをしやがる仙道さんにムカついて、何より、守ると覚悟決めておきながらなんの役にも立てなかった自分を殺したくて堪らなかった。
なのに、ヘラヘラ笑う仙道さんにムカついて八当りのような真似をしてしまって、さっきの仙道さんの顔を思い出す度に口からは溜息が溢れる。
「はあぁぁ…」
溜まり場代わりの空き部屋にて。
一人でいる気にもなれなくて他の連中の様子を見に来たはずなのに何故だろうか。
ここに居ると余計仙道さんのことを考えてしまい自己嫌悪に陥らずには居られなくなる。
「純のやつ、随分と凹んでるみてーだな」
「あっ、そういや仙道さんも最近見掛けないな」
「仙道さんは雪崎さんと一緒にいるっていうの聞いてたぞ」
「なら大丈夫だよな!俺達よりも強いし!」
「うるせーんだよ、てめえら!!」
おまけに、赤髪たちは何も知らずに呑気なもので。「やべ、なんか純の地雷踏んだ」とテーブルの裏へと避難する連中を睨み、俺はまた溜息を吐いた。
他の奴らは仙道さんに何があったのか知らない。
仙道さんに連絡が取れなくて不審に思い雪崎の元へ向かって、そこで俺は知ったのだ。
雪崎は仙道さんのためにも黙ってくれと頭を下げてきた。そんなの、言えるわけがない。一度ならず二度までも、同じ失態を晒すなんて――謝るにも謝れない。
仙道さんもきっと呆れてるだろう、肝心の時におらず挙句の果てに逆ギレした俺に。でも仙道さんだって、なんで雪崎なんだ。俺を頼ってくれたってよかったのじゃないか。
そんなことを考えているから雪崎に負けるのではないのかともう一人の自分が頭の中で笑う。…否定できない。
「つーかほら、またどうせ仙道さんと喧嘩したんじゃねえの?」
「うるせー!」
「うお、地獄耳こええ!逃げろ!」
「逃げろー!」
バタバタと部屋の中を走り回る赤髪と黄髪に一発殴ってやろうかと立ち上がったとき、ぽんっと肩を叩かれる。振り返れば、グラスを手にした青髪が立っていた。
「純、荒れてるな」
「……普通だし」
「嘘つけ」
「取り敢えず、飲めよ。腹減ってんだろ」と、テーブルの上、グラスを乗せる青髪は笑い掛けてくる。
その笑顔になんだか肩から力が抜けるようで、深いため息とともに俺はソファーの上に崩れ落ちた。
「…もう、なんかさぁ、どうしたらいいのかわかんねえ」
「えっ?」
「…なんだよその反応」
「い、いや…お前が弱音吐くの珍しいから」
「悪いかよ」
「別に、いいけど。…で?どうした?」
「……」
少し迷って、俺は「例えばの話だけどさ」と口を開く。
「放っとけない人がいるんだよ。…けど、なんか、俺が言っても言う事聞いてくれないしさ、無理に言ったら嫌がるってのも分かってんだけどあの人アホだから放っとけなくて」
「…おう」
「甘やかしてくれる優しい方がいいのは分かってんだけど、それでも優しくできねーってか、もう、まじ、どうしたらいいのかわかんねえっていうか…」
「ああ…仙道さんか」
「はっ?!ち、ちげーから!関係ねえし!例えばっつってんだろうが!つかうるせえんだよお前!」
「…分かった分かった、俺が悪かったな今のは」
隣に腰を下ろした青髪は苦笑し、そしてバシッと俺の背中を叩いた。
「取り敢えず、元気だせ」
「アドバイスくれるとかじゃねえの?!」
「いや俺もそういうのわかんねーし」
んだよお前思わせぶりな態度取っておいて聞くだけかよ。
色々言いたいことはあったけど、俺だってこんなこと相談されたら答えようもない。
仕方ないのかと項垂れていると「ならさ」と思い出したように青髪は手を叩いた。
「そう本人に言えばいいんじゃね?」
「…無理」
「なら諦めろ」
「……………お前本当適当だよな」
赤髪と黄髪の相手をしていたらそうなるのだろうか、とやつを見れば、青髪は誇らしげに笑う。
「元気出たか?」
「なんか馬鹿馬鹿しくなってきた」
「よし」
よしじゃねえよ。
「はぁ…」
口に出したおかげで幾分胸の中の突っ掛かりは軽くなったものの、やはり、仙道さんのことを考えると気が沈んでいくようだった。
「いっそのこと、部屋にでも閉じ込めて見張っとくかな」
そう何気なしに呟いた時、青髪がきょとんと目を丸くした。
「……」
「あ、や、今のは例えってか…」
「…いや、同じこと考えんだなって思ってさ」
もしかして引かれたか?と思ったがそうではなかったようだ。
それよりも青髪の言葉が引っ掛かり、「同じこと?」と聞き返せば何かを思い出したのか青髪は笑う。
「そうそう、この前、雪崎さんも同じこと言ってたから」
「……は?」
雪崎が?
比較的温厚な性格である雪崎も仙道さんの腕白っぷりに痺れを切らしていたということだろうかと思ったが、なんとなく、胸の奥がざわつく。
――なんだろうか、この違和感は。
そんなときだった。
「あっ、おい、純純!」
赤髪と黄髪が大きな声で呼んでくる。
「あ?!うるせーな、なんだ……」
よ、と振り返ったとき。
開かれた扉の前、立っているそいつの姿に今度こそ俺は停止した。
「佐倉純…だな」
「お前は…っ!」
いつものきっちり着込んだ制服姿でもなく、右腕にぶら下がる腕章もない。それでも、間違えるわけがなかった。
「京…いや、会計の場所は分かるか?」
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