36 / 85
イレギュラーは誰なのか
噛み合わない会話
しおりを挟む
――そして、翌日。
「仙道、おはようございます」
「おはようございます」
「ちーちゃん」
と、親衛隊の…ちわわ?名前忘れた。
生徒会室前、浮かない気分のままやってきた俺の前には見覚えのある王子様と小動物がいた。
どうやら今日は会議らしいので一応顔だけでも出そうと思ったのだが、ちーちゃんも同じらしい。俺と目があうなりちーちゃんはにっこりと微笑んだ。
「ちょうどいい、せっかくですし一緒に行きましょうか。とはいっても、すぐそこまでですが」
「んー、いーよ。別に」
そう頷き返せば、ちーちゃんはちわわに視線を送る。
すると、ぱっと表情を明るくしたちわわは無邪気に笑った。
「では石動様、仙道様、お二人とも会議頑張って下さいね!」
「ありがとうございます、譲」
どうやらちわわもとい譲君は置いていくらしい。
ぺこりと90°腰を折る譲君に「ん、ありがとねー」と手を振る。譲君は照れ臭そうにはにかんで、また深く腰を折った。
ちーちゃんには勿体ない礼儀正しい子。
「では行きましょうか」
失礼なことを考えている俺に気付いているのかいないのか、そう言って歩き出すちーちゃんのあとを追いかける。
「さっきの譲って子、かわいーね」
なんとなく、ちーちゃんの親衛隊の子を思い出す。健気そうで透明感のある純朴な感じは嫌いではない。いかにも男にモテそうな男って感じなんだけど。
まあ、ちーちゃんの親衛隊なんて物好きやっているということは本人もそっちの気ありそうだしそれはそれでいいのだろう。……いいのか?
「ええ、お気に入りです。初そうな顔をして下の方はなかなか名器で」
本当、譲君はなんでこんなやつの親衛隊になったのだろうか。
にこにこと笑いながら指で輪っか作ってもう片方の手の人差し指をずぼずぼ差し込むというなんとも下品なジェスチャーをくれるちーちゃんに、そんな疑問を抱かずにはいられない。しかし、色々ひねくれているちーちゃんが人を褒めるというのは珍しい。
「付き合っちゃえばいいのに」
「はい?」
「かわいーじゃん」
「はい」
「優しそうじゃん」
「はい」
「ちーちゃん、ああいうの好きなんでしょ?」
「突然何を言い出すかと思えば、そんなことですか」
呆れたように笑うちーちゃん。「そんなことって」と、唇を尖らせた時、細められたちーちゃんの目がこちらを向く。透き通った、薄い茶色の瞳は深い。
「仙道はああいう方がお好みですか」
「いや、そーゆーわけじゃないけどさ」
「確かに、形がいいものはいいですね。美しいものを愛でると心安らぎます」
返答に迷う俺に構わず、ちーちゃんは微笑む。相変わらず、謳うような滑らかな声。普通にしてれば、普通に王子様なのに勿体無い。
なんて思いながらちーちゃんの横顔を目で追いかける。
「でも、僕は完璧なものより傷が入っていたり、くすんでいたり、どこかしら重大な欠点があるものの方が好きですね」
「えっと…ブス専?」
小難しいことを口にするちーちゃんにそう小首かしげれば、ちーちゃんは「ははっ」と声を上げて笑った。
楽しそうな、まるで普通の男子校生と変わらないちーちゃんの笑顔と笑い声は割りとレアなんではないだろうか。
「ご想像にお任せします」
そしてすぐ、いつもと変わらない対チワワ用の笑顔を浮かべるちーちゃんに益々俺はちーちゃんが分からなくなる。
「仙道、おはようございます」
「おはようございます」
「ちーちゃん」
と、親衛隊の…ちわわ?名前忘れた。
生徒会室前、浮かない気分のままやってきた俺の前には見覚えのある王子様と小動物がいた。
どうやら今日は会議らしいので一応顔だけでも出そうと思ったのだが、ちーちゃんも同じらしい。俺と目があうなりちーちゃんはにっこりと微笑んだ。
「ちょうどいい、せっかくですし一緒に行きましょうか。とはいっても、すぐそこまでですが」
「んー、いーよ。別に」
そう頷き返せば、ちーちゃんはちわわに視線を送る。
すると、ぱっと表情を明るくしたちわわは無邪気に笑った。
「では石動様、仙道様、お二人とも会議頑張って下さいね!」
「ありがとうございます、譲」
どうやらちわわもとい譲君は置いていくらしい。
ぺこりと90°腰を折る譲君に「ん、ありがとねー」と手を振る。譲君は照れ臭そうにはにかんで、また深く腰を折った。
ちーちゃんには勿体ない礼儀正しい子。
「では行きましょうか」
失礼なことを考えている俺に気付いているのかいないのか、そう言って歩き出すちーちゃんのあとを追いかける。
「さっきの譲って子、かわいーね」
なんとなく、ちーちゃんの親衛隊の子を思い出す。健気そうで透明感のある純朴な感じは嫌いではない。いかにも男にモテそうな男って感じなんだけど。
まあ、ちーちゃんの親衛隊なんて物好きやっているということは本人もそっちの気ありそうだしそれはそれでいいのだろう。……いいのか?
「ええ、お気に入りです。初そうな顔をして下の方はなかなか名器で」
本当、譲君はなんでこんなやつの親衛隊になったのだろうか。
にこにこと笑いながら指で輪っか作ってもう片方の手の人差し指をずぼずぼ差し込むというなんとも下品なジェスチャーをくれるちーちゃんに、そんな疑問を抱かずにはいられない。しかし、色々ひねくれているちーちゃんが人を褒めるというのは珍しい。
「付き合っちゃえばいいのに」
「はい?」
「かわいーじゃん」
「はい」
「優しそうじゃん」
「はい」
「ちーちゃん、ああいうの好きなんでしょ?」
「突然何を言い出すかと思えば、そんなことですか」
呆れたように笑うちーちゃん。「そんなことって」と、唇を尖らせた時、細められたちーちゃんの目がこちらを向く。透き通った、薄い茶色の瞳は深い。
「仙道はああいう方がお好みですか」
「いや、そーゆーわけじゃないけどさ」
「確かに、形がいいものはいいですね。美しいものを愛でると心安らぎます」
返答に迷う俺に構わず、ちーちゃんは微笑む。相変わらず、謳うような滑らかな声。普通にしてれば、普通に王子様なのに勿体無い。
なんて思いながらちーちゃんの横顔を目で追いかける。
「でも、僕は完璧なものより傷が入っていたり、くすんでいたり、どこかしら重大な欠点があるものの方が好きですね」
「えっと…ブス専?」
小難しいことを口にするちーちゃんにそう小首かしげれば、ちーちゃんは「ははっ」と声を上げて笑った。
楽しそうな、まるで普通の男子校生と変わらないちーちゃんの笑顔と笑い声は割りとレアなんではないだろうか。
「ご想像にお任せします」
そしてすぐ、いつもと変わらない対チワワ用の笑顔を浮かべるちーちゃんに益々俺はちーちゃんが分からなくなる。
22
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ボクに構わないで
睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。
あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。
でも、楽しかった。今までにないほどに…
あいつが来るまでは…
--------------------------------------------------------------------------------------
1個目と同じく非王道学園ものです。
初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる