13 / 86
出揃った役者、逃亡する主役。
親衛隊、行動開始。
しおりを挟む
生徒会会議が終わってから数日。
新入生歓迎会のレクレーションの内容の内容が校内で発表された日のことだった。
「どういうことですか、仙道さん」
まず、俺の元までやってきたのはせっかくのかわいい顔を歪めた純だった。
「どうって、なにがぁ?」
「なにがって、鬼ごっこのやつですよ。ほら、これ。最優秀鬼賞のところ」
そういって純が突き出してきたのは、先程各クラスで配布されたであろう新入生歓迎会についてまとめたプリントだった。どうやらご丁寧に目を通してくれたようだ。
「どうもこうも、そのまんまだけど」
「仙道さんが景品ってどういうことですか」
「だーかーらー、キスだけだって。一番頑張ってくれた子にちゅーすんの」
「ですから、なんで」
「そういう風になっちゃったんだから仕方ないじゃん。じゅんじゅんってばしつこーい」
生徒会室前廊下。
あまりにも怖い顔するもんだから茶化してやろうと笑ってみるが、純の顔はさらに険しさを増す。
「誰ですか、仙道さんにこんな真似をさせようとしたやつは」
珍しく怖い顔をする純は俺を睨む。ほんと、かわいい顔が台無し。
「俺だよ、俺。俺が志願したの」
「なんでそのような真似を」
「別にちょっとしたネタでしょー。そんな物騒な考え方やめてよ」
信じられないとでもいうかのようにこちらを見る純。本当は俺だってやりたくないが、もしマコちゃんの代わりになるためなんていったら純はもっと煩くなるだろう。
知人同士の仲が悪いというのはなかなか不便だ。
「ネタでも、キスですよ。キス。もし気持ちの悪いやつと仙道さんがキスしなきゃいけなくなったらどうするんですか」
「そのときは目を瞑るしー」
「あのですね」と不満そうにする純に俺は「それに」と口を開いた。
「純と思ったらなんとかいけそうだし」
そう笑いかければ、一瞬目を見開いた純はアホみたいな顔をして俺を見つめた。そして、やつの顔はじわじわと赤くなる。……おお、まじ照れ。
「仙道さんは、いつもそんなことばかりいって」
「あははっ!なに?期待しちゃった?純君かわいーねー」
にやにやしながら顔をひきつらせる純を覗き込めば、純はばつが悪そうに舌打ちをした。そして、純は笑う。
「心配した俺がバカでしたね。もういいです、どんな醜男が相手になってもしりませんからね」
「はいはい」
どうやらよほど頭に来たようだ。適当にあしらえば、純はそのままどこかへと歩き出した。
いたらいたらで小言が喧しい純だけど、いま、あまり一人になりたくなかっただけに言い過ぎたかもしれないと弱気になったがその去っていく後ろ姿を呼び止めることはなかった。
俺も、そろそろ行くか。そう口の中で呟き、今あまり行きたくない学生寮の自室へと向かって俺は歩き出す。
新入生歓迎会のレクレーションの内容の内容が校内で発表された日のことだった。
「どういうことですか、仙道さん」
まず、俺の元までやってきたのはせっかくのかわいい顔を歪めた純だった。
「どうって、なにがぁ?」
「なにがって、鬼ごっこのやつですよ。ほら、これ。最優秀鬼賞のところ」
そういって純が突き出してきたのは、先程各クラスで配布されたであろう新入生歓迎会についてまとめたプリントだった。どうやらご丁寧に目を通してくれたようだ。
「どうもこうも、そのまんまだけど」
「仙道さんが景品ってどういうことですか」
「だーかーらー、キスだけだって。一番頑張ってくれた子にちゅーすんの」
「ですから、なんで」
「そういう風になっちゃったんだから仕方ないじゃん。じゅんじゅんってばしつこーい」
生徒会室前廊下。
あまりにも怖い顔するもんだから茶化してやろうと笑ってみるが、純の顔はさらに険しさを増す。
「誰ですか、仙道さんにこんな真似をさせようとしたやつは」
珍しく怖い顔をする純は俺を睨む。ほんと、かわいい顔が台無し。
「俺だよ、俺。俺が志願したの」
「なんでそのような真似を」
「別にちょっとしたネタでしょー。そんな物騒な考え方やめてよ」
信じられないとでもいうかのようにこちらを見る純。本当は俺だってやりたくないが、もしマコちゃんの代わりになるためなんていったら純はもっと煩くなるだろう。
知人同士の仲が悪いというのはなかなか不便だ。
「ネタでも、キスですよ。キス。もし気持ちの悪いやつと仙道さんがキスしなきゃいけなくなったらどうするんですか」
「そのときは目を瞑るしー」
「あのですね」と不満そうにする純に俺は「それに」と口を開いた。
「純と思ったらなんとかいけそうだし」
そう笑いかければ、一瞬目を見開いた純はアホみたいな顔をして俺を見つめた。そして、やつの顔はじわじわと赤くなる。……おお、まじ照れ。
「仙道さんは、いつもそんなことばかりいって」
「あははっ!なに?期待しちゃった?純君かわいーねー」
にやにやしながら顔をひきつらせる純を覗き込めば、純はばつが悪そうに舌打ちをした。そして、純は笑う。
「心配した俺がバカでしたね。もういいです、どんな醜男が相手になってもしりませんからね」
「はいはい」
どうやらよほど頭に来たようだ。適当にあしらえば、純はそのままどこかへと歩き出した。
いたらいたらで小言が喧しい純だけど、いま、あまり一人になりたくなかっただけに言い過ぎたかもしれないと弱気になったがその去っていく後ろ姿を呼び止めることはなかった。
俺も、そろそろ行くか。そう口の中で呟き、今あまり行きたくない学生寮の自室へと向かって俺は歩き出す。
22
お気に入りに追加
289
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる