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出揃った役者、逃亡する主役。
可愛い子は躾ろ
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転校生・日桷和馬は文字通り嵐のようなやつだった。
やつが通った場所には被害にあい砕けた残骸だけが残っている。そんなやつだ。
「でさ、なにがあったの?説明してくれなきゃ俺たちどうすることもできないよー?」
生徒会会計になって数日。今俺は生徒会として働いていた。
目の前には泣き腫らし、アザやら引っ掻き傷でボロボロになった美少年三人組。見たことがあるその三人組はちーちゃんの取り巻きもとい親衛隊の子だった。
どうせなら俺の親衛隊もちーちゃんとこみたいに可愛い子がよかったなあなんて思いながら、涙を浮かべるばかりで口を開こうとしない三人組にはぁと小さく溜め息を吐く。
時間は数十分前に遡る。
俺が生徒会室へ向かおうとするとき、空き部屋の方からものすごい物音がして覗いてみればなんかゴツいやつらに襲われていた三人組を見付け、慌てて助けた。加害者のゴツいやつらはさっさと逃げ出し被害者である彼らが取り残されているのを指導室まで連れてきたわけだが、どうにも口を開こうとしない。まあ、大体は想像つくんだけどね。
「君ら、また転校生君にちょっかいかけようとしたの?」
白紙のままの事情聴取用の紙をこつこつペン先で叩きながら尋ねれば、三人組の顔色は面白いくらい変わった。
ビンゴ。
「そんな怖がらなくてもいいよー、別に取って食うわけじゃないんだから」
「……っぼくたちは、ちょっかいだなんて……!」
「じゃ、なにしたの?怒らないからさ、言ってよ」
そうしないと君たちのことを守れないからさあ。そう、なるべく三人組の警戒心を刺激しないよう優しく問いただせば、再びじわりと涙を浮かばせた三人組は次の瞬間糸が切れたようにわっと泣き出し、次々と自分たちのしてきたことやちーちゃんの素晴らしさ、あとどれくらい転校生が下劣なのかや昨日の夕飯のカレーが辛かったなど聞いてもいないことまで涙と一緒にさらさら教えてくれた。
要約すると、どうやらゴツいやつらを雇って転校生を襲わせようとしたらしいが返り討ちに遭ってしまい雇った屈強な生徒たちに腹いせされそうになっていたらしい。
……つまりは自業自得といったところだろうか。
犬が飼い主に似るとは本当のようだ。書き記された一連の事情に再度目を走らせながら俺はわんわん抱き合って泣く三人組を眺める。
「会計様、お願いします、僕たちの力だけじゃあのにっくき転校生を懲らしめることが出来ません、手を貸してくださいっ」
「確かにまあ、君たちだけじゃ無理だろうねー」
「僕からもお願いします、仙道様」
三人組からうるうると見詰められれば目のやり場に困ってしまう。
ああ、ほんとうちの親衛隊と交換してくれないかな。思いながら擦り寄ってくるチワワちゃんたちに俺は戸惑う。
「わかったよ」
そして、そう俺は重い口を開いた。三人組の表情が一気に明るくなる。
「一応俺の方からもなんとかするけどさぁ、生憎今のままじゃ彼は過剰防衛に過ぎないからねえ。あくまでも先に手を出した君たちが悪いってことになっちゃうんだよね」
「そんな…!」
「仙道様、僕たちはただ石動様の!」
「わかった、わかーった、わかってるからそんな詰め寄らないで」
なんかふわふわしたお花みたいな匂いがして気持ちがいい。ぎゅうぎゅうと擦り寄ってくる三人組を抱き締めたい衝動に駆られつつ必死にそれを堪える。
「取り敢えず、君たちはもう日桷和馬に手を出さない。今度したら嫌でもちーちゃんから親衛隊解散令出してもらわなくなっちゃうからね」
そう続ければ、先ほどまではしゃいでいたチワワちゃんたちの表情が翳る。
無理もない。これはちーちゃんも予想していないだろうが、実際この状況が続くのならそうならざるを得なくなってしまう。風紀委員長であるマコちゃんが洩らしていたので事実だろう。
「返事は?」
「……はい、わかりました」
しゅんとする三人組になんとなく罪悪感に苛まれつつ、俺は「偉い偉い」と三人の頭を撫でていく。
「転校生君のことは俺たちがなんとかするから、君らはちーちゃんの側にいてあげて」
そして首輪をしっかり繋いでくれていたら万々歳なのだが。
ちーちゃんこと石動千春の親衛隊が暴走したのは今日が初めてではない。
ちーちゃんの顔の怪我を見た親衛隊たちは卒倒し、一部始終を見ていた親衛隊の発言により日桷和馬は彼らのブラックリスト上位に上がった。それからはもう、目が回るような忙しさで事態は悪化する。
なんとかして日桷和馬を陥れようとあの手この手試行錯誤する彼らは毎回毎回日桷和馬に返り討ちに遭い、学園内のあちこちで自業自得の悲鳴が上がり俺たち生徒会や風紀、保健委員は目まぐるしく動き回った。
一番走り回っているであろうマコちゃんなんてここ数日でばんばん痩せてきてる。ほどよい筋肉質な体だったのにこのままマコちゃんをガリガリにして堪るかということで俺も校内の見回りに積極的に参加するようしたのだが、やはり疲れる。
ここはやっぱり元凶の日桷和馬を捕まえた方が早そうだなあ。
やつが通った場所には被害にあい砕けた残骸だけが残っている。そんなやつだ。
「でさ、なにがあったの?説明してくれなきゃ俺たちどうすることもできないよー?」
生徒会会計になって数日。今俺は生徒会として働いていた。
目の前には泣き腫らし、アザやら引っ掻き傷でボロボロになった美少年三人組。見たことがあるその三人組はちーちゃんの取り巻きもとい親衛隊の子だった。
どうせなら俺の親衛隊もちーちゃんとこみたいに可愛い子がよかったなあなんて思いながら、涙を浮かべるばかりで口を開こうとしない三人組にはぁと小さく溜め息を吐く。
時間は数十分前に遡る。
俺が生徒会室へ向かおうとするとき、空き部屋の方からものすごい物音がして覗いてみればなんかゴツいやつらに襲われていた三人組を見付け、慌てて助けた。加害者のゴツいやつらはさっさと逃げ出し被害者である彼らが取り残されているのを指導室まで連れてきたわけだが、どうにも口を開こうとしない。まあ、大体は想像つくんだけどね。
「君ら、また転校生君にちょっかいかけようとしたの?」
白紙のままの事情聴取用の紙をこつこつペン先で叩きながら尋ねれば、三人組の顔色は面白いくらい変わった。
ビンゴ。
「そんな怖がらなくてもいいよー、別に取って食うわけじゃないんだから」
「……っぼくたちは、ちょっかいだなんて……!」
「じゃ、なにしたの?怒らないからさ、言ってよ」
そうしないと君たちのことを守れないからさあ。そう、なるべく三人組の警戒心を刺激しないよう優しく問いただせば、再びじわりと涙を浮かばせた三人組は次の瞬間糸が切れたようにわっと泣き出し、次々と自分たちのしてきたことやちーちゃんの素晴らしさ、あとどれくらい転校生が下劣なのかや昨日の夕飯のカレーが辛かったなど聞いてもいないことまで涙と一緒にさらさら教えてくれた。
要約すると、どうやらゴツいやつらを雇って転校生を襲わせようとしたらしいが返り討ちに遭ってしまい雇った屈強な生徒たちに腹いせされそうになっていたらしい。
……つまりは自業自得といったところだろうか。
犬が飼い主に似るとは本当のようだ。書き記された一連の事情に再度目を走らせながら俺はわんわん抱き合って泣く三人組を眺める。
「会計様、お願いします、僕たちの力だけじゃあのにっくき転校生を懲らしめることが出来ません、手を貸してくださいっ」
「確かにまあ、君たちだけじゃ無理だろうねー」
「僕からもお願いします、仙道様」
三人組からうるうると見詰められれば目のやり場に困ってしまう。
ああ、ほんとうちの親衛隊と交換してくれないかな。思いながら擦り寄ってくるチワワちゃんたちに俺は戸惑う。
「わかったよ」
そして、そう俺は重い口を開いた。三人組の表情が一気に明るくなる。
「一応俺の方からもなんとかするけどさぁ、生憎今のままじゃ彼は過剰防衛に過ぎないからねえ。あくまでも先に手を出した君たちが悪いってことになっちゃうんだよね」
「そんな…!」
「仙道様、僕たちはただ石動様の!」
「わかった、わかーった、わかってるからそんな詰め寄らないで」
なんかふわふわしたお花みたいな匂いがして気持ちがいい。ぎゅうぎゅうと擦り寄ってくる三人組を抱き締めたい衝動に駆られつつ必死にそれを堪える。
「取り敢えず、君たちはもう日桷和馬に手を出さない。今度したら嫌でもちーちゃんから親衛隊解散令出してもらわなくなっちゃうからね」
そう続ければ、先ほどまではしゃいでいたチワワちゃんたちの表情が翳る。
無理もない。これはちーちゃんも予想していないだろうが、実際この状況が続くのならそうならざるを得なくなってしまう。風紀委員長であるマコちゃんが洩らしていたので事実だろう。
「返事は?」
「……はい、わかりました」
しゅんとする三人組になんとなく罪悪感に苛まれつつ、俺は「偉い偉い」と三人の頭を撫でていく。
「転校生君のことは俺たちがなんとかするから、君らはちーちゃんの側にいてあげて」
そして首輪をしっかり繋いでくれていたら万々歳なのだが。
ちーちゃんこと石動千春の親衛隊が暴走したのは今日が初めてではない。
ちーちゃんの顔の怪我を見た親衛隊たちは卒倒し、一部始終を見ていた親衛隊の発言により日桷和馬は彼らのブラックリスト上位に上がった。それからはもう、目が回るような忙しさで事態は悪化する。
なんとかして日桷和馬を陥れようとあの手この手試行錯誤する彼らは毎回毎回日桷和馬に返り討ちに遭い、学園内のあちこちで自業自得の悲鳴が上がり俺たち生徒会や風紀、保健委員は目まぐるしく動き回った。
一番走り回っているであろうマコちゃんなんてここ数日でばんばん痩せてきてる。ほどよい筋肉質な体だったのにこのままマコちゃんをガリガリにして堪るかということで俺も校内の見回りに積極的に参加するようしたのだが、やはり疲れる。
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