尻軽男は愛されたい

田原摩耶

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噛ませ犬

13※

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「お前んちには上がらない」

 そういう相馬とやってきたのは、俺んちのマンション――その中にある非常階段だった。
 冬場の空気に包まれたそこはただでさえ冷たく、おまけに電灯が切れかかっているだけにあまり使用する人間はいない。が、だからといって全くいないというわけではない。
 よりによってここを選ぶ相馬に、俺は呆れるしかなかった。

「別に、俺んちでいーじゃん……」

 相馬に肩を掴まれ、そのまま壁に背中を押し付けられる。
 ひんやりとしたコンクリートの壁の固い感触に、ぶるりと体が震えた。上着を脱がし、そのまま相馬はシャツ越しに俺の胸をまさぐる。

「外は嫌なわけ?」
「そりゃ、寒ぃし。つか誰か来たら……」
「なんだ、お前でも人目気にすんのか」
「俺をなんだと思ってんだよ」
「男だったら誰とでもセックスするやつ」

 単刀直入な相馬の言葉に俺も思わず黙り込めば、「否定しろよ」と相馬は俺のシャツのボタンを外していく。
 なんだかその手付きが手慣れてるように見えて、聞こうか迷っていると相馬と目があった。あいつは俺の顔を覗き込み、笑う。

「動けばその内熱くなんだろ」
「考え方、すげー脳筋……っ、ん、ぅ」

 言いかけた矢先、言葉を遮るように重ねられる唇に少しだけ驚く。
 キス、してる。相馬と。
 こいつとはこんなことをするような関係にはならないと思っていた。想像だってできなかったのに、啄むように唇を軽く吸われ、声が漏れる。
 顎を掴まれ、上を向かされた状態のまま無防備になってしまった胸を指先でつうっとなぞられれば、体がびくりと跳ね上がった。

「ふ、ぅ」
「声、我慢しなくていいのに」

 するだろ、ふつー。
 ただでさえ響きやすい造りの非常階段に、再びリップ音と布の擦れる音が響いた。

「ん、ふ、……っ、は、相馬」
「お前、キスするとき目ぇ瞑るんだ」
「……っ言わなくていいから、いちいち」
「なに、照れてんの? 木江」
「照れてね、ぇ……っ、ん、ぅ……っ」

 唇が離れたと思いきや、今度は人の胸元に顔を埋めてくる相馬にぎょっとした。
 熱い吐息が胸の先端に当たったと思えば、そのままぬるりとしたなにかが乳輪に触れる。普段は見上げる形だった相馬の頭が視界の隅で動き、髪が胸元に掠めた。

「は……ぁ……っ、ん……っふ、……」

 肉厚な舌が乳首に絡む。唾液を塗り込むみたいに執拗に舌先で乳首を穿られ、そのまま乳輪の奥まで埋まる舌先でぐりぐりと奥を刺激されれば胸の奥がじんわりと熱くなっていく。
 瞬間、弄られる程芯を持ち硬くなっていくそこを甘く噛まれる。

「ぃ……っ! ぁっ、ん、テメ、相馬……っ!」

 噛まれ、刺すような痛みに気を取られるも一瞬。今度は軽くキスをするかのように吸われ、そのまま口の中尖らせた舌先で責められる。
 しつこい、と相馬の頭を掴んで引き離そうとしたところ、片方の乳首を抓られ声が漏れた。
 クソ、相馬のくせに。そう睨めば、こちらをちらりと見た相馬が笑った――ような気がした。

「っん、ぅ……おい、そこばっか……っ」
「へえ、まじで男って乳首よくなんの?」
「気になんなら、自分で試しゃいいだろ」
「それならお前で試すわ。人生終わりそうだし」

 俺の人生終わるかもしれないってのはいいのかよ。嫌いじゃねえけど。終わりかけてるかもしれねーけど。
 再び乳首を咥えられ、今度は先程よりも強く吸い上げられる。
 胸舐められんのも乳首弄られんのも好きだけど、相手が相馬だと思えば集中できないっていうか、なんか変な感じというか、それなのにこいつは余計俺に意識させようとしてんのか話しかけてくるし余計夢見てるみたいにふわふわしてくる。
 つか、相馬のくせになんで俺の弱いところ分かんだよ。相馬だからか?なんか嫌だな、それ。

「……っ、ん、おお? なんか乳首デカくなった?」
「それは寒いから……おい、引っ張んな……っ! ぅ゛、ひ」

 ちゅぷ、と唇を離した相馬はそのまま濡れそぼった乳首を舐めあげ、そのまま指で撫でる。明らかに吸われすぎて腫れぼったくなったそこを摘み、柔らかく捏ねながら相馬は「これ、弄りやすくていいわ」と笑う。おもちゃじゃねえんだぞー

「っ、は、ぁ、相馬……っ、ん、ぅ……っ!」
「なあ、乳首だけでイけんの?」
「な、」

 こいつ、変なことに興味持ちだしやがった。
 イケるけど、絶対言いたくねえという気持ちの方が大きい。だってこいつの目、ろくなことにならない輝きを放ってるし。

「相馬、おい――ん、ぅ゛……っ!」
「お、ビクってなった」
「その触り方……っ、やめろ……! ん、ぅ……っ!」
「なんで? こっちもちゃんと勃ってんじゃん。なに、これも寒いから?」
「っふー……っ、ぅ、く……んん……っ!」

 乾いた硬い指先でかりかりと両乳首の頭を引っ掻かれ、ぞわぞわと背筋が震える。
 無意識に逃げようとしていた体を羽交い締めされ、背後に回る相馬にぎょっとしたのも束の間。耳元で相馬が笑う。

「木江、お前痛くされる方が好きだろ」
「んなわけ――ぃ゛……ッ!」

 つか、退け!と暴れる俺を更に抱き竦め、ぐにいっと引っ張っぱり伸びた乳首の先端をそのまま絞るように揉まれ、脳が焼けるように熱くなる。
 逃げたいのに、身動きすることも許されない。背後から覆い被さってくる相馬に羽交い締めにされたまま執拗に乳首を扱かれ、潰される。

「ぅ、そうま……っ! っ、こ、んのぉ……っ! ぉ、くひ……っ!」

 やべえ、やばい、無理。逃げることも許されず仰け反った胸の先、相馬は「当たり」と低く笑う。同時に両胸から指がぱっと離れた次の瞬間。

「ッ! ひ、ぅ゛う――~~ッ!」

 思いっクソこの男は人の乳首を潰しやがったのだ。散々昂ぶり、痺れていたそこへと加えられる痛みと熱に目の前が赤く染まる。
 びくんと跳ね上がる俺の体を抱き締めたまま、相馬は俺の胸を撫でる。

「すげえ、乳首でイけるんだな。さすが」
「相馬っ、てめ、ぇ……っ」
「ん? どうした?」
「……っ」

 こんなやり方するやつがいるかとキレそうになるのに、胸の先っぽはジンジンしっぱなしだし相馬の言う通り下着の中は大変なことになっていた。つか、チンポが痛え。
 認めたくないのに悪くないと思ってしまった自分にぞっとし、俺は文句の代わりに相馬の腕の中から抜け出した。

「……つか、お前だって勃起してんだろ」
「これはまあ、寒いからだな」

 余裕ぶりやがって、と嫌味の代わりに相馬の下半身をぺしっと叩こうとすれば呆気なく手首を掴まれ止められた。同級生の中でも大きな相馬の手はそのまま手首を掴み上げてくる。

「温めてくれんだろ?」
「相馬、その誘い方まじねーわ……」

「厳しいな」と悪びれもなく笑う相馬。
 相馬と中学の頃からの付き合いだ。他の奴らよりは浅くない仲と思っていたが、段々俺はこの相馬という男がなにを考えてるのか分からなくなっていた。
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