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04※(触手)
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全て悪い夢だったらどれほど良かっただろうか。
すぐ近くから聞こえてくるぬちぬちと粘着質な音ともに腹の中を何かが這いずりまわっている。内壁、内側の粘膜を舐るように這いずる太った蛞蝓のような感触は次第に鮮明になった。
「ぅ゛、あ……!」
ぐちゅぐちゅと中を蠢く異物感に耐え切れず、起き上がろうとしたが、思うように動けなかった。寝台に拘束された体は首を動かすこともできず、手足広げるようにそれぞれ繋がった鎖で引っ張られ、磔のような格好になっていた。
眼球を動かし、自分の格好を確かめようとし、自分が全裸であることに気付く。
そして足元、置かれた水槽のような装置から幾重もの触手が自分の下半身に伸ばされていることに気付いた。人間の肉棒にもよく似た肉質なその触手は腿を絡み、下半身、主に肛門に目掛けて伸ばされている。恐らく、既に中に入ってるそれも仲間なのだろう。それ以上見たくなくて咄嗟に目を閉じれば、じゅぷ、と音を立てて触手は炎症を癒やすように中をほぐし、舐めていくのだ。
「……っ、ん、ぅ……ッ」
――なんだ、これは。
そこまで考え、自分があの怪人――スティングと名乗る男に手足すら出せず負けたことを思い出した。
辺りを見渡す限りここはどこかの施設のようだ。どうやらあの男に連れてこられたのだろう。
考えうる限りこれは最悪の展開だった。
「っ、は……」
腹をぶち破る勢いで何度も叩き壊されたあとだ、ちろちろと中をしゃぶりつくような触手の動きなどまだ可愛い。
何かを投与されたのか、あのとき感じた痛みも全身の怪我も癒えているようだった。慈しむように中を這いずりまわる複数の触手の動きに次第に呼吸は乱れていく。
体を捩ろうとすればカチャリと手足の鎖が反応した。内側を舐め回される内に、射精に繋がる直接的な刺激とはいかないものの確かに性器に血液が集まっていく。
たらりと尿道口から溢れる先走りすらも、触手たちは群がって美味しそうにしゃぶりつくのだ。
くちゅくちゅと小さな水音を立て、頭を擡げ始める性器の根本から先っぽまで蛇のように絡みつく一本の触手に息を飲む。
「……っ、ふ……」
やばい、これは。
こんなことをしてる場合ではないのに、絶妙な力加減で弱いところをゆるゆると嬲られ、あっという間にぴんと勃った性器に更に他の触手たちも絡みついた。
「ぁ、……っ、ん、……ッ、や、……ッ!」
やめろ、気持ちよくなりたくない。そう頭を振り、逃げようと身を攀じるが鎖がガチャガチャと鳴るだけだった。
いつの間にかに体積を増し、本数も先程よりも増え、明らか水槽に入りきれないほど大きくなった触手の塊はそのままずるりと寝台へと触手を手足のように動かし、登ってくる。そのまま俺の爪先にちゅく、と吸い付い、脹脛から腿、下半身、臍、そして胸――全身へと手足を伸ばし、弱いところを探るように肉茎で弄られた。
「や、だ、きもちわり……ッ、ぅ、ん……ッ」
口元まで伸びてきた一本に、キスを強請るみたいに唇に先端を擦りつけられる。分泌物でぬらぬらと怪しく光る肉色のそれにぎょっとし、顔を逸らそうとするが、もう一本に顎を掴まれ、そのまま唇へとくちゅくちゅと吸い着かれた。
「……っ、ん、む……ッ! ぅ……ッ!!」
絶対に口を開けてやるものかと意気込むのも束の間、平らな胸の先、つんと尖っていた両胸の乳首を同時に嬲られた瞬間全身に甘い快感が広がった。感じたことのない感覚に驚き、思わず声が漏れそうになったとき、その隙きを狙ったかのように触手は俺の咥内へと入り込んできた。
「っ、は、んむ……ッ!」
キスをするみたいに深く舌を探られ、一本、二本とどんどん口の中に入ってくる太い触手に顎が外れてしまいそうだった。そのまま分泌物を塗り込むが如く舌をしゃぶられ、咥内の粘膜を犯される。
「ん、ん……っ、ぅ……」
全身と言う全身を触手に嬲られて、頭の芯がぼうっと熱くなる。性器に絡みついていた触手が動く度に下腹部からはちゅこちゅこと濡れた音が響いた。
じんじんして、熱くて、気持ち悪いのに……。
こいつらの分泌液のせいか、思考がとろけるようになにも考えられなくなってきた。
眼球の奥が熱い。
全身を触手に愛撫されている内に何度か達し、休む暇もなく継続される触手たちの愛撫にそろそろ疲弊しきっていたときだった。部屋の扉が開き、大柄な男が現れる。
「……っ、!」
「なんだぁ? 触手ちゃんと遊んでんのか、ガキは一人遊びが好きだよな」
「っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
仮面を着けていなかったため一瞬誰かわからなかったが、でかいだけではない鍛え上げられた体躯、無造作に伸びた金髪と鋭い目からスティングだとすぐ理解した。恐怖で身が竦み、慌てて反応しようとしてガチャガチャと手足の鎖が擦れる。
「なに震えてんだよ。ほら、おしゃぶりやめろ」
「っぷは……ッ」
口の中から触手をずるりと引き抜かれれば、スティングに掴まれた触手たちは怯んだように一斉に俺から離れ、そのまま足元への水槽へと帰っていく。
空になった口、下半身にぽっかりと空いたような違和感を覚えながらも俺は目の前の男を睨んだ。
「……っ、な、んだよ、これ、お前の仕業かよ……っ!」
「あぁ? なんだぁ? その言い方は。助けて下さりありがとうございますだろうが」
「シュガーマリン」そう、寝台までやってきたスティングは人の体をジロジロと見下ろす。顔から爪先まで、舐めるような視線がただ不快だった。
「助けだだと?」と声をあげれば、スティングは「ああ」と高慢な動作で頷き、そして大の字に開かれた下半身に手を伸ばす。
「……っ、やめろ! 触るなッ!」
「なにビクビクしてんだよ。そういう前ふりか?」
「んなわけ、ねえ……ッ、ん、ぅ……ッ!!」
先程まで触手が挿っており、くっぽりと開いた肛門にスティングの指が触れる。それだけで下半身に力が入った。
きゅっと閉じる肛門を撫で、スティングは鼻で笑った。
「一晩中、お前のケツをこいつらが治すついでに慣らしてくれたからな。ほら、ここ。この前んときよりずっと楽に入んだろ?」
言いながら、ずぷ、と指をねじ込んでくるスティングに息を飲む。仰け反る体を押さえつけられたまま、スティングは柔らかくなった内壁をぐるりと円を描くように撫でられた。
眠ってる間も愛撫されてたということか。火照った内壁は触手たちの粘液で濡れており、スティングの太い指で掻き回される都度辺りに恥ずかしい音が響いた。
「っ、ふ、ざ、けんな……っ、ぁ、ん……ッ! こ、こんな……っ、おれ、は……ッ」
「いいから大人しく媚び売りゃあいいもんを。お前自分の立場わかってんのか? 俺がお前をいらねえって言ったら、速攻始末されんだぞ」
「……ッふ、え」
「その面、やっぱわかってねえのかよ」
考えたくなかった。スティングを見上げれば、やつは薄く笑う。
「雑魚とはいえ、お前は今まで俺らの仕事邪魔してきた敵だ。なあ、シュガーマリン。本当だったらわざわざ治癒なんてさせねえんだぞ?」
「けど、俺は惚れたやつには優しいからな」とスティングは肩を揺らし笑った。軽く唇を重ねられ、抵抗するのも忘れてた。
「ぁ、あ」と声を抑えることもできないまま呆気なく達したまま、俺は回らない頭でスティングを見上げる。
「……っ、じゃあ、殺せよ……」
「あぁ?」
「おっ、ぉ、おれは……っ、お前みたいなやつなんかに好きにされたくない……っ」
ガチガチと奥歯が震える。虚勢だった。それでもスティングを受け入れた先の未来を考えるとぞっとした。
それならばいっそ、と声を絞り出す俺にスティングはぶはっと豪快に笑うのだ。そして、猫のように目を細める。
「悪くねえ、気に入った」
「……え」
「青ざめて、ぶるぶる震えてるくせに死ぬ覚悟はあるらしいな」
そう言うなり、俺の手足をそれぞれ拘束する鎖を掴んだスティングはいとも簡単にそれを引きちぎり、砕く。目の前でただの金属片に還っていく拘束具を見て背筋に冷たい汗が流れた。
「っ、や、……ッ」
「せっかくわざわざ連れて帰って治させたんだ。……そんくらい楽しませてくれねえとな」
「は、なせ……っ、んん……ッ!!」
拘束するものがなくなった体。放り出したままになっていた腕を掴まれ、そのまま引き上げられた。やつの顔が鼻先に迫ったと思った次の瞬間、ぢゅぷ、と噛み付かれるようにキスをされる。
食い込む歯に痛みよりも強い甘い刺激が走った。
「……っ、ふ……ぅ……ッ」
「舌突き出せ、シュガーマリン」
「っ、だ、れ……が……ッ、んむ……ぅ……ッ」
「強情だな……、ほら」
「ん、ふ……ッ」
あんなに不快だったのに、なんでだ。
舌を擦り合わせるようにしゃぶられ、吸い出される。そのまま飴玉かなにかのように先っぽを丹念に吸われ、唾液を流し込まれれば拒むことができなかった。
「っは、……ぁ……っ」
「キスは好きか?」
「っ、んな、わけ……ッ」
「じゃあこれから好きになっていけ。俺は恋人のキスで目が覚めてぇからな」
テメェの趣味嗜好なんざ知るか、と言い返そうとしたときだった。「ああ、そういや忘れてた」とスティングはゴソゴソとコートから何かを取り出した。
「そういやこれ、お前のだろ?」
そう放られるのは見覚えのある鞄だ。俺が毎日学校に持っていっていた鞄、そうだ、その中には変身道具が入ってる。そう、咄嗟に手を伸ばし中を開こうとしたが手応えらしいものはない。
「もしかして、探してんのはこれか?」
そう再度コートに手を突っ込んだスティングは俺の端末を取り出した。白いフォルムの、青いジェムが嵌められたあの玩具みたいな端末がそこにあった。
「……っ、返せよ!」
「これで変身するんだっけなぁ、あの女見てえな格好に」
触るな、と手を伸ばしてスティングから奪おうとするが、やつはひょいと俺を捕まえ、そのまま拘束するのだ。そして、青く輝くジェムに舌を這わせる。瞬間、胸の奥がぞわりとざわついた。
「や、めろ、なにして……っ」
「このジェムの輝きが失われれば、この装置はただの玩具になるんだってな。魔法少女に必要なのは高潔な魂とその輝き……だったか? 笑えるよな、処女崇拝は今どき流行んねえよ」
「返せ……っ!」
これ以上馬鹿にされるのが耐えられなくて、『変身』と強く願った。
試しだった。本来ならば手に持って使っていたが、この距離ならばと願ったとき、スティングの手にしていた装置が眩い光を発する。見慣れた青白い光に全身が包み込まれ、身につけるものすらなかった体に次々と白いフリルが巻き付くように広がっていく。
――使えた!
そう、ふつふつと漲ってくる力に喜ぶのも束の間、目の前の男は驚くわけでもなくただ変身した俺を見て笑っていた。
「……だからどうした?」
その笑顔に、ヒュッと喉が鳴る。
すぐ近くから聞こえてくるぬちぬちと粘着質な音ともに腹の中を何かが這いずりまわっている。内壁、内側の粘膜を舐るように這いずる太った蛞蝓のような感触は次第に鮮明になった。
「ぅ゛、あ……!」
ぐちゅぐちゅと中を蠢く異物感に耐え切れず、起き上がろうとしたが、思うように動けなかった。寝台に拘束された体は首を動かすこともできず、手足広げるようにそれぞれ繋がった鎖で引っ張られ、磔のような格好になっていた。
眼球を動かし、自分の格好を確かめようとし、自分が全裸であることに気付く。
そして足元、置かれた水槽のような装置から幾重もの触手が自分の下半身に伸ばされていることに気付いた。人間の肉棒にもよく似た肉質なその触手は腿を絡み、下半身、主に肛門に目掛けて伸ばされている。恐らく、既に中に入ってるそれも仲間なのだろう。それ以上見たくなくて咄嗟に目を閉じれば、じゅぷ、と音を立てて触手は炎症を癒やすように中をほぐし、舐めていくのだ。
「……っ、ん、ぅ……ッ」
――なんだ、これは。
そこまで考え、自分があの怪人――スティングと名乗る男に手足すら出せず負けたことを思い出した。
辺りを見渡す限りここはどこかの施設のようだ。どうやらあの男に連れてこられたのだろう。
考えうる限りこれは最悪の展開だった。
「っ、は……」
腹をぶち破る勢いで何度も叩き壊されたあとだ、ちろちろと中をしゃぶりつくような触手の動きなどまだ可愛い。
何かを投与されたのか、あのとき感じた痛みも全身の怪我も癒えているようだった。慈しむように中を這いずりまわる複数の触手の動きに次第に呼吸は乱れていく。
体を捩ろうとすればカチャリと手足の鎖が反応した。内側を舐め回される内に、射精に繋がる直接的な刺激とはいかないものの確かに性器に血液が集まっていく。
たらりと尿道口から溢れる先走りすらも、触手たちは群がって美味しそうにしゃぶりつくのだ。
くちゅくちゅと小さな水音を立て、頭を擡げ始める性器の根本から先っぽまで蛇のように絡みつく一本の触手に息を飲む。
「……っ、ふ……」
やばい、これは。
こんなことをしてる場合ではないのに、絶妙な力加減で弱いところをゆるゆると嬲られ、あっという間にぴんと勃った性器に更に他の触手たちも絡みついた。
「ぁ、……っ、ん、……ッ、や、……ッ!」
やめろ、気持ちよくなりたくない。そう頭を振り、逃げようと身を攀じるが鎖がガチャガチャと鳴るだけだった。
いつの間にかに体積を増し、本数も先程よりも増え、明らか水槽に入りきれないほど大きくなった触手の塊はそのままずるりと寝台へと触手を手足のように動かし、登ってくる。そのまま俺の爪先にちゅく、と吸い付い、脹脛から腿、下半身、臍、そして胸――全身へと手足を伸ばし、弱いところを探るように肉茎で弄られた。
「や、だ、きもちわり……ッ、ぅ、ん……ッ」
口元まで伸びてきた一本に、キスを強請るみたいに唇に先端を擦りつけられる。分泌物でぬらぬらと怪しく光る肉色のそれにぎょっとし、顔を逸らそうとするが、もう一本に顎を掴まれ、そのまま唇へとくちゅくちゅと吸い着かれた。
「……っ、ん、む……ッ! ぅ……ッ!!」
絶対に口を開けてやるものかと意気込むのも束の間、平らな胸の先、つんと尖っていた両胸の乳首を同時に嬲られた瞬間全身に甘い快感が広がった。感じたことのない感覚に驚き、思わず声が漏れそうになったとき、その隙きを狙ったかのように触手は俺の咥内へと入り込んできた。
「っ、は、んむ……ッ!」
キスをするみたいに深く舌を探られ、一本、二本とどんどん口の中に入ってくる太い触手に顎が外れてしまいそうだった。そのまま分泌物を塗り込むが如く舌をしゃぶられ、咥内の粘膜を犯される。
「ん、ん……っ、ぅ……」
全身と言う全身を触手に嬲られて、頭の芯がぼうっと熱くなる。性器に絡みついていた触手が動く度に下腹部からはちゅこちゅこと濡れた音が響いた。
じんじんして、熱くて、気持ち悪いのに……。
こいつらの分泌液のせいか、思考がとろけるようになにも考えられなくなってきた。
眼球の奥が熱い。
全身を触手に愛撫されている内に何度か達し、休む暇もなく継続される触手たちの愛撫にそろそろ疲弊しきっていたときだった。部屋の扉が開き、大柄な男が現れる。
「……っ、!」
「なんだぁ? 触手ちゃんと遊んでんのか、ガキは一人遊びが好きだよな」
「っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
仮面を着けていなかったため一瞬誰かわからなかったが、でかいだけではない鍛え上げられた体躯、無造作に伸びた金髪と鋭い目からスティングだとすぐ理解した。恐怖で身が竦み、慌てて反応しようとしてガチャガチャと手足の鎖が擦れる。
「なに震えてんだよ。ほら、おしゃぶりやめろ」
「っぷは……ッ」
口の中から触手をずるりと引き抜かれれば、スティングに掴まれた触手たちは怯んだように一斉に俺から離れ、そのまま足元への水槽へと帰っていく。
空になった口、下半身にぽっかりと空いたような違和感を覚えながらも俺は目の前の男を睨んだ。
「……っ、な、んだよ、これ、お前の仕業かよ……っ!」
「あぁ? なんだぁ? その言い方は。助けて下さりありがとうございますだろうが」
「シュガーマリン」そう、寝台までやってきたスティングは人の体をジロジロと見下ろす。顔から爪先まで、舐めるような視線がただ不快だった。
「助けだだと?」と声をあげれば、スティングは「ああ」と高慢な動作で頷き、そして大の字に開かれた下半身に手を伸ばす。
「……っ、やめろ! 触るなッ!」
「なにビクビクしてんだよ。そういう前ふりか?」
「んなわけ、ねえ……ッ、ん、ぅ……ッ!!」
先程まで触手が挿っており、くっぽりと開いた肛門にスティングの指が触れる。それだけで下半身に力が入った。
きゅっと閉じる肛門を撫で、スティングは鼻で笑った。
「一晩中、お前のケツをこいつらが治すついでに慣らしてくれたからな。ほら、ここ。この前んときよりずっと楽に入んだろ?」
言いながら、ずぷ、と指をねじ込んでくるスティングに息を飲む。仰け反る体を押さえつけられたまま、スティングは柔らかくなった内壁をぐるりと円を描くように撫でられた。
眠ってる間も愛撫されてたということか。火照った内壁は触手たちの粘液で濡れており、スティングの太い指で掻き回される都度辺りに恥ずかしい音が響いた。
「っ、ふ、ざ、けんな……っ、ぁ、ん……ッ! こ、こんな……っ、おれ、は……ッ」
「いいから大人しく媚び売りゃあいいもんを。お前自分の立場わかってんのか? 俺がお前をいらねえって言ったら、速攻始末されんだぞ」
「……ッふ、え」
「その面、やっぱわかってねえのかよ」
考えたくなかった。スティングを見上げれば、やつは薄く笑う。
「雑魚とはいえ、お前は今まで俺らの仕事邪魔してきた敵だ。なあ、シュガーマリン。本当だったらわざわざ治癒なんてさせねえんだぞ?」
「けど、俺は惚れたやつには優しいからな」とスティングは肩を揺らし笑った。軽く唇を重ねられ、抵抗するのも忘れてた。
「ぁ、あ」と声を抑えることもできないまま呆気なく達したまま、俺は回らない頭でスティングを見上げる。
「……っ、じゃあ、殺せよ……」
「あぁ?」
「おっ、ぉ、おれは……っ、お前みたいなやつなんかに好きにされたくない……っ」
ガチガチと奥歯が震える。虚勢だった。それでもスティングを受け入れた先の未来を考えるとぞっとした。
それならばいっそ、と声を絞り出す俺にスティングはぶはっと豪快に笑うのだ。そして、猫のように目を細める。
「悪くねえ、気に入った」
「……え」
「青ざめて、ぶるぶる震えてるくせに死ぬ覚悟はあるらしいな」
そう言うなり、俺の手足をそれぞれ拘束する鎖を掴んだスティングはいとも簡単にそれを引きちぎり、砕く。目の前でただの金属片に還っていく拘束具を見て背筋に冷たい汗が流れた。
「っ、や、……ッ」
「せっかくわざわざ連れて帰って治させたんだ。……そんくらい楽しませてくれねえとな」
「は、なせ……っ、んん……ッ!!」
拘束するものがなくなった体。放り出したままになっていた腕を掴まれ、そのまま引き上げられた。やつの顔が鼻先に迫ったと思った次の瞬間、ぢゅぷ、と噛み付かれるようにキスをされる。
食い込む歯に痛みよりも強い甘い刺激が走った。
「……っ、ふ……ぅ……ッ」
「舌突き出せ、シュガーマリン」
「っ、だ、れ……が……ッ、んむ……ぅ……ッ」
「強情だな……、ほら」
「ん、ふ……ッ」
あんなに不快だったのに、なんでだ。
舌を擦り合わせるようにしゃぶられ、吸い出される。そのまま飴玉かなにかのように先っぽを丹念に吸われ、唾液を流し込まれれば拒むことができなかった。
「っは、……ぁ……っ」
「キスは好きか?」
「っ、んな、わけ……ッ」
「じゃあこれから好きになっていけ。俺は恋人のキスで目が覚めてぇからな」
テメェの趣味嗜好なんざ知るか、と言い返そうとしたときだった。「ああ、そういや忘れてた」とスティングはゴソゴソとコートから何かを取り出した。
「そういやこれ、お前のだろ?」
そう放られるのは見覚えのある鞄だ。俺が毎日学校に持っていっていた鞄、そうだ、その中には変身道具が入ってる。そう、咄嗟に手を伸ばし中を開こうとしたが手応えらしいものはない。
「もしかして、探してんのはこれか?」
そう再度コートに手を突っ込んだスティングは俺の端末を取り出した。白いフォルムの、青いジェムが嵌められたあの玩具みたいな端末がそこにあった。
「……っ、返せよ!」
「これで変身するんだっけなぁ、あの女見てえな格好に」
触るな、と手を伸ばしてスティングから奪おうとするが、やつはひょいと俺を捕まえ、そのまま拘束するのだ。そして、青く輝くジェムに舌を這わせる。瞬間、胸の奥がぞわりとざわついた。
「や、めろ、なにして……っ」
「このジェムの輝きが失われれば、この装置はただの玩具になるんだってな。魔法少女に必要なのは高潔な魂とその輝き……だったか? 笑えるよな、処女崇拝は今どき流行んねえよ」
「返せ……っ!」
これ以上馬鹿にされるのが耐えられなくて、『変身』と強く願った。
試しだった。本来ならば手に持って使っていたが、この距離ならばと願ったとき、スティングの手にしていた装置が眩い光を発する。見慣れた青白い光に全身が包み込まれ、身につけるものすらなかった体に次々と白いフリルが巻き付くように広がっていく。
――使えた!
そう、ふつふつと漲ってくる力に喜ぶのも束の間、目の前の男は驚くわけでもなくただ変身した俺を見て笑っていた。
「……だからどうした?」
その笑顔に、ヒュッと喉が鳴る。
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