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CASE.08『デート・オア・デッド』
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ノクシャスさん、行ってしまった……。
ノクシャスの立ち去ったあとを眺めてると、隣にやってきたグルーサムさんにぽむ、と肩を叩かれる。
「心配するな。ノクシャスは害虫駆除が趣味のような男だからな」
「あ、えと……」
「グルーサムと呼んでくれ」
「グルーサムさん、よろしくお願いします!」
「お、おお……元気な子だな」
見た目は少年なのに話し方や振る舞いもあって自然と背筋が伸びる。なんというか、貫禄があるというか……。
ノクシャスさんとは旧知の仲ということは聞いてたが、不思議な感じだ。
「……君が良平君で、赤い君がトリッド君か。この度はこんなことに巻き込んでしまって申し訳ない。私の管理不足だ」
「い、いえ……! そんな……!」
「それに、シェイムレスのやつ……本来ならばもっと持て成すつもりだったのだが、私が部下に一任して現場を離れたばかりにこのような事態になってしまった。本当に申し訳ないと思っている……レヴェナントのやつになんと言えばいいか」
そう急激にしおしおと縮み込んでいくグルーサムさんになんて返すべきかと戸惑っていると、その口から出てきた名前に思わず反応した。
「あ……レヴェナント、さん……のこと、ご存知なんですか?」
兄、と喉元まで出掛かったところで慌てて急ブレーキをかければ、グルーサムさんは「ああ、なんたって私はevil創設時の社員だったからな」と水を得た魚のように誇らしげになる。
そう言えばノクシャスがそんなことを言っていたような気もする。
「……とは言っても、退社して大分立つがな」
「でも、退社してこんな大人気の遊園地を作るなんてすごいです……! それに、今家族や子供たちにも大人気って口コミやレビューサイトでも愛されてて……」
「ん、……んん。ふむ、まあまあ、そうだな。ありがとう。が、まあ……私だけの力では到底ここまで人気になることはなかっただろうな」
ネガティブなのだろうか、それとも謙遜なのだろうか。褒めたつもりだがなぜだか微妙に歯切れの悪いグルーサムが気になった。
あれだろうか、口コミのこととか一般レビューの評判を運営側の人間にいうのはタブーだったのだろうか。なんて一人で焦ってると、ちょいちょいと袖を引っ張られる。紅音だ。
「どうしたの?」
「レヴェナントって誰?」
「え?」
「知り合い?」
「えー、まあ、そんな感じかな……?」
「ふうん、俺まだ会ったことねえかも。その人」
そうか、直接的な面識はないのか。
レヴェナントが兄だと伝えれば、イビルイーターのファンでもあった紅音はきっと喜んでくれるだろうが……箝口令が敷かれてしまってるから俺からも言えない。許して、紅音君と心の中で謝罪する。胸が痛い。
「まあ、ネズミ駆除は彼奴に任せておくとして……我々でもできることをするか」
「お手伝いできることならなんでもします、言って下さい」
「む、トリッド君も熱い男だな。感謝する。が、あくまでも君らは持て成すべきお客人だ。感謝だけ受け取っておこう」
「でも、このままじっとしてるのも落ち着かなくて……」
「君は若い頃のノクシャスによく似てるな。……それじゃあ、少しの間私の周りを見張っててくれぬか」
「見張り……ですか」
「ああ、私は喧嘩や暴力がてんで駄目なんだ。……なので、そのときは頼む」
そう再び作業へと戻ろうとするグルーサムに、紅音は笑った。
「お安い御用ですよ、グルーサムさん」
「いい返事だ。君は良い請負人になるだろうな」
「お、俺も……トリッド程ではないですけど、あの、肩揉みとかならできますので! お申し付けください!」
「お、おう……じゃあ良平君、君はそこで応援を頼めるか?」
「はい、応援してます……!」
「あ、ありがとう……こんな真面目な子たちが入るなんてevilの将来は安泰だな」
なんて、会話を交わしていたときだった。
破壊された穴から「所長!」と空気を裂くような声が聞こえてくる。
何事かと振り返れば、そこには美しい長髪を乱したシェイムレスさんが立っていた。
ノクシャスの立ち去ったあとを眺めてると、隣にやってきたグルーサムさんにぽむ、と肩を叩かれる。
「心配するな。ノクシャスは害虫駆除が趣味のような男だからな」
「あ、えと……」
「グルーサムと呼んでくれ」
「グルーサムさん、よろしくお願いします!」
「お、おお……元気な子だな」
見た目は少年なのに話し方や振る舞いもあって自然と背筋が伸びる。なんというか、貫禄があるというか……。
ノクシャスさんとは旧知の仲ということは聞いてたが、不思議な感じだ。
「……君が良平君で、赤い君がトリッド君か。この度はこんなことに巻き込んでしまって申し訳ない。私の管理不足だ」
「い、いえ……! そんな……!」
「それに、シェイムレスのやつ……本来ならばもっと持て成すつもりだったのだが、私が部下に一任して現場を離れたばかりにこのような事態になってしまった。本当に申し訳ないと思っている……レヴェナントのやつになんと言えばいいか」
そう急激にしおしおと縮み込んでいくグルーサムさんになんて返すべきかと戸惑っていると、その口から出てきた名前に思わず反応した。
「あ……レヴェナント、さん……のこと、ご存知なんですか?」
兄、と喉元まで出掛かったところで慌てて急ブレーキをかければ、グルーサムさんは「ああ、なんたって私はevil創設時の社員だったからな」と水を得た魚のように誇らしげになる。
そう言えばノクシャスがそんなことを言っていたような気もする。
「……とは言っても、退社して大分立つがな」
「でも、退社してこんな大人気の遊園地を作るなんてすごいです……! それに、今家族や子供たちにも大人気って口コミやレビューサイトでも愛されてて……」
「ん、……んん。ふむ、まあまあ、そうだな。ありがとう。が、まあ……私だけの力では到底ここまで人気になることはなかっただろうな」
ネガティブなのだろうか、それとも謙遜なのだろうか。褒めたつもりだがなぜだか微妙に歯切れの悪いグルーサムが気になった。
あれだろうか、口コミのこととか一般レビューの評判を運営側の人間にいうのはタブーだったのだろうか。なんて一人で焦ってると、ちょいちょいと袖を引っ張られる。紅音だ。
「どうしたの?」
「レヴェナントって誰?」
「え?」
「知り合い?」
「えー、まあ、そんな感じかな……?」
「ふうん、俺まだ会ったことねえかも。その人」
そうか、直接的な面識はないのか。
レヴェナントが兄だと伝えれば、イビルイーターのファンでもあった紅音はきっと喜んでくれるだろうが……箝口令が敷かれてしまってるから俺からも言えない。許して、紅音君と心の中で謝罪する。胸が痛い。
「まあ、ネズミ駆除は彼奴に任せておくとして……我々でもできることをするか」
「お手伝いできることならなんでもします、言って下さい」
「む、トリッド君も熱い男だな。感謝する。が、あくまでも君らは持て成すべきお客人だ。感謝だけ受け取っておこう」
「でも、このままじっとしてるのも落ち着かなくて……」
「君は若い頃のノクシャスによく似てるな。……それじゃあ、少しの間私の周りを見張っててくれぬか」
「見張り……ですか」
「ああ、私は喧嘩や暴力がてんで駄目なんだ。……なので、そのときは頼む」
そう再び作業へと戻ろうとするグルーサムに、紅音は笑った。
「お安い御用ですよ、グルーサムさん」
「いい返事だ。君は良い請負人になるだろうな」
「お、俺も……トリッド程ではないですけど、あの、肩揉みとかならできますので! お申し付けください!」
「お、おう……じゃあ良平君、君はそこで応援を頼めるか?」
「はい、応援してます……!」
「あ、ありがとう……こんな真面目な子たちが入るなんてevilの将来は安泰だな」
なんて、会話を交わしていたときだった。
破壊された穴から「所長!」と空気を裂くような声が聞こえてくる。
何事かと振り返れば、そこには美しい長髪を乱したシェイムレスさんが立っていた。
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