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CASE.08『デート・オア・デッド』
02※
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「っ、な、はとさん……」
「……なに?」
「あ、あの……っ、その……」
するりと伸びてきた手に腰を撫でられ、思わず息を飲む。
ただでさえ久し振りのナハトだということもあってか、既に頭の中がナハトでいっぱいになって何も考えられない。「あの、その」と繰り返していると、「なぁに?」とこちらを見上げてくるナハトに唇を舐められ、こそばゆさと恥ずかしさに体が震えた。
「っ、よ、呼びたくなって……名前……」
「……なんだそれ」
「ご、ごめんなさ……っ、ん、ぅ……っ」
謝りかけて、そのまま唇を重ねられる。先程の触れ合うだけのものではない、柔らかく下唇を噛まれ、そのまま口の中に伸びてくる舌を受け入れる。
「っ、ふー……っ、ぅ……っ、ん……っ」
二人分の吐息が混ざり合う。後ろ髪を撫で付けるように抱き寄せられ、膝枕の体勢も崩れた。
ナハトさん、疲れてるんじゃなかったのだろうか。それとも、“これ”も癒しというのだろうか。
咥内で舌同士、濡れた音を立てて絡み合う。頭撫でられながら上顎まで舌で撫でられると、堪らなく気持ちよくなった。
じわりと粘膜から滲む唾液はナハトは舐め取り、『もっと』とでもいうように更に執拗に舌に絡みついてくる。
「っ、は、んむ……」
酸素が薄れ、頭が熱でぼんやりとし始めたとき、そのままナハトにベッドの上へと押し倒される。「ナハトさん」と名前を呼ぶ暇もなく、覆いかぶさってくるナハトに再び深く口付けをされた。
「っ、ん、ぅむ……っ、な、はとさ、ん……っ、ぁ、あの、俺、お風呂……っ」
「……いい、そのままで」
「ぁ……っ」
シャツ越しに胸を撫でられ、腰が震える。
ナハトさん、とその指先を見つめれば、シャツの下から尖り始めていたそこを柔らかく引っかかれるのだ。
「っ、ん、ぁ……っ、な、ナハトさん……っ」
「アンタの匂いがする」
「あ、汗臭いですか……っ?!」
「違う。……ほんと、色気ないやつ。今そこ気にしなくていいし」
「それに俺は別にアンタの匂い、好きだから」そのまま俺の頭に顔を埋めてくるナハトに驚く。嗅がれているのか、と急激に恥ずかしくなるが、ナハトは俺が逃げるのを許してくれなかった。
生地が擦れ、カリカリと執拗に右胸の乳首だけを引っかかれる。執拗な愛撫に耐えられず、シャツにくっきりと浮かんだ突起を今度は円を描くようにくるくると周囲を撫でられれば下半身がじんわりと熱くなった。
「っ、ん、ぁ……っ、な、ナハトさん……そこばっかり……っ」
「なに、嫌なの」
「さ、最近……大きくなったような気がするんです。前よりも……」
言いかけた矢先、片手器用に俺のネクタイを緩めたナハトは「へえ、どれ」とそのまま胸元のボタンだけを外す。
そのままぐっと乳首だけ晒すかのように開かれ、「ナハトさんっ」と思わず声を上擦らせるがナハトは気にせず腫れ上がった乳首に直接触れてきた。
「っ、ぁ、……っ、ん……っ! だ、駄目です、こんな……っ、ぬ、脱がし方……っ!」
「アンタが乳首を見てくれって言うからじゃん」
「いっ、言ってないです……っ! ぜ、絶対言ってな……っ、ぁ……っ、ん、うぅ……~~ッ!」
「その割には気持ち良さそうだけど?」
乳頭の薄皮を絶妙な力加減で摩擦され、あっという間に高められる快感に逃れることなんてできなかった。
むずむずと股間に熱が集まり、腰を揺らす俺を見てナハトは乳首を指先で弾く。瞬間、胸の先から全身へと流れる甘い快感に耐えきれず、俺は目の前のナハトにしがみついた。
「っ、ぁっ、ん、ゃ、な、ナハトさん……っ」
「みっともなく犬みたいに腰振ってさ、これじゃ本当に盛りついた犬だな」
「はー……っ、ぁ、さ、さきっぽ、し、絞らないでくださ……ぁ……っ!」
「……確かに、前よりも掴みやすくなってる。このままだと犬どころか牛になるんじゃない?」
ナハトに引っ張られたり、潰されてクリクリと転がされてる間にぽってりと赤く腫れ上がった俺の乳首を見てナハトは笑う。
瞬間、頭の中に牧場で飼われる牛のイメージ映像が流れ、血の気が引いた。
「そ、れは……っ、いやです、ぅ……っ! う、牛さんは……っ!」
「もう遅いだろ」
「ぅ、あ、や……ナハトさん、こ、これ以上大きくしないでくださ……っ、ぁ……っ!」
「言っとくけど、触ってくださいって大きくしてんのはアンタだから」
そう、柔らかく引き伸ばして先っぽを遊んでいたナハトの指が離れる。
もしかして本当にやめるのか。
快感の中、急に放り出された乳首の先っぽには先程まで絡みついていたナハトの指の感触が残ってる。
ジンジンと疼く乳首は、吐息を吹き掛けられるだけで感じてしまうほど過敏になってしまっていた。
「っ、な、はとさ……ッ」
「なに、その顔」
「……っ、……」
「大きくしないで、だっけ? ……これで満足?」
ふうっと胸に息を吹きかけられた瞬間、上体が甘く震える。あまりのもどかしさに堪らず自分で胸に触れそうになり、慌ててスーツの裾を掴んだ。
「ぅ……っ、ゃ、な、ナハトさん……」
「なに?」
「……っ、ぃ、意地悪……しないでください……」
「してないけど? 寧ろ、優しいでしょ」
そう、俺の脇腹を撫でながらナハトは顔を寄せてくる。耳にナハトの唇が触れ、そのまま耳朶にナハトの舌がぬるりと這わされた。
これ、まずい。そう思ったときにはもう逃げられなかった。ぴっとりと胸がくっつきそうなほどナハトに抱き寄せられたまま、耳の穴の入口付近へと這わされる舌。
頭の中、鼓膜を通して脳の奥まで犯されていくような感覚に余計現実感が遠退いていく。
ふわふわとした意識の中、蜜のように甘い快感がじんわりと胸の奥へと広がっていくのだ。それは最早毒にも近い。
「っ、ゃ、な、ナハトさん……っ、んぅ」
「腰、動いてる。それともわざと擦り付けてんの? これ」
「っ、ひ、ぅ……っ!」
待ってください、と慌てて腰を引こうとするが、ナハトがそれを許さなかった。そのまま腰へと腕を回したナハトは、そのまま俺の尻を鷲掴みにするように自身へと抱き寄せた。
スラックス越し、形が変わるほど強い力で食い込むナハトの指に、下半身が更に熱くなっていく。自分のもので窮屈になっていく俺の下半身を見て、ナハトは鼻で笑った。
そして、そのまま俺の腿を撫でる。脚の付け根まで昇ってくるナハトの指は、盛り上がったそこに触れる前に動きを止めるのだ。
「……っ、な、ナハトさん……も、い、いじめないで……ください……っ」
「そうじゃないだろ、良平」
「……っ、ふー……っ、ぅ、……っ」
「腰をみっともなく揺らす前に、その口で俺に頼み込むんだよ。……久し振りすぎて媚の売り方もわかんなくなったのか?」
小馬鹿にしたように細められる目、それでもその奥に滲む嗜虐的な色に心臓の鼓動はより一層大きく高鳴り、急激に押し出される血液によって全身がより熱くなった。
恥ずかしい、のに、なんでだ。俺にはもう自分が自分でも分からないが、ナハトに逃げ道を塞がれる度に喜んでいる自分がいた。
「な、はとさん……」
媚の売り方なんて、元々俺が覚えていたのかも分からない。けども、と震える指で自分で胸のボタンを外していく。そのまま大きく胸を曝せば、ナハトの目が俺に向けられた。
「……なに」
「も、もっと……いっぱい触ってください……お、おっきくなっても、いいので……」
そう胸を自分で開けさせながら声を上げれば、そのままナハトはぴたりと動きを止めるのだ。
そして、間。
あまりにもその間にいたたまれなくなり、泣きそうになりながら「……ナハトさん……?」と尋ねようとした矢先だ。
いきなりナハトに乳首を摘まれ、「ひゃうっ」と声が漏れる。
「ぁ、あ……っナハトさん……っ!」
「頭悪そう。てか、馬鹿っぽすぎ」
「う、うぅ……ご、ごめんなさ……っ」
「……七十五点」
思ったよりも高いな、と驚くよりも先に、太腿の辺りに当たるやけに硬い感触に息を飲む。……点数の割には、さっきよりも大きくなってるのは気のせいではないはずだ。
下腹部、開かされる股の間に擦りつけられるその感触にぶるりと腰が反応する。
「な、ナハトさ……っ、ん、ぅ……っ!」
開かれたシャツ、その胸元に顔を埋めてくるナハトに驚くのも束の間、ナハトの赤い舌先が乳首を掠めただけで下半身がびくりと跳ねる。
そのまま人の乳首を咥えたまま、ナハトに舌先で乳首を穿られればそれだけで脳汁が溢れそうだった。
目のやり場などなかった。犬のように舌を這わせ、時折歯で柔らかく乳首を嬲られればそれだけであっという間に下半身へと熱は溜まる。
「……っ、は、ぁ、……っ、んん……っ!」
「腰、揺れすぎ。……それ、わざと押し付けてるわけ?」
「んっ、ひ、」
「……堪え性のないやつ」
「っご、ごめんなひゃ……っ、ひっ、ぅ゛……っ!」
唾液でたっぷりと濡らされた乳首をぬるぬると舌先で転がされ、逃げようとしていた下半身をナハトによって封じられる。俺の股の間に膝を潜り込ませたナハトは、そのまま柔らかく下半身を押し上げてくるのだ。
「……っ、ぁ、……っ、な、はとさ……っ」
――もっと、直接触ってほしい。
そんな思考が頭を過ぎった時、ナハトの歯に乳輪ごと柔らかく噛まれる。
「っ、ぅ、ふ……――ッ!」
「……っ、本当、分かりやすすぎ」
「待っ、ぁ、な、はとさ……んん……ッ!」
音を立て、限界まで硬く凝った乳首を吸い上げられる。弓なりに反る体を捕らえたまま、ナハトは更に追い込むようにもう片方の乳首を摘み、柔らかく扱いてくる。
「っ、ひ、ゃ、やばいです……っ、ぅ゛……っ! そ、それ……ッ! ぁ、な、はとさ……っ!」
「っ、やばいのはアンタの体。……感じすぎ。……このままイケよ」
「ぁ、くひ……っ!」
そう、乳首を愛撫する指に少し力を加えられたときだった。喉元まで這い上がってきた快感が頭の中で真っ白に爆ぜる。
大きく硬直し、ピクピクと痙攣する全身。下着の中にぬるぬると先走りが絡みつくのを感じながら俺はそのままナハトにしがみついた。
「っ、はー……っ、ぁ……っ」
ずるりとずれ落ちそうになる体を支えられたまま、ナハトは俺の胸を撫でた。乳輪の縁を指先が掠めただけで吐息が漏れ、ぞくぞくと背筋が震える。
ナハトさん、とその体にしなだれかかったときだ。艷やかな黒髪の下、ナハトが冷たい目でこちらを見ていたことに気付いた。
「……アンタ、また感度上がってない?」
「か、んどって……ひうっ」
「こことか、……それと、ここも」
『ここ』と下半身へと伸びてきたナハトの指に腿を撫でられただけで、既に硬くなっていた性器の先っぽがじんじんと熱くなってくる。
おかしい、ただ触れられてるだけなのに。性器に直接触られているわけでもないのに。
「っ、はー……っ、ぁ……っ、そ、そんなこと、ないです……っ!」
「本当に?」
じとりとこちらを覗き込んでくるナハト。こくこくと何度も頷き返せば、ふうん、とナハトは更に目を細める。
なんだ、この反応は。
白いナハトの目に冷やせが滲む。「あの、ナハトさん?」と名前を呼ぼうとした時だ。
「俺がいない間、まさか妙な真似されてないだろうな」
ナハトの口から飛び出した言葉に、思わずギクリと硬直した。
「みょ、妙な真似とは……っ、んぅッ」
「ここ、開発されたり」
言いながらも先程よりも強い力で乳首を摘み上げ、コリコリと先端を揉まれる。挟まれては逃れられない快感にゾクゾクと背筋が震えた。
「さ、されて、ませ……っ、んん……っ!」
「じゃあ、俺以外のやつに触らせた?」
「…………………………」
「…………………………」
しまった。突然図星を刺されてしまい、返事をすることを忘れてしまった。
更に先程よりも冷たい目をしたナハトに縮み込むのも束の間、そのまま下着ごと剥ぎ取られそうになって慌てて俺はナハトの腕を掴む。
このままでは危険な気がする。主に俺の尻が。
「……っ、ぁ、っ、ま、待ってくださいナハトさ……っ! これには、っふ、深い事情が……ッ!」
そう必死にナハトを宥めようと試みるも束の間、「うるさい、関係ない」と一蹴したナハトにそのままぺろんと下着を剥かれる。
丸出しになったままの尻にナハトの手が伸びる。鷲掴みする勢いで尻たぶを揉まれ、「ひん」っと声が漏れた。
「な、ナハトさんっ、落ち着いてください……っ!」
「どっからどう見ても俺の方が落ち着いてんだけど、わからない?」
「ぁ、や、でも……っ!」
怒ってるじゃないですか、と言いかけたとき、ナハトの指が尻の谷間に這わされる。そのまま横にぐに、と広げられる肛門に息を飲んだ。
「っ、あ……っ」
「『あっ』じゃないんだけど? ……はー、やっぱりアンタから目を離すべきじゃなかった。下半身ガバガバの尻軽とは知ってたけど、ここまでだなんて」
「う、ひ、酷いですナハトさん……っ! お、俺、まだなにも言ってません……っ!」
「読心術なんてなくても、こっちはお前の考えてることは分かる」
嫌ってくらいにな、とナハトの指が肛門に入ってきた。長く骨張った指は括約筋を無視してずぶずぶと奥までねじ込まれてくる。
「っ、は、な、ナハトさ……っ、ぁ……っ」
腹の中、腹の中で大きく曲げられた指は俺の意思など知ったこっちゃと言わんばかりに前立腺を柔らかく押し潰してくるのだ。
「っふ、ぅ゛……ッ!」
「久し振りの割には、なんでこんなに中柔らかくなってんの?」
「っ、そ、んな゛、こと……っ、ぉ゛……っ! ぅ、ひ……っ!」
「あるだろ。ああ、俺じゃないのは久し振りじゃないから?」
「っひ、な、はとさ……っ、ぉ、怒らないでくださ……っ、ぁ゛う゛……っ!」
「怒ってないし」
「う、そぉ゛……ッ! ひ、ッ、ぐ、ん゛ぅ~~……っ!」
ナハトが怖くなり、咄嗟にナハトから逃げようとベッドの上、這いずった瞬間。伸びてきた腕によってそのまま再びナハトの膝の上へと引き戻される。
そして、更に追加された指が付け根までぐっぽりと挿入されたことに驚くのも束の間、畳み掛けるように前立腺を責め立てられ、全身がぴんと硬直した。
「っ、はー……っ! ふ、ぅ゛……っ、それ、だ、め゛……っ! そこ、ばっか……っ、……ッ!」
「お前さあ、言ってることとやってること違い過ぎだよ。こんなに人の指締め付けておいて何言ってんの?」
「っ、待っ、ぁ゛……っ!! っ、ふ、ぅ゛……――ッ!」
じんじんと腫れ上がる凝りを更に指の腹で転がされる。背筋を逸し、明滅する頭の中。ずらされた下着から頭を出していた性器からとろりと白濁混じりの先走りが落ちていく。
そのまま動けなくなる俺を見て、そのままぬぽ、と指を引き抜いた。そして、くたりと動けなくなる俺をうつ伏せにベッドに転がしたナハト。
「……っ、な、はとさん」
もう終わったのだろうか、と熱で浮かされた頭でぼんやりと考えたときだった。
ベッドが軋む。背後から覆いかぶさってくるナハトの気配を感じて緊張するのも束の間、無防備になっていた臀部に再びナハトの手が伸びた。
「っ、ふ……ぅ……っ」
今度はもう抵抗する気力もなかった。投げ出された下半身、ナハトの手によって柔らかくされたそこを揉まれ、更に肛門を広げられるのだ。
剥き出しになった肛門の内壁に外気が流れ込んできて、その感覚にすら反応してしまいそうになっていたときだ。そのまま谷間にべちんと宛がわれる性器に息を飲む。触れただけで溶けてしまいそうなほどの熱と質量、それには身に覚えがあった。
「なんて顔してるんだ、アンタ」
「……っ、な、はとさ……」
「ガッカリしてんの、分かりやすすぎ。……本当、ド変態だな」
残念ながら、今の俺にはそのナハトの罵倒を否定することはできなかった。
ドクドクと下半身から伝わってくるナハトの鼓動。それに感応するかのように勃起し、先程よりも先走りを滴らせながらもベッドシーツを汚す自分を恥じる余裕も今の俺にはなかった。
「ど、どへ……へんたいじゃ、ないです……っ!」
「それ、どの口で言ってんの」
「っ、ぅ、な、はとさんの方が、えっ……っ、え……ッ、…………ちだと、おも、います……」
声が震える。ぐに、と広げられた肛門に押し付けられる亀頭が中へとゆっくりその頭を埋め込んでくるのが分かった。
声が漏れそうになるのを奥歯を噛み締めて堪えれば、背後でナハトが笑うのだ。
「なんだ、今更気付いたんだ?」
「っ、ぅ、んんぅ……っ!」
「お前のせいだよ、良平。お前のせいでこっちまでおかしくなってくんの。……なあ、分かってんの?」
「な、はとしゃ、待っ、ぁ゛……ッ!」
みちみちと内壁を摩擦しながら入ってくる性器に、背筋が甘く震えた。痒いところに手が届くようなそんな快感に耐えきれず腰が震える。ナハトさん、と背後のナハトを振り返ろうとしたときだ。
腰を掴まれ、そのまま腰を打ち付けられ、「ひうっ!」と大きく跳ね上がった。
「っ、ふー……っ、ぅ、熱い……っ、ナハトさ、……っ、んんっ!」
「本当……っ、最悪。俺をこんな風に変えたって自覚しろよ、反省しろ、責任を取れよ」
良平、と耳を噛まれ、そのまま耳朶から耳の穴まで擽るように舐められ、声にならない声が漏れる。
震える体を押さえつけられたまま、更に腰を進ませてくるナハト。「はっはっ」と犬のように呼吸を繰り返すことが精一杯の俺は、ナハトの性器を受け入れるため、ナハトの動きやすいように自分の腿を掴んて開いた。
その仕草がナハトの琴線に触れたようだ、
「――っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
瞬間、臍の裏側を削り取るように性器で擦られる。前立腺が押し潰される感覚に堪らず震え、待ってください、とナハトの腕を掴んだが、ナハトは構わず腰を動かすのだ。
性器を飲み込んだ下腹部を手のひらで押さえつけられながら、そのまま腰を打ち付けられる。その度により鮮明になる性器の凹凸に耐えきれず、俺はナハトの腕を掴んだ。
「っひ、ぅ゛ぎ、ひ――ッ、ぁ゛、ッ、あ、ナハトしゃ……っ、ぉ゛、そこっ、ゃ゛……っ」
「や、じゃないだろ。良いって言え。今更自分だけ処女ぶってんなよ」
「くっ、ひぎゅ……ッ!」
圧迫感すらも心地良い。酸素が薄れていく頭の中、そして結合部からナハトの声が響く。痙攣する下半身。それすらも無視し、ナハトは更に中を探るように腰を動かすのだ。
「金玉に溜まってんの、全部ここに出すから。全部受け止めろよ、お前のために溜めてたの」
「ひっ、ぅ゛っ、そ、そんな恥ずかしいこと、言わないで……っ!」
「言う。じゃないとお前分かんないだろ、どんだけこっちが我慢してたか」
「っ、は、っ、ぅひ……っ!」
「……っ、それなのに、アンタは」
苛ついてるのか、それとも興奮してくれてるのか。恐らくその両者なのかもしれない。
腿を掴まれたまま、奥から入り口まで緩急つけて中を行き来する性器に前立腺ごと押し潰される。
腹が熱くて、苦しいのに。欠けていたピースがハマったような充足感が俺の心を満たしていくのだ。
「ご、めんなひゃ……っ! ぁ゛……ッ! ひ、ぎ……っ!」
「……っ、許さない」
「っ、んんぅ……っ!」
上の空、ただナハトという存在を享受することで精一杯だった俺の顎を掴んだナハトは、そのまま唇を重ねてくるのだ。
とろけるほどの熱に堪らず口を開き、自らナハトの舌に舌を絡める。
そこで自分がずっとナハトと“こういうこと”をすることを期待していたのだと理解した。
「……っ、ふ……っ、ぅ゛……ッ! ん、む……っ」
「っ、は……アンタ、本当にこれ……好きだよね」
「っす、きれす、……ナハトさ……っ、きす、もっと……っ」
「……っ、はあ、……本当救いようなさすぎ」
そうナハトは冷ややかに吐き捨てるが、言葉とは裏腹に腹の中で大きくなるのがわかる。
吐息混じり、再び絡め取られる舌を迎え入れながら俺はナハトにしがみついた。
喘ぎ声も吐息も全部混ざり合う。シーツの上、摩擦に耐えきれず吹き出す精液が滲むのを感じながら俺は呆気なく達する。
「――っ、ふ、ぅ……!」
びく、びく、と断続的に痙攣する体。拍子に、奥にまでねじ込まれていたナハトのものが俺の中で果てるのを感じた。満たされていく、心も体も。
腹の中吐き出される熱と余韻に浸る暇もなく、そのままゆるゆると腰を動かし出すナハト。まだやるのか、という声は最早出なかった。
ここ数日のトレーニングのお陰で体力は少しはついたのではないかと自負していたが、もしかしたら思い上がりだったのかもしれない。
「っ、な、はと、さ……っ、ま、まって、まだ、中……っ」
「……無理、全然足んない……」
「ナハト、さ……っ」
「あんたも、……他の男とヤんなくてもいいように搾り取っとくから」
「っ、ひ、ぅ゛……っ!」
出したばっかなのにすぐに硬くなるナハトの性器に、濡れそぼった中を先程よりも激しく突かれる。無理だと思ったのに、それだけで俺の体も反応してしまった。
既にガチガチに勃起した性器を見て、ナハトは「覚悟して」と意地の悪い顔をするのだ。
恐ろしいはずなのに、そんなナハトに胸の奥が苦しくなる。
――ナハトさんが俺を求めてくれるだけでも嬉しい、なんて。
そんなことを漏らしてみろ、ナハトはきっと嫌がるだろう。また尻軽だって言われるかもしれない。
だから、これは墓まで持っていかなければ。
そんなことを思いながら、「はい」と俺は震える手でナハトにしがみついた。
それが、数時間前のことだ。
――久しぶりに二人きりになれたとは言えど、やはり限度と節度は必要なのかもしれない。
散々ナハトに犯された尻の感覚は最早ない、いやあるにはある。けどなんかずっと尻に異物が刺さってるような感覚が抜け落ちないまま、俺はベッドの上から動けなくなっていた。
別に縛られたりしてるわけではない、精力諸々を吸われた結果だ。隣にはナハトが眠ってる。
無防備に寝顔を晒すナハトに俺は気が気でなかった。
普段は恥ずかしくてまじまじとナハトの顔を見ることはできなかったが、今なら見たい放題だ。
やっぱりナハトさん、睫毛長いな……。最初はなんでせっかくこんなに綺麗な顔をしてるのに仮面を付けてるのだろうかと不思議だったが、今ではこの寝顔を俺しか見たことない……かもしれないと思うとつい頬が緩む。
「……ふふ」
「何笑ってんの、キモ」
「ひっ!」
いきなりパチリと目を開けたナハトに、思わずベッドから転げ落ちそうになる俺。心臓に悪すぎる。
「お、起きてたんですか……っ?!」
「寝てはいた。けど完全に眠ることはできないから」
「そ、そうなんですね……」
それにしたって「キモ」は言い過ぎではないのかと今になって思ったが、そのままもそりと起き上がるナハトにそんな思考もどっか行った。
「……けどまあ、息抜きには丁度良かった。最近は運動できてなかったから」
「運動……息抜き……」
「なに? なんか不満でもあんの?」
「あ、ありません……っ!」
けど、せっかくのナハトの休みのところ、余計に疲れさせてしまったのではないかって考えたら少し罪悪感がある。
ちら、とナハトの方を見れば、徐に目があってしまい慌てて俯いた。さっきから頬が熱い。いや、寧ろ全身が。
「……ナハトさんの疲れを癒やしたかったんですが、その……」
「……別に、今からでもいいけど。その癒やすってやつ」
「え、ええ?! ……今はもう無理です」
「なんで」
「……お、俺が……変な気持ちになってしまいそうなので……」
「………………………………」
「だ、黙らないでください……っ!」
「……別に、俺は構わないけど?」
「え」
「というか、今更すぎない? 変じゃない時のアンタ、無いから」
ぐさぐさとナハトの言葉が刺さる。
ナハトには、隣に立っても恥ずかしくないような人間になりたいのに。
ナハトにむにむにと頬を摘まれ、そのまま柔らかく頬に噛みつかれれば「いひゃいれふ」と声が震えた。
「……ひ、酷いです、ナハトさん……」
「酷くない。……てか、俺は別にそのままでもいいって言ってんの」
……この人は本当に恐ろしい。
今度は噛まれた頬を撫でられる。よしよしと触れられるだけで、熱はじんわりと顔全体へと広がった。
「……それに、まあ……癒やされなくも、ない」
「え?」
「……………………」
「な、なんれ摘むんれふか」
「なんかムカついたから」
「そんなぁ……」
聞き間違いかと思ったが、ナハトは否定も撤回もしない。
……ナハトさんを癒せたのか、俺。
ナハトはリップサービスするような人間ではないからこそ余計、じわじわと嬉しくなる。シーツを頭まで被った俺は、ナハトにバレないようにへへ、と頬を緩めた。
「……なに?」
「あ、あの……っ、その……」
するりと伸びてきた手に腰を撫でられ、思わず息を飲む。
ただでさえ久し振りのナハトだということもあってか、既に頭の中がナハトでいっぱいになって何も考えられない。「あの、その」と繰り返していると、「なぁに?」とこちらを見上げてくるナハトに唇を舐められ、こそばゆさと恥ずかしさに体が震えた。
「っ、よ、呼びたくなって……名前……」
「……なんだそれ」
「ご、ごめんなさ……っ、ん、ぅ……っ」
謝りかけて、そのまま唇を重ねられる。先程の触れ合うだけのものではない、柔らかく下唇を噛まれ、そのまま口の中に伸びてくる舌を受け入れる。
「っ、ふー……っ、ぅ……っ、ん……っ」
二人分の吐息が混ざり合う。後ろ髪を撫で付けるように抱き寄せられ、膝枕の体勢も崩れた。
ナハトさん、疲れてるんじゃなかったのだろうか。それとも、“これ”も癒しというのだろうか。
咥内で舌同士、濡れた音を立てて絡み合う。頭撫でられながら上顎まで舌で撫でられると、堪らなく気持ちよくなった。
じわりと粘膜から滲む唾液はナハトは舐め取り、『もっと』とでもいうように更に執拗に舌に絡みついてくる。
「っ、は、んむ……」
酸素が薄れ、頭が熱でぼんやりとし始めたとき、そのままナハトにベッドの上へと押し倒される。「ナハトさん」と名前を呼ぶ暇もなく、覆いかぶさってくるナハトに再び深く口付けをされた。
「っ、ん、ぅむ……っ、な、はとさ、ん……っ、ぁ、あの、俺、お風呂……っ」
「……いい、そのままで」
「ぁ……っ」
シャツ越しに胸を撫でられ、腰が震える。
ナハトさん、とその指先を見つめれば、シャツの下から尖り始めていたそこを柔らかく引っかかれるのだ。
「っ、ん、ぁ……っ、な、ナハトさん……っ」
「アンタの匂いがする」
「あ、汗臭いですか……っ?!」
「違う。……ほんと、色気ないやつ。今そこ気にしなくていいし」
「それに俺は別にアンタの匂い、好きだから」そのまま俺の頭に顔を埋めてくるナハトに驚く。嗅がれているのか、と急激に恥ずかしくなるが、ナハトは俺が逃げるのを許してくれなかった。
生地が擦れ、カリカリと執拗に右胸の乳首だけを引っかかれる。執拗な愛撫に耐えられず、シャツにくっきりと浮かんだ突起を今度は円を描くようにくるくると周囲を撫でられれば下半身がじんわりと熱くなった。
「っ、ん、ぁ……っ、な、ナハトさん……そこばっかり……っ」
「なに、嫌なの」
「さ、最近……大きくなったような気がするんです。前よりも……」
言いかけた矢先、片手器用に俺のネクタイを緩めたナハトは「へえ、どれ」とそのまま胸元のボタンだけを外す。
そのままぐっと乳首だけ晒すかのように開かれ、「ナハトさんっ」と思わず声を上擦らせるがナハトは気にせず腫れ上がった乳首に直接触れてきた。
「っ、ぁ、……っ、ん……っ! だ、駄目です、こんな……っ、ぬ、脱がし方……っ!」
「アンタが乳首を見てくれって言うからじゃん」
「いっ、言ってないです……っ! ぜ、絶対言ってな……っ、ぁ……っ、ん、うぅ……~~ッ!」
「その割には気持ち良さそうだけど?」
乳頭の薄皮を絶妙な力加減で摩擦され、あっという間に高められる快感に逃れることなんてできなかった。
むずむずと股間に熱が集まり、腰を揺らす俺を見てナハトは乳首を指先で弾く。瞬間、胸の先から全身へと流れる甘い快感に耐えきれず、俺は目の前のナハトにしがみついた。
「っ、ぁっ、ん、ゃ、な、ナハトさん……っ」
「みっともなく犬みたいに腰振ってさ、これじゃ本当に盛りついた犬だな」
「はー……っ、ぁ、さ、さきっぽ、し、絞らないでくださ……ぁ……っ!」
「……確かに、前よりも掴みやすくなってる。このままだと犬どころか牛になるんじゃない?」
ナハトに引っ張られたり、潰されてクリクリと転がされてる間にぽってりと赤く腫れ上がった俺の乳首を見てナハトは笑う。
瞬間、頭の中に牧場で飼われる牛のイメージ映像が流れ、血の気が引いた。
「そ、れは……っ、いやです、ぅ……っ! う、牛さんは……っ!」
「もう遅いだろ」
「ぅ、あ、や……ナハトさん、こ、これ以上大きくしないでくださ……っ、ぁ……っ!」
「言っとくけど、触ってくださいって大きくしてんのはアンタだから」
そう、柔らかく引き伸ばして先っぽを遊んでいたナハトの指が離れる。
もしかして本当にやめるのか。
快感の中、急に放り出された乳首の先っぽには先程まで絡みついていたナハトの指の感触が残ってる。
ジンジンと疼く乳首は、吐息を吹き掛けられるだけで感じてしまうほど過敏になってしまっていた。
「っ、な、はとさ……ッ」
「なに、その顔」
「……っ、……」
「大きくしないで、だっけ? ……これで満足?」
ふうっと胸に息を吹きかけられた瞬間、上体が甘く震える。あまりのもどかしさに堪らず自分で胸に触れそうになり、慌ててスーツの裾を掴んだ。
「ぅ……っ、ゃ、な、ナハトさん……」
「なに?」
「……っ、ぃ、意地悪……しないでください……」
「してないけど? 寧ろ、優しいでしょ」
そう、俺の脇腹を撫でながらナハトは顔を寄せてくる。耳にナハトの唇が触れ、そのまま耳朶にナハトの舌がぬるりと這わされた。
これ、まずい。そう思ったときにはもう逃げられなかった。ぴっとりと胸がくっつきそうなほどナハトに抱き寄せられたまま、耳の穴の入口付近へと這わされる舌。
頭の中、鼓膜を通して脳の奥まで犯されていくような感覚に余計現実感が遠退いていく。
ふわふわとした意識の中、蜜のように甘い快感がじんわりと胸の奥へと広がっていくのだ。それは最早毒にも近い。
「っ、ゃ、な、ナハトさん……っ、んぅ」
「腰、動いてる。それともわざと擦り付けてんの? これ」
「っ、ひ、ぅ……っ!」
待ってください、と慌てて腰を引こうとするが、ナハトがそれを許さなかった。そのまま腰へと腕を回したナハトは、そのまま俺の尻を鷲掴みにするように自身へと抱き寄せた。
スラックス越し、形が変わるほど強い力で食い込むナハトの指に、下半身が更に熱くなっていく。自分のもので窮屈になっていく俺の下半身を見て、ナハトは鼻で笑った。
そして、そのまま俺の腿を撫でる。脚の付け根まで昇ってくるナハトの指は、盛り上がったそこに触れる前に動きを止めるのだ。
「……っ、な、ナハトさん……も、い、いじめないで……ください……っ」
「そうじゃないだろ、良平」
「……っ、ふー……っ、ぅ、……っ」
「腰をみっともなく揺らす前に、その口で俺に頼み込むんだよ。……久し振りすぎて媚の売り方もわかんなくなったのか?」
小馬鹿にしたように細められる目、それでもその奥に滲む嗜虐的な色に心臓の鼓動はより一層大きく高鳴り、急激に押し出される血液によって全身がより熱くなった。
恥ずかしい、のに、なんでだ。俺にはもう自分が自分でも分からないが、ナハトに逃げ道を塞がれる度に喜んでいる自分がいた。
「な、はとさん……」
媚の売り方なんて、元々俺が覚えていたのかも分からない。けども、と震える指で自分で胸のボタンを外していく。そのまま大きく胸を曝せば、ナハトの目が俺に向けられた。
「……なに」
「も、もっと……いっぱい触ってください……お、おっきくなっても、いいので……」
そう胸を自分で開けさせながら声を上げれば、そのままナハトはぴたりと動きを止めるのだ。
そして、間。
あまりにもその間にいたたまれなくなり、泣きそうになりながら「……ナハトさん……?」と尋ねようとした矢先だ。
いきなりナハトに乳首を摘まれ、「ひゃうっ」と声が漏れる。
「ぁ、あ……っナハトさん……っ!」
「頭悪そう。てか、馬鹿っぽすぎ」
「う、うぅ……ご、ごめんなさ……っ」
「……七十五点」
思ったよりも高いな、と驚くよりも先に、太腿の辺りに当たるやけに硬い感触に息を飲む。……点数の割には、さっきよりも大きくなってるのは気のせいではないはずだ。
下腹部、開かされる股の間に擦りつけられるその感触にぶるりと腰が反応する。
「な、ナハトさ……っ、ん、ぅ……っ!」
開かれたシャツ、その胸元に顔を埋めてくるナハトに驚くのも束の間、ナハトの赤い舌先が乳首を掠めただけで下半身がびくりと跳ねる。
そのまま人の乳首を咥えたまま、ナハトに舌先で乳首を穿られればそれだけで脳汁が溢れそうだった。
目のやり場などなかった。犬のように舌を這わせ、時折歯で柔らかく乳首を嬲られればそれだけであっという間に下半身へと熱は溜まる。
「……っ、は、ぁ、……っ、んん……っ!」
「腰、揺れすぎ。……それ、わざと押し付けてるわけ?」
「んっ、ひ、」
「……堪え性のないやつ」
「っご、ごめんなひゃ……っ、ひっ、ぅ゛……っ!」
唾液でたっぷりと濡らされた乳首をぬるぬると舌先で転がされ、逃げようとしていた下半身をナハトによって封じられる。俺の股の間に膝を潜り込ませたナハトは、そのまま柔らかく下半身を押し上げてくるのだ。
「……っ、ぁ、……っ、な、はとさ……っ」
――もっと、直接触ってほしい。
そんな思考が頭を過ぎった時、ナハトの歯に乳輪ごと柔らかく噛まれる。
「っ、ぅ、ふ……――ッ!」
「……っ、本当、分かりやすすぎ」
「待っ、ぁ、な、はとさ……んん……ッ!」
音を立て、限界まで硬く凝った乳首を吸い上げられる。弓なりに反る体を捕らえたまま、ナハトは更に追い込むようにもう片方の乳首を摘み、柔らかく扱いてくる。
「っ、ひ、ゃ、やばいです……っ、ぅ゛……っ! そ、それ……ッ! ぁ、な、はとさ……っ!」
「っ、やばいのはアンタの体。……感じすぎ。……このままイケよ」
「ぁ、くひ……っ!」
そう、乳首を愛撫する指に少し力を加えられたときだった。喉元まで這い上がってきた快感が頭の中で真っ白に爆ぜる。
大きく硬直し、ピクピクと痙攣する全身。下着の中にぬるぬると先走りが絡みつくのを感じながら俺はそのままナハトにしがみついた。
「っ、はー……っ、ぁ……っ」
ずるりとずれ落ちそうになる体を支えられたまま、ナハトは俺の胸を撫でた。乳輪の縁を指先が掠めただけで吐息が漏れ、ぞくぞくと背筋が震える。
ナハトさん、とその体にしなだれかかったときだ。艷やかな黒髪の下、ナハトが冷たい目でこちらを見ていたことに気付いた。
「……アンタ、また感度上がってない?」
「か、んどって……ひうっ」
「こことか、……それと、ここも」
『ここ』と下半身へと伸びてきたナハトの指に腿を撫でられただけで、既に硬くなっていた性器の先っぽがじんじんと熱くなってくる。
おかしい、ただ触れられてるだけなのに。性器に直接触られているわけでもないのに。
「っ、はー……っ、ぁ……っ、そ、そんなこと、ないです……っ!」
「本当に?」
じとりとこちらを覗き込んでくるナハト。こくこくと何度も頷き返せば、ふうん、とナハトは更に目を細める。
なんだ、この反応は。
白いナハトの目に冷やせが滲む。「あの、ナハトさん?」と名前を呼ぼうとした時だ。
「俺がいない間、まさか妙な真似されてないだろうな」
ナハトの口から飛び出した言葉に、思わずギクリと硬直した。
「みょ、妙な真似とは……っ、んぅッ」
「ここ、開発されたり」
言いながらも先程よりも強い力で乳首を摘み上げ、コリコリと先端を揉まれる。挟まれては逃れられない快感にゾクゾクと背筋が震えた。
「さ、されて、ませ……っ、んん……っ!」
「じゃあ、俺以外のやつに触らせた?」
「…………………………」
「…………………………」
しまった。突然図星を刺されてしまい、返事をすることを忘れてしまった。
更に先程よりも冷たい目をしたナハトに縮み込むのも束の間、そのまま下着ごと剥ぎ取られそうになって慌てて俺はナハトの腕を掴む。
このままでは危険な気がする。主に俺の尻が。
「……っ、ぁ、っ、ま、待ってくださいナハトさ……っ! これには、っふ、深い事情が……ッ!」
そう必死にナハトを宥めようと試みるも束の間、「うるさい、関係ない」と一蹴したナハトにそのままぺろんと下着を剥かれる。
丸出しになったままの尻にナハトの手が伸びる。鷲掴みする勢いで尻たぶを揉まれ、「ひん」っと声が漏れた。
「な、ナハトさんっ、落ち着いてください……っ!」
「どっからどう見ても俺の方が落ち着いてんだけど、わからない?」
「ぁ、や、でも……っ!」
怒ってるじゃないですか、と言いかけたとき、ナハトの指が尻の谷間に這わされる。そのまま横にぐに、と広げられる肛門に息を飲んだ。
「っ、あ……っ」
「『あっ』じゃないんだけど? ……はー、やっぱりアンタから目を離すべきじゃなかった。下半身ガバガバの尻軽とは知ってたけど、ここまでだなんて」
「う、ひ、酷いですナハトさん……っ! お、俺、まだなにも言ってません……っ!」
「読心術なんてなくても、こっちはお前の考えてることは分かる」
嫌ってくらいにな、とナハトの指が肛門に入ってきた。長く骨張った指は括約筋を無視してずぶずぶと奥までねじ込まれてくる。
「っ、は、な、ナハトさ……っ、ぁ……っ」
腹の中、腹の中で大きく曲げられた指は俺の意思など知ったこっちゃと言わんばかりに前立腺を柔らかく押し潰してくるのだ。
「っふ、ぅ゛……ッ!」
「久し振りの割には、なんでこんなに中柔らかくなってんの?」
「っ、そ、んな゛、こと……っ、ぉ゛……っ! ぅ、ひ……っ!」
「あるだろ。ああ、俺じゃないのは久し振りじゃないから?」
「っひ、な、はとさ……っ、ぉ、怒らないでくださ……っ、ぁ゛う゛……っ!」
「怒ってないし」
「う、そぉ゛……ッ! ひ、ッ、ぐ、ん゛ぅ~~……っ!」
ナハトが怖くなり、咄嗟にナハトから逃げようとベッドの上、這いずった瞬間。伸びてきた腕によってそのまま再びナハトの膝の上へと引き戻される。
そして、更に追加された指が付け根までぐっぽりと挿入されたことに驚くのも束の間、畳み掛けるように前立腺を責め立てられ、全身がぴんと硬直した。
「っ、はー……っ! ふ、ぅ゛……っ、それ、だ、め゛……っ! そこ、ばっか……っ、……ッ!」
「お前さあ、言ってることとやってること違い過ぎだよ。こんなに人の指締め付けておいて何言ってんの?」
「っ、待っ、ぁ゛……っ!! っ、ふ、ぅ゛……――ッ!」
じんじんと腫れ上がる凝りを更に指の腹で転がされる。背筋を逸し、明滅する頭の中。ずらされた下着から頭を出していた性器からとろりと白濁混じりの先走りが落ちていく。
そのまま動けなくなる俺を見て、そのままぬぽ、と指を引き抜いた。そして、くたりと動けなくなる俺をうつ伏せにベッドに転がしたナハト。
「……っ、な、はとさん」
もう終わったのだろうか、と熱で浮かされた頭でぼんやりと考えたときだった。
ベッドが軋む。背後から覆いかぶさってくるナハトの気配を感じて緊張するのも束の間、無防備になっていた臀部に再びナハトの手が伸びた。
「っ、ふ……ぅ……っ」
今度はもう抵抗する気力もなかった。投げ出された下半身、ナハトの手によって柔らかくされたそこを揉まれ、更に肛門を広げられるのだ。
剥き出しになった肛門の内壁に外気が流れ込んできて、その感覚にすら反応してしまいそうになっていたときだ。そのまま谷間にべちんと宛がわれる性器に息を飲む。触れただけで溶けてしまいそうなほどの熱と質量、それには身に覚えがあった。
「なんて顔してるんだ、アンタ」
「……っ、な、はとさ……」
「ガッカリしてんの、分かりやすすぎ。……本当、ド変態だな」
残念ながら、今の俺にはそのナハトの罵倒を否定することはできなかった。
ドクドクと下半身から伝わってくるナハトの鼓動。それに感応するかのように勃起し、先程よりも先走りを滴らせながらもベッドシーツを汚す自分を恥じる余裕も今の俺にはなかった。
「ど、どへ……へんたいじゃ、ないです……っ!」
「それ、どの口で言ってんの」
「っ、ぅ、な、はとさんの方が、えっ……っ、え……ッ、…………ちだと、おも、います……」
声が震える。ぐに、と広げられた肛門に押し付けられる亀頭が中へとゆっくりその頭を埋め込んでくるのが分かった。
声が漏れそうになるのを奥歯を噛み締めて堪えれば、背後でナハトが笑うのだ。
「なんだ、今更気付いたんだ?」
「っ、ぅ、んんぅ……っ!」
「お前のせいだよ、良平。お前のせいでこっちまでおかしくなってくんの。……なあ、分かってんの?」
「な、はとしゃ、待っ、ぁ゛……ッ!」
みちみちと内壁を摩擦しながら入ってくる性器に、背筋が甘く震えた。痒いところに手が届くようなそんな快感に耐えきれず腰が震える。ナハトさん、と背後のナハトを振り返ろうとしたときだ。
腰を掴まれ、そのまま腰を打ち付けられ、「ひうっ!」と大きく跳ね上がった。
「っ、ふー……っ、ぅ、熱い……っ、ナハトさ、……っ、んんっ!」
「本当……っ、最悪。俺をこんな風に変えたって自覚しろよ、反省しろ、責任を取れよ」
良平、と耳を噛まれ、そのまま耳朶から耳の穴まで擽るように舐められ、声にならない声が漏れる。
震える体を押さえつけられたまま、更に腰を進ませてくるナハト。「はっはっ」と犬のように呼吸を繰り返すことが精一杯の俺は、ナハトの性器を受け入れるため、ナハトの動きやすいように自分の腿を掴んて開いた。
その仕草がナハトの琴線に触れたようだ、
「――っ、ふ、ぅ゛……ッ!」
瞬間、臍の裏側を削り取るように性器で擦られる。前立腺が押し潰される感覚に堪らず震え、待ってください、とナハトの腕を掴んだが、ナハトは構わず腰を動かすのだ。
性器を飲み込んだ下腹部を手のひらで押さえつけられながら、そのまま腰を打ち付けられる。その度により鮮明になる性器の凹凸に耐えきれず、俺はナハトの腕を掴んだ。
「っひ、ぅ゛ぎ、ひ――ッ、ぁ゛、ッ、あ、ナハトしゃ……っ、ぉ゛、そこっ、ゃ゛……っ」
「や、じゃないだろ。良いって言え。今更自分だけ処女ぶってんなよ」
「くっ、ひぎゅ……ッ!」
圧迫感すらも心地良い。酸素が薄れていく頭の中、そして結合部からナハトの声が響く。痙攣する下半身。それすらも無視し、ナハトは更に中を探るように腰を動かすのだ。
「金玉に溜まってんの、全部ここに出すから。全部受け止めろよ、お前のために溜めてたの」
「ひっ、ぅ゛っ、そ、そんな恥ずかしいこと、言わないで……っ!」
「言う。じゃないとお前分かんないだろ、どんだけこっちが我慢してたか」
「っ、は、っ、ぅひ……っ!」
「……っ、それなのに、アンタは」
苛ついてるのか、それとも興奮してくれてるのか。恐らくその両者なのかもしれない。
腿を掴まれたまま、奥から入り口まで緩急つけて中を行き来する性器に前立腺ごと押し潰される。
腹が熱くて、苦しいのに。欠けていたピースがハマったような充足感が俺の心を満たしていくのだ。
「ご、めんなひゃ……っ! ぁ゛……ッ! ひ、ぎ……っ!」
「……っ、許さない」
「っ、んんぅ……っ!」
上の空、ただナハトという存在を享受することで精一杯だった俺の顎を掴んだナハトは、そのまま唇を重ねてくるのだ。
とろけるほどの熱に堪らず口を開き、自らナハトの舌に舌を絡める。
そこで自分がずっとナハトと“こういうこと”をすることを期待していたのだと理解した。
「……っ、ふ……っ、ぅ゛……ッ! ん、む……っ」
「っ、は……アンタ、本当にこれ……好きだよね」
「っす、きれす、……ナハトさ……っ、きす、もっと……っ」
「……っ、はあ、……本当救いようなさすぎ」
そうナハトは冷ややかに吐き捨てるが、言葉とは裏腹に腹の中で大きくなるのがわかる。
吐息混じり、再び絡め取られる舌を迎え入れながら俺はナハトにしがみついた。
喘ぎ声も吐息も全部混ざり合う。シーツの上、摩擦に耐えきれず吹き出す精液が滲むのを感じながら俺は呆気なく達する。
「――っ、ふ、ぅ……!」
びく、びく、と断続的に痙攣する体。拍子に、奥にまでねじ込まれていたナハトのものが俺の中で果てるのを感じた。満たされていく、心も体も。
腹の中吐き出される熱と余韻に浸る暇もなく、そのままゆるゆると腰を動かし出すナハト。まだやるのか、という声は最早出なかった。
ここ数日のトレーニングのお陰で体力は少しはついたのではないかと自負していたが、もしかしたら思い上がりだったのかもしれない。
「っ、な、はと、さ……っ、ま、まって、まだ、中……っ」
「……無理、全然足んない……」
「ナハト、さ……っ」
「あんたも、……他の男とヤんなくてもいいように搾り取っとくから」
「っ、ひ、ぅ゛……っ!」
出したばっかなのにすぐに硬くなるナハトの性器に、濡れそぼった中を先程よりも激しく突かれる。無理だと思ったのに、それだけで俺の体も反応してしまった。
既にガチガチに勃起した性器を見て、ナハトは「覚悟して」と意地の悪い顔をするのだ。
恐ろしいはずなのに、そんなナハトに胸の奥が苦しくなる。
――ナハトさんが俺を求めてくれるだけでも嬉しい、なんて。
そんなことを漏らしてみろ、ナハトはきっと嫌がるだろう。また尻軽だって言われるかもしれない。
だから、これは墓まで持っていかなければ。
そんなことを思いながら、「はい」と俺は震える手でナハトにしがみついた。
それが、数時間前のことだ。
――久しぶりに二人きりになれたとは言えど、やはり限度と節度は必要なのかもしれない。
散々ナハトに犯された尻の感覚は最早ない、いやあるにはある。けどなんかずっと尻に異物が刺さってるような感覚が抜け落ちないまま、俺はベッドの上から動けなくなっていた。
別に縛られたりしてるわけではない、精力諸々を吸われた結果だ。隣にはナハトが眠ってる。
無防備に寝顔を晒すナハトに俺は気が気でなかった。
普段は恥ずかしくてまじまじとナハトの顔を見ることはできなかったが、今なら見たい放題だ。
やっぱりナハトさん、睫毛長いな……。最初はなんでせっかくこんなに綺麗な顔をしてるのに仮面を付けてるのだろうかと不思議だったが、今ではこの寝顔を俺しか見たことない……かもしれないと思うとつい頬が緩む。
「……ふふ」
「何笑ってんの、キモ」
「ひっ!」
いきなりパチリと目を開けたナハトに、思わずベッドから転げ落ちそうになる俺。心臓に悪すぎる。
「お、起きてたんですか……っ?!」
「寝てはいた。けど完全に眠ることはできないから」
「そ、そうなんですね……」
それにしたって「キモ」は言い過ぎではないのかと今になって思ったが、そのままもそりと起き上がるナハトにそんな思考もどっか行った。
「……けどまあ、息抜きには丁度良かった。最近は運動できてなかったから」
「運動……息抜き……」
「なに? なんか不満でもあんの?」
「あ、ありません……っ!」
けど、せっかくのナハトの休みのところ、余計に疲れさせてしまったのではないかって考えたら少し罪悪感がある。
ちら、とナハトの方を見れば、徐に目があってしまい慌てて俯いた。さっきから頬が熱い。いや、寧ろ全身が。
「……ナハトさんの疲れを癒やしたかったんですが、その……」
「……別に、今からでもいいけど。その癒やすってやつ」
「え、ええ?! ……今はもう無理です」
「なんで」
「……お、俺が……変な気持ちになってしまいそうなので……」
「………………………………」
「だ、黙らないでください……っ!」
「……別に、俺は構わないけど?」
「え」
「というか、今更すぎない? 変じゃない時のアンタ、無いから」
ぐさぐさとナハトの言葉が刺さる。
ナハトには、隣に立っても恥ずかしくないような人間になりたいのに。
ナハトにむにむにと頬を摘まれ、そのまま柔らかく頬に噛みつかれれば「いひゃいれふ」と声が震えた。
「……ひ、酷いです、ナハトさん……」
「酷くない。……てか、俺は別にそのままでもいいって言ってんの」
……この人は本当に恐ろしい。
今度は噛まれた頬を撫でられる。よしよしと触れられるだけで、熱はじんわりと顔全体へと広がった。
「……それに、まあ……癒やされなくも、ない」
「え?」
「……………………」
「な、なんれ摘むんれふか」
「なんかムカついたから」
「そんなぁ……」
聞き間違いかと思ったが、ナハトは否定も撤回もしない。
……ナハトさんを癒せたのか、俺。
ナハトはリップサービスするような人間ではないからこそ余計、じわじわと嬉しくなる。シーツを頭まで被った俺は、ナハトにバレないようにへへ、と頬を緩めた。
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